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オフサイドのセカンドプレーとは?迷いを断つ実例ガイド

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「オフサイドのセカンドプレーって結局なに?」―― 試合後のロッカーで必ず上がる疑問に、実戦で迷わない判断軸で答えます。ここで言う“セカンドプレー”は、ルール上の正式名称ではありません。ですが、現場でよく使われる「オフサイドの基準が新しくリセットされる瞬間」を指す便利な言葉です。本稿はIFAB Laws of the Game 2024/25(Law 11:Offside)の内容に沿って、ディフレクション/セーブ/故意のプレーの違いを平易に解説。グレーな場面を10の実例で整理し、選手・指導者が“判断の1秒”を短くするためのフローとトレーニングまで落とし込みます。図解や動画なしでも迷いを断てるよう、言葉の設計にこだわりました。

導入:なぜ「オフサイドのセカンドプレー」で迷うのか

試合で頻発する“判断の1秒”をどう短くするか

オフサイドは「味方がボールに触れた瞬間」に位置が固定されます。しかし、その後に相手やゴールポスト、GKの手にボールが当たってこぼれた時、どこで基準が新しくなるのかが難所です。副審も「ウェイト・アンド・シー(少し待ってから旗を上げる)」を徹底しているため、選手側の迷いが長引きやすい。判断を1秒早めるには、「誰が触ったか」「それは何のプレーか」を一瞬でラベリングする習慣が要ります。

セカンドプレーが勝敗を左右する理由

こぼれ球は得点の最大チャンス。たった一歩の“待ち”や“戻り”が、ゴールとオフサイドの境目になります。守備側も同様で、安易な触り方がオフサイド解除(リセット)を招き、逆にピンチを広げることがあります。セカンドプレーの理解は、攻守どちらにも効く「期待値の高い1%改善」です。

結論の先出し:セカンドプレー=「新しい基準点」が生まれる瞬間

いつオフサイドの基準がリセットされるのか

オフサイドの基準は、原則「味方の次のタッチ」でリセットされます。加えて、相手がボールに“故意にプレー”した場合もリセットされます。ただし、相手のプレーが「セーブ(得点を防ぐためのプレー)」であった場合はリセットされません。偶発的な当たり(ディフレクション)もリセットしません。

迷いを断つ3つの鍵(触ったのは誰か/故意か/セーブか)

  • 触ったのは誰か:味方か、相手か、ゴールフレームか、審判か
  • 故意か:相手がボールに対してコントロールやプレーを試みたか(ミスでも故意は成立)
  • セーブか:ゴールへ入る、または非常に近いボールを止めようとしたか(GK以外も含む)

この3点を一瞬で判別できれば、ほとんどのグレーは解消します。

まず押さえるオフサイドの基礎:最新版ルールの要点

判定の基準時点は「味方がボールに触れた瞬間」

オフサイド位置の確定は、味方がボールを「プレー、または触れた瞬間」です。以後、別の味方が触れるまでその瞬間の位置が有効。受ける時に戻っていても、その前の味方のタッチでオフサイド位置だったなら違反の可能性があります。

関与の3類型:プレー干渉/対戦相手への干渉/位置の利得

  • プレーへの干渉:味方が最後に触れたボールをプレー/触る
  • 対戦相手への干渉:視線の遮り、近距離でのチャレンジ、明白な動作で相手の能力に影響
  • 位置の利得(得た利得):ポスト・クロスバー・相手・審判からの跳ね返り、またはセーブの後にボールをプレー

“得た利得”の定義と適用範囲

「得た利得」は、オフサイド位置にいた攻撃者が、ポストや相手からのリバウンド、またはセーブの後にボールをプレーした場合に成立します。つまり、シュートがポストに当たって跳ね返り、それを押し込むのは典型的なオフサイドです。

セカンドプレーの定義:何が「プレーの切れ目」になるのか

味方の次のタッチで新しい判定が始まる

攻撃側にとって最も明快な“切れ目”は「別の味方の次のタッチ」。この瞬間にオフサイド判定の基準時点が新しくなります。したがって、一度関与を避けて“待つ”ことで、次の味方のタッチ後に関与すれば合法になります。

