試合の勝敗は、練習量やフィジカルだけで決まるわけではありません。伸びる選手・勝ち続けるチームは、試合動画の「分析・見方」に筋の通ったルーティンを持っています。この記事では、動画をただ観る時間を「勝利の準備」に変える具体的な方法を、誰でも実践できる形でまとめました。スマホ撮影から無料ツール、簡易KPIまで、現場で使える手順に落とし込んでいきます。
目次
- この記事の狙いと動画分析の価値
- 観る前の準備:目的・仮説・必要素材
- 基本の見方フレーム:5つの視点で試合を分解
- 役割別の分析法:チーム全体と個人
- フェーズ別チェックリスト:攻撃/守備/トランジション/セットプレー
- 相手チームの分析:勝点に直結する絞り込み術
- 15分・30分・90分:時間別の効率的な見方
- タグ付けとメモ術:再現性を高める記録方法
- 数字と映像をつなぐ:簡易KPIとベンチマーク
- よくある落とし穴とバイアス対策
- 分析を練習に落とし込む:ドリル設計と反復計画
- 試合週のルーティン:72時間前から試合後24時間まで
- ツールと撮影のコツ:スマホから始める実践環境
- 親のサポートとチーム共有:伝え方・見せ方
- 事例シナリオ:1試合から課題仮説→練習→次戦改善
- 著作権・撮影マナーと安全への配慮
- 明日から使えるテンプレートとチェックリスト
- まとめ
この記事の狙いと動画分析の価値
なぜ「試合動画 分析 見方」が差を生むのか
動画分析は、試合中に流れてしまう情報を止めて、繰り返し、角度を変えて見直せる点に価値があります。選手本人は「やったつもり」でも、映像では「できていない」が明確に映ります。このギャップを埋めていくプロセスこそが伸びしろです。さらに、映像はチーム内で共通言語を作ります。曖昧な表現(もっと早く、強く、広く)を、具体化(3秒以内に寄せる、縦パス15m、幅はタッチラインから5m以内など)できるため、練習の質が揃います。
現場で機能する分析とは何か
「気づき」が練習メニューに落ちること、そして次の試合で再現されること。これが分析の基準です。専門用語や高度なソフトではなく、チームがすぐ動ける単純な言い回しとチェックリストに落とすことが重要。映像→タグ→要点1枚→練習案→確認試合という一本道を作りましょう。
勝利準備の定義と範囲
勝利準備とは、次の試合で勝点を高めるために、相手・自分たち・環境に対して前もって整える一連の行動です。範囲は、相手分析、自己評価、練習設計、セットプレー更新、役割の明確化、当日の確認資料まで含みます。
観る前の準備:目的・仮説・必要素材
目的設定:チーム/個人/相手のどれを優先するか
毎回全部をやろうとすると崩れます。優先順位を決めましょう。
- チーム優先の回:守備ブロックやビルドアップの整合性を確認
- 個人優先の回:ポジションごとの基本動作と判断の質
- 相手優先の回:狙い・弱点・セットプレーの癖
仮説の立て方:最近の失点・得点パターンから始める
直近3試合で繰り返し起きた現象に「仮説」を置きます。例:前向きで受けられてからの被カウンターが多い→中盤の距離感と奪われ方に問題があるのでは? まず仮説を置くと、映像で探すべき場面が明確になります。
必要素材の用意:試合映像・スタッツ・フォーメーション情報
- フルマッチ映像(可能ならハイライトも)
- 簡単なスタッツ(シュート数、枠内、CK、FK、PPDAなど)
- 先発/交代、フォーメーション推移、相手の要注意選手
観戦環境の整備:画角・音量・再生速度・メモ体制
- 画角:全体が見える角度を優先。PC画面推奨、スマホは拡大しすぎに注意
- 再生速度:0.75倍で判断の流れを追い、0.5倍で個人技術を確認
- メモ:タイムスタンプと短文をセットで。タグ(例:BU=ビルドアップ)を決める
基本の見方フレーム:5つの視点で試合を分解
ボール・相手・味方・スペース・時間の五角評価
各局面で次の5要素を瞬時に評価できるかを観ます。
- ボール:置き所、運び方、パス/ドリブルの選択
- 相手:数、距離、体の向き、奪いどころ
- 味方:サポート角度、距離、縦横の関係
- スペース:背後、ライン間、サイドの空き
- 時間:次のプレスまでの猶予、トランジションの制限時間
認知→判断→実行の連鎖を切り分ける
