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試合後 リカバリー食 科学で解くたんぱく質と糖質の最適タイミング

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勝敗を分けるのは、試合中のプレーだけではありません。試合後の数時間をどう過ごし、何をどう食べるか。ここに科学的なセオリーを持てるかどうかで、翌日のキレ、連戦の粘り、ケガのリスクが変わります。本稿では「試合後 リカバリー食 科学で解くたんぱく質と糖質の最適タイミング」をテーマに、エビデンスにもとづいた実践的なやり方を、無駄なくわかりやすくまとめます。

導入:試合後 リカバリー食を科学で解く

試合直後の身体で何が起きているか(筋損傷・グリコーゲン枯渇・脱水)

90分(延長なら120分)のサッカーは、全身に小さな損傷とエネルギー枯渇をもたらします。

  • 筋損傷:スプリント、方向転換、着地衝撃で筋線維に微細なダメージ。炎症反応が高まり、修復に材料(アミノ酸)と時間が必要。
  • グリコーゲン枯渇:筋内と肝臓の糖の貯金が目減り。特にハイインテンシティ反復が多いMF・サイドは大きく減ります。
  • 脱水と電解質喪失:汗で水とナトリウム(塩分)を失い、体温調節と循環効率が低下。回復の遅れや痙攣のリスクも。

回復の優先順位:糖質・たんぱく質・水分と電解質の役割

  • 糖質(炭水化物):グリコーゲン再合成の主役。最初の数時間がスピード勝負。
  • たんぱく質:筋タンパク合成(MPS)を高め、修復と適応を後押し。ロイシン量が鍵。
  • 水分・電解質:再水和は失った体重の約1.5倍の量を目安に、ナトリウム入りで。

「試合後 リカバリー食 科学で解くたんぱく質と糖質の最適タイミング」の全体像

  • 0〜30分:手早く吸収される糖質+たんぱく質を同時に、少量から。
  • 30分〜4時間:糖質は1.0〜1.2 g/kg/時、たんぱく質は0.3 g/kgを2回以上に分割。
  • 就寝前:吸収の遅いカゼイン中心(0.4 g/kg)で夜間の合成を支える。
  • 24〜48時間:通常食に戻しつつ、中GIの糖質と十分なたんぱく質・水分で微損傷を回収。

たんぱく質と糖質の「最適タイミング」を定義する

ゴールデンタイムの再定義:最初の30分で何が有利になるか

「ゴールデンタイム」は魔法ではありませんが、理にかなっています。試合直後は血流が良く、グリコーゲン合成酵素が活性化。ここで糖質を入れると再合成が速く進み、たんぱく質を加えると筋合成刺激を逃しません。特に食欲が落ちやすい直後は、液体や半固形(ゼリー・ヨーグルト)の使い勝手が抜群です。

同化ウィンドウは3〜4時間続く:単発ではなく複数回摂取が鍵

筋タンパク合成の高まりは数時間持続します。逆に言えば、1回の大量摂取よりも、0.3 g/kgのたんぱく質を3〜4時間おきに繰り返す方が効率的。糖質も同様で、最初の4時間は毎時1.0〜1.2 g/kgを目安に小分けに入れると、胃腸に優しく、合成速度も維持できます。

24〜48時間の回復サイクルで考える“試合後”の範囲

筋の炎症と修復、神経系のリセットには24〜48時間がかかります。連戦や中2日のスケジュールでは、このウィンドウを見据え、初日(当日)に素早い補給、2日目に通常食での満たし直し、という二段構えで考えるのが現実的です.

糖質の最適タイミングと量:グリコーゲン再合成を最大化

最初の4時間は1.0〜1.2 g/㎏/時:高強度試合後の基準

素早い回復が必要なときの目安です。例:体重70 kgなら、毎時70〜84 gの糖質を4時間(合計280〜336 g)。この量を固形+液体で分割すると現実的です。

高GIと中GIの使い分け:吸収速度と胃腸の負担を両立

  • 0〜2時間:高GI(白米のおにぎり、食パン、うどん、スポーツドリンク、果汁ジュース、熟したバナナ)。
  • 2〜6時間:中GI(パスタ、そば、雑穀入りご飯、ヨーグルト+フルーツ、シリアル)。
  • 食物繊維や脂質の多い食品は前半は控えめに。消化が遅く、糖の供給速度を下げます。

