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審判のハンドサイン基本を一気に整理:試合で迷わない判定の読み解き

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ピッチ上で一番コミュニケーションしているのは、実は審判です。笛とハンドサイン(手、腕、旗の合図)を正しく「読み解く力」は、プレーの迷いを減らし、次の一手を速くします。本記事は、試合でよく出るサインを機能別に一気に整理。見落としやすい運用ポイントも交えて、今日から使える実戦目線で解説します。

導入:判定を「読む力」が試合を変える

なぜハンドサインを知るとプレーが速くなるのか

サインを読めると、次の再開や相手の出方を素早く予測できます。例えば、間接フリーキックの腕が上がっていれば「直接は入らない」を即理解。ペナルティキックの管理合図が入っていれば「笛を待つ」、アドバンテージが出たら「一気に前進」。この1~2秒の判断差が、数メートルの優位に変わります。

審判の合図をチーム戦術に落とし込む視点

  • 素早い再開の準備:スローインやGKの合図を見た瞬間に2手先を共有(ショートかロングか)。
  • カード提示の流れを読む:警告・退場の後は集中が切れやすい時間。リスタートの合図に合わせて狙いを統一。
  • 副審の旗タイミングでラインを操作:オフサイドの“待って判断”を逆手に、駆け引きを仕掛ける。

この記事の読み方と活用法

まずは「基礎知識」と「リスタート基本サイン」をざっと確認。次に、ポジション別に関係が深い章(オフサイド、キーパー関連、距離確保)を重点的に。最後に「チェックリスト」と「早見テンプレ」をスクショやメモでチームに共有、これだけで現場のスピードが変わります。

基礎知識として押さえたい要点を整理

審判クルーの役割分担(主審・副審・第4の審判)

  • 主審:試合の管理と最終決定。笛とハンドサインで再開や反則を示す。
  • 副審:オフサイド、ボールアウト、近傍の反則の情報提供。旗で明確に合図。
  • 第4の審判:交代の手続、アディショナルタイムの掲示、テクニカルエリア管理。大会によっては追加副審やVARと連携。

シグナルの基本原則(明確さ・一貫性・安全性)

  • 明確さ:大きく、はっきり、1回で伝える。
  • 一貫性:同じ事象は同じ合図で。選手はそこに合わせるとミスが減る。
  • 安全性:接触や抗議で混乱しそうな場面は、まず距離と視線の管理を優先。

笛とハンドサインの関係(合図だけで再開できる場面/不可の場面)

  • 笛が必要な再開の代表例:キックオフ、ペナルティキック、セレモニアル(壁管理あり)のフリーキック、警告・負傷・交代で止めた後の再開。
  • 合図のみで再開できる代表例:ゴールキック、コーナーキック、スローイン、クイックなフリーキック(審判が壁を管理していない場合)。
  • 迷ったら「笛を待つ」。笛が鳴っていないのにボールを蹴っても、やり直しになることがあります。

ローカルルール・大会要項の影響を確認する

交代方法(自由交代か、回数制限ありか)、給水タイム、延長方式、ベンチ人数、スローインの簡略化などは大会要項に依存します。キックオフのコイントス手順やベンチ側の整列・入退場動線も変わることがあるので、試合前に必ず確認しましょう。

ハンドサインの見方のコツ:誰が・いつ・どこで・どう示すか

主審の体の向きと腕の方向が示す“次のプレー”

  • 体の向き=再開方向のヒント。腕の指し示しはより明確な方向指示。
  • カード提示の位置取り=再開地点に近いことが多い。戻り先のイメージを持つ。
  • アドバンテージ中は前方へスイープしつつ前進。次の接触や奪取の可能性を示唆しています。

副審の旗サインはタイミングが要点

  • “待って判断(Wait and See)”:オフサイドポジションでも関与が確定するまで旗を上げない。これにより誤判を減らす意図があります。
  • 旗を上げた後は保持し、主審が認知・笛→次に位置(低・中・高)でエリアを伝達。
  • 副審の位置は最終ディフェンダーと同一線を基本。旗が遅いのは迷いではなく、基準に忠実な運用です。

視線の優先順位(ボール→主審→副審→相手)

基本は「ボール→主審→副審→相手」。ボールがアウトか判定待ちかで最短ルートの判断が変わります。例えばクロスが上がったら一瞬、副審にも視線を置き、オフサイドの可能性を確認。次の一歩をムダにしません。