プレーの良し悪しを「技術」で片付けない。失敗は3段階に切ると改善点が見えます。
- 認知:見えていなかった(首振り不足、視野が狭い)
- 判断:選択ミス(通すべきか、運ぶべきか)
- 実行:技術の精度(体の向き、インパクト、速度)
原則と例外:仮のゲームモデルを置いて観る
「幅を取る」「三角形を作る」「5秒で奪回を試みる」など、仮の原則を置いて映像をなぞると、ズレが見えます。例外(相手配置やスコア状況)もメモし、例外が増えるほど次の練習で扱う価値が高いと考えます。
役割別の分析法:チーム全体と個人
チーム全体:ライン間距離・重心・ブロックの高さ
- ライン間距離:最終ラインと中盤、前線の間隔はコンパクトか
- 重心:ボール保持時に前向きの人数は足りているか
- ブロックの高さ:相手のビルドアップに対して段差はできているか
ポジション別:SB/CB/CH/SH/CFの着眼点
- SB:幅と高さの取り分け、内外のサポート角度、背後ケア
- CB:ラインコントロール、縦パスの差し込み、カバーリング
- CH(ボランチ):前向き受け、体の向き、スイッチの精度
- SH:ハーフスペースの使い方、内外の走り分け、守備での戻り速度
- CF:落ちる/裏抜けの使い分け、基準点の作り方、ファーストディフェンス
個人スキル:初速・方向転換・ファーストタッチの質
トップスピードよりも「最初の2歩」と「向きを変える1歩」を映像で確認。ファーストタッチは「前を向ける角度」で評価します。
GK視点:開始位置・コマンドと組織化
- 開始位置:ボール位置とラインとの距離感
- コマンド:守備時の合図が味方に届いているか
- 組織化:CK/FKの配置、セカンドの拾い方の指示
フェーズ別チェックリスト:攻撃/守備/トランジション/セットプレー
攻撃:ビルドアップ/崩し/フィニッシュのつながり
- ビルドアップ:数的優位の作り方、第三の動きの有無
- 崩し:幅と深さ、逆サイドの関与、ライン間の活用
- フィニッシュ:ペナルティエリア進入の人数とタイミング
守備:プレス開始トリガー/ブロック/奪回の整合性
- トリガー:弱い足、背パス、浮いたトラップなどでスイッチ
- ブロック:縦スイッチを消せているか、内外の誘導
- 奪回:2人目3人目の寄せ、奪ったあとの前進の準備
トランジション:5秒ルールとリセットの質
- ネガトラ:奪われた瞬間の最短距離プレス、縦を切る
- ポジトラ:ファーストパスの方向、1st・2ndランの連動
- リセット:無理せず保持/外へ逃がす判断ができているか
セットプレー:初期配置・役割・セカンド回収
- 攻撃:ニア/ファー/中央の役割、スクリーンの使い方
- 守備:マンマーク/ゾーンの住み分け、GKの可動域確保
- セカンド:落下予測ポジションに人がいるか
相手チームの分析:勝点に直結する絞り込み術
フォーメーションの可変と狙いの推測
相手のビルドアップ時と守備時で配置がどう変わるかを確認。SBの内側化、CHの最終ライン落ちなど、可変の理由(数的優位、ライン間封鎖)を推測します。
左右の偏り・キーマン特定・配球傾向
- 左右偏り:攻撃の起点がどちらか、サイドチェンジの頻度
- キーマン:ボールタッチ数、前進の起点、プレースキッカー
- 配球傾向:ロング/ショート比、背後狙いの回数
セットプレーの癖とサイン
助走の長さ、手の合図、立ち位置で傾向を掴む。ニアでそらすのか、ファーで合わせるのか、リバウンドゾーンの回収者は誰かを記録します。
弱点仮説からゲームプランへ
「左SBの背後にスペース」「CHが前に出た背中が空く」など弱点仮説を立て、具体策(裏抜けの本数を前半で増やす、逆サイドへの速い展開)に変換します。
15分・30分・90分:時間別の効率的な見方
15分版:スコアに直結する極端値だけ拾う
- 被カウンターの回数/失点起点
- 自陣/敵陣での被奪取の位置
- セットプレーの危険度
30分版:重要局面をタグ化して再現性を確認
- 「BU成功/失敗」「ネガトラ成功/失敗」「CK攻守」などタグで抽出
- 同じミスが3回以上あれば、練習テーマに昇格
90分版:試合の流れと疲労の波を時系列で追う
前後半の入り/終わり、交代後の変化、プレス強度の落ちる時間帯を時系列で可視化。走力が落ちる時間帯のリスク管理と交代プランに繋げます。
