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サッカー練習中の熱中症対策、強度を落とさず守る7つの策

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夏のグラウンドでも強度は落としたくない。でも「無理して倒れる」は本末転倒。この記事は、サッカー練習中の熱中症対策を“強度を落とさず”実行するための、現場で使える具体策をまとめました。水分・塩分・練習設計・クーリング・装備・データ・緊急対応まで、7つの策で丸ごとカバー。今日からチームにそのまま持ち込める実践ガイドです。

リード:サッカー練習中の熱中症対策、強度を落とさず守る7つの策

検索の意図に応えて、練習中に使える「方法」に絞って解説します。前提は一つ。「安全のために強度を捨てる」のではなく、「安全をデザインして強度を守る」。水をがぶ飲みするだけでも、ただ休憩を増やすだけでも足りません。準備・設計・モニタリング・即応の4本柱で、暑熱を“味方”に変えましょう。

はじめに:暑さの中で強度を落とさないために

この記事の狙いと前提(安全性とパフォーマンスの両立)

暑い日は「強度を落とすor危険」という二択に陥りがち。実際は、同じ走行距離をこなさずとも、スプリント質や意思決定速度を落とさない設計ができます。安全を担保するために、事前の準備(給水・塩分・順化)、現場の設計(ワーク:レスト比、クーリング)、継続的なモニタリング(WBGT・RPE・体重)、そして緊急時のプロトコルを整えておくことが鍵です。

熱中症がパフォーマンスに及ぼす影響の全体像

脱水や高体温は、スプリント反復能力、判断速度、技術精度を落とします。体重の2%以上の水分喪失でパフォーマンス低下が起こりやすく、電解質(特にナトリウム)の不足は筋けいれんや気分不良のリスクを上げます。高体温は中枢疲労を強め、プレーの質を乱します。

練習設計に熱ストレスを織り込む考え方

暑さを「外乱」ではなく「設計パラメータ」と捉えます。強度を担保するために、セット間のレストを賢く増やし、ブロックの合間にコア冷却を入れる。全体時間を短縮しても、セット内の出力と質を守るのが狙いです。

熱中症の基礎知識と危険サイン(練習中に見逃さない)

起こる仕組み(脱水・電解質・体温調節)

発汗で体温を下げますが、汗で水分とナトリウムが失われます。補給が追いつかないと循環量が低下し、体温が上がり、脳・筋の働きが落ちます。湿度が高いと汗が蒸発しにくく、さらに体温が上がりやすくなります。

初期サインと重症サインの違い

  • 初期サイン:めまい、吐き気、こむら返り、頭がぼんやり、集中しづらい、異常な喉の渇き、尿が濃い
  • 重症サイン:ふらつきでまっすぐ歩けない、受け答えが遅い・おかしい、皮膚が熱いのに汗が少ない、強い頭痛、痙攣、意識がはっきりしない

迷ったら中断:現場での判断基準

「軽い違和感でも一旦止める」を合言葉に。少しでも重症サインがあれば即中断・冷却・119番。疑わしいときは「冷却を先、搬送は冷やしながら」。

策1:給水・電解質の戦略を設計する

練習前の水分・電解質準備(タイミングと目安)

  • 2〜3時間前:体重1kgあたり5〜7mLの水分を目安(例:60kgなら300〜420mL)。塩分を含む食事(みそ汁、梅干し、塩の効いたおにぎり)を。
  • 直前(開始30分以内):200〜300mLをゆっくり。汗かき体質はナトリウム入り飲料を選択。

練習中の飲み方(頻度・一口量・塩分)

  • 頻度:10〜15分ごとに100〜200mL。クーリングブレイクで確実に。
  • 塩分:ナトリウム濃度0.3〜0.7g/L(300〜700mg/L)程度が目安。一般的なスポーツドリンクはこの範囲に収まるものが多い。
  • 糖質:4〜6%濃度(40〜60g/L)は吸収がよく、運動継続に役立つ。

練習後のリカバリー補水と体重変化の活用

終了直後〜2時間で「減った体重×1.25〜1.5倍」の水分を、塩分と一緒に。体重1kg減=約1Lの水分喪失なので、1.25〜1.5Lを目安に補うと戻りやすい。塩おにぎり+スポドリなど“飲む+食べる”の組み合わせが効率的。

尿色・体重で自己モニタリングする方法

  • 尿色:淡いレモン色なら良好、濃い琥珀色は要補水。
  • 朝と練習前後の体重:2%以上の減少は要注意(60kgなら1.2kg)。

策2:暑熱順化(ヒートアクライメーション)で耐性を作る

7〜14日の段階的アプローチ

  • Day1-3:短時間(20〜40分)×低〜中強度。発汗に慣らす。
  • Day4-7:時間と強度を漸増。高強度ブロックを短く入れ、十分に休む。
  • Day8-14:通常時間に近づけ、競技特異的ドリルで仕上げ。

