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ディフェンス練習メニュー初心者向け 足を出さない守備の基礎10選

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ディフェンス練習メニュー初心者向け 足を出さない守備の基礎10選

「守備=スライディングでボールを奪う」と考えがちな人ほど、試合ではファウルや空振りでピンチを招きやすくなります。今日のテーマは、初心者でも今すぐ実践できる「足を出さない守備」。無理に突っ込まず、相手を“遅らせて・制限して・奪いやすくする”ための基礎を、ウォームアップからドリル、計測方法までセットでまとめました。ディフェンスの芯は「準備の質」。奪う前の数秒間をコントロールできれば、チームの失点は目に見えて減ります。

はじめに:なぜ『足を出さない守備』なのか

足を出さない守備の定義と狙い

「足を出さない守備」とは、タックルやつま先での突きに頼らず、距離・角度・身体の向きで相手の選択肢を制限し、時間を稼ぎながら味方のサポートやインターセプトにつなげる守備のことです。狙いは3つです。①抜かれないこと(背後の危険を消す)、②相手を不利な方向に誘導すること、③奪える瞬間を待つこと。この3つがそろうと、無理のないタイミングでの奪取や、相手のミス誘発につながります。

初心者が最初に身につけるべき理由

足を出さない守備は、フィジカルやスピードの差があっても再現性が高いのが特徴です。体格や経験に関係なく、正しい姿勢と間合い、ジョッキー(小刻みなサイドステップ)だけで相手のプレーを鈍らせられます。まずは「遅らせる・制限する」ができると、チーム全体の守備が落ち着き、無駄なスプリントやファウルも減ります。

よくある誤解とリスク(無闇に奪いに行かない)

「守備はボールを奪ってこそ」という思い込みから、足を突き出して空振り→置き去り、というパターンが起きがちです。特にペナルティエリア(PA)内ではファウルのリスクが高く、PKや警告につながります。足を出さない守備は“奪わない”のではなく、“奪える瞬間まで我慢する”技術。結果として奪取の確率が上がり、失点リスクは下がります。

守備の土台:姿勢・距離・角度の基本

アスレチックスタンス(低重心・つま先・股関節)

膝だけで沈まず、股関節から軽く折り、上体はやや前傾。重心は母指球(つま先寄り)に置き、かかとを浮かせるイメージです。両足は肩幅よりやや広く、左右に動きやすい幅を確保。手は身体の前に構え、接触時のバランスとファウル回避に使います。

腕一本の間合い(触れそうで触れない距離)

手を伸ばせば触れそう、でも足は出さない距離が基準。近すぎると一発で抜かれ、遠すぎると前を向かれます。相手のスピードや技術に応じて、半歩〜一歩の調整が重要です。

誘導の角度づくり(内切り/外切りの判断)

相手の利き足・周囲の味方・サイドラインの位置を見て「どちらに進ませたいか」を決めます。外切りでサイドへ追い出すのか、内切りで密集に誘うのか。上体の向きと前足の位置で角度が決まります。

ジョッキーのリズム(寄せる→止まる→下がる)

一気に突っ込まず、「寄せる→止まって様子を見る→スピードに合わせて下がる」のリズムを繰り返します。止まる局面を入れることで、フェイントや切り返しに引っかかりにくくなります。

視線とスキャン(ボール・人・スペースの三点確認)

ボールだけを見ない。ボール保持者、走り出す相手(人)、空いているスペースの三点を短い間隔でスキャンします。背後のランが一番危険、を習慣化しましょう。

ウォームアップと基礎動作

低重心アジリティ(サイド/クロス/バックステップ)

各10〜15秒×3セット。低重心を保ちながら、サイド、クロス(入れ替え)、バックステップを滑らかに。膝ではなく股関節から動く意識を持ちます。

スプリットステップと最初の一歩

相手が触る瞬間に軽くジャンプ→両足着地(スプリットステップ)で反応準備。最初の一歩は前ではなく「横」や「斜め後ろ」に切り返せる位置取りを意識します。

ヒップ主導の方向転換(膝に頼らない切り返し)

