試合の最後の10分で「足が止まるチーム」と「もう一歩出せるチーム」の差は、テクニックや戦術だけでは埋まりません。鍵になるのが、サッカーに特化した持久力づくり。なかでも、試合の動き方に近いインターバル走は、終盤のパフォーマンスを大きく左右します。この記事では、科学的な考え方と現場で使えるメニューを満載で、インターバル走をどのレベルでも安全に実践できるように解説します。
目次
- 試合終盤で差がつく理由:サッカーの持久力の正体
- なぜインターバル走が効くのか:サッカー特性に合う持久力トレーニング
- 強度設計の基礎:MAS・vVO2max・心拍・RPEの使い分け
- インターバル走の設計原則:距離・時間・強度・レストを決める
- サッカーの持久力を上げるインターバル走の基本メニュー
- レベル別プログラム:初級・中級・上級のステップアップ
- 目的別インターバル走:終盤で走り切るための狙い別設計
- ピッチでできる実戦型インターバル:ボール有・無の使い分け
- ポジション別アレンジ:役割に合った持久力を鍛える
- フォームと怪我予防:インターバル走を安全に続ける基礎
- ウォームアップとクールダウン:質を高め回復を早める
- 栄養・水分・暑熱対策:終盤のパフォーマンスを支える準備
- 進捗の見える化:テストとモニタリングで最適化する
- 週の組み立てとシーズン計画:試合に合わせて波を作る
- 高校生・保護者のための実践ポイント
- よくある失敗と対策:質を落とさず継続するコツ
- サンプル1週間プラン:試合を想定した具体例
- まとめ:サッカーの持久力を上げるインターバル走で差がつく試合終盤へ
試合終盤で差がつく理由:サッカーの持久力の正体
サッカーの走行様式:低強度と高強度の反復がもたらす負荷
サッカーは、歩き・ジョグ・中走・ダッシュ・方向転換・減速・再加速が絶え間なく入れ替わるスポーツです。一定ペースで走るマラソンとは違い、心拍や筋の負担が波のように上下します。この「上下の波」こそが終盤の疲労感を増幅させ、技術・判断の精度にも影響します。
- 特徴1:短い高強度(スプリント・加速)と長い低中強度(ジョグ・ポジショニング)の交互
- 特徴2:方向転換や減速などブレーキ動作が多く、筋ダメージが蓄積しやすい
- 特徴3:ポジションごとに要求が違う(例:サイドバックはロングスプリントの反復が多い)
終盤に起こるパフォーマンス低下の要因(代謝・神経・意思決定)
- 代謝的要因:筋グリコーゲンの低下や、代謝産物の蓄積による「動きの重さ」
- 神経筋の疲労:減速・方向転換の反復で、ハムストリングやふくらはぎの出力が落ちる
- 意思決定の遅れ:心拍が高い状態が続くと、視野や判断が乱れやすくなる
この3つが重なると、同じ距離を走っていても「質」が落ち、寄せや切り替えがワンテンポ遅れます。
走行距離より重要な指標:ハイインテンシティ走と反復スプリント
総走行距離は大切ですが、サッカーの勝負どころを分けるのは高強度の反復です。具体的には、以下の指標が終盤の差に直結しやすいと考えられます。
- ハイインテンシティ走の合計時間(目安:心拍ゾーン4〜5での累積)
- 反復スプリント能力(RSA):短いダッシュを短いレストで繰り返せる力
- 再加速・減速の回数と質(ブレーキ→瞬時の踏み直し)
なぜインターバル走が効くのか:サッカー特性に合う持久力トレーニング
高強度とレストの交互刺激が試合様式に近い理由
インターバル走は、速く走る時間(ワーク)と、遅く走るまたは歩く時間(レスト)を交互に繰り返す方法です。この構造自体が試合の走行様式に似ています。心拍・筋負荷の波を意図的につくることで、試合終盤でも「波に乗り直す力」を養えます。
有酸素性・無酸素性の両システムを同時に鍛える考え方
サッカーでは、有酸素(ベースの持久力)と無酸素(スプリントや急加速)が混在します。インターバル走は、ワークで無酸素的な刺激、レストで有酸素的な回復プロセスを回すことで両方を鍛えられます。結果として、心肺能力だけでなく、回復スピードが上がり、次のダッシュが速くなります。
反復スプリント能力(RSA)への橋渡しとしてのインターバル走
いきなりスプリントの反復だけを増やすとケガのリスクが上がります。まずは全身の有酸素能力とvVO2max領域(後述)を高めるインターバルで土台を作り、その後に方向転換やシャトルを組み合わせたRSAトレーニングへ段階的に移行するのが安全で効果的です。
