試合のパフォーマンスは、テクニックやコンディションだけで決まるわけではありません。何を食べ、何を避け、どんな過ごし方をするかで、良い日にも悪い日にも転ぶのがサッカーの怖さ。この記事では「サッカー試合前に食べてはいけないものと当日を台無しにする習慣」をテーマに、科学的に納得でき、実際に使えるガイドをまとめました。むやみに恐れる必要はありませんが、避けるべき理由と賢い代替案を知っておくと、最悪の事態をかなりの確率で回避できます。
目次
はじめに:試合前の「避ける」でパフォーマンスは上がる
試合前は「足し算」よりも「引き算」が効きます。つまり、余計なリスクを入れないこと。胃腸トラブル、急な血糖の乱高下、脱水、眠気や焦り──これらは技術や戦術以前の問題で、避けるほど勝ちやすくなります。重要なのは、誰にでも当てはまる絶対ルールではなく「自分に当てはまるリスクを減らす選択」。そのための基準と目安を、これから具体的に整理していきます。
試合前に食べてはいけない可能性が高い食べ物
揚げ物・高脂質料理(胃もたれと遅い消化)
とんかつ、から揚げ、フライドポテト、クリームパスタなどは消化が遅く、試合中の胃もたれや重さにつながりやすいです。脂質は必要な栄養ですが、試合の3〜4時間前のメインには向きません。代わりに、白ごはん・うどん・パンなど消化の軽い主食を中心に、脂身の少ないたんぱく質(鶏むね、白身魚、豆腐など)を添えましょう。
唐辛子系・強い香辛料(胃腸刺激と発汗増加)
激辛料理やニンニク強めのメニューは、胃腸を刺激し、発汗やトイレのリスクが上がります。暑い日の試合では特に影響が出やすいので、前日夜〜当日はマイルドな味付けに抑えるのが安全です。
食物繊維が極端に多いもの(玄米、大量のサラダ、豆類)
繊維は健康に良いですが、直前は別。玄米や雑穀、山盛りの生サラダ、豆の大量摂取は消化に時間がかかり、ガスや腹部不快感の原因になりやすいです。普段は玄米派でも、試合前は白米・うどん・食パンなど低繊維を選ぶのが無難です。
ガスを生みやすい野菜(ブロッコリー、キャベツ、玉ねぎ)
これらは体に良い定番ですが、試合直前は腹部の張りやげっぷの元に。前日は火を通した少量に抑え、当日は量を控えると安定します。
果糖やポリオールが多い食品(りんご、梨、人工甘味料入りガム)
りんご・梨・はちみつの一部、ソルビトールやキシリトールを含むガム・キャンディーは、人によってはガスや下痢の原因になります(FODMAPと呼ばれる一群)。初めての製品を試合日に噛むのは避けましょう。
砂糖たっぷりの菓子・清涼飲料(急な血糖スパイクと反動)
甘いドーナツやケーキ、砂糖の多い清涼飲料は、急に血糖が上がってその後に落ちる「反動」で集中力が鈍ることがあります。直前の少量補食なら役立つ場面もありますが、量やタイミングを誤ると逆効果。計画的に使い分けましょう。
乳製品(体質によっては消化不良)
牛乳やアイス、ヨーグルトは、乳糖に弱い人で腹痛や下痢の原因に。問題ない人でも、試合の2〜3時間前に大量摂取するのは避け、前日までに済ませると安全です。プロテインを使うなら水や低脂肪乳で薄く、量は控えめに。
炭酸飲料(げっぷ・膨満)
炭酸は気体。胃に溜まりやすく、走行時の不快感やげっぷにつながります。刺激の少ない常温の水・スポーツドリンクが安定です。
アルコール(脱水と判断力低下)
前日夜の飲酒は睡眠の質を下げ、脱水と判断ミスのリスクを高めます。試合48〜24時間前からは控えるのが無難です。
カフェイン過多のエナジードリンク・プレワークアウト
カフェインは使い方次第で有効ですが、過剰摂取は動悸、手の震え、トイレ増加につながります。製品によって量が大きく違うので、表示を確認できないものや初めてのものは当日NG。年齢や体格も考慮し、指導者・保護者と相談のうえで。
初めて口にする食品・サプリ(不確実性はリスク)
どんなに良さそうでも、未知はリスク。試合日は「いつも通り」を徹底し、新製品は必ず練習日でテストしてからにしましょう。
試合当日を台無しにする食習慣・ルーティン
朝食抜きや極端な低糖質
サッカーは糖(グリコーゲン)を多く使う競技。朝食抜きや糖質カットは、後半に足が止まりやすくなります。消化の良い主食を必ず入れましょう。
キックオフ直前のドカ食い
直前に大量に食べると、消化中の血流が胃腸に取られ、走ると気持ち悪くなりやすいです。メインは3〜4時間前、直前は軽く。
水分の一気飲みと水だけ補給
喉が渇いたからと一気飲みすると、胃がちゃぷちゃぷに。さらに水だけで大量に飲むのは、汗で失った塩分を戻せず不調の原因に。こまめに、電解質も一緒に。