相手のプレーが基準点を更新する条件

相手がボールに「故意にプレー」したらリセット。ただし「セーブ」や「単なる当たり(ディフレクション)」はリセットになりません。ここを見分ける目が、セカンドプレー攻略の核心です。

プレーの“継続”と“切断”を見分ける視点

  • 継続:同じ攻撃の流れ(シュート→セーブ→こぼれ)で、相手の関与がセーブや偶発的なら基準は継続
  • 切断:相手がコントロールやクリアを試みた結果として次の展開が生まれたなら基準は切断(リセット)

「ディフレクション」「セーブ」「故意のプレー」の違いを整理

ディフレクション(偶発的な跳ね返り)とは

予期せぬ近距離や高速のボールが“当たってしまった”だけ。身体のどこかに当たり、選択の余地がほぼない接触。これはリセットしません。

セーブ(得点を防ぐためのプレー)とは

ボールがゴールに入る、または非常に近い状況で、それを止めようとしたプレー。GKに限らず、DFのブロックでも該当します。セーブの後はリセットしない=オフサイドは継続します。

故意のプレー(コントロールを試みた接触)とは

相手がボールに対してプレーを“選び”にいった接触。クリア、トラップ、カット、ヘディング、キックなど、意図したアクションはミスでも故意です。これはリセットします。

どのケースでオフサイドがリセットされるか

  • リセットする:相手の故意のプレー(例:カットを試みたがミス、意図的なヘディング、GKのクロス処理など)
  • リセットしない:セーブ(例:GKのシュートセーブ、DFのライン上ブロック)/ディフレクション(偶発的接触)/ポスト・バー・審判のリバウンド

故意性の見極め:判定の5チェック

距離と反応時間:余裕はあったか

至近距離の弾丸に反応不可ならディフレクション寄り。数歩の余裕があれば故意の可能性が高まります。

身体の向きとバランス:対応の準備はできていたか

構え直し、踏み込み、上半身のひねりなどの「準備動作」が見られたら故意のシグナル。

ボールの軌道変化:読めるスピードと高さだったか

見えていた時間、直線かカーブか、バウンドの読みやすさを総合判断。読める軌道なら故意寄り。

接触の質:コントロール/クリアの意図があったか

面を作って合わせる、強く蹴り出す、狙って頭で弾くなど“目的を伴う接触”は故意と認めやすい。

結果の支配:プレーを“選べた”かどうか

トラップかクリアか、ヘディングの方向選択が可能だったか。選択の余地があれば故意のプレーです。

具体例で理解する:セカンドプレーのグレーゾーン10選

例1:シュートのこぼれ球を押し込む(GKのセーブ後)

結論:オフサイドは継続。セーブはリセットしません。オフサイド位置にいた選手がこぼれを押し込むと「得た利得」に該当します。

例2:DFが足先でわずかに触れた後に得点

結論:状況次第。単に当たっただけならディフレクションで継続。スライドして足を出し、クリアを試みたなら故意=リセット。ミスでもOK。5チェックで判断を補強しましょう。

例3:ヘディングのクリアミス→オフサイド解除?

結論:多くは解除(リセット)。ボールを見てジャンプし、方向をつけて弾こうとしたヘディングは故意のプレーに該当。結果がミスでもリセットされます。

例4:GKのパンチング後の押し込み

結論:シュートに対するパンチング=セーブで継続。ゴールに向かっていないクロス処理のパンチング=故意のプレーでリセット。ボールが「ゴールへ入る/非常に近い」かどうかが分かれ目です。

例5:バックパスをインターセプトした場面

結論:解除(リセット)。守備側の意図的なバックパスは相手の故意のプレー。元の攻撃のオフサイドはリセットされ、インターセプトは合法になります。

例6:クロス→相手に当たって味方にこぼれる

結論:ディフレクションなら継続、カットを試みたならリセット。足を振り抜く、面を作るなど“選んだ接触”なら故意です。

例7:オフサイド位置から戻って受けた場合

結論:戻っただけでは無効化されません。元の味方のタッチ時にオフサイド位置で、そのボールに関与すれば反則。次の味方のタッチ、または相手の故意のプレーが入れば新しい判定が始まります。

