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練習は週何回が目安?年代別・競技レベル別指針

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「練習は週何回が目安?」――正解は一つではありません。年齢、競技レベル、シーズン、ポジション、そして学校や仕事・家庭との両立状況で最適解は変わります。この記事では、年代別・競技レベル別の“現実的で続けられる”指針を示しつつ、週回数だけでなく内容配分、回復、ケガ予防、記録方法までをまとめて解説します。なお、ここでの「回」は基本的にサッカーのフィールド練習を指し、試合や筋トレの換算は後半で説明します。

導入:なぜ「週何回」が重要か

オーバートレーニングとアンダートレーニングのリスク

練習回数が多すぎると、疲労が抜けずパフォーマンスが落ちる、故障リスクが上がる、メンタルの消耗が進むといった問題が起きやすくなります。逆に少なすぎると、技術の定着・試合運動量の不足、対人の勘の鈍りなど、試合で勝つために必要な力が伸びません。最適な回数は「成長に必要な刺激」と「回復」のバランスで決まります。

疲労・回復・超回復の基本概念

トレーニングは身体に小さな“壊す”刺激を与え、休養で“直す”過程で強くなる仕組みです。刺激→疲労→回復→元より少し強くなる(超回復)という流れを回すためには、適切な頻度と強度の波が必要です。連日ハードに詰め込むと回復が間に合わず、逆に間隔が空きすぎると刺激が弱くなります。

学業・仕事・家庭との両立と持続可能性

どれだけ優れた計画でも、生活にフィットしなければ続きません。最適な週回数は「頑張れば一時的に可能」ではなく「6〜12週間以上、無理なく継続できる」ラインで設定しましょう。継続は最大の近道です。

まず押さえるべき前提条件

年代と性成熟度(PHV)による耐性の差

PHV(身長増加が最も速い時期:ピークハイトベロシティ)前後は、骨や腱が敏感で故障が起きやすい時期です。中学〜高校初期に多く見られ、無理な負荷増は避けるべきです。同じ年齢でも成熟の進み方は個人差が大きい点を忘れずに。

競技レベル(レクリエーション〜エリート)の違い

同じ「週3回」でも、内容の濃さが違えば負荷は大きく変わります。レクリエーションでは対人や高強度が少ないことが多く、エリートではゲーム形式やスプリントが多く入るのが一般的です。回数は“質”とセットで考えましょう。

ポジション特性(GK/DF/MF/FW)と負荷の質

  • GK:ジャンプ・着地・ダイブなどの衝撃と反復スプリントは少なめ。肩・腰・股関節のケアが重要。
  • DF:方向転換や対人の接触多め。短い加減速の反復が負荷に。
  • MF:総走行距離が伸びやすい。中強度の持久+状況判断の連続。
  • FW:高強度スプリントが勝負。爆発的動作の負荷が大きい。

回数は同じでも、ポジションで「翌日の疲労の質」が違います。翌日メニューを調整しましょう。

シーズン期分け(プレシーズン/インシーズン/オフ)

  • プレシーズン:頻度や量を徐々に増やしてベース作り。
  • インシーズン:質を優先、試合から逆算して波を作る。
  • オフ:心身をリフレッシュしつつ、軽い活動で土台を維持。

年代別:週あたり練習頻度の目安

小学生(U-12):遊びと多様性を優先

  • 目安:週2〜3回のフィールド練習+自由な外遊びや多スポーツ。
  • ポイント:運動神経を育てる時期。コーディネーションとボールタッチを楽しく反復。1日は完全休養日を。
  • 試合のある週:練習1回分としてカウントし、前後は軽めに。

中学生(U-15):成長期の負荷管理とフォーム習得

  • 目安:週3〜4回のフィールド練習+補助的な筋トレや体幹を週1〜2回(短時間)。
  • ポイント:PHV前後は負荷の急増を避け、動きの質とフォーム習得を最優先。痛みが出やすい部位(膝・踵・腰)を観察。
  • 試合のある週:試合を練習1〜2回相当とみなし、練習回数を1回減らすか強度を落とす。

