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反省会の伝え方で子どもが伸びる試合後5分術

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反省会の伝え方で子どもが伸びる試合後5分術

試合直後の「5分」をどう使うかで、その後の伸び方は大きく変わります。長い説教より、短くて具体的。責める言葉より、行動が変わる言葉。この記事では、反省会の伝え方で子どもが伸びる試合後5分術を、誰でも今日から使える形でまとめました。勝っても負けても使える、シンプルで続けやすい方法です。

はじめに:なぜ「試合後5分」が伸びを分けるのか

試合後の脳と感情の状態を理解する

試合直後は感情が高ぶり、心拍も上がっています。興奮や悔しさが強いほど、長い話や抽象的なアドバイスは頭に入りにくくなります。一方で、プレーの記憶はまだ鮮明。だからこそ「短く」「具体的に」「行動に落とす」反省会が効果的です。まずは呼吸と水分で少し落ち着かせ、事実ベースで振り返ると、感情の波に飲まれずに次につながる会話ができます。

短時間×低負荷だから継続できる

上達のカギは継続です。5分なら、どんな日でも取れます。疲れていても、移動の合間でも、同じ手順で回すだけ。毎回の負担が小さいと、親も子も構えずに続けられます。続けるほど「自分で考える→試す→また振り返る」の循環が回り、実力が安定して伸びます。

勝敗に左右されない振り返りのフレーム

勝っても負けても、同じフレームで振り返るのがコツです。おすすめは次の4ステップ。

  • 事実をそろえる(ノージャッジ)
  • よかった点の特定(1〜2個)
  • 改善点の合意(1つに絞る)
  • 次の行動宣言(if-thenプラン)

この型に「呼吸・給水・合図で場を整える」を加えたのが、反省会の伝え方で子どもが伸びる試合後5分術の核です。

5分で完結する反省会の全体設計(タイムライン)

0〜30秒:呼吸・給水・合図で場を整える

  • 呼吸:鼻から4秒吸って、口から6秒吐く×3回
  • 給水:一口でOK。喉の渇きをリセット
  • 合図:「いまから5分、良いところ→直すところ→次の一手でいこう」で開始

合図の言葉を毎回同じにすると、脳が「いまは振り返りの時間」と切り替わりやすくなります。

30〜90秒:事実をそろえる(ノージャッジ)

  • 「前半は右サイド、後半は中央。枠内シュートは2本。スローインは5回受けた」
  • 主観や評価を入れない。「〜だったっけ?」と確認するだけ

ここで核心は追わず、まずは共通の土台づくり。記憶が新しいうちに事実だけを置きます。

90〜180秒:よかった点の特定(1〜2個)

  • 「良かったのはどこ?1〜2個だけ教えて」
  • 「なぜ良かった?」の一言で要因まで引き出す

良かった点の言語化は、再現性を生みます。褒めるだけで終わらず、具体を引き出すのがコツです。

180〜240秒:改善点の合意(1つに絞る)

  • 「次に1つだけ直すなら、どれ?」
  • 選べない時は選択肢で絞る。「戻りのスピード」「ファーストタッチ」「声の量」ならどれ?

欲張って複数やると、どれも変わりません。1点集中で体に刻みます。

240〜300秒:次の行動宣言(if-thenプラン)

「もし(状況)なら、(行動)をする」と具体化します。

  • 例:もし自陣でボールを奪ったら、3秒以内に前を向く。
  • 例:もし相手のビルドアップ時にCBが開いたら、FWは内切りでコースを切る。
  • 例:もしクロスが来そうなら、GKはニア1歩+声で誰を止めるか指示。

宣言は短く、覚えられる1文に。次の練習や次節でそのまま使えます。

伝え方の黄金ルール3つ

主語を「人」から「プレー」に切り替える

「お前は遅い」ではなく、「戻りの最初の3歩が遅い」。主語を人からプレーに変えるだけで、責められ感が減り、行動が変わりやすくなります。

質問はオープン+選択肢で絞り込みやすくする

最初はオープンに。「どう感じた?」→迷ったら選択肢で助け舟。「A(距離の問題)とB(体の向き)だと、どっちが原因に近い?」

肯定→具体→短くの順で伝える

「良かったよ」だけでは薄く、「直せ」だけでは刺さらない。「ここが良かった→理由→次にやること」を短文で。例:「前向きのターン、最高。背中を感じてからの半身が速かった。次は受ける前に味方の位置も一回見るでいこう」。

使えるフレーズ集(そのまま使える)

