目次
リード:クロアチア代表のW杯予選は「負けない力」で積み上げる
クロアチア代表は、W杯本大会での強さ(2018準優勝、2022ベスト4)だけでなく、予選の戦い方にも特徴があります。ポイントは「大崩れしない守備」「中盤のゲームコントロール」「勝点の取り方の再現性」。本記事では、W杯欧州予選の仕組みから直近サイクル(カタール行きの2022予選)の勝ち上がり、過去サイクルのハイライト、戦術・データ・人の面までを一気に整理。観戦前の予習、選手・指導者の学びにも使える実用ガイドとしてまとめました。
要約と全体像
W杯予選でのクロアチアの立ち位置
クロアチアは、欧州でも「堅実に勝点を積むタイプ」の代表です。派手な大量得点よりも、ゲーム管理で主導権を握り、無失点や最少失点で勝ち切る。中盤に優れたレジスタ・コントローラー(例:モドリッチ、ブロゾビッチ、コバチッチ)を擁し、試合のテンポを扱う術に長けています。
直近の2022年W杯欧州予選(グループH)は23点で首位通過。10試合7勝2分1敗、得点21・失点4、クリーンシート7試合。最終節でロシアを1-0で下し、自動通過を決めました。
勝ち上がりのパターン(自動通過/プレーオフ)
クロアチアは自動通過とプレーオフの両方でW杯切符を掴んできました。
- 自動通過の例:2002、2006、2022など(グループ首位で突破)
- プレーオフの例:1998(ウクライナを下して本大会へ)、2014(アイスランドに勝利)、2018(ギリシャに勝利)
「グループ首位で堅実に抜ける」か「拮抗した中で2位→プレーオフを勝ち切る」か。どちらのルートでも、失点を抑えながら“要所を締める”戦いで生存率を上げてきました。
本記事の読み方(試合観戦前の予習ガイド)
先にフォーマットと過去の勝ち方を掴み、直近サイクルの実例で「どこで勝点を積んだか」を確認。次に戦術・データ・人物・対戦相手別の見方を押さえると、試合中の「狙い」と「修正」が見えやすくなります。最後に、観戦メモ用テンプレートと育成への示唆で、日々の練習や指導にブリッジしていきましょう。
W杯欧州予選の仕組みを先に整理
大会フォーマットの基本(グループ分けとプレーオフ)
欧州予選は、国ごとに組み分けられるグループステージが基本。各組の首位は自動的に本大会へ。2位はサイクルによりプレーオフへ回ります。プレーオフはホーム&アウェイまたは一発勝負のパスで争い、残りの出場枠を決定します。
サイクルごとの違いと注意点
- 2018:9組の首位が通過。2位のうち成績上位8カ国がホーム&アウェイのプレーオフ。
- 2022:10組の首位が通過。2位10カ国+UEFAネーションズリーグ成績上位2カ国の計12チームが、3つのパスで一発勝負のプレーオフ(準決勝・決勝)。
- 2026(予定):欧州の出場枠が拡大。グループ首位は自動通過、2位+ネーションズリーグ成績上位がプレーオフで複数枠を争う形式。細部は公式発表に準拠。
つまり、同じ「2位」でもサイクルによってプレーオフの門番や一発勝負の重みが違います。
UEFAネーションズリーグとの連動
近年はネーションズリーグの成績がプレーオフの「救済枠」に繋がるケースがあります。クロアチアのように安定して上位リーグで戦える国は、万一の取りこぼしがあっても「もう一度チャンスを得やすい」構造です。
FIFAランク・ポット分けが与える影響
抽選時のポット分けは、グループの難易度を大きく左右します。ランキングを高く保つ=ポット上位=強豪との同居を避けやすい。クロアチアは国土規模に対してランクを高く維持しており、ここも予選の追い風になりやすいポイントです。
直近サイクルの勝ち上がり全貌
グループ構成と日程の俯瞰
2022年W杯欧州予選・グループH:
- 対戦国:ロシア、スロバキア、スロベニア、キプロス、マルタ
- 成績:10試合 7勝2分1敗/勝点23/得点21・失点4/無失点7
- 最終節:ロシアを1-0で下し首位通過(スプリトの雨中、オウンゴールで決着)
対戦別の狙いと実行度(スカウティング→ゲームプラン→修正)
- 格下(キプロス、マルタ):早い時間に先制→無理せずコントロール。幅を取り、サイドから押し込みつつ被カウンターの芽を摘む。
