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イエローカード レッドカード 違いを実戦で迷わない基準

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試合の流れを一瞬で変える「カード」。イエローカードとレッドカードの違いは知っているつもりでも、いざ実戦になると判断に迷う場面は多いはずです。本記事では、公式ルール(IFAB競技規則)を踏まえつつ、「強度・影響・意図」という三軸で迷いを減らす実戦基準を提示します。プレーの境界線を明確にし、不要なカードを減らすためのトレーニングやチェックリストまでまとめました。選手も指導者も、今日から使える判断軸として活用してください。

まず結論:イエローとレッドの違いは『強度・影響・意図』の三軸で決まる

一目で判定を助ける三軸(強度・影響・意図)

カード判断は、次の三軸で整理するとブレにくくなります。

  • 強度(インテンシティ):接触の質と量。無謀か、過度な力か。
  • 影響(ゲームインパクト):有望な攻撃や決定機を壊したか、安全を著しく損なったか。
  • 意図(インテント):ボールをプレーしようとしたか、戦術的・暴力的・挑発的な行為か。

概ね、強度が高く危険=レッドに近づき、影響が大きい戦術ファウル=イエローの可能性、意図が悪質(暴力・差別など)=即レッド、という優先度で考えると整理しやすいです。

迷いを減らす優先順位の置き方

  • 安全最優先:相手の安全を脅かす接触は強度で即判断(レッドの可能性)。
  • 次に試合性:有望な攻撃や決定機を壊したか(SPA/DOGSO)。
  • 最後にマナー:異議や遅延などゲームマネジメント上の警告事由。

この順に評価すると、感情に流されずに一貫した対応が可能になります。

公式ルールの骨子(IFAB競技規則)を30秒で整理

カードの役割:試合の安全と公正の担保

イエローカードは「警告」、レッドカードは「退場」です。目的は罰ではなく、危険からの保護と試合の公正さの維持。危険・不正・挑発を抑止するための信号と考えてください。

主審・副審・第4の審判・VARの連携(適用リーグの場合)

  • 主審:最終決定者。接触の質、影響、意図を総合判断。
  • 副審:視野外の情報、オフサイドや位置関係を補助。
  • 第4の審判:テクニカルエリア管理、交代、記録。
  • VAR(導入大会のみ):明白かつ重大な誤りの修正。対象は得点、PK、直接退場、選手誤認。二枚目の警告には介入しません。

アドバンテージとカード提示のタイミング

主審は有利なら続行(アドバンテージ)し、カードは次のプレー切れで提示できます。安全面の懸念が大きいときやエスカレート防止が必要なときは、プレーを止めて即提示する判断もあります。

イエローカードの基準を7類型で把握する

反スポーツ的行為(USB):無謀なチャレンジ、シミュレーション、過度な祝賀など

無謀(レックレス)なタックル、相手をだますシミュレーション、広告板に乗る・観客席に入る・ユニフォームを脱ぐ等の過度な祝賀は警告対象です。

異議(Dissent):言動・ジェスチャーによる抗議

叫ぶ、皮肉な拍手、執拗な囲み込みは警告対象。キャプテンにも特別な免責はありません。

反復犯(PI):繰り返される軽微な反則

軽いファウルでも同一選手が繰り返せば警告。相手の安全・試合の流れを守るための運用です。

再開の遅延(DR):時間稼ぎの抑止

ボールを抱えて離れない、位置をずらす、交代を故意に遅らせるなどは警告となります。

既定距離不履行(FRD):フリーキック等での距離不足

フリーキック、コーナー、スローインでの距離違反は警告対象。壁の前進やボールキックアウェイも含みます。

許可なく入る・戻る・離れる(E/R/L)

主審の許可なくフィールドに入る・戻る・離れる行為は警告対象。負傷後の復帰や用具調整時は特に注意。

有望な攻撃の阻止(SPA):戦術的ファウルの扱い

カウンターの初動でのグリップ、軽い足掛け、進路妨害など「有望な攻撃」を潰したら警告。アドバンテージが成立して攻撃がなお有望なら、リーグの運用によっては警告が出ないことがあります(無謀なら別理由で警告)。

レッドカードの基準を7類型で理解する

深刻な反則行為(SFP):過度な力・相手の安全を脅かすタックル

スパイクの裏で足首上に強く当たる、両足タックル、助走をつけた突進などは退場に相当します。

乱暴な行為(VC):ボールと無関係の暴力的行為

プレーと関係ない殴打、蹴り、頭突き、突き飛ばし等。接触がなくても、暴力的な「試み」で退場となる場合があります。

決定的得点機会の阻止(DOGSO):ファウルとハンドの判断

得点機会を不正に消した場合は退場が基本。自陣PA内でも「ボールをプレーしようとしたチャレンジ」でのDOGSOは警告に軽減されますが、抱え・引っ張り・押し・手/腕での阻止(GKの自陣PA内でのハンドを除く)は退場の対象です。