タグ付けとメモ術:再現性を高める記録方法
無料ツール/表計算でのタグ設計の基準
- フェーズ別(攻撃/守備/トランジション/セットプレー)
- 結果(成功/失敗/危険/得点)
- 位置(自陣/中盤/敵陣/左右/中央)
タイムスタンプとショートカット運用
「12:34 BU失敗 右 SB→CHパスカット」のように、時刻→タグ→短い説明で統一。再生/一時停止のショートカットを使い、停止時間を短縮します。
1枚サマリー(要点化)の作り方
- 良かった3つ、改善3つ、次戦の重点3つに絞る
- 画像なしでも伝わる短文を心がける(動詞で書く)
チェックリストのテンプレ化と共有フロー
毎回同じ型で作ると比較が容易。Googleドライブ等で共有し、更新履歴を残します。
数字と映像をつなぐ:簡易KPIとベンチマーク
最低限のKPI例:PPDA・最終3分の進入回数・被カウンター数
- PPDA(相手のパス本数に対する自チームの守備アクション):プレス強度の目安
- 最終3分(ファイナルサード)進入回数:攻撃の到達度
- 被カウンター数と被シュートに繋がった割合:リスク管理の指標
ポジショナル指標:ライン間受け・背後抜けの頻度
「ライン間で前向きに受けた回数」「背後へのランに出した回数/通った回数」を数えると、攻撃の形が見えてきます。
個人KPI:デュエル・スプリント・前向き受け回数
- デュエル勝率(地上/空中)
- スプリント回数(前後半別)
- 前向きに受けた回数(奪われにくい角度のタッチ)
ベンチマーク動画の選び方と差分学習
自チームのスタイルに近い上位カテゴリーの試合を1つ決め、同じKPIで比較。差分が練習テーマになります。
よくある落とし穴とバイアス対策
ハイライト偏重の罠を避ける
得点シーンだけでは本質が見えません。非イベント(戻り速度、絞り、首振り)にこそ差が出ます。
結果論バイアス・アンカリングの自覚
失点後の直前プレーだけを責めない。起点は数秒〜数十秒前にあることが多い。最初に決めた印象に引きずられないよう、逆の仮説も置きましょう。
サンプル不足と信頼性の考え方
1試合で断定しない。3試合で傾向化、5試合で強めの仮説、以降で検証を回すイメージです。
反証法:逆仮説で観直す手順
「原因はAだ」の逆、「Aではない」を探す2周目を必ず入れると、精度が上がります。
分析を練習に落とし込む:ドリル設計と反復計画
課題→目標→ドリルの連結図を作る
- 課題:ネガトラの遅さ
- 目標:奪われて5秒以内に縦を切るカバーを作る
- ドリル:狭いエリア4対4+2フリーマン、失った側は5秒限定の奪回チャレンジ
代表的ドリル例:3対2+サポート/制限付きポゼッション
- 3対2+サポート:数的優位下での前進とラストパスの質を磨く
- 制限付きポゼッション:1タッチ/2タッチ制限で認知と判断を速くする
セットプレーブックの更新手順
- 映像で成功/未遂の型を抜き出し、3パターンに絞る
- 担当者と役割を固定、週1でリハーサル
個人課題の家庭練習メニュー化
- 初速:10m加速×数本、スタート姿勢を固定
- 方向転換:コーンドリルで左右非対称の反復
- ファーストタッチ:壁当てで角度指定(45度/90度)
試合週のルーティン:72時間前から試合後24時間まで
72〜48時間前:相手分析とゲームプラン共有
- 相手の狙いと弱点仮説を要点1枚で共有
- 自チームの重点ポイントを3つに絞る
48〜24時間前:セットプレーとリハーサル
攻守のセットプレー、キックの質、走り出しのタイミングを短時間で確認。疲労を増やさない範囲で。
前日〜当日:確認用1枚資料と役割明確化
当日は新情報を入れない。やることを減らして、合図・言葉・位置を再確認。
試合後24時間:振り返りと次アクション立案
感情が強い状態で結論を出さない。翌日に要点3つを確定し、練習案へ。
ツールと撮影のコツ:スマホから始める実践環境
スマホ撮影のコツ:高さ・斜め・全体俯瞰の両立
- 高さ:できれば3〜5mの高所(スタンドや高台)
- 斜め:真横だけでなく、45度の角度から全体を見るとライン間が見やすい
- パンしすぎない:ボール追いすぎはNG、チームの距離感を優先
音声・風切り・明暗の対策
- 風対策:ウインドスクリーンや簡易カバー