骨盤から向きを変えると、膝の負担が減り、素早く再加速できます。上半身の捻りだけでごまかさず、足裏全体で地面を捉えてから切り返しましょう。

ストップ&ゴーで減速スキルを養う

減速は守備の命。5mダッシュ→ピタッと止まる→逆方向へ。これを左右と後方に。足音がドスドス鳴るなら、接地が重い証拠。静かな接地を目指します。

足を出さない守備の基礎10選(ディフェンス練習メニュー)

① 距離管理シャドー1対1(腕一本の間合いを保つ)

目的

無闇に詰めず、相手に前を向かせない距離の維持。

設定

10m×10mの四角。攻撃は自由ドリブル、守備はタックル禁止。30〜40秒×4本。

ルール

守備は常に腕一本の距離をキープ。抜かれたら素早く回収して同距離に戻す。

コーチングポイント

  • 股関節を折って低重心、かかとを浮かす。
  • 前足は相手の利き足側に置き、内側を締める。
  • 「寄せる→止まる→下がる」を声に出してリズム化。

よくあるミス

距離が詰まりすぎる→半歩下げて、相手のタッチ直後に寄せ直す。

② 角度づくりゲート守備(縦切り・内切りの誘導)

目的

相手を狙った方向に進ませる角度形成。

設定

コーンで幅1.5mのゲートを2つ(外と内)設置。攻撃はどちらかを通過したら勝ち。

ルール

守備は片方のゲートを“開ける”構えで、もう片方を“閉じる”。足は出さない。

コーチングポイント

  • 「開ける側の肩を下げ、閉じる側の前足で壁を作る」。
  • 体の正面を相手のボールにではなく「進ませたい方向」にズラす。

よくあるミス

正対しすぎてどちらにも行かれる→半身を作り、腰の向きをはっきり。

③ ジョッキー8の字ドリル(スピード変化への対応)

目的

加速・減速の切り替えと、フェイントへの我慢。

設定

コーン2つを5m間隔で置き、攻撃は8の字にドリブル。守備は外側でジョッキー。

ルール

守備は常に一歩外側で鏡のように動き、接近しすぎない。30秒×4本。

コーチングポイント

  • 相手が減速→こちらも減速。相手が加速→一歩下がって角度維持。
  • 視線をボールの外側1/3に置いてフェイントに引っ張られない。

④ 遅らせるスクリーン1対1(時間を稼ぐ守備)

目的

数秒の“遅らせ”で味方の帰陣を待つ技術。

設定

攻撃のスタート地点から8m先にミニゴール。守備はタックル禁止、背後に味方コーン2本(帰陣ライン)。

ルール

守備は3秒間、ミニゴールへの直進を許さない。3秒後、背後の味方ラインに選手が帰ってきた想定で終了。

コーチングポイント

  • ゴールと相手を結ぶ“間”に体を置く(スクリーン)。
  • 焦って前に出ない、常に斜め後ろへ小刻みに下がる。

⑤ 利き足封鎖ミラー(身体の向きで制限する)

目的

相手の利き足へ行かせない体の置き方を習得。

設定

攻撃の利き足を宣言。守備は利き足側を閉じ、逆足へ誘導。

コーチングポイント

  • 利き足側の前足で“門”を狭める。
  • 肩のラインをわずかに利き足側へ切って通路を消す。

よくあるミス

足だけで封鎖しようとする→上体と骨盤の向きで通路自体を細くする。

⑥ サイドライン活用2対2チャンネル(外へ追い込む)

目的

サイドラインを“もう一本のディフェンダー”として使う。

設定

幅8mのチャンネル内で2対2。外へ追い込む制限。

ルール

ボール保持者をサイドライン側へ誘導し、パス先も限定。チャレンジ&カバーを徹底。

コーチングポイント

  • ファーストは外切りの角度、セカンドは内側の差し込みを遮断。
  • 奪えそうでも二人の距離が伸びるなら我慢。

⑦ カバー&スライド三角形(2人で背後を消す)

