膝や踵がズキッと痛む。成長期のサッカー選手には珍しくありません。とはいえ「どこまでやっていい?休むべき?」は悩みどころ。この記事では、成長期に多い膝(オスグッド/SLJ)と踵(セーバー病)の痛みについて、休む目安と復帰基準をわかりやすく整理。翌日の悪化を防ぎながら、できるだけ早く安全にピッチへ戻るための実践ガイドです。
目次
こんな症状は“成長痛”?サッカーと膝・踵の痛みの基礎知識
成長期に起こりやすい痛みの正体と“成長痛”の言葉の使い方
一般に「成長痛」と呼ばれるものの多くは、夜間に脚全体がズーンと痛む一過性の症状を指すことがあります。一方、サッカーで問題になりやすい痛みは、走る・跳ぶ・蹴るなどの「繰り返しの負荷」で起こる局所の痛み(オーバーユース)。いわゆる“成長痛”という言葉だけでは捉えきれません。膝前面や踵など、骨の成長部(骨端核)や腱の付着部にストレスが集中し、炎症や痛みが出るのが特徴です。
膝の代表例:オスグッド・シュラッター病/Sinding-Larsen-Johansson(SLJ)
オスグッド・シュラッター病は、膝のお皿の下にある「脛骨粗面(けいこつそめん)」が痛む状態。触ると出っ張りに強い圧痛があり、ダッシュやジャンプ、キックで増悪します。SLJ(シンディング・ラーセン・ヨハンソン病)は、お皿の下端(膝蓋骨下極)付近の痛みが中心で、症状は似ていますが場所が少し異なります。どちらも主に成長期に発生しやすい、牽引(引っ張られる)ストレスが原因です。
踵の代表例:セーバー病(踵骨骨端症)
セーバー病は、踵の後ろ〜足底寄りにある成長軟骨部に炎症が起こる状態。走る・ジャンプする・スパイクの踵で地面を叩く、といった負荷で痛みます。踵をつまむと痛い、朝イチの一歩目が痛い、長く歩くと跛行(びっこ)になる、といったサインが代表的です。
痛みが出る仕組み:骨端核・腱付着部にかかる反復ストレス
成長期は骨がぐんと伸びる一方、筋や腱の柔らかさ・強さの適応が追いつかないタイミングがあり、腱の引っ張りが成長部に集中します。これに、練習量の急増、硬いグラウンド、合わないシューズ、睡眠不足などが重なると、痛みが出やすくなります。
まず受診すべきサイン:自己判断せず医療機関へ
受診の目安(赤旗症状):夜間痛・発熱・著明な腫れ・荷重不能など
- 夜間に目が覚めるほどの痛み、安静時痛が強い
- 発熱を伴う、赤く腫れて熱感がある
- 体重をかけられない、歩けない、明らかな跛行
- 外傷直後の激痛、ボキッと音がした、関節がロックする
これらは感染や骨折、剥離など、単なるオーバーユースではない可能性があります。自己判断せず整形外科などで評価を受けてください。
X線や超音波が検討されるケース
圧痛が強い部位の骨端付近は、X線で骨の状態(剥離、分裂、骨端核の変化)を確認することがあります。腱や軟部組織の状態は超音波で観察されることもあります。画像は“必要なときに必要なだけ”が基本です。
部活動・クラブへの伝え方と情報共有のポイント
- 医療機関の評価結果と、やってよいメニュー/避けるべき動作を簡潔に共有
- 痛みスコア(0〜10)と翌日の反応を日誌で報告
- 復帰は段階的に。目安をチームと合意してから実施
サッカー成長痛で“練習を休む目安”
痛みスケール(0〜10)による判断:休止ラインと継続ライン
- 0〜3/10:許容範囲。フォームが崩れず、翌日増悪がなければ調整して継続可
- 4〜5/10:要調整。メニューを軽くし、着地・キックを制限。翌日の反応で再評価
- 6/10以上:休止推奨。痛みが強い日は競技練習は中止しセルフケアとリハに専念
歩行・階段・片脚ジャンプでの痛みと動作の崩れ
- 歩行や階段で痛む、びっこが出る → 基本は休止
- 片脚ジャンプで着地が怖い、バランスが取れない → 競技練習は見送り
- フォームが明らかに崩れる(庇う) → メニュー中止
24時間ルール:翌日増悪の有無で判断する
当日の痛みが軽くても、翌朝の痛みが2ポイント以上上がる、階段や一歩目が悪化する場合は“やり過ぎ”のサイン。次回は強度・量を1〜2段階落とします。
痛みの出る局面(ダッシュ・カット・キック・着地)での実践判定
- ダッシュやカットで刺すような痛み → スプリント/方向転換は一時中止
- キック動作で痛む → キック本数を1/3〜1/2へ、ロングは回避
