目次
サッカー試合前アップメニュー実戦版:約10分でキレとケガ予防を両立
はじめに
「試合前 アップ メニュー」を短時間でスマートにまとめたい。そんな人に向けた、約10分で“キレ”と“ケガ予防”を両立する実戦版です。ポイントは、体温と神経系を素早く上げつつ、サッカーに必要な可動と反応を最後にピークへ持っていくこと。道具はボールとマーカーがあれば十分、バンドはあれば尚良し。内容は高校生以上の選手、そして選手を支えるコーチ・保護者にも使いやすいよう、現場目線でまとめています。
10分で仕上げる試合前アップの全体像
目的:キレの最大化とケガ予防の両立
- キレ(反応速度・切り返し・1stステップ)を引き出す。
- ケガ予防(特に足首・膝・ハムストリング)のために、筋温上昇・可動域確保・着地/減速の再学習を行う。
- ボールタッチを最後に入れて、ウォームアップ効果をプレーへ転移させる。
科学的根拠の要点(体温・神経系・可動域・急性効果)
- 体温と筋温の上昇は筋の粘性を下げ、スピードと可動の効率が上がるとされる。
- ダイナミックストレッチは、試合前のジャンプやスプリントなどの急性パフォーマンス低下を招きにくい。
- 神経系の活性(反応・リズム・加速/減速の切替)は、短い高強度刺激で急性効果が出やすい。
- 静的ストレッチは長時間行うと一時的に出力が落ちることがあり、入れる場合は短く・適所で。
必要なスペース・人数・道具(ボール、マーカー、バンド任意)
- スペース:縦15〜25m×横5〜10m程度が理想。狭い場合は往復距離を短縮し本数を調整。
- 人数:1〜20名まで対応。多人数は列を2〜3本に分けてローテーション。
- 道具:ボール(1人1球が理想、最低でも2〜3球)、マーカー6〜10枚、ミニバンド(任意)。
サッカー試合前アップメニュー実戦版(合計約10分)
0:00–2:30 パルスレイズ:心拍と筋温を安全に上げる
- リズミカルスキップ 30秒×2(前進と後退)
- ラテラルシャッフル 20m×2(左右)
- カリオカ(クロスステップ) 20m×2
- 軽いジョグで回収しながら、呼吸は会話可能(RPE3〜4目安)。
2:30–5:00 ダイナミックモビリティ:股関節と足首の可動域確保
- ニーアップ&アンクルドライブ(膝抱え→つま先引き上げ) 10m×2
- レッグスイング(前後/左右) 各脚10回
- Tスパイン回旋(ハンズオンハムストリングで前屈→胸を左右に開く) 6回ずつ
- ワールドグレーテストストレッチ(ランジ+胸開き) 10m
- カーフ・ソールアクティブモビリティ(つま先・踵歩き) 各10m
5:00–7:30 アクティベーション:臀筋・ハム・腸腰筋の起動
- ヒップエアプレーン(片脚立ちで骨盤回旋) 各脚5回
- 片脚ヒップヒンジ(Tバランス) 各脚6回
- バンド有:モンスターワーク&サイドステップ 10m×各1
- バンド無:クラムシェル代替(ニーリフト+外旋) 各脚8回
- ドリブルジョグ(ゆるめ) 20m×2で神経へ橋渡し。
7:30–9:00 加速・減速スプリント:怪我予防も考えた切り替え
- 10m加速→5m減速×2(前足部で静かに止まる)
- 5m加速→90°カット→5m再加速×2(左右)
- 接地はやや前足部寄り・上体はわずかに前傾・膝はつま先と同じ向き。
9:00–10:00 反応+ボールタッチ:神経系ピークと実戦転移
- カラーコールor視覚合図で方向決定→1stタッチで前へ運ぶ→5〜7m加速×3本
- 足裏ストップ→方向転換→アウトサイドで抜けるなど、試合で多いタッチを選択。
- 終わりに深呼吸1回、集中を試合モードへ切り替え。
各パートの詳細:動作のコツと代表的なミス
パルスレイズ3選:リズミカルスキップ/ラテラルシャッフル/カリオカ
コツ
- スキップは腕振りと足のリズム一致。地面に“静かに速く”触れる。
- シャッフルはつま先正面、腰の高さ一定、膝とつま先の向きを揃える。
- カリオカは腰から回すのではなく、股関節のローテーションでスムーズに。
よくあるミス
- 接地がドスンと重い(筋温が上がりにくい・関節に負担)。
- 上体が反り過ぎ(腹圧が抜けて切り返しが遅くなる)。