- 拮抗(スロバキア、スロベニア):中盤での優位を丁寧に積み、リスク管理重視。引き分け許容ラインを設定し、終盤に勝ち筋を探る。
- 強敵(ロシア):敵地では失点ゼロ最優先(0-0)。ホームでは主導権を握り、終盤の圧でミスを誘発。
「勝ちにいく時間」「引き分けを受け入れる時間」「仕留めにいく時間」を試合ごとに切り替えたことが、失点の少なさと勝点効率に直結しました。
ターニングポイントとなった試合
- 開幕のスロベニア戦(0-1):不用意な先制献上で黒星スタート。以降はビルドアップ時のリスク配分を見直し。
- スロバキア戦(2-2):ホームでのドロー。無理な追撃で崩れず、勝点1を現実的に確保。
- 最終節ロシア戦(1-0):悪天候の中でも押し切り、オウンゴールを誘発。勝点22→23への“1点の重み”を体現。
ホーム/アウェイでのパフォーマンス差と要因
ホーム(4勝1分)は「主導権+無理しない加点」。アウェイ(3勝1分1敗)は「まずは失点しない」。ピッチ・気候・審判傾向の差を織り込んだゲームプランで、アウェイでも平均失点を抑制しました。
勝点配分の内訳(勝ち切り・引き分けのマネジメント)
10試合中7試合が無失点。勝点3を狙う相手に「背伸びを強要」せず、こちらは「過度に前がかりにならない」。1点差を守り切る時間帯のラインコントロール、リスクファウルの基準、CK/FKのセーフティ設計が徹底されていました。
プレーオフに回った場合のシナリオと対応
プレーオフは「90分で勝ち筋を掬い上げる作法」。クロアチアは過去サイクルで、セットプレー・ロングスロー・セカンドボールといった“確率の高い局面”に時間とリソースを再配分。ベテランの意思決定が勝敗の分水嶺になりやすい構図です。
過去W杯予選の戦績ハイライト(1998以降)
1998・2002・2006:初期黄金期が示した予選の勝ち方
1998はプレーオフでウクライナを退けて本大会へ。2002と2006はグループを首位で抜けるなど、堅牢な守備と効率的な得点で“危なげない”勝ち上がりを確立。少ない失点と「勝点3を拾う感覚」はこの時期に形作られました。
2010:不出場から得た教訓
2010は強豪ひしめく組で3位に終わり不出場。ここで得たのは「取りこぼしの重さ」と「ロースコアで競り落とす力の必要性」。以降のサイクルで、より現実的なマネジメントが強化されます。
2014:プレーオフ突破の再現性
ベルギーと同居したグループで2位。プレーオフでアイスランドに0-0、2-0。アラートさと修正力で90分を積み重ね、ミスを最小化して勝ち切る“受験型”の強さを再確認しました。
2018:プレーオフでの修正力と安定化
グループ2位からギリシャとのプレーオフは初戦で4-1と大勝、2戦目を0-0で締める理想形。監督交代を含む難所を越えつつ、戦術の整理と役割の単純化が奏功しました。
2022:最終節での首位通過と成熟度
最終節での1-0勝利は、予選における“時間と状況の扱い方”の集大成。肩に力を入れず、しかし要所は締める。成熟したチームの勝ち方です。
戦術で読むクロアチアの予選
可変システムの基盤と中盤トライアングルの機能性
基本は4-3-3(状況により4-1-4-1/4-2-3-1化)。中盤トライアングルは、底での配球とスイッチ(ブロゾビッチ)、前進と加速(コバチッチ)、状況判断とゲーム支配(モドリッチ)が分業。ボールが落ち着くため、相手はラインを上げづらく、こちらは丁寧に前進できます。
ビルドアップと前進の原則(第1・第2ラインの突破)
- 第1ライン:CB+アンカーで三角形を作り、サイドのSBへ時間と角度を供給。
- 第2ライン:IHがレーン間に顔を出し、縦効きのワンタッチで前を向く。逆サイドのウイングは幅を維持して、大きな展開の受け皿に。
中盤の圧力回避とゲームコントロール
圧力回避は「外す」か「受ける」かの二段構え。受けると決めたら、ファウルの基準・セーフティな後退・セットプレー化までを計画済み。これがロースコアでの勝負強さを支えます。
サイド攻撃:幅の取り方とクロスの質