例8:シュートがポストに当たって跳ね返る

結論:継続。ポスト・バー・審判からのリバウンドはリセットしません。オフサイド位置の選手が押し込めば「得た利得」で反則。

例9:視線を遮る・チャレンジでの干渉判定

結論:触らなくてもオフサイド成立。GKの視線を遮る、近距離でチャレンジするなどは「対戦相手への干渉」。セカンドプレー待ちでも、相手に影響を与えた時点で反則になることがあります。

例10:リバウンドへ走る動きで相手に影響を与えたか

結論:影響を与えたら反則。こぼれを狙って走るだけでも、DFのプレー選択を明らかに変えれば「明白な動作で相手へ影響」に該当します。

実戦で迷わない判断手順(選手・指導者向け)

攻撃側のフロー:触る前に“解除条件”を確認する

  1. 味方の最後のタッチ時点で自分の位置を把握
  2. 相手が触れたら「故意か/セーブか/偶発か」を即判定
  3. リセット前なら関与を避け“待つ”、リセット後に関与

守備側のフロー:プレー選択で“解除”を招かない

  1. ゴールへ向かう球=セーブ優先(オフサイド継続を利用)
  2. 余裕がない時は“当てるだけ”を選ぶのも一手(不用意な故意扱い回避)
  3. 余裕がある時は確実なクリア方向をチームで共有

ベンチのコーチング:合言葉と合図で判断を共有

  • 「セーブ!」=押し込むな/触るな、「プレー入った!」=解除OK などの短い合言葉
  • 副審の旗が遅れる前提で、セカンド反応を標準化

ポジショニングと声かけ:攻撃・守備の実践的対策

攻撃:ラインの裏で“待つ”と“戻る”の切り替え基準

裏で待つなら、相手の故意プレーが入るまでボールへの関与を我慢。戻るなら、味方の次タッチ前にオンサイドへ復帰し、仕切り直しで関与を狙います。

守備:クリアかキープか、解除を招かない選択

ゴール前はセーブ優先。サイドや高い位置では、当てるだけのブロックでリスク低減か、思い切ったクリアで二次攻撃に備えるかを事前に決めておくと迷いが減ります。

コミュニケーション:セカンドボール合図の統一

「セカンド!」の声に、誰が出る・誰が残る・誰がリスク管理かを即時に割り当てるルールを作りましょう。

審判の視点:副審が旗を上げるまでの思考

ウェイト・アンド・シー(旗を遅らせる理由)

副審は、オフサイド位置の選手が実際に関与したか、相手に干渉があったかを見極めるために、あえて旗を遅らせます。選手は「旗が遅い=オンサイド」と誤解しないことが重要です。

“故意のプレー”を見極める観点と位置取り

副審は第二最後方のDFと一直線に立ちつつ、接触の質(選択の余地)を観察します。短距離・高速の当たりはディフレクション寄り、準備動作があれば故意寄りという基準を総合して判断します。

主審・副審・第4の審判の連携

特に混戦では、主審が接触の質を、副審が位置を、追加審判が情報を補完します。ベンチからの過度なアピールは誤審を招くので控えましょう。

VAR時代のポイント:レビューで覆るケースを知る

半自動オフサイドでも“セカンドプレー”は人が判断

半自動オフサイド(SAOT)は位置とタイミングを可視化しますが、「故意のプレーか」「セーブか」「ディフレクションか」は人の判断。映像で見直して結論が変わることがあります。

オンフィールドレビューの論点:セーブか、故意のプレーか

GKのパンチングやDFのブロックが“セーブ”かどうか、DFのわずかな接触が“故意”と言えるかが主な争点。選手は再開まで集中を切らさず、笛が鳴るまでプレーを続けるのが鉄則です。

映像で分かること/分からないこと

  • 分かる:接触の有無、当たった部位、距離、反応時間の目安
  • 分からない:選手の主観的意図そのもの(最終的には客観的要素の積み上げ)

トレーニングドリル:セカンドプレー対応力を鍛える

ドリル1:シュート→GKリバウンドの即時判断

方法:コーチがミドルを打ち、GKがセーブ。攻撃はオフサイド位置とオンサイド位置の2列からスタート。合図で、オフサイド列は「関与せずに遅れて入る」を徹底。コーチングポイントは「セーブか否か」の声かけ。

