サッカーにおける「シザース」は、一度は耳にしたことがあるドリブルテクニックのひとつです。しかし「どうやってやるの?」「正しいコツは?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。本記事では、高校生以上の選手や、サッカーをしているお子さんを持つ保護者の方に向けて、シザースのやり方・練習方法・上達のポイントまでを徹底的に解説します。サッカー歴やレベルを問わず、“シザースが武器になる”ための本質的なコツをお届けします。
はじめに|サッカーにおけるシザースの重要性
シザースとは何か
シザース(scissors)とは、ボールをまたぐようにして脚を回し、相手ディフェンダーの逆を突く「またぎフェイント」の一種です。日本語では「またぎ足」とも呼ばれ、慣れるとスムーズにスピードを落とさず相手をかわすことができる技術です。W杯などの大舞台から街のフットサル場まで、様々なシーンで使われている基本かつ奥深いフェイントと言えるでしょう。
なぜシザースは使われるのか
サッカーでは、相手ディフェンダーとの“1対1”で突破する力が勝敗を分ける場面も多々あります。その中でシザースは、足の動きでディフェンダーに片方への移動を意識させ、逆を突くことで相手を置き去りにできるテクニックです。特にスピードがある選手や、瞬発力を活かしたい人にとって有効であり、ボールコントロール力向上にもつながります。
シザースが有効な状況
シザースが最も効果を発揮するのは、相手と近い距離で正面から向き合った時や、タッチライン際などスペースが限られている時です。相手の重心移動や心理的な“揺さぶり”を利用することで、抜き去る確率が高まります。また、視線や上半身のフェイントと組み合わせれば、駆け引きの幅がさらに広がり、味方へのパスや自分でシュートを狙うシーンの選択肢が増えるのです。
シザースの基本|正しいやり方をマスターしよう
シザースの基本動作を分解する
シザースの動きは大きく分けて以下の3ステップです。
- 1. ボールの前に立つ:ボールを自分のやや前方に置き、自然な体勢で構えます。
- 2. 足をボールの外側からまたぐ:片足をボールの外側から内側に向かって大きく外回りで振り出し(またぐ)、体重を乗せながら踏み込みます。
- 3. 逆足で持ち出して突破:またいだ後、素早く逆の足でボールを斜め前方に運びます。この時、最初にまたいだ足とは逆方向に抜けることで、ディフェンダーの逆を突けます。
初心者でも分かる!シザースのステップバイステップ解説
初めてシザースに挑戦する方向けに、シンプルな流れで解説します。
- ボールを片足の前に静止させる。動きながらでも問題ありませんが、練習の際は止めてスタートが基本です。
- 利き足をボールの外側から内側に大きく回す(またぐ)。このとき、手も含めて自然と身体全体をひねるようにしましょう。
- 深く踏み込み、腰をしっかり沈ませます。相手に“そちらに行く”と錯覚させるよう心がけましょう。
- 踏み込んだ直後に、逆足で素早くボールを斜め前方へ蹴り出します。この動作がスムーズであるほど効果的です。
- そのままスプリントや加速に移る。突破後は一気にスピードアップして抜き去る意識を持つと、より実戦的な動きとなります。
よくある間違いとその修正方法
1. 足の動作が小さい:シザースは「アクションの大きさ」が相手に効くポイントです。警戒されやすい初心者ほど動きが小さく、逆に見抜かれやすいので、最初はオーバー気味に大きくまたぐことを意識しましょう。
2. 上半身が固い/動かない:脚だけでまたぐとディフェンダーにはバレバレです。肩も含め、身体全体で本当にそっちに行くと見せるようにフェイントをかけましょう。
3. ボールだけを見てしまう:目線が下がると動きが遅れます。ボールと相手、さらには周囲の状況を同時に見られるようになると、一気に実戦で通用するようになります。