高校生(U-18):質と回復の最適化

  • 目安:週4〜6回のフィールド練習。うち1〜2回は強度高め、1〜2回は技術中心の軽〜中強度。S&C(筋力・スプリント・敏捷)を週1〜2回。
  • ポイント:強度の波を意識し、睡眠と食事をセットで管理。試合前日は軽く、試合翌日は回復重視。

大学生・社会人(18歳以上):自律的マネジメント

  • 健康維持〜一般競技:週2〜4回のフィールド練習+S&C週1回。
  • 競技志向:週4〜6回(試合含む)。チーム練に加え個人で弱点補強。
  • ポイント:仕事・学業の忙しさに合わせてハードデーを固定し、他日は調整。疲労の見える化が鍵。

マスターズ(30歳以上):維持・ケガ予防重視

  • 目安:週2〜4回のフィールド練習。S&Cやモビリティを短時間で週1〜2回。
  • ポイント:ウォームアップを長めに、ハムストリング・ふくらはぎ・股関節のケアを習慣化。翌日に張りが残ったら即調整。

競技レベル別:週あたり練習頻度の目安

初心者・健康志向:基礎づくりと安全第一

  • 目安:週1〜2回のフィールド練習+軽い補強を週1回(自重でOK)。
  • 内容:基礎技術(パス・トラップ・ドリブル)と体力のベース作り。翌日に強い筋肉痛があれば次回は半分の量で。

部活動・クラブでレギュラーを狙う選手

  • 目安:週3〜5回のフィールド練習+S&C週1〜2回。試合週は全体負荷が上限。
  • 内容:ゲーム強度の対人、ポジション別トレーニング、セットプレー、機能的な筋力アップ。

トップレベルを目指す選手(エリート育成)

  • 目安:週6〜8セッション(フィールド+S&C+リカバリーを合算)。二部練の週は回復も“1セッション”として扱う。
  • 内容:試合強度を上回るセッションを週1〜2回、残りは技術・戦術の精度と回復最適化。睡眠・栄養の徹底管理は必須。

週回数だけでなく「内容配分」を最適化する

技術・戦術・フィジカル・メンタルの比率設計

  • U-12:技術50%・運動遊び/コーディネーション30%・簡単な戦術15%・メンタル/マナー5%
  • U-15:技術40%・戦術30%・フィジカル25%・メンタル5%
  • U-18以上:戦術35%・技術35%・フィジカル25%・メンタル5%(試合週は戦術比率増)

ハードデーとイージーデーの波(マイクロサイクル)

強度の高い日(対人・スプリント多め)→中強度(技術+戦術)→回復 or 休みの順で回すのが基本。連続ハードは2日までに留め、週に最低1日の完全休養を確保しましょう。

チーム練と個人練のベストミックス

  • チーム練:対人・戦術理解・ゲーム強度の再現。
  • 個人練:弱点補強(片足キック、ファーストタッチ、スプリント姿勢など)。

チーム練後の“10〜15分の補強”は負荷効率が高い反面、やりすぎ注意。翌日の質が落ちるなら削る勇気を。

自主練テンプレ(30分/60分/90分)

  • 30分:ウォームアップ5→ボールタッチ8→片足パス&トラップ8→ショートスプリント4→クールダウン5
  • 60分:ウォームアップ10→技術ドリル15→対人代替のシャドー(判断トレ)10→スプリント&アジリティ15→体幹/ヒップヒンジ5→クールダウン5
  • 90分:ウォームアップ15→技術20→戦術的反復(ポジショニング/ビルドアップ)20→ゲーム強度走(HIIT)20→補強10→クールダウン5

インシーズン:サンプル週間プラン

週2回モデル(社会人・初心者向け)

  • 火:技術中心+軽い対人(中強度)
  • 土:ゲーム形式(高強度)
  • 補足:金に15分の可動域・体幹。日曜は完全休養。

週3回モデル(学生一般)

  • 月:回復+技術(軽)
  • 水:戦術+対人(中〜高)
  • 金:セットプレー+調整(軽〜中)
  • 土or日:試合(高)→翌日は回復セッション

週4〜5回モデル(強豪校・クラブ)