連戦(24〜48時間以内)の場合の糖質戦略と優先順位

  • 最優先:最初の4時間の糖質補給を外さない。
  • 次に:就寝前までに総量6〜8 g/kg/日を目安に(体重70 kgなら420〜560 g)。
  • 余力があれば:翌朝も中GI中心で2〜3 g/kgを追加し、練習・試合内容で微調整。

カフェイン併用での上乗せ効果と年齢・就寝時間への配慮

一部研究では、糖質とカフェインの併用がグリコーゲン再合成を高める可能性が示されています。ただし用量が高いと睡眠を妨げます。夜の試合後は無理に狙わず、昼間のキックオフや早い時間帯に限って、1〜3 mg/kg程度を上限目安に検討するのが現実的です。個人差が大きいので、公式戦での初使用は避けましょう。

たんぱく質の最適タイミングと量:筋タンパク合成を逃さない

初回投与は0.3 g/㎏(目安20〜40 g)+ロイシン2〜3 g

たんぱく質は「量×ロイシン」がポイント。体重70 kgなら約20〜25 g、ハードな選手は30 gでも可。ロイシンは1回2〜3 gを目安に。ホエイや乳製品はロイシンが多く、直後の1回に適しています。

3〜4時間おきの分割摂取と就寝前カゼイン0.4〜0.5 g/㎏

  • 日内:0.3 g/kgを3〜4時間おきに2〜3回(食事に合わせてOK)。
  • 就寝前:消化がゆっくりなカゼインを0.4 g/kg(70 kgで約28 g、製品なら30〜40 g)で、夜間の合成を支援。

動物性と植物性の違い:ロイシン含有量と組み合わせで補う

  • 動物性(ホエイ・乳・卵・肉・魚):ロイシンが多く消化も速い(ホエイ)。
  • 植物性(大豆・エンドウ・米):ロイシンがやや少なめ。量をやや増やす、複数ソースを混ぜる、またはロイシンを補うと狙いを満たしやすい。

糖質+たんぱく質を同時に摂るべき理由

グリコーゲン再合成の速度と筋タンパク合成の相乗効果

糖質とたんぱく質の同時摂取は、インスリン分泌を高め、筋への栄養取り込みを促します。十分量の糖質が摂れていれば、グリコーゲン再合成そのものの上乗せは限定的ですが、筋タンパク合成の観点では有利。結果として「走れる筋肉」を早く取り戻せます。配合比は3:1〜4:1(糖質:たんぱく質)が目安。

食欲が落ちる時の液体栄養・ハーフソリッドの活用

  • スポーツドリンク+プロテイン(シェイク)
  • 飲むヨーグルト+バナナ
  • おかゆ・うどん+温泉卵

まずは「入る形」を優先し、固形食は30〜60分後に。

脂質・食物繊維・ポリフェノールの扱い:摂る量とタイミング

  • 0〜2時間は脂質・食物繊維は控えめ(胃腸負担軽減)。
  • 2時間以降は良質な脂質(魚、ナッツ、オリーブ油)を適量でOK。
  • ポリフェノール(タルトチェリー、ベリー等)は回復サポートに役立つ可能性。ただし慢性的に高用量だとトレーニング適応を鈍らせる恐れがあるため、大会期や連戦時に絞って活用。

水分・電解質のリカバリー設計

発汗量から逆算:失った体重×1.5倍の再水和が目安

試合前後で体重差を測ると、失った水分量の目安がわかります。例えば1.0 kg減っていれば、1.5 Lの摂取を数時間かけて分割で。トイレが近くなるのを避けるため、ナトリウムを含む飲料と一緒に。

ナトリウム500〜700 mg/L・糖質6〜8%の飲料設計

  • ナトリウム:500〜700 mg/L(しょっぱさを感じる程度)。
  • 糖質濃度:6〜8%(600〜800 mg/mL)。吸収と胃腸のバランスが良い。
  • 暑熱や大量発汗では、やや高めのナトリウムや塩タブレットの併用も検討。

暑熱・高湿度・長距離移動日に起きやすい失敗と対策

  • 失敗:水だけを大量に飲む → 対策:ナトリウム入りを基本に。
  • 失敗:移動中に飲食が途切れる → 対策:500 mLボトルと塩分スナックを常備。
  • 失敗:冷えすぎで胃が固まる → 対策:常温〜やや冷たい程度に。