順化で、発汗開始が早くなり、汗中ナトリウム濃度が下がり、心拍の上がり方が穏やかになります。

順化期間のメニュー例と負荷管理

  • ブロック制:8〜12分高強度→3〜5分のコア冷却&補水。
  • ワーク:レスト比を普段より長め(例:1:1.5〜2)に設定。
  • 心拍とRPEで“無理しない高強度”を見極める。

雨天や屋内での代替手段(サウナ・温浴等の注意点)

屋外が難しい場合、練習後に温浴やサウナで短時間の「温熱刺激」を付加する方法もあります。長時間は逆効果になり得るため、短時間(5〜10分)+十分な冷却・補水をセットで。持病がある人は無理をしないこと。

策3:強度を落とさない練習設計(ワーク:レストとドリル最適化)

高強度維持のためのインターバル比の見直し

同じ高出力を保つために、レストを増やして“質”を維持します。例:30秒全力(スプリント・チェイシング)→45〜60秒レスト。セット間は3〜5分のクーリングブレイクで心拍と体温を落とす。

小ピッチ・ポゼッションで負荷を圧縮する方法

3v3〜5v5の小ピッチ・条件付きポゼッションで、意思決定とテクニックの強度を高く、走行距離は抑える設計に。時間は短めに切って回す(4〜6分×複数セット)。

ウォームアップの短縮とコア温上昇の管理

長い持久走は省き、ダイナミックストレッチ→神経活性化(スキップ、ハイニー、短い加速)→ボールタッチへ。8〜12分で十分温め、上がり過ぎを避ける。

RPEと心拍でリアルタイムに負荷調整

  • RPE(0〜10)で7〜8を狙い、9以上が続くなら即レスト延長。
  • 心拍が落ち切る目安(最大の60〜70%)まで休むと、次のセットも質を維持しやすい。

策4:コア冷却とクーリングブレイクの使い方

氷・冷水・冷タオルの効果的な当て方

  • 首の後ろ、脇の下、鼠径部に当てて血流で熱を逃がす。
  • 前腕に冷水をかける、冷水でタオルをしぼって肩にかける。

口腔・皮膚の知覚冷却の活用

氷スラリー(かき氷状の氷)や冷たい水を口に含んでから飲むと、涼しさの感覚が増して出力を保ちやすい人がいます。メントール系は濃度が強すぎるものは避け、違和感があれば使用しないこと。

ブレイク時のミニ補給(塩・糖・氷)の運用

  • ミニ氷嚥下+スポーツドリンク(4〜6%糖質)。
  • 塩タブレットは指示通りの量を守る。塩だけではなく水分と一緒に。

策5:ウェア・装備とピッチ環境を最適化

吸汗速乾・通気性ウェアの選び方

薄手・明るい色・メッシュ構造。綿は避ける。インナーは1枚で十分。帽子は休憩時のみ活用して直射日光を遮る。

シンガード・ソックス・テープの蒸れ対策

  • 通気孔のあるシンガード、汗抜けの良いソックス。
  • テーピングは必要最小限。休憩時に少しずらして風を通す。

人工芝と天然芝の熱リスク差と対処

人工芝は表面温度が高くなりやすい。散水、ドリルの時間を短く、クーリングブレイクを増やす。シューズは通気性のあるモデルを選ぶ。

日陰・ミスト・送風で即席クーリングゾーンを作る

  • タープやゴール裏の影を休憩所に。
  • 霧吹き+扇風機(気化冷却)で体表温を下げる。

策6:データで守る自己・チームモニタリング

体重・尿色・RPE・体調チェックの運用

  • 来場時チェック:寝不足・食欲・頭痛・尿色。
  • 体重は練習前後で記録。2%以上減は翌日の負荷を調整。
  • RPEを全員口頭で共有し、コーチが比率を判断。

環境指数(WBGT)の読み方と練習可否の基準

  • WBGT 25未満:通常実施。ただし補水の習慣化。
  • 25〜28:警戒。休憩・補水を増やし、セット短縮。
  • 28〜31:厳重警戒。高強度は短時間、クーリング必須。
  • 31以上:原則中止。自治体・連盟の基準に従う。

ウェアラブル活用時の注意点(過信しない)

心拍や体温推定値は参考指標。数字が平常でも“違和感”があれば即休む。主観と客観の両方を見るのが安全。

策7:緊急対応プロトコルと役割分担

練習前の合意事項(中断基準・連絡体制)

  • 「ふらつき・頭痛・吐き気・応答遅い」は即中断の合図。
  • 連絡役(119通報)、冷却役、誘導役を事前割当。

熱中症疑い時のフロー(迅速な冷却と救急要請)

  1. 日陰へ搬送、装備をゆるめる。
  2. 頸・腋・鼠径部へ冷却、冷水を全身にかける。
  3. 意識が明瞭であれば少量ずつ経口補水。嘔吐や意識障害があれば無理に飲ませない。
  4. 重症サインがあれば119番。冷やしながら引き渡す。

氷水浸漬・アイスバスが使えない場合の代替策

  • ホースの常温水シャワー+扇風機(気化冷却)。
  • 濡れタオルを連続交換で体幹を冷やす。

練習前後の食事とサプリメントの基礎

炭水化物・塩分・微量栄養素の押さえどころ

  • 炭水化物:練習日に不足しがち。主食をしっかり。
  • 塩分:暑い日はやや多めでも。みそ汁、漬物、梅など。
  • 微量栄養素:鉄・亜鉛・マグネシウムは不足に注意。まず食事から。