SBとウイングで幅を確保し、IHがペナルティアーク周辺でこぼれ球に備える。クロスはニア・ファー・カットバックの3点セット。外→中→外のリズムで相手の視線をズラし、二次攻撃の火種を残します。
セットプレー(CK/FK)の設計とリスク管理
キッカーの精度とランのパターンが整理され、守備時はカウンター抑止の配置を優先。蹴る・守る双方で「最低限を担保」するため、試合が壊れにくいのが特徴です。
試合終盤のゲームマネジメント(リード時/ビハインド時)
- リード時:ライン間を詰め、外循環で時間を使う。不要な中央失陥を避ける。
- ビハインド時:SBの高さを上げ、IHがボックス侵入を増やす。相手のファウルを誘い、セットプレーの回数を増幅。
データで掘る勝ち上がりの要因
時間帯別の得失点傾向
直近予選では終盤(70分以降)にスコアが動く試合が要所で見られました。焦れずに回し、相手の足が止まる時間帯で決め切る設計はクロアチアの型です。
被シュート抑制とPA侵入管理
PA内での決定機を減らす守りが徹底。クロス対応時の数的不利を作らず、セカンドボールの回収率を高めることで「2本目の失点」を防止します。
ボール保持率と効率性(xGとの関係)
保持率は中〜高めでも、シュートは過度に多くない傾向。質の高いシュート選択と、セットプレーでの期待値上乗せが勝点に直結します。
トランジション局面での奪回地点と二次攻撃
中盤での即時奪回→サイド解放→カットバックの“教科書型”を多用。相手のボランチ脇でボールを動かし、背後に走るレーンを確保します。
ローテーションとコンディション管理の指標
連戦期は「30分のジョーカー」「60分での計画交代」で強度を平準化。ベテランの可動域を守り、若手の推進力を後半に当てる非対称ローテがフィットします。
若手台頭とベテランの共存がもたらす安定度
CBやSBに若手(例:グヴァルディオルら)、中盤・前線に経験豊富な選手を組み合わせる設計。判断の質と走力のミックスが、予選の長期戦で効いてきます。
主要人物とローテーション戦略
監督の方針と意思決定プロセス(選手起用・試合中修正)
近年は、相手強度に応じて“どこで勝負するか”を明確化。アウェイでの無失点重視、ホームでの先制主義、終盤のセットプレー強化など、相手の長所を刺させない現実的なプランが基本線です。
ポジション別キープレイヤー像(GK/DF/MF/FW)
- GK:ショットストップ+ハイボール処理の安定。終盤のクロス対応が肝。
- DF:CBは対人とカバーの両立。SBは幅を作りつつ、切り替えでの帰陣意識。
- MF:アンカーは配球と遮断、IHは前進と守備スイッチ。役割の明確化が鍵。
- FW:ウイングは幅と背後脅威、CFはポストと連携。得点より“起点”の質も重視。
世代交代の進め方と役割移行
要職(中盤・CB)を段階的に若返らせ、ベテランは「試合を閉じる役」や「局面のブリッジ役」に最適化。これにより、総合力は維持しつつ、走力は落ちない設計です。
キャプテンシーとリーダーシップの分散設計
一人に寄せすぎず、ピッチ内の縦軸(GK、CB、MF、FW)それぞれにリーダーを配置。審判対応、ゲームテンポ、セットプレー指揮など、機能別に役目を分けます。
対戦相手別の傾向と攻略ポイント
強豪相手:非保持での耐久力とカウンター設計
中盤の密度を高め、奪った瞬間は2手先まで決め切る。幅→中央のショートカウンターか、CFを起点にIHが追い越す二択がベース。
格下相手:ローブロック攻略と早期先制のメカニズム
SBの高さとIHのレーン間受けでズレを作り、ニアゾーン(ペナルティエリア脇)からのカットバックで崩す。早い先制=相手ブロックの陥落=追加点の再現率UP。
拮抗相手:セットプレーとトランジションの微差を制す
ファウルの取られ方・与え方、CK/FKの配置、セカンドボールの習熟度で差を作る。勝点1と3の分水嶺は、こうした“微差の管理”にあります。
審判傾向・環境要因(気候・ピッチ)の影響
接触基準が厳しめなら球際を減らし、ルーズならデュエル増で主導権を握る。ピッチが重い日は背後とセットプレー比重を上げ、事故を呼び込む発想が有効です。
試合別ミクロ分析テンプレート(観戦メモに使える)
キックオフ〜15分:入り方とプランの可視化
- 最初の3本の前進ルート(右・左・中央)は?
