サッカーの試合で延長戦に突入すると、体力勝負の様相が一気に色濃くなります。「後半から脚が動かない」「最後まで全力で走り切れない」と悩んだ経験のある方も多いのではないでしょうか。本記事では、高校生以上のサッカー選手やお子さんがサッカーをがんばっている保護者の方へ向けて、「サッカー延長戦でスタミナを維持する効果的なコンディショニング方法」を徹底解説します。科学的な裏付けやプロ選手の実例も交えつつ、すぐに実践できるテクニックや日常の積み重ねまで、丁寧&カジュアルにお届けします。
目次
サッカー延長戦で求められるスタミナとは
90分と延長戦の体力消耗の違い
サッカーの公式戦は通常90分。しかし、勝敗がつかない場合は延長戦(多くは各15分×2、最大120分)に突入します。この延長30分、実は90分までとは比較にならないほど体力・集中力への負荷が高いフェーズです。90分は持ちこたえられても、延長に入ると急激に脚が動かなくなったり、判断力が鈍る選手が少なくありません。単純な時間の増加だけでなく、気温、筋肉の損耗、グリコーゲンの枯渇…あらゆる要因が蓄積される状態です。
サッカー特有の持久力と瞬発力
サッカーはただ走るだけのスポーツではありません。一定のペースでジョグしつつ、時にはダッシュ、細かな方向転換を瞬時に繰り返します。この「インターバル的」な動きが心肺機能と筋力に複合的な負荷をかけ、延長戦ではより顕著になります。つまり、マラソンのような単調な持久力、短距離のような爆発力だけでなく、両者を融合したスタミナ=「サッカー型持久力」が不可欠です。
延長戦でスタミナ不足が起こる主な原因
エネルギー枯渇のメカニズム
人間の筋肉はまず血糖や筋肉内のグリコーゲン(糖質の貯蔵エネルギー)を優先して使います。激しい運動を長時間続ければ、これらが消耗し切り、動けなくなる一因になります。さらに、エネルギー枯渇が進めば筋肉が分解され始め、回復・動作性能にも大きなダメージが生じてしまうのです。
筋肉の疲労蓄積とそのサイン
激しい試合の中で急なダッシュや切り返しが続けば、筋繊維や腱にも蓄積疲労が出ます。筋肉の張り、重さ、微妙な違和感が「疲労のサイン」なので、無理を続けるとパフォーマンス突然の低下や、けがのリスクも高まります。延長で動けない原因の多くは、体内の複合的な疲労蓄積によるものです。
試合前のコンディショニング:準備が9割を決める
試合前日からの過ごし方
延長戦を見越した体調管理は、試合の直前どころか前日から始まっています。緊張や興奮でつい夜更かししてしまいがちですが、リラックスした時間を意識的につくるのも重要です。激しいトレーニングや長風呂は控えめにし、体のリズムを「節約モード」にセットしておきましょう。
効果的な睡眠と休養
科学的にも「睡眠の質と量」はスタミナ維持の根幹です。成長ホルモンが多く分泌される22時〜2時にしっかり眠ること、なるべく就寝・起床時間を固定することが理想。スマホやカフェインの摂取は早めに切り上げ、睡眠環境を暗く・静かにしておくことをおすすめします。
ベストな食事タイミングと内容
試合前の「カーボローディング(炭水化物の意識的な補給)」は定番ですが、詰め込みすぎはNG。前日の夕食、当日の朝食〜昼食で、消化のよい炭水化物(ごはん、パン、パスタ等)をベースにビタミン、良質なたんぱく質をバランスよく取りましょう。脂っこい食事や糖分だけの補給はおすすめできません。
ウォームアップとリカバリーの重要性
ウォームアップの目的と実践ポイント
ウォームアップは体温を上げるだけでなく、筋肉や関節をケガから守り、神経系をプレー仕様に切り替える役割があります。軽いジョギング→ダイナミックストレッチ→スプリント系のアップを段階的に行うのが現代サッカーの主流です。特に延長戦のような高負荷の時間に備えて、アップで「少し汗をかく」くらいが目安です。
試合後のリカバリーで差がつく
試合直後は筋肉の回復が始まります。軽いジョグやストレッチ、プロ選手はアイスバス(冷水浴)やプロテイン補給を行う例も多いです。疲労物質をなるべく早く流すことで、次の試合や翌日の体調に明確な差が生まれます。
試合中にできるスタミナ維持テクニック
走り方・動き方の工夫
延長戦を見据えたプレーでは、「ここぞ」の瞬間に力を残すマネジメントが求められます。ボールを持っていないときは省エネ気味のジョグやウォーク、守備も一人で追い込まずチームで連動すること。90分以上走りきるための配分感覚は経験と意識の積み重ねが大切です。
プレー中の呼吸法
無意識に息を止めてしまうと、筋肉や脳が酸素不足に。こまめな深呼吸、意識して長く吐くことで余計な緊張を解きほぐし、疲労感を軽減します。トップ選手も、特に試合の合間やセットプレー時に「呼吸を整える時間」を取っています。
随時できるセルフモニタリング
「脚がつりそう」「変な張りがある」など、細かな違和感に気付くことは大事です。怪我予防やスタミナの配分に直結します。こまめにストレッチや小休憩を挟みつつ、身体の声に耳を傾けましょう。
栄養・水分補給のベストプラクティス
試合中に摂るべき栄養素
