韓国代表はなぜワールドカップ予選を安定して勝ち上がれるのか。この記事では、スコアや印象論だけでなく、xG(期待得点)やPPDA、ファイナルサード侵入などの“意味のある数字”で流れと勝ち方を読み解きます。直近サイクル(2026大会向けのAFC予選)では第2次予選を突破して最終段階へ進み、過去のサイクル(2018・2022)でも最終予選を上位で通過し本大会へ。常に上位シードの立場で臨みながら、相手に合わせて勝ち筋を選べるのが韓国の強みです。数字の見方も噛み砕いて解説するので、分析初心者の方も気軽に読み進めてください。
目次
- なぜ“データで読む”のか:本記事の狙いと読み方
- AFC予選フォーマットの整理と韓国代表の立ち位置
- 予選成績サマリー:一目でわかる“勝ち上がり”
- 攻撃データで読む強さ:どうやって点を取ったのか
- 守備データで読む安定感:どうやって失点を防いだのか
- 試合ごとのミニレビュー:流れと調整のタイムライン
- キープレーヤーの影響度を定量で把握する
- 監督の戦術的選択:布陣、可変、そして修正
- 相手タイプ別の相性と攻略法
- 比較で見える“強みと宿題”
- コンディション管理と負荷の最適化
- 次ラウンドへの示唆:再現性と上振れの見極め
- 実践への落とし込み:選手・指導者のためのヒント
- よくある質問(FAQ)
- データの参照と出典の考え方
- まとめ:韓国代表の“勝ち上がり”は再現性で勝つ
なぜ“データで読む”のか:本記事の狙いと読み方
目的:結果だけでなく“勝ち上がり方”を可視化する
勝点や得失点差だけでは、内容の再現性は見えてきません。韓国代表の予選は「取りこぼしを最小化する運び」「相手に応じた強度調整」「要所のセットプレー活用」といった型が光ります。これを定量(指標)と定性(戦術意図)の両輪で把握し、「次ラウンドでも繰り返せる強みはどれか」を見極めるのが本記事の狙いです。
読み方ガイド:指標の意味と限界を理解する
- ひとつの数字に依存しない:xG差、PPDA、侵入回数など複数指標を束ねて判断。
- 相手と文脈をセットで読む:同じ数値でも、相手の守備ブロックや気候・移動で意味が変わる。
- 短期のブレを許容する:予選はサンプルが限られるため、傾向線を太く捉える。
用語と指標の定義(xG、PPDA、ファイナルサード侵入など)
- xG(期待得点):シュート位置・角度・状況から「入る確率」を推定した値。チャンスの質を示す。
- 被xG:相手に与えた期待失点。守備の“危険な場面の少なさ”を測る。
- PPDA:守備側が相手のパスを何本許したかで見るプレッシング強度の近似。数値が小さいほど“高い位置から圧力”。
- ファイナルサード侵入:相手陣内深いゾーン(最終3分の1)へのボール進入回数。押し込む時間の長さの目安。
- PA侵入:相手ペナルティエリアに入った回数。決定機の母数に直結。
- ハイリトリーブ:相手の最終ライン付近でのボール奪取。ショートカウンターの起点。
AFC予選フォーマットの整理と韓国代表の立ち位置
直近サイクルのAFC予選の仕組み(ステージと通過条件)
2026大会に向けたAFC予選は枠増加に伴い段階が拡張されました。おおまかには以下の流れです。
- 一次予選:下位シード同士のホーム&アウェイ。
- 二次予選:4チーム×9組のダブルラウンドロビン。上位2チームが最終予選へ(同時にアジアカップ出場権)。
- 三次予選:6チーム×3組。各組上位2チームが本大会へ。
- 四次予選:各組3位・4位が集まり2組に分かれて実施。各組1位が本大会へ。
- 五次予選:四次予選の各組2位同士でプレーオフ。勝者が大陸間プレーオフへ。
シード順・グループ分けと難易度の文脈
韓国はAFCで上位シードに入る常連。二次予選は「守備的ブロックを崩し続ける」課題が中心で、三次予選から「同格との綱引き」が増加します。シードは対戦難度だけでなく、移動距離やキックオフ時刻の設定にも影響を及ぼし、コンディション管理面の優位をもたらします。
対戦スケジュールと地理的要因の影響