- 露出:逆光を避け、明るさを固定
分析アプリと代替手段の比較観点
- 必須機能:タイムスタンプ、タグ付け、共有のしやすさ
- 代替:表計算+動画リンクでも十分運用可能
データ保管・共有と命名規則
- 例:YYYYMMDD_対戦相手_カテゴリー_結果(2-1)
- タグ表、要点1枚、映像リンクを同フォルダにまとめる
親のサポートとチーム共有:伝え方・見せ方
観るポイントの絞り込みと合意形成
親と選手で「今日はネガトラだけ」「今日はファーストタッチだけ」とテーマを1つに。話が散らばるのを防ぎます。
否定しないフィードバックの言語化
- 事実→意図→次回の行動で伝える(例:「12分の場面、背中が空いてた。次はサイン出して受けに行こう」)
コーチ/選手への共有フォーマット例
- 1枚サマリー+3つの動画クリップ(各30秒以内)
- 練習に直結する短文で提出(指示はシンプルに)
学業・仕事と両立する時間割の作り方
- 平日30分:タグ付けだけ
- 週末60分:要点化と共有
事例シナリオ:1試合から課題仮説→練習→次戦改善
失点が続くチームの改善例
- 仮説:中盤の縦パスに対する寄せが遅い
- 映像:ライン間で前向きに受けられた回数が多い
- 練習:5秒ネガトラ+縦切り、CHの体の向き修正
- 次戦:PPDA改善、被シュート数減少
得点が伸びないCFの改善例
- 仮説:落ちる/裏抜けの使い分けが曖昧
- 映像:同じ動きが重複し、ライン間が埋まる
- 練習:3対2+サポートで「引き出し→裏」の連続動作を反復
- 次戦:背後抜けの回数増、決定機が倍増
セットプレー強化で勝点を積む例
- 仮説:ニアでの競り負けが多い
- 映像:助走の角度とスクリーン不足
- 練習:ニア集中パターン、ブロッカーの立ち位置固定
- 次戦:CKからの決定機創出、失点ゼロ
次戦へのアジャスト手順と評価
- 評価:KPI(進入回数、被カウンター数、セットプレー期待値)で確認
- アジャスト:改善が弱い箇所だけを次週のテーマに据える
著作権・撮影マナーと安全への配慮
公開/非公開の線引きと同意の取得
練習や試合の映像は、チーム内共有を基本にし、第三者に公開する場合は関係者の同意を確認します。未成年が映る場合は取り扱いに特に注意しましょう。
施設・対戦相手への事前確認
会場の撮影ルール、対戦相手の方針を必ず確認。禁止エリア、三脚の使用可否などを守ります。
個人情報・顔の取り扱い指針
氏名や背番号の扱い、SNSでの公開範囲をチームで取り決めるとトラブルを防げます。
ドローン使用時の法令・安全面の注意
ドローン撮影は、場所や高度によって法令やルールが適用される場合があります。周囲の安全確保、許可の確認、視認可能な範囲での運用など、各種ルールに従ってください。
明日から使えるテンプレートとチェックリスト
分析タグの標準リスト
- 攻撃:BU(ビルドアップ)/崩し/FIN(フィニッシュ)/TR+(ポジトラ)
- 守備:PR(プレス)/BLK(ブロック)/TR-(ネガトラ)
- SP:CK攻/CK守/FK攻/FK守/ロングスロー
- 結果:成功/失敗/危険/得点/失点
フェーズ別チェック表
- 攻撃:幅・深さ・第三の動き・ライン間活用
- 守備:トリガー・寄せの角度・カバー・スライド
- TR+:ファーストパス・サポートの速さ・前進の質
- TR-:縦切り・最短プレス・5秒ルール
- SP:初期配置・役割・セカンド回収
1枚サマリーの雛形
- 良かった:3つ
- 改善:3つ
- 次戦重点:3つ(相手の弱点仮説に紐付け)
- 練習案:2つ(時間・人数・制限を明記)
週次ルーティン表と運用ルール
- 月:映像取り込み・タグ付け(30分)
- 火:1枚サマリー作成(20分)
- 水:チーム共有とドリル調整(20分)
- 木/金:リハーサル(短時間)
- 土/日:試合→翌日リビュー(30分)
まとめ
「試合動画 分析 見方」を身につける最大のコツは、観るたびに同じフレームで評価し、数字と言葉で要点化し、練習に接続することです。特別な機材や難しいソフトがなくても、スマホ映像と表計算、シンプルなタグとKPIで十分機能します。小さな改善が積み上がると、次の90分に確実に反映されます。まずは1試合、タグ10個、要点3つから。勝利の準備は、今日の15分から始まります。