  • 月:回復/分析(軽)
  • 火:対人+スプリント(高)
  • 水:戦術ゲーム(中)
  • 木:技術精度+セットプレー(中)
  • 金:調整(軽)
  • 土:試合(高)→日:完全休養 or アクティブリカバリー

GK向けの調整例(ジャンプ・着地・反応)

  • 高強度日:反応ドリル+クロス対応+ゲーム。
  • 中強度日:キャッチングフォーム、1対1の角度取り、キック精度。
  • 回復日:着地動作のドリル(膝・股関節の吸収)、肩甲帯の安定化。

プレシーズンとオフの考え方

ベース作り期の頻度と内容の切り替え

  • 開始2週:週3〜4回で技術+有酸素中心。短いスプリントを少量。
  • 週3〜6:週4〜6回へ段階的に増加。対人とスプリント量を徐々に伸ばす。
  • 直前2週:試合強度の再現とセットプレー、疲労を溜めない調整へ。

デロード(計画的な負荷軽減)の入れ方

3〜5週ごとに1週間、総量や高強度を20〜40%落とすと、次の伸びが出やすくなります。痛みが出たら予定を前倒しでデロード。

合宿・集中練習の注意点(急増回避)

  • 二部練をするなら、前後1週間の総量を抑える。
  • 高温・人工芝では休憩と水分・塩分補給を増やす。
  • 夜にミーティングが長引くと睡眠が削られる→翌日の強度を下げる判断を。

試合・移動・筋トレは「練習回数」に含めるべきか

試合日の負荷をどう換算するか

  • 目安:フル出場の公式戦=練習1.5〜2回相当。出場時間が短い場合は比例して考える。
  • 方法:試合後の主観的運動強度(RPE)×出場分数=sRPEで“1週間の合計負荷”に加算。

筋力トレーニングやクロストレーニングの扱い

  • 高強度(下半身メイン・筋力向上日):0.5〜1回相当。フィールドと同日にまとめると回復日を作りやすい。
  • 回復目的(可動域・軽いサーキット):0.3回相当。翌日の質を落とさない範囲で。

長距離移動・人工芝と疲労の関係

  • 移動(バス・車・電車で2時間以上):柔軟性低下や脱水につながることがある→到着後のウォームアップを長めに。
  • 人工芝:気温・表面温度が上がりやすい。シューズ選択・給水・摩擦対策を意識。

ケガ予防と回復戦略

週当たりの負荷急増を避ける考え方

前週比で総練習時間や高強度の本数を一気に増やさないのが基本。目安は10〜20%以内の増加に留めます。痛みや睡眠悪化があれば即調整。

睡眠・栄養・水分補給の基本ライン

  • 睡眠:中高生は目安8〜10時間、成人は7〜9時間。寝る前のスマホ時間を短縮。
  • 栄養:主食・たんぱく質・野菜を毎食。練習後30〜60分で軽食(牛乳+バナナなど)。
  • 水分:色の濃い尿は脱水サイン。練習2時間前にコップ1〜2杯、練習中は15〜20分毎に少量。

アクティブリカバリーとストレッチの使い分け

  • アクティブリカバリー:軽いジョグやサイクリング、可動域ドリルで血流を促進。
  • ストレッチ:練習前は動的、練習後は静的中心。痛みがある部位は無理に伸ばさない。

成長痛・疲労骨折・鼠径部痛の早期サイン

  • 運動後だけでなく日常でも痛む
  • 片足着地や方向転換で鋭い痛み
  • 押すと強い圧痛が続く

これらが数日続く・悪化する場合は、早めに専門家へ相談しましょう。

計測と可視化で適正頻度を見極める

主観的運動強度(RPE)とsRPEの活用

  • RPE(0〜10):体感のキツさ。終わった直後に数字で記録。
  • sRPE=RPE×分数:セッション負荷。週合計を見て増減を管理。

心拍・GPSがなくても使える代替指標

  • 会話テスト:ジョグ中に会話できる=中強度、単語がやっと=高強度。
  • 朝の主観チェック:睡眠の質・筋肉の張り・気分を0〜10で。
  • 朝の体重と安静時脈拍(手首で測る):大きな変動は疲労サインの可能性。

