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サッカー・モロッコ代表の予選成績と躍進の理由

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カタールW杯でのベスト4入りで一気に存在感を高めたモロッコ代表は、W杯予選でも抜群の安定感を見せています。本記事では、過去の予選成績の流れから、CAF(アフリカ)予選の独特なフォーマット、2022年の勝ち上がり、進行中の2026年予選の見どころ、そして躍進を支える戦術・人材・育成の裏側までを一気に整理。最後には、日々のトレーニングに取り入れられる実践ポイントもまとめました。予選を「どう勝ち上がったのか/勝ち上がるのか」を軸に、再現性のある強さに迫ります。

記事の目的と結論サマリー

本記事のポイント3つ

  • モロッコは「堅固な守備ブロック+鋭いトランジション+右サイドの質」で予選を主導。勝ち点の取り方が一貫している。
  • CAF予選は移動・気候・ピッチ状態など不確定要素が多いが、モロッコは組織力とロジスティクスでリスクを最小化している。
  • アカデミー整備と diaspora(海外育ち)の積極招集により、戦術理解度と選手層が分厚く、接戦でも「勝ち筋のテンプレート」を持っている。

モロッコ代表のW杯予選「勝ち上がり方」の全体像

近年のモロッコは、予選で「無理をしない守備」と「効率の良い加点」で勝ち点を積み重ねます。ベースは中盤での前向き守備と、右サイド(ハキミと右WG/IHの連係)を起点とした前進。先制後はブロックを少し下げ、プレスの強度を相手とスコアに合わせて調整します。セットプレーの質も高く、拮抗試合での「一点」を取りきる術に長けています。

モロッコ代表の予選成績 概観

直近サイクルの成績ハイライト(2018/2022/2026)

  • 2018年大会(ロシア):最終予選(グループ)を無敗・無失点で突破。コートジボワール、ガボン、マリの組を首位通過。
  • 2022年大会(カタール):2次予選グループを6戦全勝で首位通過。プレーオフはDRコンゴと対戦し、1-1(アウェー)、4-1(ホーム)で合計5-2の勝ち抜け。
  • 2026年大会(進行中):新フォーマット(大規模グループ)でスタートから主導権。グループ1位通過を目指し、直接出場枠の確保が現実的な目標。

ホーム/アウェー別の傾向

ホームでは前半からテンポを上げて先制を狙い、アウェーではリスク管理を優先して「0-0の時間」を長めにコントロールする傾向があります。CAFの一部スタジアムはコンディションが読みづらく、アウェーではビルドアップを簡素化し、プレッシングも局面限定型に。ホームに比べてアウェーは「勝ち切るより取りこぼさない」配分がやや強めです。

得点・失点とクリーンシート

予選ではクリーンシートが多く、失点の大半は移動直後のアウェーやプレーオフのような高テンション試合に偏りがち。先制率が高い一方、1点差を守り切るマネジメントが安定しており、終盤の守備交代や5バック化でゲームを締める再現性が高いのが特徴です。

CAFのW杯予選フォーマットを理解する

グループステージの仕組み

CAFのW杯予選は大会ごとに多少の変更があります。2026年大会では「大所帯のグループ制」が採用され、各グループの首位はW杯に直接出場。グループ2位の一部はプレーオフに回り、最終的にインターコンチネンタルプレーオフ(大陸間)へ進む可能性があります。つまり、首位で駆け抜ければ最短で出場が決まります。

最終ラウンド(プレーオフ)の決まり方

2022年までは、各グループの首位同士がホーム&アウェーのプレーオフで対戦し、勝者が出場権を獲得する方式でした。2026年はグループ首位がそのまま出場し、2位の一部がCAF内のプレーオフに進む形が基本線。いずれの方式でも「直接対決の2試合で勝ち切る力」か「グループで取りこぼさない力」のいずれかが強く問われます。

日程・移動・コンディションが与える影響

  • 移動距離:欧州クラブ所属選手が多い国ほど移動負荷が高い。モロッコは遠征計画と回復プロトコルを徹底。
  • 気候・標高:高温多湿や標高の影響を受ける会場では、強度配分と交代カードが勝敗を左右。
  • ピッチ状態:ボールの走り、バウンド、セカンドボールの出方が大きく変わるため、前進ルートとプレッシングの設計を柔軟に変更。