強度設計の基礎:MAS・vVO2max・心拍・RPEの使い分け
MAS(最大有酸素速度)とvVO2maxの概念整理
- MAS(Maximum Aerobic Speed):有酸素的に出せるほぼ最大の速度。ペース設定の基準に使いやすい。
- vVO2max:VO2max(最大酸素摂取量)に相当する速度。高強度インターバルの目安に使う。
現場では、MAS ≒ 5〜6分の全力走で出せる平均速度として扱うと実用的です。vVO2maxも同様に短いタイムトライアルから推定してOKです。
簡易テストでMASを推定する方法(タイムトライアル等)
- 5分TT:5分間の全力走で走れた距離(m)÷ 300(秒)= MAS(m/秒)
- 6分TT:距離(m)÷ 360(秒)= MAS(m/秒)
- 1500mTT:1500(m)÷ 記録(秒)= 平均速度。これをMASの参考にする
例:5分で1350m走れた → MAS=1350÷300=4.5m/秒(=約16.2km/h)。30秒インターバルで100%MASなら、目標距離は4.5×30=135mです。
心拍ゾーンと主観的運動強度(RPE)で実践管理する
- ゾーン3〜4:余裕はないが会話は短文で可能(テンポ〜LT領域)
- ゾーン4〜5:きつい〜非常にきつい。会話困難(vVO2max〜スプリント前後)
- RPE(6〜20や0〜10の主観指標)で「セット終盤のきつさ」を記録。週ごとの上がり下がりを見える化
インターバル走の設計原則:距離・時間・強度・レストを決める
ワーク:レスト比の考え方(1:1、1:2、2:1の意味)
- 1:1:刺激と回復のバランス。vVO2max系に使いやすい
- 1:2:回復長め。初級者やフォーム習得、質の確保に有効
- 2:1:回復短め。上級者の終盤対策やゲーム様式に近い負荷
距離ベースと時間ベースの選び方
- 距離ベース:200m×反復など。トラックや直線で行いやすい
- 時間ベース:30秒/30秒など。ピッチで行いやすく、MASから距離目標も割り出せる
ピッチ・トラック・坂道など環境別のメリットと注意点
- ピッチ:方向転換や実戦的配置が可能。芝の滑り・起伏に注意
- トラック:ペース管理がしやすい。単調になりやすいのでメニューの工夫を
- 坂道:心拍を素早く上げられる。下りの衝撃は避け、上りのみ実施推奨
サッカーの持久力を上げるインターバル走の基本メニュー
基礎づくり:低〜中強度インターバルで土台を固める
- 40秒(85〜90%MAS)+40秒ジョグ×10〜14本×1〜2セット(セット間3分)
- 200m(85%MAS)+200mジョグ×8〜12本
狙い:フォームを崩さず心拍の波に慣れる。翌日に強い疲労を残さないこと。
持久力×スピード:vVO2maxインターバル
- 30秒(100%MAS)+30秒ジョグ×12〜20本(ビラット式)
- 3分(95〜100%vVO2max)+3分ジョグ×4〜6本
狙い:最大酸素摂取に近い強度での耐性を上げる。終盤でも高強度を維持する基礎。
試合終盤対策:3〜5分ブロックのハイインテンシティ繰り返し
- 4分(ゾーン4〜5)+2分ジョグ×4〜6本
- 「1分速い→20秒ジョグ→40秒速い→20秒ジョグ」を1ブロック(3分)として×4〜6ブロック
狙い:長めの高強度を短い回復でつなぐ能力=終盤の粘りを養う。
レベル別プログラム:初級・中級・上級のステップアップ
初級:持久力ベースを築く(短時間×長めレスト)
- 20秒(90%MAS)+40秒歩き/ジョグ×10〜15本
- 週1〜2回。7〜10日で1割ずつ本数増。
中級:強度を高める(中時間×等レスト)
- 30秒(100%MAS)+30秒ジョグ×12〜20本
- 2分(95%MAS)+2分ジョグ×6〜8本
上級:ゲーム様式に近づける(方向転換・シャトル・短レスト)
- 15秒シャトル(往復)+15秒ジョグ×16〜24本
- 10秒スプリント+20秒歩き×10本×2セット(セット間3分)
目的別インターバル走:終盤で走り切るための狙い別設計
終盤の粘りを作るVo2max系インターバル(2〜5分)
- 5分(ゾーン4)+2分ジョグ×4本
- 3分(95〜100%vVO2max)+3分ジョグ×5本
反復スプリント耐性(RSA)を鍛える10〜20秒×短レスト
- 15秒全力(直線orシャトル)+20〜30秒歩き×8〜12本×2セット(セット間3〜4分)
- 10秒ダッシュ+20秒ジョグでコート幅往復×10〜14本