つば吐き・かみつき:身体的接触の有無を問わない悪質行為

相手や他者に向けて唾を吐く、かみつく行為は即退場です。接触の有無は問いません。

侮辱的・差別的・蔑視的言動やジェスチャー

人格や属性を貶める発言・動作は即退場。近年は特に厳格に扱われます。

物の投擲・投げ入れによる反則(接触の有無を問わず)

ボトルや用具を人に向けて投げるなど、危険を生む行為は退場の対象です。

二枚目の警告による退場

同一試合で二度の警告は自動的に退場。VARはこのケースに介入しません。

「無謀」と「過度な力」の線引き(プレー強度の判定)

ケアレス・レックレス・エクセッシブフォースの違い

  • ケアレス(不注意):ファウルは取るがカードなし。
  • レックレス(無謀):相手の安全を考慮していない=イエロー。
  • エクセッシブフォース(過度な力):相手の安全を著しく脅かす=レッド。

スパイクの向き・踏みつけ・速度・当たりの部位

裏が見える踏みつけ、足首より上、膝への衝突、勢い任せの突進はレッドに近づきます。逆に接触が軽く、地面を滑らせる足裏でない、すぐに引く動作がある等はイエロー相当の可能性。

空中戦とスライディングでの危険信号

  • 空中戦:肘を振る、後方から体勢を崩す、頭部への接触は重く評価。
  • スライディング:後方から、ボールに届かない距離、両足・伸びきった足はレッドリスク。

DOGSOとSPAの見分け方:4つの要素で即断する

ゴールまでの距離

近いほどDOGSOに近づく。センターサークル付近でも独走なら要注意。

プレーの方向(ゴールへの向き)

明確にゴールへ向かっているか。外へ流れているならSPAの可能性。

ボール支配・コントロールの可能性

次の一歩でコントロールできるか。長すぎるタッチやバウンドは減点。

守備者の位置と人数

戻りDF、GKとの1対1、カバーの有無。最後方で明確ならDOGSO。

ペナルティエリア内の特例:「ボールをプレーしようとした」場合の扱い

PA内での挑戦でDOGSOになった場合、ボールをプレーしようとしていたなら警告に軽減。抱え・引っ張り・押しや手/腕による阻止(GKの自陣PA内のハンドを除く)は軽減されません。

ハンドの基準が変わりやすい理由と現行の押さえ所

体を不自然に大きくする/肩より上の腕位置

腕で体を不自然に大きくしてシュートやパスをブロックした場合は反則と評価されやすい。肩より上に腕がある場面もリスクが高いです。

意図・距離・反射の評価と『直近の得点』の取り扱い

意図は重視され過ぎませんが、至近距離の反射的接触は考慮されます。攻撃側の手や腕に直前に触れて得点や明白な得点機会に直結した場合は反則として扱われやすい点も押さえておきましょう。

ハンドとカード(DOGSO/SPA/USB)との関係

  • ハンドで有望な攻撃を止めた=警告(SPA)。
  • ハンドで決定機を阻止=退場(DOGSO、GKの自陣PA内のハンドは除く)。
  • 得点しようとする手の使用=反スポーツ的行為で警告の可能性。

GKの例外と注意点

GKは自陣PA内でのハンドが許可されています。ただし、相手との接触や突進での危険行為は通常のファウル・カード基準が適用されます。PA外でのハンドは反則で、状況によりSPA/DOGSOの評価対象です。

セットプレー前後で起きやすいカード事案

つかみ・押さえ・ブロックの基準

CK/FKのマークでの抱え込み、引っ張り、背中へのブロックは警告リスク。継続・目立つ選手には早めの介入が入ります。

GKへの妨害と既定距離不履行

GKの動きを拘束する、視界を故意に遮る、壁に近づくなどはFRDやUSBで警告対象です。

笛前の侵入・ボールキープによる遅延

主審の合図前にPAへ侵入、ボールを抱えて離れない、キッカー妨害のフェイント過多は遅延やUSBの警告となります。

カードが出なくてもリスクが高い行為を知る

グレーゾーンの手の使い方と身体の入れ方

肘や腕で相手の進路を封じる、軽い引きでスピードを止めるなどは累積で警告やPKを招きます。腕は脇を締め、肩で入るのが鉄則。

接触のない妨害(インピーディング)の落とし穴

ボールがない相手の進路妨害は間接FK。カウンター中ならSPAで警告の可能性もあります。

感情的リアクションが招く連鎖(異議→SPA→二枚目)