東南アジア遠征は高温多湿、中央アジアは長距離移動・時差がボディブローになります。韓国は欧州組が主力を占めるため、代表ウィーク前後の移動負荷が高く、ローテーションと試合運び(前半で主導権、後半に強度コントロール)の設計が成績の鍵になります。
予選成績サマリー:一目でわかる“勝ち上がり”
勝敗・勝点・得失点差の全体像
直近サイクルでは二次予選を余裕を持って突破。過去サイクル(2018・2022)も三次予選で上位2位に入り本大会へ到達しています。総じて「得点は安定、失点は少数」に収まりやすく、得失点差で優位に立てるのが韓国の常道です。
ホーム・アウェイ別パフォーマンス
- ホーム:ボール保持率・PA侵入ともに増え、先制率が高い。セットプレー得点も上振れやすい。
- アウェイ:気候・ピッチ・移動の影響でペース配分を重視。被カウンターを管理し、無失点または最小失点で勝点回収。
時間帯別得失点とゲームマネジメント傾向
前半の中盤〜終盤に先制を取りにいき、リード後はブロックを落としてトランジションのリスクを抑制。70分以降は交代でスピードを再注入し「追加点or逃げ切り」の二択を鮮明にする運びが目立ちます。
攻撃データで読む強さ:どうやって点を取ったのか
得点パターン内訳(オープンプレー/セットプレー/トランジション)
- オープンプレー:サイド起点での折り返し、カットインからのミドルが核。
- セットプレー:CK・FKともにバリエーションが豊富。ニア攻撃とファーの二段攻撃を使い分け。
- トランジション:ハイリトリーブ直後の斜めの刺し込みと背後狙い。相手の前進が遅い国に特効。
シュートと決定機(xG、枠内率、決定力)
二次予選ではxG差がプラスに振れやすく、PA内からのシュート比率が高まります。枠内率が上がるのは「PA侵入→マイナスの折り返し→至近距離」の再現性が高いため。決定力の評価は、1試合単位の揺らぎではなく「連戦ブロック」での平均回帰で見るのが実務的です。
崩しの起点(サイド/中央)とPA侵入回数
韓国はワイドレーンの人員確保が巧みで、SBとWG(orIH)の縦関係で幅と深さを両立。サイド起点からPA侵入を稼ぎ、中央はラスト30mでの“ライン間受け”をアクセントに使う比率が高い傾向です。
ビルドアップ指標(進入回数、最終局面の選択傾向)
後方は2.5→3枚化の可変で前進し、相手の2トップに対して数的優位を確保。最終局面は「クロス一辺倒にならない」が合言葉で、グラウンダーの折り返しやカットバックの比重が高いほどxGは安定します。
守備データで読む安定感:どうやって失点を防いだのか
失点パターンと被xGのプロファイル
被xGは総じて低いレンジで推移。失点の多くは「自陣でのイージーミス→ショートカウンター」「ロングボールのセカンド回収負け」「セットプレーのマークずれ」に集約されます。構造を崩さない限り、連続失点は起きにくい守備です。
プレス強度と回収(PPDA、ハイリトリーブ、カウンタープレス回数)
二次予選ではPPDAが低くなりやすい(=高い位置から奪える)が、相手が長いボールで逃げると中盤でのカウンタープレス回数が重要に。韓国は奪われた直後の5〜8秒に人数をかけ、相手の前進を止める意識が浸透しています。
自陣深い位置の対応(ブロック形成、被CK・被セットプレー)
リード後は4-4-2気味に高さを下げ、クロス対応の枚数を確保。被CKが連続する時間帯は、ニアの人選・ゾーン幅の調整が失点抑止の肝になります。
試合ごとのミニレビュー:流れと調整のタイムライン
序盤戦:ゲームモデルの浸透度と立ち上がりの傾向
最初の代表ウィークは連係が粗く、押し込みながらも「最後の質」に揺らぎが出がち。それでも被カウンターの管理は堅実で、勝点は拾える設計です。
中盤戦:対策へのアジャストと選手起用の最適化
相手が低ブロックを強めると、韓国はIHの立ち位置とSBの高さを微調整。交代でテンポを変え、左→右へのサイドチェンジ頻度を上げて突破口を開くパターンがよく見られます。
終盤戦:勝点の積み上げとリスク管理
勝ち抜けが見えた段階では、主力の負荷を抑えつつセットプレーで確実に加点。無理なハイプレスを控え、被カウンターの入り口を消す理性的な運びが増えます。