90分戦うだけでも汗と同時にミネラルや糖質が消耗します。バナナやエネルギージェル、スポーツドリンクは吸収が早く、素早いエネルギー供給に役立ちます。特に延長戦の前やハーフタイムなど、短時間でも摂取できるものを用意しておくと安心です。ただし胃腸への負担には注意し、食べ過ぎは控えてください。
給水のポイントとタイミング
試合中は喉が渇いたと感じる前からのこまめな給水が理想です。15〜20分ごとに一口ずつ水分・ミネラルを補給し、延長前には塩分やナトリウムもしっかりチャージ。炭酸飲料やカフェイン、高濃度のスポドリの摂りすぎはかえって逆効果な場合もあるので、適度な濃度を心がけましょう。
メンタル面がスタミナに与える影響
集中力と疲労感の関係
試合のピークが過ぎた後の“心のスタミナ切れ”は意外と見落としがちです。集中力が切れることで一気に疲れを感じやすくなり、脚も動かなくなってしまいます。プレー中、意識して「目の前の1プレー」に集中することで、漫然とした消耗を減らせます。
心の持ちようで変わる後半のパフォーマンス
「キツイ」と感じた瞬間に、ネガティブな思考に引っ張られることも多いもの…。声を出す、前向きな自己対話(セルフトーク)を用いる、仲間と励まし合うなど“メンタル燃料”を補給する工夫がスタミナにも効果的です。プロの現場でも当たり前のように意識されています。
日常から実践できる筋力・心肺機能の強化法
科学的におすすめのトレーニング法
サッカー特有のスタミナは、インターバル走やHIIT(高強度インターバルトレーニング)が効果的です。一定ペースのジョギング+短いダッシュを繰り返す練習や、短時間で心肺に負荷をかけるトレーニングを日常的に取り入れることで「サッカー体力」が養われます。
故障予防とスタミナの両立練習
筋トレや体幹トレーニングも、実はスタミナに直結します。体の連動性やバランスを高め、余計な筋肉の疲労を防ぎます。ジャンプ、片足スクワット、体幹プランクなど、器具なしでできるトレーニングをコツコツ続けるのが大事です。
プロ選手に学ぶ!スタミナ維持の工夫と実例
実際のプロのトレーニング例
現場で活躍するプロ選手たちは、個々の体質やポジションに合わせて、「集中力の切れる時間にさらに負荷を高める練習」「クールダウン時の回復走」などを意識的に取り入れています。また、シーズンを通じて疲労の“早期回復”を意識しながら、オンとオフのメリハリを大切にしている選手も多いです。
現場でよく使われるリカバリー法
最近では食事・睡眠はもちろん、アイスバスやフォームローラーなど最新のリカバリーグッズも活用されています。20分ほどアイシングをすることで筋肉の炎症反応を抑えたり、軽いストレッチをセットで行うことで翌日のスタミナ持ちに差が出る様子が現場でも報告されています。
保護者ができるサポートと子どものコンディショニング
家庭で実践できるサポート術
お子さんがサッカーを頑張っているご家庭では、「早めに眠れる環境作り」「バランスのとれた食事作り」「水分・間食の用意」など、基礎的なサポートが何より効果的です。「栄養バランスや睡眠」に日々気を配ることは、成長期の子どもにとっては最大のエネルギー源になります。
成長期の子どもの注意点
骨や筋肉が発達段階にある時期は、無理な練習や食事制限、サプリメント依存は絶対に避けましょう。睡眠不足も成長障害のリスクを高めます。何より「サッカーって楽しい!」と思える気持ちが大切なので、親子でコミュニケーションを取りながら生活のリズムを整えていきましょう。
よくある誤解とNG習慣
周囲で広まる誤った常識
「試合前はとにかく食べればOK」「水を飲むとバテる」「とにかく走り込みだけしておけばいい」など、今でも時折見かける誤解ですが、科学的には否定されています。食事や水分補給、練習内容は目的に応じて調整が必要です。
本当に避けたい悪習慣
睡眠不足、炭水化物やたんぱく質の極端な不足、適さないサプリメントの乱用、運動後のケア不足などは、長い目で見て大きな弊害となります。「頑張りすぎて寝る時間を削る」「筋肉痛を誤魔化し続ける」といった無理は避けましょう。
まとめ:長く走れる選手になるために
今日から始めるべきステップ
まずは「睡眠・食事・水分補給」「省エネプレーや意識的な呼吸法」といった、今すぐ見直せるポイントを一点でもいいので実践してみましょう。スタミナ強化は一日にしてならず、日々の積み重ねで差がついていきます。自分の体質や生活リズムに合わせて「今日からできそうな一つ」を選んで始めるのがコツです。
自分流コンディショニングの見つけ方
科学的な知見やプロ選手の例はとても参考になりますが、自分が一番調子のいいコンディショニング法を探す“試行錯誤”も大事な過程です。練習や試合の後に「今の体調はどうだったか」をメモしたり、色々な方法を小さく試しながら自分だけのスタイルを見つけてみてください。
サッカー延長戦で最後まで走り抜くためには、特別な選手だけが持っている才能や強靭な肉体が必要だとは限りません。日々の小さな積み重ねや普段の生活習慣、ちょっとした意識づけが「大事なときに動ける身体」をつくります。「今日は少し頑張れた」「自分なりに工夫してみた」。そんな実感が、試合での笑顔やガッツポーズにつながります。ぜひ、あなたやお子さん自身の“延長戦に強い選手”を目指して、楽しみながらコンディショニングに取り組んでみてください。