2022年W杯予選の歩み

2次予選グループでの主導権の握り方

モロッコは守備ブロックの整理と右サイドの前進で序盤から加点。トランジションで素早く背後へ差し込み、セットプレーでも得点。相手のホームでは無理に前がかりにならず、試合のテンポを落とす時間帯を設けるなど、ゲーム運びが成熟していました。

DRコンゴとのプレーオフで見せた修正

アウェーの初戦を1-1で終えた後、ホームでは立ち位置とボール循環の速度を上げ、相手のサイド間のズレを突いて複数得点。ハーフスペースにIHを立て、ハキミの裏抜けと入れ替えを多用してゴール前の枚数を増やし、4-1の快勝に結びつけました。

キーモーメントとターニングポイント

  • アウェーでの我慢:前半はリスクを限定し、後半に圧を上げる二段構え。
  • ホームでの強度と再現性:先制後の追加点で相手の反撃時間を圧縮。
  • セットプレーの上積み:ニアとファーの役割分担が明確で、セカンドの押し込みまで想定済み。

2026年W杯予選の最新状況と展望

グループ構成と順位の推移(随時更新想定)

モロッコは複数国と同組のロングラン・リーグ戦を戦っています。ホームでは主導権を握り、アウェーでは守備的な相手に対してもスコアを動かす術を確立。最新の順位・日程・結果はFIFA/CAFおよびモロッコ協会の公式発表で確認しつつ、直接対決(上位国戦)を最重要試合として位置づけるのが合理的です。

主要対戦国の脅威と攻略ポイント

  • 推進力のあるサイドアタック:SBとWGの個人突破が強力な相手には、IHのワイド寄りサポートで「2対2」を避ける。
  • ロングボール主体の空中戦:CB+アンカーで跳ね返し、2ndボール回収位置を前へずらす。
  • 堅守カウンター:セットプレーとミドルで「先に一点」を取り、相手のブロックを動かす。

出場権獲得のための到達条件

  • ホーム全勝+アウェーの上位直接対決で負けない(最低ドロー)。
  • 複数カード連戦でも失点を増やさない(クリーンシート重視)。
  • 警告・出場停止管理と負傷リスクの分散(ローテーションの徹底)。

躍進の戦術的理由

守備ブロックのコンパクトネスと縦ズレ管理

4-1-4-1/4-3-3を基調に、縦の距離を短く保つのが第一原則。アンカーはCBの前でスクリーニングし、IHはボールサイドに圧縮。ライン間の受け手に対し、CBが前に出るときはSBとアンカーがカバーし、縦ズレを連鎖で吸収します。

ハイプレス/ミドルプレスのトリガー

  • サイドバックへのバックパス:WGが内外を切り替え、IHが背後を監視。
  • GKの浮いたトラップやミスコントロール:CFが一気に寄せ、周囲が連動して網をかける。
  • 縦パスの受け手が背中で受けた瞬間:アンカーが圧縮し、逆サイドは絞って即時奪回へ。

ボール保持時の前進ルート(右サイド起点と逆サイドの厚み)

右ではハキミのオーバーラップ/インナーラップと右WGの内外の使い分けで前進。相手が右に寄れば、IHを介して一度リセットし、左のIHやWGに展開。左は一対一の打開とカットインでシュート/セットプレーを獲得します。

トランジションの速度と陣形回復

奪って3秒で前進、失って5秒で回収(もしくはリトリート)の基準を共有。前線のプレスバックは縦スプリントで中央優先、サイドは遅らせて中央封鎖を第一にします。

セットプレーの設計とキッカー配置

  • 右CK:左足のインスイングでニアに速いボール→ファーに流す設計。
  • 左CK:右足のアウトスイングで相手GKを動かし、PKスポット周辺に落とす。
  • FK:直接と間接の二段構え。二列目の飛び出しでセカンド回収も狙う。

キープレイヤーと役割

最終ラインとGKの安定感(例:サイス、ボノ)

経験値のあるCBとビッグセーブ力のあるGKが軸。ラインコントロールとクロス対応、被カウンター時の遅らせが整理され、全体の安心感につながっています。

中盤の制圧と前向きの守備(例:アムラバト)