キープレーヤーの影響度を定量で把握する
得点関与と創造性(G+A、ショットクリエーションアクション)
エース級のアタッカーはG+A(ゴール+アシスト)に直結。加えて、枠外の指標としてSCA(パス/ドリブル/被ファウル起点)を見ると、チャンス“前段”の貢献が見えます。
中盤の支配(プログレッシブパス、ライン間受け、ボール前進)
アンカーとIHの“縦関係”が噛み合うかで攻撃の滑らかさが決定。前進の起点はCB→IHへの縦刺しと、SB→WGの外側運びの両にらみです。
守備の要(デュエル勝率、被シュート抑制、GKのPSxG)
CBの対人と空中戦は被クロス増の時間帯で価値が上がります。GKはPSxG(止めたシュートの質)で評価し、ビッグセーブの“難易度”も勘案します。
若手とローテーションの価値(出場時間シェアとインパクト)
過密日程では、60〜75分で投入される若手アタッカーのスプリント回数がスコアに直結。出場時間シェアを複線化できるほど、アウェイでの勝点期待は安定します。
監督の戦術的選択:布陣、可変、そして修正
基本布陣と可変のパターン(ビルドアップ段階別)
スタートは4-2-3-1または4-3-3。後方は2→3枚化で前進、前線はWGの内外で幅とハーフスペースを出し分け。相手の2トップにはCB+アンカーの降りで数的優位を確保します。
相手別ゲームプラン(ブロック攻略/ハイプレス回避)
- 低ブロック攻略:テンポ変化とサイドチェンジ、PA内でのフリーマン創出。
- ハイプレス回避:第2ライン(IH/CF)への縦当て→落とし→背後の三手目。
試合中の修正トリガー(交代、配置、強度コントロール)
「押し込むが崩せない」時は、IHの角度変更とWGの幅固定でカットバックの回数を増やす。「押し込まれる」時は、ライン間の距離を縮め、ボールサイドに素早く人を寄せて時間を奪います。
相手タイプ別の相性と攻略法
低ブロック相手:幅と列移動での崩し
崩しのKPIは「PA侵入回数」「カットバック本数」「ニアゾーン侵入」。縦一直線のクロス依存を避け、内外の斜めを絡めて列を動かします。
ハイプレス相手:第2ライン経由の前進と背後活用
ハイプレスには、CF/IHへの直当て+落としの高速連結が有効。背後へは内側から抜ける動きでオフサイドラインをずらし、決定機のxGを底上げします。
セットプレーの駆け引き:攻守のKPIと狙い所
- 攻撃:ニアのスクリーンとセカンドのゾーン回収をセットで設計。
- 守備:マークの受け渡しルールを明確化。相手の“飛び込み役”を事前に特定。
比較で見える“強みと宿題”
アジア主要国とのベンチマーク(攻守の核指標)
日本・イラン・オーストラリアと比べて、韓国は「デュエル強度と個の推進力」で優れ、ポゼッション下での安定感は十分。一方で、超低ブロック攻略の効率と、三次予選以降の“同格相手の決め切り”は改善余地が残ります。
前回サイクルとの推移(改善点と反復性)
縦への推進とハイリトリーブは年々洗練。繰り返し機能しているのは「サイドの優位作り→PA内1stタッチシュート」。一方、アウェイの難環境では「前進の一手目ミス→被カウンター」の芽をより早く摘みたいところ。
SWOT分析(定量×定性の統合)
- Strength:個の打開力、前進の多様性、失点しにくい構造。
- Weakness:超低ブロックの攻略効率、終盤のファウル管理。
- Opportunity:若手台頭で交代カードの質向上、枠増加で本大会到達のルートが複線化。
- Threat:移動・気候負荷、欧州組のコンディション乱高下、セットプレー一発勝負。
コンディション管理と負荷の最適化
出場時間分布とローテーション戦略
連戦ブロックは「60分の壁」を想定し、スプリント担当を後半投入。主力の連続先発を避け、質の落ちないユニット交代で走力を維持します。
代表合流とクラブ日程の整合性
欧州週末→アジア火曜夕方のタイトローテは睡眠・時差対応が最優先。渡航当日のピッチインを避け、リカバリ重視のマイクロサイクルで臨みます。