よかった点を引き出すフレーズ

  • 「今日のプレーで、自分史上よかったのはどこ?」
  • 「あとで真似したいのはどの1シーン?」
  • 「なぜそれは上手くいったと思う?」

改善点に合意するフレーズ

  • 「次に1つだけ直すなら、どれにする?」
  • 「AとBなら、効果が大きいのはどっち?」
  • 「今日はこれに全振りでいこう。いい?」

行動宣言を固めるフレーズ(if-then)

  • 「もし〜のときは、〜するでいこう。言ってみて」
  • 「その一文を合言葉にしよう。次の練習で最初に思い出すやつ」
  • 「数字で言うと何回やる?目標回数を決めよう」

感情が高ぶっている時のクールダウンフレーズ

  • 「いまは悔しいよね。まず3回だけ息を合わせよう」
  • 「気持ちは大事。事実だけ30秒集めてから話そう」
  • 「話したくないならOK。合図だけ決めて、あとで1分にしよう」

逆効果になりやすいNGワードと安全な言い換え

人格評価を避ける:人ではなく行動に焦点

  • NG:「お前は弱い」「メンタルがない」
  • 言い換え:「最後の1mで体を寄せる回数を増やそう」「失点後の1プレー目は安全第一にしよう」

結果だけの批評からプロセスへの転換

  • NG:「点を取れよ」「ミスするな」
  • 言い換え:「枠内3本を目標にいこう」「受ける前に半身+周りを見るを徹底しよう」

比較・ラベリングの廃止と言い換え例

  • NG:「〇〇より下手」「いつもダメ」
  • 言い換え:「今日の自分比で、良かったのはどこ?次に上げたいのはどこ?」

年齢・レベル別アレンジ

小学校低学年:選択式とゲーム化で楽しく

  • カードを3枚用意:「良かった」「直す」「合言葉」。子どもに選ばせる
  • 質問は二択。「前に運べた?パスが良かった?」
  • 合言葉は短く。「ボール見たら半身」「3秒前進」

小学校高学年:自己評価カードで自走を促す

  • 1分ミニログに「◎◯△」で自己評価
  • 「今日のベストシーン1つ」「次の1点」を自分で記入
  • 親は確認と一言フィードバックのみ

中学生:キーワードメモと短尺動画の併用

  • キーワードは5語以内で。「半身」「背中確認」「縦ズレ」「内切り」「二列目」
  • 30秒クリップを1本だけ見て、言葉と紐づけ

高校生:数値指標と役割別の深掘り

  • 例:デュエル勝率、前進回数、インターセプト、枠内率などから1〜2個
  • チーム内の役割(ビルド役、潰し役、フィニッシュ役)で振り返る
  • if-thenを戦術と整合させる

ポジション別の焦点ポイント

GK:コーチング・ポジショニング・前後の重心

  • コーチング:誰に何を言うか(名前+動詞+方向)
  • ポジショニング:ボール・味方・ゴールの三角形
  • 重心:シュート予測時はつま先寄り、クロス時はニア一歩

DF:ライン管理・1v1対応・セカンドボール

  • ライン管理:押し上げの合図と言葉
  • 1v1:体の向きと利き足切り
  • セカンド:こぼれ位置の予測と一歩目

MF:切り替え速度・前進手段・サポート角度

  • 切り替え:奪われた瞬間の3秒ルール
  • 前進:運ぶ/はたく/裏を使うの選択基準
  • サポート:半身で受けられる角度に入る

FW:駆け引き・ファーストタッチ・決定力

  • 駆け引き:腕と体でDFを固定→抜け出し
  • ファーストタッチ:逆足も含めた置き所
  • 決定力:枠内の意識と蹴り分け(強/置き)

チームと家庭の橋渡し(方針を揃える)

監督・コーチの意図を尊重して矛盾を作らない

家庭の反省会がチーム方針と逆向きだと、子どもは混乱します。「今日、コーチから何を言われた?」から始め、家庭のif-thenをそこに揃えましょう。

チームの合言葉で共通言語化する

「前進3秒」「内切りで誘導」「背中確認」など、チームの言い回しがあるならそれを採用。なければ家庭で作るのもOK。毎回同じ言葉にすると定着します。

連絡・共有の作法:伝える量とタイミング

  • 量:事実3つ+良かった1つ+次の1つに絞る
  • タイミング:当日夜までに簡潔に。長文は不要
  • 目的:責めない・自慢しない・共有するだけ

失敗例から学ぶケーススタディ

叱責→沈黙パターンの悪循環

例:失点直後に「なんで戻らない!」→子どもが無言→次も同じ。改善策:まず事実。「失点時、相手は右で数的優位。戻りは7割位置」→「次は最初の3歩だけ全力で戻す」で合意。