過度な塩分制限・または摂り過ぎ
汗で塩分が出ます。ゼロにすると攣りやすく、摂り過ぎると喉が渇きやすくなる。気温や汗の量で調整しましょう。
前夜の深夜食と寝不足
深夜の重い食事は睡眠の質を下げ、朝の胃もたれにも直結。前夜は早め・軽め・消化良く。
慣れていないジェル・クレアチン等の当日投入
ジェルは種類で粘度や糖の種類が違い、合う合わないが出ます。クレアチンは即効性でなく、当日だけ増やしても意味が薄い上にお腹が張ることも。事前テストが鉄則です。
自己判断での鎮痛薬常用に頼ること
胃腸や腎臓への負担が増える可能性があります。必要時は医療的な指示に従い、ルーティン化は避けましょう。
カフェインのタイミングと量のミス
早すぎる摂取で試合中に切れたり、遅すぎて効かなかったり。量が多いと手が震える。自分の最適を練習で見つけておきましょう。
直前の乳製品・食物繊維・生野菜の大盛り
「ヘルシーだから」は試合直前の言い訳になりません。直前は軽く、消化性優先。
急な減量・サウナスーツでの発汗
水分と電解質を失えば、走力も判断力も落ちます。短期の無理な体重調整は、試合の敵です。
代わりに何をすべきか:試合前48〜0時間の実践ガイド
T-48〜24時間:炭水化物中心で消化しやすい献立
この段階は「蓄えて整える」がテーマ。脂質と過剰な繊維は控えめに、主食多めで体内のガソリンを増やします。
ポイント
- 主食を毎食しっかり(白米、うどん、食パン、じゃがいもなど)
- たんぱく質は脂身の少ないものを適量(鶏むね、白身魚、卵、豆腐)
- 野菜は火を通して量はほどほど(スープや煮物が便利)
- 水分はこまめに。尿色が薄いレモン色を目安に
例メニュー
- 朝:食パン+はちみつ少量、ゆで卵、バナナ、牛乳少量または豆乳(体質次第)
- 昼:うどん+温玉+ねぎ少量、果物(みかん等)、水
- 夜:白ごはん、照り焼きチキン(皮少なめ)、温野菜、味噌汁
T-24〜12時間:前日夜の最適プレート(主食:たんぱく質:野菜の配分)
消化の良さと満足感のバランスを取ります。辛味・揚げ物・大量生野菜は避けます。
配分の目安
- 主食:皿の約1/2(白米、パスタ、パン)
- たんぱく質:1/4(鶏むね、白身魚、豆腐、卵)
- 野菜・果物:1/4(加熱が中心。生は少量)
例メニュー
- 白米+鮭の塩焼き+じゃがいもの煮物+ほうれん草のおひたし(少量)
- 和風パスタ(オイル少なめ)+コンソメスープ+柔らかいパン
T-4〜3時間:体重1kgあたり1〜4gの炭水化物+低脂質・低繊維・適量たんぱく
この時間帯がメインの「試合飯」。量は体格と消化の速さ、試合の強度で調整します。
ポイント
- 炭水化物:1〜4g/kg(例:60kgなら60〜240g)
- 脂質は控えめ、繊維は少なめに
- たんぱく質は軽く(鶏むね、卵、豆腐など)
例メニュー
- おにぎり2〜3個+卵焼き少量+味噌汁
- きつねうどん(油揚げは少なめ)+バナナ
- 食パン2〜3枚+ジャム少量+ヨーグルト少量(体質に合えば)
T-60〜15分:小腹満たしの選択肢と量の目安
直前は「軽く・素早く吸収」を徹底。口当たりが良く、胃に残りにくいものを少量。
目安
- 炭水化物15〜30g程度
- 脂質・繊維は最小限
例
- 熟した小さめのバナナ1本
- スポーツようかん、カステラ1切れ
- いつも使い慣れたスポーツゼリー
- はちみつを薄く塗った食パン半切れ
ハーフタイム・延長を見据えた補食と電解質
ハーフタイムは回復のチャンス。糖と電解質を素早く補います。
- 炭水化物20〜30g(ゼリー、ようかん、小さめのパンなど)
- スポーツドリンクで電解質も一緒に補給
- 延長を想定するなら、合計で毎時30〜60gの炭水化物を目安に(個人差あり)
カフェインを使うならの目安と事前テスト
カフェインは集中や疲労感に影響することがありますが、個人差が大きい栄養素。使用するなら以下を守りましょう。
- 量の目安:1〜3mg/kg(体重60kgで60〜180mg)
- タイミング:45〜60分前
- 必ず練習で2〜3回テストし、睡眠や胃腸への影響を確認
- 年齢や体質、学校規定・チーム方針、保護者や指導者の判断も尊重
水分計画:尿色と体重変化で自己チェック
ベストは「喉が渇く前に少しずつ」。指標を持つと調整しやすくなります。
- 尿色:薄いレモン色が目安。濃い茶色は要注意
- 体重変化:練習で前後の体重を測り、-2%以内に収めるよう補給量を逆算
- 目安量:キックオフ3〜4時間前に5〜7ml/kg、10〜20分前に3〜5ml/kgをこまめに(環境で調整)
