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1対1 練習メニューをやさしく解説|抜かせない守備・抜ける攻撃

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1対1 練習メニューをやさしく解説|抜かせない守備・抜ける攻撃

1対1で勝てると、試合は一気に楽になります。守備なら時間を作って味方を助け、攻撃なら一歩で相手の背中を取り、ゴールに直結。この記事では、1対1の原則と「そのまま使える練習メニュー」をやさしく解説します。図や画像は使わず、距離・時間・声かけまで具体的にまとめました。今日の部活や自主練から、すぐに取り入れてください。

1対1の重要性と本記事の使い方

1対1が試合を左右する理由と影響範囲

1対1は「ゴール前」「サイド」「中盤の起点」とあらゆる局面に現れます。1人が勝てれば数的優位が生まれ、押し込めます。逆に守備で遅らせられれば、自陣が整い失点を防げます。セットプレーやビルドアップでも、最初と最後は結局1対1。だからこそ、全ポジションに共通の価値があります。

攻守共通の3要素:認知・判断・実行

  • 認知:相手の重心、助走、カバー、スペース、ライン位置を素早く拾う。
  • 判断:仕掛ける/待つ、内/外、縦/横、スピードの上げ下げ。
  • 実行:初速、減速、タッチ方向、体の当て方、足の出し方。

上手くいかない時は、この3つのどこで詰まっているかを切り分けましょう。

練習設計の基本(安全・人数・時間・負荷・評価)

  • 安全:接触前の減速ルール、スパイク/すね当ての確認、声で止める合図を決める。
  • 人数:2〜6人/ステーションが回しやすい。待機時間は短く。
  • 時間:1レップ10〜20秒、レストは同等以上。セット間は2〜3分休む。
  • 負荷:距離とスペースで管理。狭い=技術、広い=スピード。
  • 評価:突破率・被突破率など簡単な数値化で継続チェック。

ウォームアップ:1対1に直結する動き作り

可動域と減速能力を高める準備運動

  • ダイナミックストレッチ:股関節(開く/閉じる)、ハムのキック、足首回し。
  • 減速ドリル:5m加速→2歩でストップ×6本。胸を立て、最後は小刻みステップで停止。
  • サイドランジ→切り返し:片脚に体重を乗せ、膝はつま先の向きとそろえる。

アジリティと反応スピードの活性化

  • リアクションジャンプ:合図で前後左右に1歩ジャンプ×各6回。
  • カラーコール:色や番号の合図に2歩で反応→ストップ。目と足の連動を起こす。

ボールタッチの質を整える基礎ドリル

  • インアウト×足裏ロール×V字ターン:各30秒×2セット。タッチ音が一定になるのが目安。
  • 1歩目つなぎ:足裏ストップ→インサイドで前に1mだけ押し出す×8本。初速の準備。

守備編:抜かせない1対1の原則

アプローチの質(距離・角度・減速)

  • 距離:最初は速く、約2m手前で減速。最後の2歩を小さく刻む。
  • 角度:ゴールや中央を隠すように半身で寄せる(中切り/外切りを意図的に)。
  • 減速:腰を落とす→踵は浮かせる→体重は母指球。これで一歩目が出る。

スタンスと体の向き(内切り・外切りの使い分け)

守りたい方向を背中でふさぐイメージ。内を消すなら利き足側を半歩前に、外を消すなら逆。両足は肩幅より少し広く、膝は前へ。

遅らせと奪いどころ(待つ・奪うの判断基準)

  • 遅らせ:相手が前を向いた瞬間は無理せず速度を落とさせる。
  • 奪い:タッチが長い、ボールが体から離れた、視線が下がった瞬間に前足で触る。

ガイド守備:ライン・味方・スペースを活用する

タッチラインは3人目の味方。外へ追い込み、味方のカバーに誘導。自分だけで完結しようとしないのがコツです。

ボール奪取の技術(足の出し方・ボディコンタクト)

  • 足の出し方:前足のインサイドでボールの進行方向を止め、後ろ足で回収。
  • コンタクト:肩で並走→同じ歩幅で押し負けない姿勢。腕は広げすぎない。

ファウルをしない守備のコツとルール理解

  • 手:掴む/押すはNG。胸の前で小さく構える。
  • 足:相手の足ではなくボールに向ける。遅れたら無理に刈らない。
  • 接触:ボールが争点にあるタイミングで、肩同士の接触は合法の範囲。