- 相手の1stプレッシャーに対する回避策は用意済みか?
- SBとIHの高さ・距離感は適正か?
前後半のアジャスト(ハーフタイムでの修正点)
- 相手の狙い所(サイド/背後/カウンター源)への対策更新
- セットプレーの蹴り分け・守備配置の微修正
- 交代プラン(60分・75分のカード)の再確認
交代カードの意図と効果検証
- 投入後5分・10分のボールタッチ位置、運びの方向性
- 守備のスイッチ役が変わったか?ラインの高さは維持できているか?
重要局面(PK/VAR/カード)への反応と再起動
- 感情のコントロール(キャプテンの介入、審判対応)
- 再開後の1分間で何を優先したか(保持/圧力/時間管理)
育成年代・指導への示唆
中盤の判断力を鍛えるトレーニング観点
- 2対1+フリーマンでの前進ドリル(縦・斜めの選択)
- 背中で受ける→ワンタッチではがす→前向きの連鎖
技術と戦術理解の両立(ポジショナル×個人戦術)
幅を取りながら内側で優位を作る感覚を日常化。個の技術に「いつ・どこで・なぜ」をセットにするだけで、予選型の勝ち方に近づきます。
試合運びのメンタリティ教育とリスク管理
「引き分けの価値」「1点差の重み」を共有。勝ち急がず、相手の焦りを待つ姿勢を育てると、終盤の勝率が上がります。
よくある質問(FAQ)
プレーオフの仕組みと出場条件は?
グループ2位の国が中心ですが、近年はネーションズリーグの成績上位国にも枠が付与されることがあります。形式(ホーム&アウェイ/一発勝負)はサイクル依存です。
予選と本大会で何が変わる?(レギュレーション・強度・準備)
予選は移動・環境の振れ幅が大きく、管理の巧拙が勝敗に直結。本大会は対戦相手の強度が上がり、短期決戦での上振れ・下振れが増えます。
代表選考はどう決まる?(直近のフォームと適合性)
クラブでの稼働・コンディション・戦術適合性のバランス。連戦期は“使える分数”の読みも重要。役割の競合状況も影響します。
遠征・スタジアム環境が与える実力差のゆらぎ
ピッチ状態、気候、移動、審判傾向でパフォーマンスは揺らぎます。クロアチアはここを「崩れない守備」と「現実的な攻め」で均してきました。
データ・情報ソースの見方
公式記録とサードパーティデータの突き合わせ方
試合結果・選手出場はFIFA/UEFA/各協会の公式。シュートやxGは信頼できるデータ会社で補完。ズレた場合はイベントログ(時間・地点・プレー種類)で検証します。
ハイライトだけで誤読しないためのチェックポイント
- 得点前後3分の配置と意図
- 失点の原因(個人ミスか構造的問題か)
- 交代後の流れ変化(保持/奪回/陣地回復)
信頼できる情報源リストと更新頻度の目安
- FIFA/UEFA公式:大会フォーマット・結果(随時)
- 各国協会(HNSほか):招集・会見(試合前後)
- 主要データベース(例:Opta、Wyscout、FBref、Transfermarkt):スタッツ・スカッド(試合ごと/週次)
まとめ:クロアチアが強い理由と今後の注目点
継続性とアップデートの両立が生む再現性
中盤を核に据えたゲーム管理、守備の原則の徹底、セットプレーと終盤の“勝ち筋”設計。土台を変えずに時代に合わせて微修正を積むから、予選での勝点がブレません。
次サイクルの焦点とリスクマネジメント
世代交代と強度維持の両立、抽選次第の組難易度、プレーオフ形式の細部が焦点。アウェイの難ピッチや過密日程でも、失点ゼロの確率を維持できるかが鍵です。
観戦・学習のためのチェックリスト
- 前半の「外→中→外」のリズムは作れているか
- 無失点で終盤に入れたか(交代で強度は落ちていないか)
- CK/FKの設計とリスク管理はぶれていないか
クロアチアの予選は「崩れない」「焦らない」「確率を積む」。この三拍子がそろうと、勝点は自然と伸びます。観戦時は“どの瞬間に勝ち方が見えたか”を意識してみてください。プレーする人・教える人にとっても再現しやすい、学びの多いモデルケースです。