長時間の説教で自己効力感を下げる例

30分以上の説教は、疲労と混ざって「自分はダメだ」に繋がりやすい。改善策:5分術に切り替え、良かった点を先に固定→改善点1つ→if-thenで終える。足りない話は翌日に。

親の感情先行で対話が崩れるときのリカバリー

怒りが先行しているときは、反省会を無理にやらない。「今日は悔しい。1分だけ『事実→合言葉』で終わろう」で短縮。自分の感情に気づけたこと自体が前進です。

記録と振り返りツールの最小セット

1分ミニログ(紙/スマホ)の書き方

  • 項目:日付/相手/ポジション/良かった1つ/直す1つ/合言葉(if-then)
  • 例:「5/12 vs○○ 高MF|良:前向きターン2回|直:守備の戻り|合:もし奪われたら3秒で戻る」

動画30秒クリップの選び方と活用法

  • 「ベスト1本」か「課題1本」のどちらかだけ
  • 再生は2回まで。言葉と紐づけて終える
  • SNS共有は慎重に。目的は学びであり評価ではない

簡易指標テンプレート(守・攻・切り替え)

  • 守:1v1対応◎◯△/ラインコントロール◎◯△
  • 攻:前進回数/枠内率/ファーストタッチ◎◯△
  • 切替:奪われ後3秒以内のリアクション回数

数は最小限。比べるのは「昨日の自分」です。

試合後以外のタッチポイント活用

移動中の軽い問いで余韻を拾う

「今日のハイライトは?」「次に試したい1つは?」の一言だけ。重くしないのがコツ。

次の練習冒頭30秒で行動宣言を再起動

練習前に合言葉を口に出す。「今日は『もし奪われたら3秒で戻る』でいく」。周りに聞こえなくてOK、自分に聞かせます。

試合前のif-thenの確認で意識を整える

試合前に前回のif-thenを1つ確認。「同じを継続」か「新しい一文」に更新。準備が心を落ち着かせます。

メンタルとコンディションの前提条件

睡眠・栄養・水分の簡易チェック

  • 睡眠:前日何時間?6〜8時間を目安に確保
  • 栄養:試合前後の補食は取れた?(バナナ・おにぎり等)
  • 水分:色でチェック。濃ければ補給を増やす

痛み・疲労の確認と優先順位

痛みがあるときは、反省会を短縮し、回復を優先。行動宣言も「ケアをする」に置き換えてOKです。

感情の安全基地をつくる声かけ

「勝っても負けてもあなたの味方。今日の学びを一緒に見つけよう」。この一言が、安心して振り返る土台になります。

よくある質問(Q&A)

負けた直後に話したくない時はどうする?

無理に話さない。「合図だけ決めて、今日は『事実1つ+合言葉1つ』で1分にしよう」で短縮。夜や翌日に通常版へ。

親子で意見が割れたら?合意の作り方

どちらかを正解にせず、効果で選ぶ。「次の1試合で効果が出そうなのはどっち?」→決めたらそれをやる。終わってから検証します。

5分が取れない時のショート版は?

60秒版:「事実1つ→良かった1つ→合言葉1つ」。これでも十分に効果があります。

兄弟・複数の子どもがいる場合の進め方

順番を固定し、タイマーで各5分。聞いている側は口を出さず、最後に「良い点だけ一言」をルール化すると平和です。

まとめ:5分術を習慣化するコツ

週1回の見直しで微調整を続ける

毎週末にミニログを3枚だけ見返し、「続ける一文」「捨てる一文」を決めます。増やさず、入れ替える。

小さな成功を可視化して動機づけを維持

「うまくいった印」をつけるだけでも効果大。シールや星マークでOK。見える場所に貼っておくと続きます。

仕組み化(合図・カード・合言葉)で定着

  • 合図:毎回同じ言葉で開始する
  • カード:良かった/直す/合言葉の3枚セット
  • 合言葉:if-thenを一文で。カバンに忍ばせる

反省会の伝え方で子どもが伸びる試合後5分術は、特別な才能や道具がなくても実行できます。大事なのは「短く、具体的に、行動へ」。次の試合から、合図ひとつで5分を始めてみてください。きっと、プレーの変化が目に見えて積み重なっていきます。

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