守備の1対1 練習メニュー

3〜5mアプローチ&ストップ(設定・ルール・コーチング)

設定

距離5m。攻撃者は静止、守備者が合図でスタートし2m手前で減速→正対。10〜15秒で1レップ。

ルール

ボールには触らない。距離・角度・減速のみ。3本に1本だけ軽いジャブ(前足で触るフェイク)。

コーチング

  • 最後の2歩を小さく、胸は前、膝は前。
  • 角度で中央を消し、外へガイド。

評価

ジャブ成功率、ブレない停止姿勢(ぐらつき回数)。

シャドウディフェンス/ミラードリル(設定・狙い・評価)

設定

縦横3×3mの枠。攻撃者はドリブル、守備者は1mの距離を保って鏡のように追従。20秒。

狙い

距離管理と横移動のフットワーク。フェイントに反応しすぎない我慢。

評価

距離1m±50cmを維持できた時間、抜かれゼロの本数。

1対1サイドチャネル(ガイド守備特化:設定・ポイント・発展)

設定

幅5m×長さ12mのサイドレーン。攻撃者は縦突破でゴールライン通過を狙う。守備者は外へ追い込み、ゲート(幅1.5m)を守る。

ポイント

内を消す半身、タッチラインを味方に。スプリント→減速の切り替え。

発展

後方カバー役を追加して2対2へ移行(奪えたらすぐカウンター)。

ゲート守備1対1(複数ゲートを守る:意思決定と間合い)

設定

幅12mに小ゲートを3つ(各1.5m)。攻撃はどれでも通過OK。守備は最も危険なゲートを消しつつ、他を見せて誘導。

ポイント

身体の向きで「行っていい方向」を見せる。フェイクに釣られない距離1.5〜2m。

リカバリーディフェンス(背後からの対応・走り直し)

設定

攻撃者が先行2m。守備者が追走して並走→ガイド→外へ押し出し。ゴールは10m先。

ポイント

真正面に入らず斜め後ろから肩を並べる。最後は足の出し方を前→後の順で。

制限付き1対1(逆足・片足タックル制限でフォーム矯正)

設定

守備は「前足のみタッチ可」など制限をかけ、正しい間合いを体で覚える。

狙い

無理足でのファウルや、届かない足出しの矯正。

攻撃編:抜ける1対1の原則

認知の焦点(相手の重心・利き足・カバー状況)

  • 重心がどちらに落ちているか(かかと重心は縦が刺さりやすい)。
  • 利き足側は踏ん張りやすい=逆側が狙い目。
  • カバーの位置と距離で出口(縦/内)を選ぶ。

リズムとフェイント(速緩・間・目線)

走る→止まる→一拍の「間」で相手を立たせ、次の一歩で抜く。目線や肩もフェイクの一部。

初速と加速(1歩目で前を取る仕組み)

ボールを体の外側45度に押し出し、最初の3歩を最速で。接触される前に身体を入れる。

タッチ方向とボール保持(内外・足裏・インアウト)

  • 内へのインアウト:短いリズムで相手の重心を割る。
  • 足裏引き出し:角度を変えて相手の足を空振りさせる。
  • 外への押し出し:ライン際は縦へスピード勝負。

身体の使い方(肩入れ・シールド・接触の受け方)

並走時は肩を先に入れてラインを確保。骨盤を相手とボールの間に置く。接触は斜めに受け、倒れずに前進。

仕掛ける距離とタイミング(待つ・誘う・狙う)

相手との距離は1.5〜2mで仕掛けやすい。あえて静止→一歩でズレを作るのも有効。

攻撃の1対1 練習メニュー

ストップ&ゴー/ダブルタッチ1対1(設定・狙い・発展)

設定

8×12m。中央で静止→ストップ&ゴーまたはダブルタッチで突破し、エンドライン通過で1点。

狙い

「間」からの初速。二つ目のタッチで相手の足幅を割る。

発展

守備に「内消し」制限を付与→外を餌にして内に切る訓練。

サイド1対1→クロス or シュート(実戦連動)

設定

サイド10×15m。突破したら素早くクロス、もしくはエリア角からシュート。時間制限10秒。

狙い

突破後の「出口設計」。抜いた瞬間に次のプレーへ。

ナンバーズ1対1(ランダム呼び出しで認知強化)