けが人・離脱の影響と代替プラン
サイドの推進力が落ちるとPA侵入が減少。代替は「IHの縦突き」「CFの流動」で内側から質を担保し、セットプレーで上澄みを狙います。
次ラウンドへの示唆:再現性と上振れの見極め
スコアの作り方の持続可能性(xG差の安定度)
xG差が安定してプラスなら、勝点は時間とともに“期待値に収束”。二次予選の優位が三次でも再現するには、PA内でのシュート比率を維持しつつ、強度の高い相手に対しても“最後の一手”の質を確保する必要があります。
試合運びとリスク管理(リード時/ビハインド時の指標)
リード時は被シュート数より被xGを優先管理。ビハインド時はPPDAを下げすぎず、ハイリトリーブの試行回数を増やす方が逆転確率を押し上げます。
強度・スピードへの適応(国際基準へのギャップ分析)
上位大陸と比べると、トランジション2手目のスピードと、PA内の“ワンタッチ決着”がギャップになりがち。三次予選以降はそこへの橋渡しがテーマです。
実践への落とし込み:選手・指導者のためのヒント
トレーニング設計に活かすKPI(侵入、回収、再加速)
- PA侵入×カットバック反復:2対2+サーバーで質と本数を両立。
- ハイリトリーブ→即縦:5〜8秒の再加速を数値化(奪ってからPA進入までの秒数)。
- サイドチェンジのテンポ計測:横幅60mを3タッチ以内で運ぶ基準作り。
セットプレー設計のチェックリスト(配置、動線、再現性)
- 役割固定:キッカー、ニアアタック、ブロッカー、セカンド回収。
- 動線の重なり:ゾーンを跨ぐカットで相手の認知を撹乱。
- 再現性テスト:10本中の枠内・接触・セカンド回収率を記録。
観戦・分析ノートのつけ方と改善サイクル
- 前半15分・30分・HT・60分・75分でスナップショットを作る。
- 「侵入→決定機→得点」の因果をつなげてメモ。
- 次戦に向けた仮説(何を増やす/減らす)を1行で明文化。
よくある質問(FAQ)
xGやPPDAはどこで確認できる?
国内外のサッカーデータ配信サービス(Opta提供のメディア、Wyscoutなどの分析プラットフォーム)や、一部の統計サイトで参照できます。AFCの公式レポートは基礎スタッツ中心なので、xGやPPDAは外部サービスを併用するのが一般的です。
データの信頼性とサンプルサイズの考え方
プロバイダによって定義やモデルが異なります。1試合の数字はブレが大きいので、連戦ブロック(2〜4試合)やステージ単位で傾向を確認しましょう。複数ソースで同じ傾向が出るなら信頼度は上がります。
観戦時に注目すべき3つの指標
- PA侵入回数(押し込みの量)
- カットバック本数(チャンスの質)
- ハイリトリーブ数(試合の重心)
データの参照と出典の考え方
公的・公表情報の扱い
スコアやメンバー、試合経過はAFC公式・各国協会のリリースが一次情報。記録は日付・大会名・対戦相手とセットで整理します。
商用・オープンデータの活用方針
xGやPPDAなどの拡張指標は、提供元の定義を明記し、同一ソースで比較するのが原則。異なるソース間の数値を単純比較しないよう注意しましょう。
再現可能性のための記録方法
- 集計期間(例:二次予選全6試合)と対象試合の一覧。
- 使用した指標と定義(例:PA侵入はエリアライン通過を1と数える)。
- 可視化の単位(1試合平均/90分換算/ホーム・アウェイ別)。
まとめ:韓国代表の“勝ち上がり”は再現性で勝つ
韓国代表の予選成績をデータで読むと、勝点以上に「勝ち筋の再現性」が目に入ります。二次予選では押し込みの量(PA侵入)と質(カットバック)で優位を築き、被xGを低く抑える守備構造で取りこぼしを最小化。アウェイの難環境ではリスク管理を前に出しつつ、終盤の交代で強度とスピードを補給してスコアを動かします。三次予選以降は同格との勝負が増えるため、“最後の一手の質”とセットプレーの上積みが鍵。数字と現場感を往復しながら、次の一戦で再現すべき行動を明確化する——それが韓国の強さをあなたの現場(選手・指導現場・観戦分析)に落とし込む最短ルートです。