練習日誌とセルフチェックリストの作り方

  • 項目:日付・内容・時間・RPE・痛み部位・睡眠時間・一言メモ。
  • 週末に振り返り:合計時間・sRPE・痛みの有無・次週の調整点を1行でまとめる。

よくある誤解とQ&A

「練習は多いほど良い」の落とし穴

量は土台ですが、回復と質が伴わない量は伸びを止めます。週1日の完全休養と強度の波をセットで考えましょう。

個人技は毎日やるべきか?質と量のバランス

5〜15分のボールタッチやリフティングは“低疲労”で毎日でもOK。スプリントや対人など“高疲労”は週2〜3回に留め、間に回復日を挟むと効果的です。

勉強・仕事が忙しい週の最適解

回数を減らし、要点だけに絞るのが吉。30〜45分の高密度セッション×2回でも維持は可能。睡眠は削らない方が結果的に得です。

子どものマルチスポーツはサッカーに悪影響?

低〜中学年までは他競技の経験が運動能力の幅を広げることが多く、長期的にはプラスに働きやすいです。大会前はサッカー優先で調整を。

年代×競技レベルのクロス指針(テキストでの早見案内)

U-12×初心者/経験者の目安

  • 初心者:週2回(技術+遊び中心)+自由遊び。試合は月1〜2回。
  • 経験者:週3回(技術・小さな対人)+試合週は練習1回分調整。

U-15/U-18×一般/強豪の目安

  • U-15一般:週3〜4回+補助的S&C週1回。
  • U-15強豪:週4〜5回+S&C週1〜2回(PHV期は量より質)。
  • U-18一般:週4〜5回(波を作る)+S&C週1〜2回。
  • U-18強豪:週5〜6回(試合含む)+リカバリーを計画的に。

18歳以上×健康志向/競技志向/エリートの目安

  • 健康志向:週2〜3回(うち1回は軽め)+S&C週1回。
  • 競技志向:週4〜6回(試合含む)。強度のピークは週1〜2回。
  • エリート:週6〜8セッション(フィールド・S&C・回復を合算)。

週回数を調整する判断フロー

疲労・痛み・睡眠のチェックポイント

  • 朝起きてだるい日が3日連続→次の高強度を中止 or 軽減。
  • 痛みが“動作で増悪”する→原因動作を一旦外す。
  • 睡眠が6時間未満の日が続く→今週の総量を20〜30%削減。

当週と前週のパフォーマンス変化

  • スプリントがキレない、判断が遅い→過負荷の可能性。回復デーを追加。
  • 練習が楽に感じる→少し増やす余地あり(10%以内)。

スケジュール制約と優先順位の付け方

  • 最優先:試合前後の調整、怪我の回避。
  • 次点:ポジション特性に直結するドリル(FWのスプリント、MFの視野・ポジショニングなど)。
  • 削る対象:形式だけの走り込み、疲労が残る補強の“やり足し”。

既往歴(ケガ歴)と再発リスク管理

  • ハムストリング肉離れ歴:高速走を急増させない。週に“高速走の日”は1〜2回まで。
  • 足首捻挫歴:片脚バランス・可動域ドリルをルーティン化。
  • 腰痛歴:ヒップヒンジと体幹安定を基本に、反り腰の癖を修正。

まとめ:あなたに合う「週何回」を更新し続ける

短期・中期・長期の見直しサイクル

  • 短期(毎週):合計負荷と体調を見て±10〜20%調整。
  • 中期(4〜6週):デロード週の設定、弱点の見直し。
  • 長期(シーズン/学期):目標から逆算し、頻度と内容を再設計。

記録・振り返り・微調整の習慣化

「何回やったか」だけでなく「何を、どれくらいの強度で、どう感じたか」を見える化するほど、最適な週回数に近づきます。年齢やレベル、生活が変われば答えも変わるもの。今日の自分に合う“ちょうど良い”を、少しずつアップデートしていきましょう。

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