設定

両列に番号。コーチが「3!」と呼ぶ→該当者が即1対1。ボール位置もランダムに置く。

狙い

不意のスタートで認知と初速を鍛える。出遅れない癖づけ。

背後スペース突破1対1(ゲート通過で初速強化)

設定

守備の背後10mにゲート。攻撃は相手を引き付け→一歩で背後へ。通過で得点。

ポイント

ボールを前に出す方向と身体の向きを一致。最初の3歩は全力。

狭小エリアのキープ1対1(圧下でのボール保持)

設定

4×4m。奪われず5秒保持で1点。ライン外は相手ボール。

狙い

身体の向きとシールド、細かいタッチ、半身作り。

逆足限定1対1(両足化とタッチ質向上)

設定

攻撃のタッチは逆足のみ。守備の制限も交互に設定。

狙い

得意方向だけに頼らない突破と出口の幅を広げる。

目的別・ポジション別の1対1メニュー選び

ウイング/SB:外剥がしと縦突破

サイドチャネル、背後スペース突破、クロス連動が最優先。初速と長いタッチの切り替えを多めに。

CF:背負い・反転・身体の当て方

狭小キープ、片肩シールド→ターン、ゲート守備の逆(守備を外へ誘導して内反転)。

IH:縦ズレの作成と斜め突破

ダブルタッチ1対1、ゲート複数での判断、抜いた後のスルーパス決断をセットで。

CB:前向き守備と遅らせの両立

アプローチ&ストップ、リカバリー、ガイド守備の精度。無理に狩りにいかない我慢。

GK対1:アプローチ・ブロッキング・ステイビッグ

距離を詰める→低い姿勢で腕を広げる→最後はブロック。股抜きに注意して膝は内側に。

年代・レベル別の負荷調整と安全管理

中高生・大学/社会人の強度目安と休息比率

  • 中高生:10〜15秒×6〜8本×2セット、レストは競技時間の2倍目安。
  • 大学/社会人:12〜20秒×6〜8本×3セット、局所疲労を見て調整。

初級・中級・上級の制限設定と発展プロgression

  • 初級:狭いコート、速度を落としてフォーム重視。
  • 中級:ゲートや方向制限で判断負荷を追加。
  • 上級:ランダム開始、追走/カバーを入れ、連続プレー化。

接触の安全基準・用具・コンタクト導入の順序

  • 導入:非接触→肩接触→競り合いの順。
  • 用具:すね当て必須、紐・ピンの確認。滑りやすい面は強度を落とす。
  • 中断合図:笛/声で即停止。痛みは無理しない。

上達を可視化:計測と評価のやり方

KPI例:突破率・被突破率・奪取率・シュート創出数

  • 突破率=突破成功/試行。
  • 被突破率=抜かれ/対峙回数。
  • 奪取率=ボール奪取/対峙回数。
  • シュート創出数=突破後のシュート/アクション。

タイム/回数ベースの簡易テスト(GPSなしで可)

  • 5m→止め→5mダッシュの合計タイム。
  • 20秒保持チャレンジの成功回数。
  • 10本中の突破/被突破の数。

週間・月間の進捗レビューとフィードバック法

  • 週:KPIを1つだけ選び改善策を1つ書く。
  • 月:動画1本を見返し、良かった/直す各3点。
  • 声かけ:成功の理由を言語化→再現性を高める。

コーチングキーフレーズ集(守備・攻撃)

守備の声かけ:距離・角度・待つ/奪うの合図

  • 「2mで止めて半身!」
  • 「外へガイド、内は消して!」
  • 「今は遅らせ、次タッチで奪う!」

攻撃の声かけ:間・初速・前を取る合図

  • 「一拍おいてズドン!」
  • 「3歩で前を取る!」
  • 「出口見てから仕掛けよう!」

自己対話・セルフトークの例

  • 「目は広く、足は小さく、今が一歩。」
  • 「外を見せて内へ、我慢して待つ。」

よくある悩みと解決策

フェイントが通用しない:重心の読みと間の作り方

大きく揺さぶるより、止まる→一拍→加速の質を上げる。相手の踵が落ちた瞬間がサイン。

当たり負けする:接触前の準備と支点の置き方

接触の0.3秒前に膝を曲げ、肩を先に入れる。骨盤と前腕でボールを守る。

突破できてもロストが多い:出口の設計とリスク管理

抜く前に「次はクロス?シュート?パス?」を決めておく。端から端へ逃げない。

ファウルが多い:足の出し方・手の使い方の改善

届かない距離で刈らない。手は広げず、胸前でバランス。遅れたら遅らせに切り替え。

練習では勝てるが試合で勝てない:文脈化と状況再現

開始位置、カバー、時間制限を試合に近づける。連続プレーと疲労下で実施。

自宅・少人数でできる1対1準備ドリル

壁当て+初速発進ドリル

壁1mでインサイドパス→返ってきたら足裏で止め、外45度に1m押し出して3歩ダッシュ×6本。

ミラー&シャドウ(家族・ペアで反応強化)