回復能力を高めるテンポ走×短レスト(乳酸クリアランス狙い)
- 8分(85〜90%MAS)+2分ジョグ×3本
- 6分(ゾーン3〜4)+1分ジョグ×4本
ピッチでできる実戦型インターバル:ボール有・無の使い分け
ボールなしシャトル:105m×68mを活用した往復設計
- 縦60m往復シャトル(コーナー〜PA手前など)15秒+15秒ジョグ×12〜20本
- 横幅68m往復+ターン(加減速重視)20秒+20秒ジョグ×10〜16本
ポイント:ターンは重心を落とし、最後の2歩で確実に減速→押し出す。
ボールあり:時間制限付きポゼッション/Rondoの強度管理
- 4v2や5v2で30秒集中+30秒レスト×10〜16本(プレッサー交代制)
- 6v3のポゼッションを2分+1分レスト×4〜6本(タッチ制限で強度調整)
小規模ゲーム(SSG)での負荷コントロールのコツ
- 人数を減らし、1人あたりの関与回数を増やす
- ピッチサイズで心拍帯を調整(広い=走行距離、狭い=反復加速)
- セット間は必ずアクティブレスト(歩きor軽いジョグ)
ポジション別アレンジ:役割に合った持久力を鍛える
サイドバック:オーバーラップとリカバリーの反復
- 縦60〜70mラン(95%MAS)+戻りジョグ×8〜12本
- 15秒スプリント+30秒戻り×8本×2セット
センターミッド:連続的なプレス&サポートの維持
- 3分テンポ(ゾーン3〜4)+1分ジョグ×5〜6本
- 30秒(100%MAS)+30秒ジョグ×16〜20本
ウイング:再加速と深い背後ランの繰り返し
- 20秒スプリント(縦)+40秒歩き×10〜14本
- 45m加速→減速→再加速の3点シャトル×8〜10本
センターフォワード:スプリント+対人前の準備走
- 10秒ダッシュ→10秒小刻みステップ→10秒ダッシュ+30秒歩き×8〜12本
- ペナルティエリア内の3〜5mダッシュ反復×特定本数
センターバック:ラインコントロールとリカバリーラン
- 20秒バックペダル→ターン→20秒前進+40秒歩き×8〜12本
- 40〜50mのリカバリーラン(95%MAS)+戻りジョグ×10本
フォームと怪我予防:インターバル走を安全に続ける基礎
接地・姿勢・ケイデンス:疲労時に崩れない走り方
- やや前傾(胸から進むイメージ)、骨盤は立てる
- 接地は重心の真下付近。接地音を静かに
- ケイデンスはやや高め。大股で引っかからない
方向転換の減速・体重移動の技術
- ターン前に2〜3歩で減速→外足で踏み止め、内側に切る
- 上体は先に向きを変え、腰と膝で吸収
ハムストリング・ふくらはぎ・股関節の補強
- ノルディックハム、カーフレイズ、ヒップヒンジ(週2〜3回)
- 片脚バランス+ミニバンドで中臀筋を活性化
シンスプリント・膝痛を避けるための負荷調整
- 週あたりの走量増加は10%以内を目安
- 痛みが出始めたら硬い地面を避け、下り坂や急な方向転換を控える
ウォームアップとクールダウン:質を高め回復を早める
動的ストレッチとランニングドリルの基本セット
- 股関節回し、レッグスイング、ランジ+ツイスト
- スキップ、バウンディング、流し(60〜80%)×3本
プライオメトリクスの最小限活用
- 軽いホッピングやスプリント前の短いバウンスで神経を起こす
クールダウンと呼吸法で自律神経を整える
- 5〜10分のジョグ→静的ストレッチ
- 鼻から吸って長く吐く腹式呼吸を1〜2分
栄養・水分・暑熱対策:終盤のパフォーマンスを支える準備
糖質戦略:前・中・後の補給タイミング
- 前:練習2〜3時間前に炭水化物中心の食事+水分
- 中:60分超の高強度なら、状況に応じて少量の糖質補給
- 後:30分以内に糖質+たんぱく質(牛乳・おにぎり等)
電解質と水分:発汗量に応じた実践
- こまめに摂取。大量に一気飲みしない
- 汗が多い人はナトリウム入りの飲料を活用
カフェインの使い方と注意点
カフェインは集中や自覚的きつさの軽減に使われますが、個人差が大きく、睡眠への影響にも注意が必要です。成人では競技前に少量を試すケースもありますが、未成年は保護者・指導者と相談のうえ慎重に。まずは食事・睡眠・水分を最優先に整えましょう。
暑熱・寒冷環境での強度調整とリスク管理
- 暑熱:セット数やワーク時間を2〜3割削減。日陰・冷却具を活用
- 寒冷:ウォームアップを長めに。末端の保温と呼吸数のコントロール
進捗の見える化:テストとモニタリングで最適化する