ダイナミックストレッチ5選:Tスパイン回旋・ニーアップ・レッグスイング等
コツ
- 反動で無理に可動を出さず、呼吸を合わせて“動きながら伸ばす”。
- 足首はつま先上げ→下げを繰り返して可動と血流を促進。
よくあるミス
- 止まって長く伸ばす静的ストレッチをここでやり過ぎる。
- 胸椎回旋で腰を捻る(回すのは胸、腰は安定)。
グルート活性3選:ヒップエアプレーン/クラムシェル代替/バンド無しの工夫
コツ
- 土踏まずをつぶし過ぎず、母趾球・小趾球・踵の三点で立つ。
- お尻にスイッチが入ると、膝が内に入るのを防ぎやすい。
よくあるミス
- 腰を反って代償する(お腹は軽く締める)。
- 速く雑にこなす(回数より質)。
直線スプリントと減速テク:ストライド管理と前足部接地
コツ
- 前半3歩は短く速く、徐々にストライドを伸ばす。
- 減速は低い重心で小刻み接地、踵からドンと止まらない。
よくあるミス
- 視線が下がりすぎて上体が折れる。
- 減速で膝が内に入る(つま先と膝の向きを一致)。
反応ドリル+ボールタッチ:カラーコール・視覚合図・1stタッチ方向づけ
コツ
- 合図→最短で体を向ける→1stタッチで進行方向に置く。
- アウトサイド/インサイド/足裏の3種を短時間で回す。
よくあるミス
- 合図を“見てから”止まる(止まらず向きを作りながら触れる)。
- 強すぎるタッチでボールが足から離れすぎる。
ポジション別微調整(FW/MF/DF/GK)
FW:ファーストステップと肩周りのフリー化
- 追加30秒:肩甲骨の前後スライド+腕振りドリル。
- 反転→縦抜けの5m×2本で“抜け出しの第一歩”を強調。
MF:方向転換・半身姿勢と視野の同期
- 半身の受け→ワンタッチ方向づけ→5m加速×3。
- 左右スキャン(首振り)を合図前に2回入れるルールで視野を温める。
DF:バックペダル→ヒップターン→加速の連結
- バックペダル5m→ヒップターン→5m加速×2(左右)。
- 最後の減速で距離と身体接触を想定、姿勢を崩さず止まる。
GK:落下予測・クロスステップ・着地の安定化
- カラーコールで左右クロスステップ→キャッチ体勢→軽いジャンプ着地×4。
- 両足同時着地で膝とつま先を揃える。片足着地も各2回で神経を立ち上げ。
人数・環境・時間に応じたアレンジ
少人数・狭小スペース用:タッチライン沿いの省スペース設計
- 10〜15mの直線一本で往復。各種目の本数を増減して時間を合わせる。
- 反応ドリルはマーカー3色を足元に置き、コールで選択→ワンタッチ前進。
雨天・低温時:順番の入れ替えと時間配分の変更
- パルスレイズをやや長め(+30〜60秒)。静的ストレッチは避け、動的のみ。
- 最後の反応+ボールタッチを屋根下で簡略化し、キックオフ直前に再度20〜30秒の加速を追加。
道具が少ない現場で使えるコール用キュー語例
- 色:赤/青/黄→右/左/前に対応。
- 数字:1=前、2=右、3=左、4=後。
- 言葉:ターン/スルー/キープ/縦→動作の意図を合わせる。
よくある失敗とチェックリスト
静的ストレッチの適切な入れどころと避けたい場面
- 避ける:試合直前に長時間(30秒以上/部位)の静的保持。
- 入れるなら:硬さが強い部位に10〜15秒×1〜2回、動的への橋渡しとして。
オーバーウォームアップ防止:主観的運動強度と心拍の目安
- RPE(10段階)で6〜7を超えない。会話は短文で可能、息切れは最小限。
- 汗ばむが、足が重くなる感覚が出たら強度を1段下げる。
最後の30秒で“キレ”を引き出すスイッチ動作
- 5m加速→減速→方向転換→1stタッチで前へ、を連続で2本。
- 声出し+視線の前方固定で集中を試合モードに切り替える。
体力・状態別の強度調整
初心者・復帰組向け:RPEとレスト管理
- RPE5〜6を上限、スプリントは距離を7mに短縮。
- 各セット間に15〜20秒の呼吸整えを入れる。
ハイレベル選手向け:短時間高強度の微量追加
- 9:00以降に反応→3歩全力→ストップを3本追加(合計+20秒程度)。
- 出力は上げるが本数は増やしすぎない(合計10分±1分)。
連戦時:全体量を保ちつつ強度ピークを短くする方法
- 各パートの回数は維持、最高速度の時間を短く。加速は7mまで。