4. ボールが遠い/近すぎる:またぐ時のボールが自分から遠すぎると、相手に取られやすくなります。そこまで近くなくてもちょうど踏み出せる位置にセットしましょう。
実践で差がつく!シザース上達のポイント
相手を抜くために意識すべき動作
相手を抜く最大のポイントは「ディフェンダーの重心」をずらすことです。単にまたぐだけでなく、相手のタイミングと逆の動きを織り交ぜましょう。例えば、相手がじりじりと詰めてきた瞬間にシザースを仕掛ける、自分がスピードを上げた直後に急に減速してシザースを見せる、など一工夫するのが実戦では重要です。
目の使い方・上半身のフェイント
プロの選手がシザースを得意とするのは「目線」「肩・腰の動き」もフルに使っているからです。一瞬だけ行きたい方向を目線で示しておき、実際は逆へ持ち出す「アイフェイント」がキレを増します。柔らかな肩の入れ方や腕の使い方にも注目です。
両足でできるようになるためのトレーニング
最初は利き足のみでまたぎがちですが、両足ともに違和感なくシザースできると、相手から予測されづらくなります。壁打ちや一人練習で「右足→左足」「左足→右足」の連続シザースを交互に繰り返しましょう。また、非利き足での蹴り出しも意識的に鍛えてみてください。
スピードとタイミングの調整方法
ただ素早く動けば良い、というものでもありません。相手との距離、スピード差を冷静に見極め「一瞬の溜め」を作ることが、シザースの真髄。ゆっくりまたぎつつ一気に加速したり、逆にテンポ良く連続で仕掛けたりと、状況ごとに強弱を調整できる選手が上級者です。
シザース活用の応用テクニック
ダブルシザース/トリプルシザースのやり方と効果
より相手を揺さぶりたい時、シザースを連続して行うダブル・トリプルも有効です。
- ダブルシザース:左右、もしくは片足で2回連続でまたぐ。相手の重心をより強く逆方向へ引っ張ることができます。
- トリプルシザース:3連続でまたぎを見せることでディフェンスの反応に“間”を生み出し、抜けるコースを拡大。
どちらも、「やり過ぎは見破られる」リスクがありますが、相手が固い守備をしてきた時には非常に有効です。状況を見極めて使い分けましょう。
シザースと組み合わせたい他のフェイント
シザース単体でも十分ですが、より守備者を惑わせたいなら他フェイントとの組み合わせも効果的です。
- インアウト(切り返し)との組み合わせ:シザース後に反対側へ切り返してさらに相手裏を取る。
- 足裏ロール:シザースで相手の重心を動かした直後に足裏でボールを引き瞬間的に逆方向へ。
- ビハインド・ザ・レッグ:最後の仕上げとして、足の後ろを通すなど、技のバリエーションでギャップを生みましょう。
実戦で成功率を上げるためのコツ
1vs1に強くなりたいなら、“決め動作”としてのシザースだけでなく「いつ、なぜ使うのか」を意識してください。状況判断・相手との距離感・スピード差に合わせた工夫が全て。練習では一歩ずつ丁寧に動作を磨き、実戦では迷いなく使う勇気が大切です。シザースが“自分の型”になれば、おのずとプレーの幅も広がります。
上達のための日常練習メニュー
一人でできる基礎練習
自宅や公園、グラウンドの隅などでもできる基礎ドリルが多数あります。
- 静止ボールでの繰り返し:止まっているボールを、正しいボディバランスで左右交互にまたぐ。フォームを鏡やスマホ動画でチェックすると客観的に修正できます。
- 前進しながらのシザース:ゆっくり歩きながらボールを動かし、毎回またぐたびに少しずつ前へ進むと、実戦と近い感覚が身につきます。
親子・仲間とできるシザース練習法
身近な人と取り組むと、楽しみながら効果的な反復が可能です。
- 1対1フェイント対決:攻守に分かれて、互いに抜かれたら交代。緊張感の中で実践的なステップを磨けます。