体重・ポジション・試合強度別の実践ガイド

60/70/80 kg別の糖質・たんぱく質・水分の目安

  • 糖質(最初の4時間):60 kg=毎時60〜72 g、70 kg=70〜84 g、80 kg=80〜96 g。
  • 初回たんぱく質:0.3 g/kg → 60 kg=18 g、70 kg=21 g、80 kg=24 g(実用上は20〜40 g)。
  • 就寝前カゼイン:0.4 g/kg → 60 kg=24 g、70 kg=28 g、80 kg=32 g。
  • 再水和:失った体重×1.5 L(例:1.2 kg減 → 約1.8 L)。

MF/サイドの高走行ポジション vs DF/GKの違い

  • MF/サイド:高強度反復が多く、糖質の優先度がより高い。上限の1.2 g/kg/時を狙う。
  • DF/GK:スプリントは鋭いが総走行は相対的に少ない。1.0 g/kg/時でも足りる日が多い。

延長戦・PK戦・人工芝で筋ダメージが増える日の工夫

  • たんぱく質総量を日内で1.6〜2.2 g/kgへ引き上げ(食事+サプリを活用)。
  • 抗炎症を狙いすぎない範囲で、魚(EPA/DHA)や果物・野菜を厚めに。
  • 就寝前カゼインは上限側(0.5 g/kg)も検討。

コンビニ・学食・自炊で組む 試合後リカバリーメニュー

コンビニメニュー:おにぎり+サラダチキン+バナナ+乳製品のテンプレ

  • 0〜30分:スポーツドリンク500 mL+飲むヨーグルト200 mL+バナナ1本。
  • 30〜90分:おにぎり2〜3個+サラダチキン1つ(または卵2個)+低脂肪ミルク200 mL。
  • 追加:どら焼き、あんぱん、カステラは高GIで使いやすい。

学食・寮:丼・麺・スープの組み合わせで糖質と塩分を素早く補う

  • 親子丼+味噌汁+ヨーグルト
  • うどん(温)+おにぎり+小鉢(冷や奴 or 納豆)
  • カレー(中辛)+サラダ(ドレッシング少量)+牛乳

自炊:鍋・パスタ・ライスボウルの定型レシピと作り置き

  • 鶏むね塩麹鍋:鶏むね・豆腐・うどん・野菜。塩分と糖質・たんぱく質を一皿で。
  • ツナトマトパスタ:オリーブ油控えめ、粉チーズでたんぱく質追加。
  • 照り焼きチキン丼:白米+鶏もも+温泉卵。作り置きは冷凍OK。

低予算・アレルギー・乳糖不耐・グルテン対応の選択肢

  • 低予算:米+卵+納豆+ツナ缶で糖質・たんぱく質を安定確保。
  • 乳糖不耐:ラクトースフリー牛乳、ヨーグルト(低乳糖)、ホエイアイソレート。
  • グルテン対応:米粉パン、十割そば、コーン・米シリアル、ライスパスタ。
  • 植物性中心:ソイ・エンドウプロテインをブレンド、ロイシン目安を満たす。

ユース世代・社会人・家族サポートで変わる実装力

成長期は胃容量と学校時間割に合わせた“分割補食”が現実的

一度に食べられない場合は、30〜60分間隔で小分け(ゼリー→おにぎり→乳製品→果物)。部室に常備できる非常食(カロリーバー、個包装パン)をルーティン化。

翌日の学業・仕事パフォーマンスを崩さない夜の食べ方

  • 夜遅い試合後は、脂っこい食事を避け高GI→中GIへ段階移行。
  • カフェインは夕方以降は控える(睡眠優先)。
  • 就寝前シェイク(カゼイン)で夜間合成と空腹対策を両立。

親が用意しやすい持ち運びセットとクーラーバッグ運用

  • 保冷バッグ+保冷剤、500 mL飲料2本、飲むヨーグルト、バナナ、サンドイッチ、チーズ、カトラリー。
  • 帰路で食べきれなければ、自宅到着後すぐに次のセットへ繋ぐ。