目的

一人が抜かれても、すぐ奪われない守備の形を作る。

設定

コーンで三角形(辺7〜8m)。攻撃1、守備2。常に二等辺の三角を保つ。

ルール

ボールに近い選手が寄せ、もう一人が背後と縦をカバー。ボール移動に合わせてスライド。

コーチングポイント

  • 縦の背後を最優先で消すカバーポジション。
  • 声で「マーク・カバー・スイッチ」を共有。

⑧ スキャン→読み→インターセプト準備(足を出さず奪う)

目的

パスの出どころを読み、足を出さずに奪取機会を作る。

設定

3人一組。パサー・受け手・ディフェンダー。パサーは2種類のテンポで出し分け。

ルール

ディフェンダーはジョッキーで受け手を制限しつつ、パサーのモーションをスキャン。合図で一歩先に出てカット。

コーチングポイント

  • トラップが大きい、背中向き、視線が落ちた等の“トリガー”で出る。
  • 出る時は一歩で届く距離にあらかじめ詰めておく。

⑨ リカバリーランとドロップ(背後の優先順位)

目的

置き去りにされた後でも失点を防ぐ走り方。

設定

攻撃は背後へスルーパス。守備は最短でゴール側へドロップし、カバー角度を作る。

コーチングポイント

  • ボール一直線ではなく、ゴールと相手の間に入る“斜め”の戻り。
  • ゴール前5mはファウル厳禁。身体を入れてコースを切る。

⑩ PA内の我慢守備(ファウルを避ける体の入れ方)

目的

PA内でPKリスクを負わずにシュートブロックへ持ち込む。

設定

PA角からの1対1。守備はタックル禁止、シュートブロック狙い。

コーチングポイント

  • 両手は胸前でコントロール、相手の腕を軽く触る程度で距離感を測る。
  • 最後は身体の“面”でブロック。足先で突かない。

発展バリエーションと負荷調整

スペース・タッチ数・時間制限で難易度を調整

スペースを狭めると守備有利、広げると難易度アップ。攻撃のタッチ数制限(2タッチなど)、時間制限(10秒以内)で負荷を調整します。

誘導方向の条件づけ(外寄せ/内寄せ)

チーム方針に合わせて「外へ」「内へ」を事前に指定。守備者は前足と肩の角度で合図を統一しましょう。

数的不均衡(1対2、2対3)で判断を鍛える

数的不利では“遅らせ”が最優先。誰を消すか、どのコースを渡すかの判断が磨かれます。

トリガー設定(相手のトラップ・背中向き)

出る合図をチームで共有。「背中向き」「トラップ前」「視線が下がった」など、奪取トリガーを明文化すると連係がスムーズです。

コーチングキーワードとチェックリスト

合言葉:寄せる→止まる→下がる→ずらす

追い込みすぎないための合言葉。ずらす=角度を微調整して相手の選択肢を狭めること。

体の向き・手の位置(触らずに制限)

半身を作り、進ませたい方向へ肩と骨盤を少し切る。手は胸前でコントロール、押さない・掴まない。

重心の高さと最初の一歩(抜かれない準備)