- 親子並走やコーチと一緒に:コーチ役の人が進行方向を声かけし、右、左と指示を与える事で判断力・即時性もアップします。
トレーニングで意識すべきポイント
シザース練習の際は、「一つ一つの動きを丁寧に」実施しましょう。特に陥りがちなのが、“数をこなそう”とするあまり雑になるパターン。正しいフォームで動く→ポイントだけ早くする→実戦的なスピードにつなげる、という順が遠回りに見えて結果的に一番の近道となります。反復こそ最大の上達法です。
シザースが得意な選手の特徴と参考動画
国内外のシザース巧者に学ぶ
世界のサッカーに目を向けると、多くのスーパースターがシザースを得意技にしています。例えば、ポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウド選手は、本人自身「ナチュラルに出る」と語るほど試合中も躊躇せず使い続け、トップレベルの守備陣すら一瞬で翻弄。在籍時のマンチェスター・ユナイテッドでは若干20歳台前半でシザースを武器にビッグクラブのエースへと成長しました。
国内でも、Jリーグのサイドアタッカーやユース出身のドリブラーの中にシザースが得意とされる選手が数多くいます。特徴としては、フィジカルよりも敏捷性と駆け引き力、そして勇気を持って仕掛ける姿勢が共通しています。
動画で動きをイメージしよう
テキストと写真だけでは動きのニュアンスが伝わりにくいものです。ぜひ、シザースドリブルが特長的な選手のプレー動画を確認してみましょう。何よりも本物の動きは自分自身のヒントになります。試合映像やオンラインの練習動画から「リズム感」「切り替え」「タイミング」を吸収し、イメージトレーニングに役立ててください。
よくあるQ&A|シザース習得の悩みを解決
動きがぎこちない/遅いと感じる時は?
多くの人が最初につまずくポイントです。動きが不自然になる原因は「動作を意識しすぎてしまうこと」「足だけで動きが硬直してしまうこと」が挙げられます。解決のためには、スローな速度から丁寧に、身体全体を連動させて行うのが近道です。鏡や動画撮影を活用し、動作を確認しながら反復しましょう。
実戦でシザースがうまく使えない
練習ではできても、試合だとタイミングを逃しがち…という悩みもよく聞きます。実戦では、「迷いなく仕掛ける勇気」と「慣れておくこと」が大切です。普段の練習から、一瞬でも迷ったら敢えてシザースを使う・使わないの判断を速くする癖をつけましょう。アップやミニゲーム段階で必ず一回はチャレンジ、とマイルールを作るのも有効です。
練習メニューの組み立て例
- ウォーミングアップ:静止ボールでの左右シザース10回ずつ
- 基礎トレーニング:歩きながらシザース→ドリブル→持ち出しまでの連続動作
- 応用ドリル:対人1対1で必ず1回はシザースを使うルールでミニゲーム
ポイントは「止め→動きながら→対人」と段階的に応用していくことです。
ケガ予防・パフォーマンスアップのための注意点
シザースは下半身に大きな負荷がかかるため、ウォーミングアップは欠かせません。特にもも裏(ハムストリングス)や内転筋・足首のストレッチ、動的ウォームアップを入念に行いましょう。また、グラウンド状況やスパイクの選択も安全面で重要です。上半身もリラックスさせ、無理な力みを避けることがケガ予防・動きの柔軟性アップにつながります。
まとめ|シザース習得がサッカー上達に繋がる理由
シザースは、単なるテクニックという枠を超え、「駆け引き」「判断力」「勇気」といったサッカーに必要なすべての要素が詰まっています。だからこそ一度身につけば、どんなポジションやシチュエーションでも活かせる自信と武器になります。“抜ける選手”は、チームの攻撃力を押し上げ、ピッチでの存在感もグッと増すものです。ぜひ今日から、基礎から丁寧に、時には遊び心も持ってシザースをマスターしてください。きっとサッカーが、今まで以上に楽しく自由なものになるはずです!