アンカーとIHの連動で縦のパスコースを消し、前向きで奪って即前進。球際の強度に加え、ファウルの使い方が巧みで、危険地帯での被フリーを最小限にします。

幅と推進力を生むSB(例:ハキミ)

オーバーラップだけでなく、インナーラップで中央に侵入して数的優位を作るのが特徴。スプリントの反復と逆サイドへの展開で相手のラインを伸ばします。

決定力と空中戦(例:エン=ネシリ)

クロスとセットプレーでのターゲット。ニア・ファーの走り分け、DFの背中で外す動きに長け、ゴール前での一歩目が速いのが強みです。

クリエイティブな崩し(例:ズィエッシュ、ブファル)

右での左足キック精度、左でのドリブル打開とキープ力。引いた相手に対し、個の技術でブロックを動かす役割を担います。

監督交代とマネジメント

監督の方針転換が与えた影響

カタール大会前の指揮官交代を経て、守備の規律と攻撃の自由度のバランスが改善。構造はシンプルに、個の良さは最大化という方針で選手の納得感が高まりました。

ロッカールームの一体感と役割定義

プレー原則を明文化し、交代選手にも明確なタスクを付与。役割のぶつかりを防ぎ、メンバーが変わっても同じ絵を描ける状態を維持しています。

選手招集ポリシー(ディアスポラの活用)

欧州育ちの選手を積極的に招集し、即戦力化。言語や文化の橋渡し役を配置し、戦術理解を短期間で共有する仕組みが機能しています。

組織・育成・スカウティングの裏側

モハメド6世アカデミーの果たす役割

国内育成のハブとして、フィジカル・技術・戦術理解の底上げに寄与。例えばユース年代からトップレベルの基準で鍛えられた選手(エン=ネシリ、オナヒなど)が代表の骨格を支えています。

欧州クラブとの接続と成長曲線

フランス、スペイン、イングランドなどのクラブでプレーする選手が多く、試合強度と戦術的学習が日常化。代表では共通言語を活用し、短期合流でも高い組織度を維持します。

データ分析とメディカルの進化

GPSや映像解析を用いた負荷管理と対戦分析が定着。長距離移動後の回復プロトコル、ウォームアップと補強の標準化で、故障リスクとパフォーマンスのブレを抑えています。

数字で読むモロッコ代表

xG/xGA・PPDA・被シュートなど主要指標

公開されている各種データでは、被シュート数とxGA(失点期待値)を低く抑える傾向が顕著。PPDA(守備の圧力度)も相手・会場に応じて可変で、アウェーではやや許容、ホームでは高めに出ることが多いです。

前半/後半の得失点傾向

前半に先制、後半頭に追加点で試合を決めるパターンが目立ちます。ビハインド時は後半の交代カードでサイドの推進力を上げ、押し込み時間を増やすのが定石です。

ファウル数・カード・デュエル勝率

球際は強いものの、危険地帯での不用意なファウルを避ける設計。デュエルは空中・地上ともに強度が高く、セカンド回収のポジショニングで実数以上の優位を作るのが特徴です。

アフリカ予選ならではの難しさと適応

ピッチコンディションと試合運営

芝の長短やバウンドの不確実性に対応するため、シンプルな前進とセカンド回収を重視。スローインやリスタートのテンポにも柔軟性を持たせます。

高温多湿・移動距離への対策

日程に応じてトレーニング強度を分散し、水分・電解質管理を徹底。遠征帯同スタッフによる即時ケアでパフォーマンス低下を防止します。

審判基準とゲームマネジメント

接触の許容度が試合ごとに異なるため、序盤で基準を確認。主張すべき場面と受け流す場面をチームで共有し、不要なカードを避けます。

他強豪国との比較から見える強み

セネガル/エジプト/アルジェリアとの共通点

  • 欧州所属選手の多さによる戦術理解の高さ。
  • 守備の安定をベースに、個の打開で勝ち切る設計。
  • セットプレーの重要度が高いことを全員が認識。

相違点と差別化ポイント

モロッコは右サイドの技術連鎖と中盤の可変で、相手ブロックを「動かす」ことに長けています。守るだけでなく、相手を前に出させてから刺す二段構えが強みです。

ベンチ層の厚みとユーティリティ

同ポジション内でタイプが異なる選手を用意し、相手やスコアに応じて「似た形で違う解」を提示。90分の中で複数プランを出し入れできるのが強さの源泉です。

試合別の勝ち筋テンプレート

先制時のゲームプラン

  • 10分間は追加点狙い、その後はリスク管理へシフト。
  • 中盤の立ち位置をやや低めにし、背後の広大化を避ける。
  • 60分以降は交代で走力維持、セットプレーでダメ押し狙い。