高すぎると切り返しに反応できません。常に次の一歩を「横か斜め後ろ」に置ける姿勢を意識。

声かけ:マーク/カバー/スイッチの共有

「俺ボール」「カバー任せた」「スイッチ!」を短く明確に。守備は情報戦です。

ファーストディフェンダーとセカンドの役割

ファーストは遅らせと誘導、セカンドは背後と縦の消去、三人目は奪取準備。役割を固定せず流動的に回すと効果的です。

計測と上達の見える化

1対1成功率と被突破数の記録方法

1対1の局面で「抜かれず遅らせられた」回数を成功にカウント。セットごとの成功率を記録すると改善点が明確です。

遅らせ時間(秒)と自陣のライン回復率

遅らせ開始から味方2人が帰陣するまでの秒数を計測。平均遅らせ時間が伸びるほど、回復率も上がります。

ファウル数・不要なタックル回数の削減

練習中のファウルと、コーチングルールに反したタックルをカウント。週単位で減らす目標を設定。

主観的運動強度(RPE)と疲労管理

各セッション後にRPE(1〜10)を記録。強度が高すぎる日はドリルを短縮し、質を保ちます。

よくあるミスと修正法

足を出して置き去りにされる→間合いと我慢の再学習

腕一本の距離をキープし、相手のタッチ直後に寄せ直す。足先ではなく体の位置で制限しましょう。

突っ込みすぎる→減速とストップ技術の強化

ストップ&ゴーで減速練習を増やす。寄せる→止まるの“止まる”を意識的に挟む。

真正面で勝負して抜かれる→誘導角度の再設定

半身で前足を“壁”に。外か内か、誘導方向を事前に決めてから寄せます。

後ろ向きで下がりすぎる→半身とサイドステップへ

完全に背中を向けると反応が遅れます。常に相手とゴールを斜めに視野へ。

ボールウォッチング→背後とカバーのスキャン習慣

1秒ごとに視線をボール→人→スペースへ小刻みに移す癖を。声かけもセットで。

少人数・親子・自宅でできる簡易メニュー

廊下ジョッキーライン(直線で距離管理)

廊下や直線で、攻撃が前後にフェイント。守備は一定距離でジョッキー。30秒×3。

コーン2個の角度づくり(門を使った誘導)

コーンで小さな“門”を作り、通さない側と通していい側を設定。身体の向きでコントロール。

タオルゲート守備(ファウルなしで遅らせる)

床にタオルでゴール幅を作る。守備は足を出さず、体の位置で突破を遅らせることに集中。

ミラーステップ(鏡合わせで反応速度アップ)

攻撃の左右移動に0.3秒以内で反応。タイマーで反応時間を測るとゲーム性が上がります。

週3回の練習設計例(45〜60分)

セッションA:個人守備の基礎(1・2・3・4)

ウォームアップ10分→①距離管理10分→②角度づくり10分→③ジョッキー8の字10分→④遅らせ5分。最後に軽い整理体操。

セッションB:連係守備(6・7・8)

ウォームアップ10分→⑥サイドチャンネル15分→⑦カバー&スライド15分→⑧インターセプト10分。声かけのルールを確認。

セッションC:実戦形式(制限付きミニゲーム)

幅をやや狭く設定し、「タックル禁止」「外へ誘導ボーナス」などの制限でミニゲーム20〜25分。遅らせの評価を可視化。

リカバリーとストレングス(下半身・体幹)

ヒップヒンジ、ランジ、プランク各30〜40秒×3。可動域と減速に効く種目を優先しましょう。

安全対策とフェアプレー

接触コントロールと倒し方(手の使い方)

手は相手の肩や胸の前でスペースを測る程度。押す・引っ張るはNG。接触は胸・肩で正面から。

足首・膝の保護(ブレーキと向きの管理)

減速時はつま先からソフトに接地。膝が内側に入らないよう、股関節から切り返す。

ピッチ環境と用具チェック(滑り・段差・靴)

人工芝の粒、濡れ具合、段差を事前確認。シューズのスタッドは場に合ったものを使用しましょう。

まとめ:守備は『奪う前の準備』の質で決まる

習慣化のコツ(短時間・高頻度・反復)

1回60分より、15〜20分を高頻度で。距離・角度・姿勢の“当たり前”が無意識にできるまで反復します。

次のステップ(奪い切るタックルへの移行)

「足を出さない守備」が安定したら、奪取トリガーに合わせた前向きタックルやダブルチームへ発展。出る・待つのメリハリが鍵です。

継続学習のヒント(試合映像での自己分析)

自分の1対1場面を切り出し、開始位置の距離、寄せる→止まる→下がるのリズム、誘導方向の一貫性をチェック。数字(成功率・遅らせ秒数)とセットで振り返ると伸びが早まります。

足を出さない守備は地味ですが、効果は抜群。今日から「遅らせて・制限して・奪う準備」を自分のスタンダードにしていきましょう。

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