サプリメントの活用:必要と十分のライン

ホエイ・カゼイン・ソイの選び方とロイシン目標値

  • ホエイ(速吸収):直後に最適。1回20〜30 gでロイシン2〜3 gを満たしやすい。
  • カゼイン(遅吸収):就寝前に30〜40 g。
  • ソイ・ピー(中速):量をやや増やすかブレンドでロイシン量を確保。

クレアチン・タルトチェリー・オメガ3:エビデンスの要点と限界

  • クレアチン:3〜5 g/日の継続摂取は高強度反復能力と回復を支える可能性。糖質・たんぱく質と一緒に。
  • タルトチェリー:濃縮30 mL×1〜2回/日を大会期に。筋肉痛の軽減報告あり。一方、慢性的な高用量は適応を鈍らせる恐れ。
  • オメガ3(EPA+DHA):1〜2 g/日程度で筋肉痛や炎症のマネジメントに寄与の可能性。魚食が少ない人に有効。

アンチ・ドーピング:第三者認証・ロット管理のチェック項目

  • 第三者認証(例:Informed Sport、NSF Certified for Sport)取得製品を選ぶ。
  • ロット番号・賞味期限を記録し、開封日を管理。
  • 新製品を重要試合の直前に試さない。

よくある失敗と神話の検証

「プロテインは多いほど良い」は誤り:1回量と総量の考え方

1回に大量摂取しても合成は頭打ち。0.3 g/kgを基準に、日合計は1.6〜2.2 g/kg(試合期)を目安に、食事中心で満たすのが基本です。

「糖質は太る」ではなく「タイミングが鍵」という事実

試合後の糖質はエネルギーとしてではなく、枯れたグリコーゲン補充に優先的に使われます。必要なタイミングで必要量を入れることが、体組成にもパフォーマンスにもプラス。

「水だけで十分」にならない理由:ナトリウムと糖の役割

水だけだと血中ナトリウムが薄まり、吸収も遅くなります。ナトリウムと6〜8%糖質の飲料が、素早い再水和に最適です。

24〜48時間のリカバリープラン例(タイムライン)

0〜30分:携行できる即応メニュー

  • スポーツドリンク500 mL+ホエイ20〜30 g(混ぜても可)
  • または 飲むヨーグルト200 mL+バナナ1本

30分〜2時間:高GI中心+十分な水分・電解質

  • おにぎり2〜3個+サラダチキン、うどん+温泉卵
  • 塩分のあるスープ、味噌汁を合わせると再水和が進む

2〜6時間:通常食へ移行しながら分割たんぱく質

  • パスタor丼+ヨーグルト+果物、間食でプロテイン20 g
  • 糖質は引き続き合計1.0〜1.2 g/kg/時のゾーンを目安に

就寝前:カゼイン主体で夜間の合成を後押し

  • カゼイン30〜40 g、またはカッテージチーズ・ギリシャヨーグルト
  • 夜遅い日はカフェインは避け、消化に優しい軽食で

翌朝〜24時間:中GI中心・練習の有無で量を調整

  • オートミール+牛乳+果物、全粒パン+卵+ヨーグルト
  • 軽練習あり:糖質3〜4 g/kg/日、オフ:2〜3 g/kg/日程度

48時間まで:微損傷の回復と免疫ケアを両立

  • カラフルな野菜・果物、魚、発酵食品を意識
  • 睡眠7〜9時間、日中の軽い散歩で血流促進

まとめ:科学的リカバリーで次の試合に備える

タイミング・量・実装の三位一体がパフォーマンスを左右する

「何を食べるか」だけでなく、「いつ・どれだけ・どうやって続けるか」まで落とし込みましょう。試合後 リカバリー食 科学で解くたんぱく質と糖質の最適タイミングは、難解な理論ではなく、数個のシンプルなルールの積み重ねです。

明日も走れる身体を作るための最小限チェックリスト

  • 0〜30分:糖質+たんぱく質を少量でも口にする(液体OK)。
  • 0〜4時間:糖質1.0〜1.2 g/kg/時、たんぱく質0.3 g/kgを分割。
  • 再水和:失った体重×1.5 L、ナトリウム500〜700 mg/L。
  • 就寝前:カゼイン0.4 g/kg、カフェインは避ける。
  • 翌日:中GI中心で総量調整、野菜・果物・良質な脂質も忘れずに。
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