ドリル2:クロス→クリア→二次攻撃の切替反復

方法:サイドからクロス、DFは“当てるだけ”版と“しっかりクリア”版を交互に実施。攻撃はリセット時のみ飛び込むルール。故意/ディフレクションの体感差を学ぶ。

ドリル3:ライン管理ゲーム(戻りのタイミング)

方法:小さめのピッチで、味方の次タッチ前に戻れたら得点2倍などのルール化。戻る/待つの判断をゲーム化して習慣にする。

コーチングポイント:声・視線・初動

  • 声:セーブ?プレー入った?の即時共有
  • 視線:ボール保持者→最後に触る可能性のある相手の順にチェック
  • 初動:迷うより“待つか走るか”を早く決めて強度を上げる

高校・ユースで起きやすい落とし穴と予防策

ピッチ環境と視認性が与える影響

芝目や照明でボール軌道が読みにくい環境では、ディフレクションと故意の見極めが難しくなります。練習から環境差に慣れる工夫を。

副審不在・片審の試合での実践対応

旗が遅れたり、ライン管理が曖昧なことがあります。攻撃は“待つ”の徹底、守備は“セーブ優先”と“当てるだけ”の使い分けでリスクを下げましょう。

練習設計で“誤学習”を避けるコツ

オフサイドを曖昧にしたフットサル風の練習だけを続けると、セカンドプレーの感覚が鈍ります。週に一度はフルルールでのこぼれ球対応を反復してください。

よくある質問(FAQ)

Q1:相手に触れたら必ずオフサイドは解除される?

A:いいえ。故意のプレーなら解除、セーブやディフレクションなら解除されません。

Q2:オフサイド位置から戻ればいつでもOK?

A:戻っただけではダメ。味方の次タッチ、または相手の故意のプレー後に関与した時からOKです。

Q3:GKのセーブ後は常にオフサイド?

A:セーブの後はオフサイドが継続します。ただし、GKがクロスなどゴールへ向かわない球を処理した場合はセーブではなく故意のプレー=解除になることがあります。

Q4:故意のプレーと単なるミスの違いは?

A:ミスでも「プレーを選んで試みた」なら故意です。選ぶ余地がない偶発的な当たりは故意ではありません。

Q5:年代や大会で運用は変わる?

A:競技規則自体は同じですが、審判配置やVAR有無で“到達精度”は変わります。最終的には大会要項の指示に従ってください。

まとめ:迷いを断つ3原則

原則1:誰が触ったか(味方/相手)

味方の次タッチは常にリセット。相手が触ったら、次の原則へ進む。

原則2:故意のプレーか、セーブか、ディフレクションか

故意のプレー=リセット/セーブ・ディフレクション=継続。この仕分けが勝負。

原則3:関与の3類型を常に意識する

触る・チャレンジする・視線を遮る・リバウンドを押し込む。自分の行為がどれに当たるかを先読みして動く。

セカンドプレーは「言葉の整理」で速くなります。合言葉と手順をチームにインストールして、次の週末に即実戦投入してください。

参考・規則の出典

IFAB Laws of the Game(2024/25)Law 11 Offside

最新の競技規則(英語版)公開ページ:https://www.theifab.com/laws/latest/offside/

国内審判委員会の通達・解説資料

JFA審判関連ページ(通達・ガイドライン等):https://www.jfa.jp/referee/

教育用ビデオ事例(公的機関配信)

各協会・連盟が公開するオフサイド教育動画(故意のプレー/セーブ/ディフレクション事例)を参照してください。大会要項や最新の通達で運用の補足がある場合があります。

おわりに

“セカンドプレー”は公式用語ではないけれど、現場で判断を速く、シンプルにする強力なキーワードです。自分たちの言葉で「触ったのは誰?」「それは何のプレー?」をそろえれば、迷いは大幅に減ります。最後は練習での反復。今日のトレーニングに3本だけでも「セーブか故意か」を叫ぶメニューを入れてみてください。週末の1点が変わります。

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