- 暑い日は電解質(ナトリウム)も忘れずに
体質と競技環境で変わる「避けるもの」
暑熱・湿度・高地・人工芝での違い
- 暑熱・湿度:発汗量↑。辛い物・高繊維・高脂質はさらに不利。電解質補給を強化
- 高地:呼吸数↑で口渇増。こまめな水分と消化の軽さを優先
- 人工芝:照り返しで体感温度↑。クーリングと塩分補給を意識
胃腸が敏感な人の低FODMAP的アプローチ
お腹が弱い人は、試合48〜24時間前から「低FODMAP寄り」にすると安定しやすいです。
- 選びやすい:白米、うどん、食パン、じゃがいも、熟したバナナ、みかん、にんじん、きゅうり、卵、鶏むね、豆腐
- 避けたい:りんご、梨、はちみつ大量、玉ねぎ、にんにく、ブロッコリー、豆類の大量
アレルギー・不耐症の自己把握
乳・小麦・そば・甲殻などは、軽症でも当日は避けるのが安全。ラベルを必ず確認し、外食では調理法も確認を。
ベジタリアン/ヴィーガンの試合前の注意点
- 主食は白米・パスタ・パンで確保、豆は前日は少量・よく煮る
- たんぱく源は豆腐、テンペ、大豆ミートなど消化しやすいもの
- 脂質は摂り過ぎない(ナッツは前日は量を控えめに)
- 鉄・B12は日頃から管理。当日に急増はNG
コンビニ・外食での実用的な選び方
試合3〜4時間前のおすすめセット
- おにぎり2〜3個(鮭・梅・昆布など)+ゆで卵 or サラダチキン(少量)+味噌汁
- 素うどん or きつねうどん(油揚げは控えめ)+バナナ
- ジャムサンド(油分少なめ)+ヨーグルト少量(体質次第)+水
60分前の軽食パターン
- スポーツゼリー or カステラ1切れ
- 小さめのあんぱん半分(脂質が少ないもの)
- はちみつ少量+食パン半切れ
避けたいメニューの見分け方
- 「揚げ」「濃厚」「バター」「クリーム」などの表示は回避
- 大盛りサラダ・雑穀ミックスは前日まではOKでも当日は控えめ
- 炭酸・エナジードリンクは代わりに水・スポーツドリンクへ
よくある誤解Q&A
バナナはいつ食べるのが良い?
熟したバナナは消化が良く、3〜4時間前のメインにも、60〜15分前の軽食にも使えます。青いバナナは繊維が多く、直前は不向きです。
プロテインシェイクは直前でもOK?
直前は避けるのが無難。飲むなら3〜4時間前、量は控えめに。どうしても直前に摂る場合は、水で薄めた少量+炭水化物を合わせ、練習で試してから。
炭酸水はどう?
少量なら問題ない人もいますが、げっぷや膨満感が出やすいので、試合の直前〜途中は避けるのが安全です。
乳製品は完全にNG?
体質によります。問題がなければ、前日〜3〜4時間前の少量は多くの人で問題が出にくいですが、直前の大量摂取は避けましょう。
ビートジュースは当日に効く?
一部の人で持久的な動きに良い影響が報告されていますが、効果や胃腸の反応には個人差があります。摂るなら2〜3時間前、量は製品の推奨に従い、事前に練習でテストを。
サプリは何日前から試すべき?
最低でも2〜3回は練習で試し、1〜2週間の余裕があると安心。クレアチンのように蓄積が必要なものは、試合当日の単発投入では効果が読みにくいです。
まとめ:シンプルなチェックリスト
避ける食べ物5つ
- 揚げ物・高脂質(とんかつ、フライ、クリーム系)
- 激辛・にんにく強めの料理
- 高繊維の主食・大量の生野菜・豆類
- 炭酸飲料・エナジードリンク(当日・直前)
- 初めての食品・サプリ
避ける習慣5つ
- 朝食抜きや極端な低糖質
- キックオフ直前のドカ食い
- 水だけ一気飲みでの水分補給
- 前夜の深夜食と寝不足
- 慣れていないジェルや薬に頼る
試合前48時間のミニ計画
- T-48〜24h:主食多め・低脂質・加熱野菜中心。水分こまめに
- T-24〜12h(前夜):主食1/2・たんぱく1/4・野菜1/4、辛味と揚げ物は回避
- T-4〜3h:炭水化物1〜4g/kg、低脂質・低繊維、たんぱく少量
- T-60〜15m:炭水化物15〜30gの軽食(ゼリー、バナナ、カステラなど)
- 水分:尿色と体重変化で自己チェック。暑い日は電解質も
- カフェイン:使うなら1〜3mg/kgを45〜60分前、必ず事前テスト
おわりに:当たり前を積み重ねるのが最短の近道
試合前の食事とルーティンは、派手さはありません。ただ、「当たり前」を崩さない人ほど失敗が減り、実力がそのまま出ます。避ける理由を知り、代わりに何をするかを決めておけば、当日はプレーに集中できます。練習日で小さく試し、体に合う形を自分の標準に。ピッチに立つ前から、勝負は始まっています。