Yo-Yoテストの活用と注意点
Yo-Yoテストは反復加速耐性を見るのに有用です。実施条件(時間帯・靴・路面)をそろえ、比較可能な形で行いましょう。疲労が強い日は無理に更新を狙わず、安全を優先します。
RPE(日誌)と心拍数で疲労と適応を追う
- RPE×運動時間=セッション負荷として週合計を管理
- 朝の安静時心拍や睡眠の質をメモし、過負荷の兆候を早期発見
GPS/距離計測がない場合の代替指標
- 時間ベースの設定(例:30/30)で実施し、週ごとにRPEや回数で比較
- ライン間の往復回数や、設定距離の達成率を記録
週ごとの負荷管理:急増回避と計画的変動
- 週合計の走量や高強度時間を、前週比で±10%内に
- 3〜4週間ごとに軽めの「リセット週」を入れる
週の組み立てとシーズン計画:試合に合わせて波を作る
週2回インターバルの配置例(試合1本の場合)
- MD-4:vVO2max系(30/30や3分×5)
- MD-2:短時間・シャープ(15/15や10秒ダッシュ×少本数)
中2〜3日の試合間隔での短縮版ターパリング
- ボリュームを抑え、質を落とさない(本数半減、強度維持)
- 可動域と神経系のキレを優先(流しや軽いプライオ)
オフ期・プレシーズン・インシーズンの狙いと比重
- オフ期:基礎持久力とフォーム・補強
- プレシーズン:vVO2maxとRSAのブリッジ
- インシーズン:メンテナンス(短く鋭く、疲労を残さない)
高校生・保護者のための実践ポイント
成長期の負荷設定と休養の重要性
身長や骨格が伸びる時期は、急な走量・強度の増加を避けましょう。痛みのサイン(骨の付着部、アキレス周囲など)には敏感に。休養日を確保し、睡眠を最優先に。
家庭での回復環境づくり(食事・睡眠・入浴)
- 夕食は主食+主菜+副菜でバランスを
- 入浴はぬるめで10〜15分。就寝1時間前のスマホは控える
練習前後の補食と持ち物チェックリスト
- 前:バナナ・おにぎり・ヨーグルトなど消化のよいもの
- 後:牛乳やプロテイン+炭水化物
- 持ち物:水分、タオル、補食、着替え、寒暖差対策のウェア
よくある失敗と対策:質を落とさず継続するコツ
やり過ぎでスピードが落ちる問題への対処
本数を増やすほど動きが重くなるなら、質優先へ。セット数を減らし、強度を維持。週内に完全休養か軽運動日を入れる。
レスト不足による質低下を防ぐ調整法
- ワーク:レスト比を1:1→1:1.5に変更
- セット間のレストを2→3〜4分に延長
単調化を避けるメニューの入れ替え
- 30/30と3分インターバルを週替わりで入れ替え
- 直線→シャトル→SSGと環境をローテーション
雨天・強風・高温時の代替メニュー
- 屋内:ランニングマシンの時間ベース(傾斜活用)
- 自転車エルゴ:40秒ハード+40秒イージー×12〜20本
- 屋内サーキット:バーピー・マウンテンクライマー・スキップのインターバル
サンプル1週間プラン:試合を想定した具体例
試合1本(週末)想定のトレーニング配分
- 月:回復ジョグ+補強
- 火(MD-4):vVO2max(3分×5)+技術
- 水:技術・戦術(中強度)
- 木(MD-2):15/15×16〜20本+セットプレー
- 金:軽めの調整(流し×3〜4)
- 土:試合
- 日:オフまたはリカバリー
試合2本(週中・週末)での短縮インターバル
- 月:軽回復
- 火:15/15×12〜16本(本数控えめ)
- 水:試合
- 木:回復・技術
- 金:10秒ダッシュ×6〜8本(長めレスト)
- 土:試合
- 日:オフ
テスト週の負荷軽減と確認項目
- 本数を3〜5割減らし、テスト2〜3日前は流しのみ
- 睡眠・補食・ウォームアップの手順を固定化して再現性を高める
まとめ:サッカーの持久力を上げるインターバル走で差がつく試合終盤へ
MASを把握→設計→実行→記録のループを回す
自分のMASを知り、ワークとレストを意図的に決め、実行し、RPEや本数で記録。これを回すほど、終盤の走れる感覚が積み上がります。
小さな進歩を積み上げる指標の選び方
- 同じメニューで本数+1本、RPE−1、心拍回復の改善
- ターンの精度や再加速の手応えなど、動きの質も記録
次の一歩:あなたのポジションと試合日程に合わせて最適化
週のどこで何を鍛えるかは、ポジションと試合日程で変わります。この記事の原則とメニューを組み合わせ、あなた仕様のプランを作りましょう。インターバル走で「走り切れる終盤」を自分の武器に。