失点後の巻き返し方

  • 右サイドの枚数を増やし、ショートコンビネーションでリズム回復。
  • ミドルとクロスで相手を下げさせ、二次攻撃で押し込む。
  • 終盤は2トップ化やSB高止めでボックス内の枚数を確保。

拮抗時のセットプレー戦略

  • ニア狙いのバリエーションで相手のゾーンを動かし、ファーで仕留める。
  • キッカーを左右で変え、GKの重心をずらす。
  • セカンドボールの回収位置を決めておき、すぐに再波状攻撃へ。

選手個々の成長とリスク管理

ケガ予防とローテーション

スプリント反復の多いSBやWGは疲労の蓄積が早いため、連戦では分担。筋損傷リスクの高い時期(移動直後・寒暖差大)に合わせてメニューを調整します。

海外組の移動疲労と合宿設計

欧州からの長距離移動後は軽めのセッションで体内リズムを整え、48時間後から強度を上げる段階的設計。移動日の前後で出場時間もコントロールします。

若手の台頭と世代交代プラン

主力の負荷を抑えつつ、終盤の限定タスクから若手を起用。守備原則の共通理解を前提に、段階的に任せる役割を拡大します。

モロッコから学べる実践ポイント

アマチュアが取り入れたい守備原則

  • 縦のコンパクト:最終ライン—中盤—前線の距離を短く保つ。
  • センター優先:中央を閉じ、相手を外へ誘導する。
  • 役割の二枚重ね:前に出る人とカバーする人を常にセットで設計。

トランジション強化の練習法

  • 4対4+3フリーマンのポゼッションで「奪って3秒」の前進を反復。
  • 対人圧を上げた8対8のハーフコートで即時奪回とリトリートを切り替え。
  • 縦30m×横40mの制限エリアで、前後の圧縮と背後ケアを同時に鍛える。

セットプレーの再現性を高める工夫

  • ニア/中央/ファーの役割固定+週1のバリエーション更新。
  • キッカーの球種別に「入り方」をテンプレ化(速いニア、逃げるファーなど)。
  • セカンド回収の位置とシュート準備(ボックス外のシュート係)を明確に。

まとめと今後のチェックリスト

予選突破に向けた注目試合

グループ上位との直接対決が最大の分岐点。ホームで勝ち切り、アウェーで負けないことが通過の王道です。試合間隔が短い連戦期(国際マッチウィーク)も要注目。

スタメン予想とコンディションの見極め

  • SBとWGの走力が鍵:連戦での入れ替えに注目。
  • アンカーの稼働状況:出停や疲労時の代替プランをチェック。
  • CBの組み合わせ:空中戦特化か、ビルドアップ重視かで相手別に選択。

最新情報の追い方(公式発表の確認)

  • FIFA/CAFの公式ページで日程・結果・順位を確認。
  • モロッコサッカー協会のリリースで招集・負傷・試合会場の更新をチェック。
  • 各国リーグのクラブ発表で選手のコンディション情報を補強。

おわりに

モロッコ代表の予選での強さは「守備の約束事」「右サイドの質」「現実的なゲーム運び」の三点に集約されます。CAF特有の難しさを把握したうえで、勝ち点の最大化を狙う—その積み重ねが本大会での躍進にも直結しました。日々のトレーニングでも、コンパクトな守備、トランジションの俊敏さ、セットプレーの精度を意識するだけで、チームの再現性は確実に上がっていきます。次のウィンドウでも、モロッコがどんな「勝ち筋」を提示するのかを楽しみにしつつ、あなたのチーム作りにもぜひ活かしてみてください。

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