可視性を上げるポジショニング(選手・ベンチ・観戦者)

  • 選手:主審の背中側に入ると合図を見落としやすい。セットプレー前は必ず主審と副審を視界に入れる位置へ。
  • ベンチ:第4の審判の掲示や主審の管理合図を見やすいタッチライン端に情報役を置く。
  • 観戦者:副審の対角線を意識して座ると旗の上下位置が把握しやすい。

リスタートの基本サインを一気に整理

キックオフの合図と再開手順

  • 主審が準備完了を確認し、笛で開始。特別な手サインは不要です。
  • 得点後の再開もキックオフ。相手チームのキックで、再び笛を待ちます。

ドロップボールの合図と注意点

  • 片手を下ろす動作で示すことが多く、ボールが地面に触れたらインプレー。
  • 他の選手は4m以上離れる必要があります。誤って近づくと間接FKの対象。
  • ゴールエリア内では守備側GKにドロップされます。

直接フリーキック:指し示しで方向を示す

  • 主審が腕を進行方向へまっすぐ指す。反則の種類は告げなくても、再開は直接FK。
  • ショート再開を狙う場合でも、ボールの静止と位置は厳守。

間接フリーキック:腕を上げ続ける理由

  • 主審は腕を垂直に上げ、ボールが他の選手に触れるかアウトになるまで保持。
  • キッカーが直接ゴールへ入れても得点にならないため、守備側GKやDFはリバウンド対応を準備。

ペナルティキック:スポットの指示と笛の管理

  • ペナルティマークを指し示し、必要な配置が整ってから笛で再開。
  • キッカーは助走中に大きくフェイントしてもOKですが、反則的なフェイントは警告対象になり得ます。
  • GKはキック時に少なくとも片足の一部がゴールライン上(またはその上空)にある必要があります。

アドバンテージ:両腕のスイープで利得を示す

  • 主審が両腕を前方へスイープし「プレイオン」等の声。数秒内に利得がなければ元の反則へ戻すことがあります。
  • 重大な反則は、プレーが切れた後にカードが出ることがあります(再開は利得優先)。

スローイン:片腕で方向を明確にする

  • 主審も副審も腕(旗)で方向を示す。副審の近い側の判定が多い。
  • 位置のズレや両足がライン上/外にあるかを確認。相手に近づき過ぎは注意されやすい。

ゴールキックとコーナーキック:主審と副審の分担

  • ゴールキック:副審はゴールエリア方向へ旗で水平指示。主審は腕でゴールエリア方向を指すことも。
  • コーナーキック:副審はコーナーを指し、主審も腕でコーナーを示す。
  • ボール全体がラインを越えたかが基準。副審の位置取りに注目。

反則・警告・退場に関わるサインの読み解き

警告(イエローカード):提示の手順と再開の別

  • 主審が選手を呼び寄せ、カードを掲示し記録。再開は「反則の種類」に従います。
  • 反スポーツ的行為や遅延行為など、プレーと直接関係ない理由で止めた場合は間接FKから。

退場(レッドカード):記録と安全確保

  • レッド提示後は選手を退場させ、安全を優先。必要なら他の選手を離す。
  • 再開は原則として元の反則に従う(DFK/PK/IFK/ドロップなど)。

過度な力・危険なプレーの示し方

  • 過度な力のタックルや暴力的行為は直接FK/PK+警告または退場。主審は強い姿勢と明確な指差しでコントロールを示します。
  • 危険なプレー(高い足で相手を怖がらせる等)は接触なしなら間接FK。

ハンドの反則:公式サインと補助ジェスチャーの違い

  • 公式サインは方向を示すだけ(直接FK)。
  • 腕を触る等の説明ジェスチャーは補助で、必須ではありません。基準は腕の位置や身体の拡大の有無など、状況判断です。

シミュレーションや遅延行為への対応サイン

  • 倒れた直後に「立って」の仕草をすることがありますが、公式サインではありません。最終的には警告のカードで明示。
  • 再開を遅らせる行為には強い声とカードで抑制。再開方法は間接FKが基本です。