判定に抗議→リスタートが遅れる→守備が揃わずSPA→二枚目で退場、の負の連鎖は実戦で多発。5秒で切り替える習慣が大切です。

実戦で迷わない『優先順位フレーム』

ゾーン優先(どこで起きたファウルか)

中央・自陣高い位置・PA周辺は影響が大。リスクを1段上に見積もる。

インテンシティ優先(接触の質・速度・部位)

足首上、スパイク裏、助走付き、空中の頭部接触はレッド寄り。迷ったら安全側で。

タクティカル優先(攻撃の有望度)

数的不利のカウンター、縦パス通過直後はSPA/DOGSOの主戦場。止めるなら「遅らせる」守備を選ぶ。

マナー優先(言動・態度・集団抗議)

異議はチーム全体の評価を下げます。代表者のみ短く、敬意を持って。

選手と指導者のリスク管理:カードを減らす行動設計

ファウル後5秒のリセットルール(言動・位置取り)

笛が鳴ったら5秒で深呼吸→主審へ一言だけ→背中を向けて守備位置へ。これだけで異議と遅延の大半を回避できます。

守備の体の向きと手の位置トレーニング

  • 半身の守備姿勢で抜かれても「遅らせ」やすく、レックレス回避。
  • 腕は脇を締めて胸前、押し込みは肩と胸で。ハンドと引っ張りを防ぐ。

カード提示後のチームマネジメント(フォーメーションと役割調整)

警告持ちの守備的選手は、タックル頻度と対人局面を減らす配置に。退場時は5分限定の簡易プラン(どこを捨てるか、誰が走るか)を事前共有しておくと被害を最小化できます。

よくある誤解Q&A(実戦での勘違いを正す)

ボールに触れればタックルは合法?

いいえ。ボールに触れても、相手への無謀・過度な接触があれば警告・退場の対象です。相手に先に当たれば当然ファウル。

ペナルティエリア内ならDOGSOは常にイエロー?

いいえ。「ボールをプレーしようとしたチャレンジ」の場合のみ軽減され得ます。抱え・引っ張り・押しや手/腕での阻止(GKの自陣PA内のハンド除く)は退場の対象です。

ユニフォームを脱ぐ祝賀は状況次第でセーフ?

いいえ。得点後のシャツ脱ぎは原則警告です。重要試合ほど徹底されます。

相手に触れていなければ暴力行為にならない?

いいえ。暴力的な「試み」や、つば吐き・かみつきに向けた動作は接触がなくても退場となる場合があります。

キャプテンなら強い抗議が許される?

いいえ。キャプテンに規律上の特別扱いはありません。礼儀正しく簡潔に。

トレーニングドリル:イエローカード・レッドカードを減らす実戦メニュー

レックレス回避の1対1速度調整ドリル

縦10mのレーンで守備者は3速(ゆっくり→等速→後退)を合図で切替。最後の1mで足を出さず並走に切替える癖をつけ、無謀な差し込みを防ぎます。

ハンドを防ぐ脇締めフットワークと距離管理

サイドでのブロック練習。腕は胸前で固定し、1.5mの間合いからインステップでブロック。至近距離の反射を想定した連続シュートで「体で」防ぐ習慣を作ります。

SPAを犯さないトランジション整備(カバーシャドーと遅らせ)

失った瞬間の5秒ルール。最初の守備者は外切りで遅らせ、二人目が背後ケア。手を使う代わりに「角度」で止める再現を繰り返します。

試合前チェックリスト(選手/指導者向け)

リーグ通達とレフェリー傾向の確認

今季の重点(ハンド、抱え込み、異議など)を共有。笛の基準に早く適応します。

セットプレー時の役割とコールの統一

誰がGK保護、誰が第2ポスト、誰が審判へ声掛け担当か。合言葉で混乱を抑制。

感情トリガーの共有と代替行動プラン

熱くなる場面(判定、挑発、ラフプレー)を想定し、深呼吸、距離を取る、キャプテンに任せる等の代替行動を決めておく。

まとめ:イエローカード レッドカード 違いを実戦で迷わない基準

三軸(強度・影響・意図)で即断する

危険なら強度で止める、有望度でSPA/DOGSOを見極める、マナー違反は早めに正す。この順番が迷いを消します。

勝敗を左右する『一枚』を未然に防ぐ行動へ

5秒リセット、腕をしまう、遅らせる守備、役割の事前共有。小さな徹底が一枚を消し、試合を守ります。イエローカード レッドカードの違いを理解したら、次は日常のトレーニングに落とし込み、実戦で「迷わない自分」を作っていきましょう。

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