リビング3mでリーダーの左右一歩移動に0.3秒以内に追従×20秒。役割交代。

コーンドリブル→1歩目加速の連結

コーン3本をジグザグ→最後はボールを前に押し出し3歩全力。フォーム確認に最適。

合図反応トレ(色・番号・音への即応)

カードや音声アプリの合図で方向決定。見て→決めて→動くの速度を上げる。

フィジカル要素:反復を支える身体作り

俊敏性と減速能力(RFD・ブレーキング)

  • 5mダッシュ→2歩ストップ×6本。
  • 左右へのカットステップ×各8回。

片脚バランス・股関節可動・体幹安定

  • 片脚デッドリフト(自重)×8。
  • ヒップエアプレーン×6。
  • プランク30〜45秒。

ハムストリング/内転筋のケアと予防

  • ノルディックハム(軽め)/イスで代用。
  • コペンハーゲンプランク(膝バージョン)。

クールダウンとリカバリーの基本

  • 心拍を落とすジョグ3分。
  • ストレッチ(ハム・内転・ふくらはぎ・股関節)。
  • 水分と糖+たんぱくの補給。

練習設計テンプレートと週間プラン例

45分セッション例(学校部活動向け)

  • 5分:動的ストレッチ+減速ドリル。
  • 10分:シャドウディフェンス。
  • 15分:サイドチャネル1対1(攻守交代)。
  • 10分:ストップ&ゴー1対1→シュート。
  • 5分:整理・KPI記録。

90分セッション例(クラブ・セレクション向け)

  • 10分:可動域+反応系。
  • 20分:アプローチ&ストップ→ゲート守備。
  • 25分:背後スペース突破1対1→クロス/フィニッシュ。
  • 20分:ナンバーズ1対1(ランダム開始)。
  • 10分:ゲーム形式(連続1対1を内包)。
  • 5分:クールダウン+レビュー。

試合前日・翌日の調整メニュー

  • 前日:フォーム確認(シャドウ/軽い1対1)、合図反応、10〜12分の軽負荷。
  • 翌日:可動域、低強度のタッチ、短時間の動画レビュー。

FAQ:1対1 練習メニューのよくある疑問

最適なコートサイズとゴール設定は?

短い距離で技術を磨くなら6〜8m、スピード勝負なら10〜15m。出口が見えるよう、ゲートやライン通過で得点化するのがおすすめです。

相手が速い・強い場合の対処は?

守備は早めに減速して外へガイド。攻撃は一拍の間→初速勝負か、体を当ててからの縦ズレ作りが有効。

逆足はどの程度まで鍛えるべき?

仕掛け・キック・ファーストタッチの3点で「迷わず使える」レベルを目標に。週2本の逆足限定1対1が目安。

1対1とグループ戦術のつなぎ方は?

突破後の役割(クロス、カットバック、リターン)を決めたルールでゲームに組み込むと自然につながります。

まとめ:明日から使えるチェックリスト

守備のチェック項目(距離・角度・タイミング)

  • 2mで減速できた?
  • 守りたい方向に半身を作れた?
  • 遅らせと奪いの切り替えは明確?

攻撃のチェック項目(認知・初速・出口設計)

  • 相手の重心とカバー位置を見た?
  • 一拍の「間」から3歩で前を取れた?
  • 抜いた後のプレーを決めていた?

セッション後の振り返りテンプレート

  • 今日のKPI:突破率/被突破率/奪取率/創出数
  • 良かった3つ/直す3つ
  • 次回の1つだけの改善ポイント

あとがき

1対1は地味な反復の積み重ねですが、成果が出ると一気に景色が変わります。大事なのは「認知→判断→実行」を分けて鍛え、最後に試合文脈で統合すること。今日のメニューから1つ選んで、1週間続けてみてください。数字で進歩を感じられれば、練習はもっと楽しくなります。さあ、次の1歩を最速で踏み出しましょう。

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