スポーツドリンクと経口補水液の使い分け

  • スポーツドリンク:運動中のメイン。糖・塩のバランスが運動向け。
  • 経口補水液(ORS):脱水が強い時のリカバリー用。塩分が濃いので常用は不要。

未成年のサプリメント利用での留意点

カフェインなど刺激系は避ける。サプリは基本的に不要。どうしても使うなら、保護者・指導者と相談し、表示を確認のうえ最小限に。

練習スケジュールと場所の工夫(時間帯・影・風)

朝夕の涼しい時間帯を活かす練習計画

可能なら開始は朝または夕方。真昼はミーティングや戦術確認、室内技術ドリルへ切り替える。

ドリルの順番最適化でピーク熱を避ける

高強度ブロックは序盤と終盤に分散。日射が最も強い時間はセットを短くし、ポゼッションやセットプレー確認へ。

屋内・屋外の切り替え基準と判断

WBGTや風の有無で判断。無風・高湿は屋外の難易度が急上昇。風が吹く日は屋外で、無風の日は短時間に切るか屋内へ。

よくある誤解と避けたい落とし穴

喉の渇き頼みの給水は危険

渇きを感じたときには既に遅れていることが多い。時間で飲む仕組み化が安全。

塩だけ摂ればOKではない理由

塩だけ摂っても水が足りなければ血液は濃くなる。糖質も吸収を助ける。水+塩+糖のセットが基本。

体力自慢ほど危険になるケース

無理をしやすく、発汗量も多くて脱水が進む。数字(体重・WBGT)とチームの目で自分を管理する。

チェックリスト(当日の持ち物・現場設営)

個人装備チェック(飲料・ウェア・冷却具)

  • ボトル2本(スポドリ/水)
  • 塩分補給(タブレット、梅干し)
  • 吸汗速乾ウェア、替えソックス、キャップ(休憩用)
  • 冷タオル、保冷剤、日焼け止め

チームで準備する冷却・補給セット

  • クーラーボックス(氷・予備ドリンク)
  • ミストスプレー、扇風機または送風機
  • 簡易タープ(日陰)
  • 体重計、WBGT計
  • 緊急連絡表、救急セット

練習前5分・練習中・練習後の時系列ガイド

練習前5分でやること(自己確認と補水)

  • 体調セルフチェック(頭痛・吐き気・睡眠・尿色)
  • 200〜300mLの補水、日陰で軽いモビリティ
  • コーチはWBGTを確認し、ワーク:レストとクーリング計画を最終決定

クーリングブレイクでやること(冷却・補給・観察)

  • 首・脇・前腕の冷却、100〜200mLの飲水
  • 選手間で表情と受け答えチェック(いつもと違う?)
  • RPE口頭確認→セット調整

練習直後の回復ルーティン(再補水と栄養)

  • 体重測定→減少量×1.25〜1.5の水分+塩分
  • 炭水化物+たんぱく質(おにぎり+乳製品など)
  • 5〜10分のクールダウンと日陰での安静

FAQ(熱中症 対策 練習中 の方法)

学校のグラウンドでできる最低限の対策は?

タープで日陰、クーラーボックスに氷、ミストスプレーと扇風機、WBGT計と体重計。10〜15分ごとの飲水ルールと、重症サインの共有だけでも効果は大きいです。

体調不良の見分け方と休む判断は?

「ふらつく」「頭が回らない」「吐き気」「強いだるさ」はサイン。迷ったら休む。重症サインがあれば冷却しながら119番。

子どもと大人で対策は変わる?

子どもは体温調節が未熟でリスクが高め。大人以上に頻繁な休憩・飲水・観察が必要。保護者やコーチが声かけを増やし、無理をさせないルールを徹底します。

まとめ:強度を落とさず安全に鍛える

7つの策の要点リキャップ

  • 策1 給水・電解質:時間で飲み、塩+糖をセットで。
  • 策2 暑熱順化:7〜14日で段階的に慣らす。
  • 策3 練習設計:ワーク:レストを伸ばして“質”を守る。
  • 策4 コア冷却:首・脇・鼠径部+氷スラリーで体温コントロール。
  • 策5 装備・環境:通気性ウェア、日陰・ミスト・送風を用意。
  • 策6 データ管理:体重・RPE・WBGTで可視化。
  • 策7 緊急対応:冷却を先、役割分担と119の即応。

明日から実行するための最短ステップ

  1. 10〜15分ごとの飲水とクーリングブレイクを全員ルール化。
  2. WBGT計と体重計をチーム備品に追加。
  3. ワーク:レストを1:1.5以上に設定し、質を最優先。
  4. 緊急プロトコルを配布し、役割を決めておく。

「安全をデザインする」ことは、パフォーマンスを守ることと同義です。暑さを言い訳にせず、賢い準備で強度をキープしていきましょう。

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