オフサイドの旗サインを実戦目線で理解する

フラッグアップの基本と“待って判断”の考え方

  • 関与(プレー、相手妨害、利得)が確定してから旗を上げる運用が一般的。
  • 主審の笛→オフサイド位置で間接FK。攻撃側は笛が鳴るまでプレー継続が基本。

旗の位置(低・中・高)で伝える発生エリア

  • 低:副審側付近、タッチライン寄り。
  • 中:ピッチ中央寄り。
  • 高:遠い側、逆サイド寄り。

ゴール・コーナー・スローインへのリセット連携

  • ボールが先にアウトした場合は、その再開(CK/GK/TI)が優先。
  • 得点後に遅れて旗が上がった場合は、主審が協議し得点無効→間接FKに戻ることがあります。

守備ラインと副審の角度を合わせるためのヒント

  • 守備側は最終ラインの横移動を副審と同期させるイメージ。副審と同一線に揃うと判定が安定。
  • 攻撃側は“第二のラストDF”を意識し、走り出しは斜め後方から。

再開管理と距離確保:トラブルを防ぐ合図

10m(10ヤード)確保の合図と壁の管理

正しくは9.15m(10ヤード)。主審は腕で下がる動作や、歩数で壁の位置を示し、管理に入ったら笛で再開合図を出します。ボール前の“ちょい蹴り”は遅延と見なされることがあるので注意。

クイックリスタートとセレモニアルの見分け方

  • クイック:主審が壁を管理しておらず、相手が至近距離にいてもルール上は再開可(危険なら止めます)。
  • セレモニアル:主審が明確に壁を整え、笛でのみ再開。主審の「待て」の声・ハンドサインに注目。

ホイッスル必須の場面一覧(誤再開を防ぐ)

  • キックオフ、ペナルティキック、セレモニアルFK。
  • 警告・負傷・交代で止めた後の再開。
  • ハーフタイム・飲水タイム明けの再開。

蹴る瞬間の主審の位置取りを読む

  • ペナルティ時はPKスポットとGK・ARの三角形を確保。
  • 間接FKは守備ラインのオフサイド確認に移りやすい。こぼれ球の二次攻撃へ備える。
  • コーナーはファー側の接触を見たいので、セカンドボール空間に主審が移動する傾向。

ゴールキーパー関連のサインと判定の要点

PK時のGKのポジション違反と再蹴の合図

  • キック時にGKの足がラインから離れていた場合、結果に影響があれば原則やり直し。
  • やり直しは主審の笛と再度スポットの指示で示されます(専用の手サインはありません)。
  • 反復や明白な影響がある場合、警告の対象になります。

キーパーへの妨害・接触の基準と表示

  • GKがボールを手または腕で制御している(片手で地面・ゴールポストに押さえている場合も含む)ときは、相手のチャレンジは反則。
  • 接触の強さや危険度によって直接FK/PK、場合により警告・退場。

ハイボール時の保護と注意喚起

  • ハイボールでGKがキャッチ動作に入った際の体当たりや手への打撃は厳しく取られます。
  • 主審は接触前から声とジェスチャーで接触抑制を図ることがあり、指差しでファウル方向を明確にします。

交代・時間管理・レビュー(VAR/OFR)の合図

交代サインと第4の審判の役割

  • 第4の審判がボードを掲示し、主審が交代許可の合図(腕を上げる等)。笛で一時停止し実施。
  • 交代完了後、主審の合図で再開。位置違反や先走りは注意の対象に。

アディショナルタイムの掲示を活用する

  • 第4の審判が掲示板で分数を表示。最低限の時間であり、追加されることがあります。
  • 終盤の戦い方(時間の使い方、リスク管理)をその表示で即座に切り替えましょう。

オンフィールドレビュー(四角のジェスチャー)と最終決定の示し方

  • 主審が空中で四角を描けばレビュー関連の合図。ピッチサイドで映像を確認する場合があります。
  • 最終決定は主審が再開サイン(例:PKの指示、ゴールのセンターサークル指差し)で明確化。
  • VARの有無は大会によるため、事前確認が必要です。

審判の“意図”を先読みしてプレーに活かす

アドバンテージ予告の身振りを察知する

主審が手を軽く前に出しつつ「続けて」の声を出すときは、アドバンテージの予兆。味方のサポート距離を一気に詰め、次の接触に備えてください。

セットプレー前の声と手振りで狙いを読む

  • 「笛で再開」「動くな」の指示=セレモニアル。キッカーは合図までフェイク禁止。
  • 主審が壁に集中=折り返しやこぼれ球での競り合いを重視。セカンド狙いを共有。