- 着地で痛む → ジャンプ系は中止、低衝撃ドリルに差し替え
膝(オスグッド/SLJ)の休止と復帰基準
休むべきタイミングの具体例:走ると痛い・階段で痛む・腫れや圧痛が強い
- 脛骨粗面や膝蓋骨下極の圧痛が強く、腫れや熱感がある
- ジョグでも痛む、特に下り階段で痛みが増す
- 片脚着地が怖い、スクワットで庇う動作が出る
復帰前セルフチェック:スクワット・片脚スクワット・前方ホップ
- スクワット(椅子に座る高さまで)10回:痛み0〜3/10、フォーム安定
- 片脚スクワット5回:膝が内側に入らない、痛み0〜3/10
- 前方ホップ(片脚)10回:着地で痛み0〜3/10、翌日増悪なし
段階的復帰プロトコル:ジョグ→スプリント→カット→シュート→対人
- ステップ1(24〜48時間):平地ジョグ10〜20分、ドリブル軽め
- ステップ2:流し(60〜80%)×6〜10本、基礎パス、軽いコントロール
- ステップ3:スプリント(90%)×4〜6本、緩いカット、ショートキック
- ステップ4:鋭いカット・ストップ&ゴー、ロングキック、セットプレー
- ステップ5:対人・実戦強度(ゲーム形式)。翌日増悪がなければ完全復帰
各ステップで痛みが4/10を超えたら一段階戻り、翌日の反応が安定してから再開します。
テーピング・サポーター・パッドの位置づけと注意点
- 膝下ストラップ(パテラストラップ)や脛骨粗面パッドは刺激分散に有用
- “痛みを消して”強度を上げるのはNG。きつ過ぎ・長時間の装着は避ける
- 装着の有無にかかわらず、負荷管理とリハが基本
踵(セーバー病)の休止と復帰基準
休むべきタイミングの具体例:踵の圧痛・歩行時痛・跛行(びっこ)
- 踵の内外からつまむと強い痛み、押しても痛い
- 歩行で痛む、朝の一歩目がきつい、跛行が出る
- 連続ジャンプやダッシュで痛みが増す
復帰前セルフチェック:片脚つま先立ち・連続ホップ・直線走
- 片脚かかと上げ20〜25回:痛み0〜3/10、ふらつき最小
- 片脚ホップ10回:着地痛0〜3/10、翌日増悪なし
- 直線走(80〜90%)100m×3:痛み安定、フォームの崩れなし
段階的復帰プロトコルとヒールリフト/インソールの活用
- ステップ1:自重カーフレイズ、短時間ジョグ、ドリブル軽め
- ステップ2:流し・コントロール、低回数のジャンプドリル
- ステップ3:スプリント、方向転換、小回数のシュート
- ステップ4:実戦強度へ段階的に戻す
ヒールリフト(数mm〜1cm)やカップ型インソールはアキレス腱の牽引を減らす目的で検討可。サイズ・高さは痛みとフォームが安定する範囲で調整し、徐々に外すのが基本です。
スパイク選びとグラウンド環境(人工芝・硬い土)の見直し
- 踵のクッション性があるモデル、かかとカップがしっかりしたもの
- 硬い土や短い人工芝は衝撃が強くなりがち。できれば芝やラバーの時間を増やす
- アウトソールの摩耗が進んだシューズは早めに交換
練習を続けてよいケース:許容できる痛みと条件
許容痛(目安3/10以下)と当日〜翌日の反応が安定していること
トレーニング中の痛みが0〜3/10に収まり、24時間以内に元の状態へ戻るなら、量や強度を調整しながら継続可能です。
可動域・筋力・フォームの代償がないこと
- 膝・足首の動きが左右で大きく差がない
- ジャンプやカットで庇い動作が出ない
- 片脚動作でぐらつきが最小限
メニュー調整(総量・高強度局面・キック数・ジャンプ数)の考え方
- 総量は直近1〜2週平均から+10〜20%以内の増加に抑える
- キック本数の上限設定(例:ロングは10〜20本まで、痛みが上がれば即終了)
- ジャンプ系は回数を半分に、着地重視のドリルへ置き換え
- 連戦や走り込みの前後にオフ・軽負荷日をはさむ
回復を早めるセルフケアと生活管理
アイシング・圧迫・挙上の使い分けとタイミング
- 運動後に痛みや熱感がある → 10〜15分のアイシング(直接皮膚に長時間は避ける)
- 軽い腫れやズキズキ感 → 弾性包帯でやさしく圧迫、可能なら挙上
- 冷やしすぎは回復を遅らせることも。痛みコントロール目的に限定
柔軟性:大腿四頭筋・ハムストリングス・ふくらはぎの安全なストレッチ
- 大腿四頭筋:横向き・うつ伏せで膝を曲げ、30秒×2〜3回。膝前面が痛いときは無理をしない