- 減速の質を重視(着地の静かさと姿勢)。
試合日当日の流れと時間管理
到着〜アップ開始:補食・水分・装備チェック
- 到着後すぐに軽い補食(消化の良い炭水化物中心)と水分を適量。
- スパイク/トレシュー、すね当て、テーピングの確認。違和感があれば早めに調整。
キックオフから逆算した15分の計画作り
- キックオフ-15分:集合→説明→0:00スタート。
- キックオフ-5分:アップ終了→戦術確認→気持ちの準備。
ベンチスタート時:再ウォームアップと交代直前ルーティン
- 前半/後半の中盤に30〜60秒の軽いスキップとモビリティ。
- 交代2〜3分前:5m加速×2、反応タッチ×2で神経を再点火。
ケガ歴がある選手への配慮ポイント
足首・膝の既往:プライオメトリクスの漸増と着地戦略
- ジャンプ系は最小限、まずは二重接地の静かな着地練習から。
- 方向転換は角度を45°から始めて、痛みがなければ90°へ。
ハムストリング既往:加速ドリルの距離・角度・レスト設計
- 全力走を避け、7〜10mの加速で止める。本数少なめ・レスト長め(30秒)。
- ヒップヒンジ動作の質を優先し、骨盤の前傾/後傾をコントロール。
腰痛既往:ヒンジ動作の確認と代替メニュー
- 片脚ヒンジが難しければ、両脚ヒップヒンジ→前傾少なめのシャッフルに置換。
- 反り腰にならないよう、肋骨を軽く下げて腹圧を保つ。
コーチ・保護者のための運用ガイド
安全管理と観察ポイント:疲労サインの早期発見
- 顔色・呼吸の乱れ・フォームの崩れ(膝内倒れ、上体の過度の反り)をチェック。
- 「痛い」発言が出たら即中断し、低強度に切り替える。
集団統率のコツ:合図・隊列・ローテーション
- 列は2〜3本、先頭がマーカーを回収して最後尾へ移動する循環方式。
- 合図は短く明確に:「準備」「3・2・1」「ゴー」。
声かけで変わる動作品質:簡潔なCueワード集
- 接地:「静かに速く」
- 方向転換:「低く・短く・前へ」
- ボールタッチ:「触って運ぶ」
- 視野:「見る→動く」
実戦で使える短縮・拡張版テンプレート
5分短縮版:遅刻・時間圧迫時のコア要素
- パルスレイズ 90秒(スキップ/シャッフル)
- ダイナミックモビリティ 90秒(ニーアップ、レッグスイング)
- 加速→減速 60秒(7m×2)
- 反応+ボールタッチ 60秒(2本)
10分標準版:本記事メニューの要約
- 0:00–2:30 パルスレイズ
- 2:30–5:00 ダイナミックモビリティ
- 5:00–7:30 アクティベーション
- 7:30–9:00 加速・減速スプリント
- 9:00–10:00 反応+ボールタッチ
15分拡張版:公式戦前の入念仕上げ
- 各パートに+30〜60秒、最後に反応ドリルを2セット追加。
- GKはキャッチ→配球(転がし)まで入れて連動性を高める。
Q&A:よくある質問
スパイクかトレシューでメニューは変えるべき?
基本は同じでOK。ただし人工芝や硬い土では、減速時に滑りやすいスパイクもあるため、止まる系のドリルで接地をより“静かに”意識。トレシューなら加速は短く、本数を増やさない。
静的ストレッチは完全に不要か?
完全にNGではありません。硬さが強い部位には短時間(10〜15秒)で入れても良いですが、長時間の保持は直前の出力に影響する可能性があるため、試合後や別時間に回すのが無難です。
試合間が空く時の再活性化メニュー
- スキップ30秒→レッグスイング各脚10回→5m加速×2→反応タッチ×2(計2〜3分)。
- 水分・補食を少量取りつつ、直前にもう一度5m加速でスイッチ。
まとめ:10分で“試合脳と身体”を点火する
キレとケガ予防を両立する原則の再確認
- 体温を上げる→動的に可動を広げる→お尻と体幹を起動→加速/減速で関節を整える→反応+ボールでピーク。
- 量より質。接地の静かさ、姿勢、1stタッチの方向づけを丁寧に。
次にやること:今日から導入できるチェックシート
- タイマー設定(10分)とマーカー配置を事前に決める。
- 合図ワードを2〜3個だけに絞る(例:「準備」「ゴー」「ターン」)。
- 終了直後に「重さ/息/集中」の自己評価(○/△/×)をつけ、次回の強度調整に活かす。