スローインの競り合いで反則を誘わない姿勢作り

主審は押し・掴みを嫌います。肩と胸を正面に保ち、相手を腕で抱えない。副審側のスローは細かく見られるので、ルール通りのフォームが得策です。

よくある誤解を解く:判定の背景にある考え方

ハンド=全て反則ではない:腕の位置と身体の拡大解釈

腕が「不自然に大きく体を広げているか」「リスクを取ってその位置に腕があるか」がポイント。偶発的な接触や、支え手などは状況で認められることがあります。

アドバンテージは“罰しない”ではない:カードは後で示され得る

プレー続行の利得を優先しても、反則の重さに応じて次の停止時にカードが出ます。相手の抗議に引っ張られず、合図に合わせてプレーを続けるのが正解。

審判は説明を義務付けられていないが、サインで意思表示している

競技規則上、逐一の説明義務はありません。だからこそ、腕の角度・旗の高さ・笛のタイミング=“審判の言語”をチームで共有しましょう。

ジュニア・アマチュアでの違いと運用の注意

少年年代で簡略化されるサインの把握

ジュニアでは安全最優先。主審が声中心で合図を簡略化することがあります。見えにくい時は止まって確認、無理に続けないのが安全です。

大会要項・ローカルルールの読み合わせ

交代自由、給水タイム、タッチライン側の制限、ベンチの数などの特則を事前共有。普段の運用と違うときこそ、サインの意味を確認してミスを防ぎます。

審判とチームの事前コミュニケーションのポイント

  • 試合前:「クイック再開は許可制か」「壁は何人から管理か」など運用の癖を確認。
  • ハーフタイム:「接触が増えている」等の所感共有で後半のファウル抑止に。

観戦と練習で“判定リテラシー”を鍛える方法

テレビ観戦用チェックリスト(合図→再開の流れ)

  • 反則のサイン(直接/間接)→腕は上がっているか?
  • 副審の旗→高さはどこ?主審は採用したか?
  • 壁管理→笛前に蹴っていないか?
  • カード提示→再開は何か?

現地観戦での視線配分ドリル

  • クロス時:ボール→副審→GKの順で1秒以内に往復。
  • カウンター時:主審の走路と腕→アドバンテージの有無を即確認。

チームで共有したいサイン早見テンプレート

・直接FK=腕で方向指示・間接FK=腕を垂直に上げ続ける・アドバンテージ=両腕を前方へスイープ・スローイン=片腕で方向・CK/GK=コーナー/ゴールエリア方向を指す・PK=スポット指示+笛で管理・オフサイド(AR)=旗を上げて位置(低/中/高)・交代=第4審の掲示+主審の許可

FAQ:試合でよくあるシーンとサインの疑問解消

アドバンテージ後に戻るのはどんな時?

数秒以内に明確な利得が得られなかった場合や、安全上の配慮が必要なとき。戻す決定は主審の笛で示され、元の反則地点から再開します。

副審の旗を主審が採用しないのはなぜ?

主審の視点の方が適切だった、関与が確定していない、プレーオンが妥当、などの理由があります。合図は情報提供であり、最終決定は主審。

ハンドの説明ジェスチャーは公式なの?

公式サインは方向指示(直接FK)のみ。腕を触る等は補助的説明で、必須ではありません。判定基準は状況に基づきます。

間接FKの腕はいつ下ろす?

ボールが他の選手に触れた、アウトになった、または直接得点が不可能になったと明らかに判断できた時点で下ろします。

まとめ:サインを“言語”としてチームの意思決定を速くする

当日のミニチートシート

  • 笛が必要か?→「キックオフ・PK・壁ありFK・カード/負傷/交代後」は必ず待つ。
  • 腕は上がっているか?→上がっていれば間接FK、リバウンドに全力。
  • 副審の旗はどの高さ?→低/中/高でオフサイド地点を即共有。
  • 主審が壁管理に入った?→セレモニアル、合図まで蹴らない。

次に学ぶべき関連ルールと参考情報

  • オフサイドの「関与」3分類(プレー、相手妨害、利得)を映像で確認。
  • 接触の強さ・危険度の評価(直接・間接の分かれ目)。
  • GKの保持・6秒の概念、バックパスの扱いと間接FKの位置。

審判のサインは、チームにとって最速の「戦術メッセージ」。合図を読むことは、相手より早く次を決めることと同義です。今日の練習から、合図→動き出しの共通認識をチームで磨いていきましょう。

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