- ハムストリングス:膝軽く曲げた前屈やタオルストレッチ、30秒×2〜3回
- ふくらはぎ:壁押しで腓腹筋・ヒラメ筋をそれぞれ30秒×2〜3回
「痛気持ちいい」手前で止め、反動をつけずに行います。
筋力:等尺性(痛み抑制)→等張性→プライオの段階的進行
- 等尺性:膝伸展・ハムブリッジ・カーフレイズの止め(30〜45秒×3)。痛み0〜3/10
- 等張性:スプリットスクワット、シングルレッグRDL、ゆっくりカーフレイズ(8〜12回×2〜3)
- プライオ:小さめの連続ジャンプ、スキップ、ホッピング。翌日の反応を確認し段階的に
睡眠・栄養:エネルギー不足の回避と日常の体調管理
- 睡眠は目安7.5〜9時間(成長期は多め)
- 主食・たんぱく質・野菜・乳製品を欠かさず、練習後30〜60分内に補食
- 脱水は筋の張りを強めやすい。こまめな水分・電解質補給
再発予防:負荷管理とシーズン設計
練習量の増減ルール:週あたりの変化を抑える
トレーニング量・強度は「急に増やさない」。週ごとの増減は小さく、ハード週とリカバリー週を意図的に作ります。
ジャンプ・キックの反復回数管理とウォームアップ/クールダウン
- ジャンプやロングキックは“質優先・本数管理”。上限を決めて守る
- ウォームアップは股関節・足関節の可動、軽いプライオ、コア活性をセットで
- クールダウンは軽いジョグとストレッチで翌日の張りを軽減
連戦・遠征・テスト期間の調整とオフ日の作り方
- 連戦前後は練習量を落とし、睡眠を最優先
- 学業の負荷が高い週は走り込みを減らし、技術中心に
- 完全オフ日を週1回目安で確保
成長スパート期のサイン(身長の急伸)とケガリスクへの備え
- 短期間でズボン丈が合わなくなる、身長が急に伸びる
- 筋の張りが強くなる、疲れやすい
この時期は痛みが出やすいので、強度を少し落とし、ケアと睡眠を増やします。
家庭とチームで使える“セルフチェックリスト”
朝の一歩目の痛み・階段・しゃがみ込みの確認
- 朝の一歩目の痛みは?(0〜10)
- 階段昇降で痛みや庇いは?
- しゃがみ込みで痛み・ぐらつきは?
片脚かかと上げ20〜25回・片脚ホップ10回の反応
- 左右差や痛みスコアを記録(0〜3/10以内が目安)
- 翌日の増悪があれば次回は量を1段階減らす
練習日誌:痛みスコア・メニュー・睡眠・翌日反応の記録
- その日の痛み(前・中・後)を0〜10で
- メニュー内容(強度/量)、キック・ジャンプの大体の回数
- 睡眠時間と翌日の痛み・張り
よくある質問(Q&A)
アイシングは毎回必要?どのくらいの時間?
毎回必須ではありません。運動後に痛み・熱感がある時に10〜15分を目安に。皮膚トラブルを避け、冷やし過ぎないことが大切です。
整形外科・小児科・理学療法の使い分けは?
痛みが続く、赤旗症状がある、競技復帰の判断が必要なときは整形外科へ。年齢やワクチンなどの全身管理は小児科。動き・筋力の改善や復帰プロトコルの設計は理学療法士やアスレティックトレーナーがサポートすることがあります。
片側だけ強い痛みは大丈夫?左右差の考え方
片側優位は珍しくありませんが、強い圧痛や腫れ、機能低下があれば受診を。左右差が大きい場合はフォームや柔軟性、筋力の偏りを見直します。
試合直前に痛みが出たときの出場可否の判断軸
- ウォームアップ中の痛みが3/10以下で安定
- 片脚ホップ10回、90%走でフォームが崩れない
- 翌日の重要イベント(連戦・テスト等)との兼ね合いを考慮
いずれかに不安があれば無理は禁物。短期的な出場より長期的な成長を優先します。
まとめ:休む勇気と段階的再開が最短の近道
今日からできる3つのチェック(痛みスコア・翌日反応・機能テスト)
- 痛みスコア(0〜10)を活動前後で記録
- 24時間ルールで翌日の増悪を確認
- 片脚ホップ/かかと上げ/片脚スクワットで機能を確認
指導者・保護者と共有したい“休む目安”と“復帰基準”のフロー
- 歩行・階段で痛い、痛み6/10以上 → 休止・受診検討
- 痛み0〜3/10・翌日安定 → 量と強度を管理して継続
- セルフチェック合格 → 段階的復帰(ジョグ→スプリント→カット→キック→対人)
膝や踵の成長期の痛みは、適切な負荷管理と段階的な再開ができれば、競技を続けながら乗り越えられるケースが多いです。休む勇気と、賢い再開。これが最短ルートです。
