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サッカーのブロッキング―進路妨害の反則基準と正しい守備方法

サッカーのブロッキング―進路妨害の反則基準と正しい守備方法

サッカーのブロッキング―進路妨害の反則基準と正しい守備方法

サッカーをプレーする上で「フェアな守備」がどれほど大切かは、選手・指導者・サポーターを問わず誰もが感じていることだと思います。しかし、その「フェア」のラインは決して分かりやすくありません。特に「ブロッキング(進路妨害)」は、気づかぬうちにファウルを犯してしまっていることもある反面、賢く身体を使った守備との境界が曖昧なプレーでもあります。本記事では、高校生以上でサッカーに親しむ選手やその親御さん向けに、ブロッキングの反則基準からフェアな守備のコツまで幅広く解説します。ピッチで後悔しないための守備力、そしてサッカーの本質である「気持ち良い勝負」を目指して、ぜひ一緒に知識と実践を深めていきましょう。

サッカーにおけるブロッキング(進路妨害)とは

ブロッキングの定義とルール上の位置付け

サッカーにおける「ブロッキング」とは、相手選手の進行方向を意図的に妨げる行為を指します。「イリーガル・チャージ」や「進路妨害」という表現もされます。
公式には、日本サッカー協会(JFA)や国際サッカー連盟(FIFA)のルールブックで、「ボールにプレーする意思がなく、身体を使って相手の進行を阻止する行為」として規定されており、これは間違いなくファウルとなります。
ボールにプレーしていれば問題ありませんが、身体を張って相手の進路だけを遮る、いわゆる「スクリーン」や「壁」をつくる行為は進路妨害と判断されやすいです。

過去のルール改正と現在の解釈

進路妨害に対する解釈は、時代とともに少しずつ変化しています。
昔はボディコンタクトそのものがより寛容に見られていましたが、近年は選手の安全やフェアプレー精神の観点から、より厳格に判定される傾向にあります。
たとえば、ボールが遠くにあるのに相手選手の動きを制限するようにブロックに入れば、意図的な進路妨害=即ファウルです。逆に、同時にボールを競っている状況下であれば、一定のコンタクトは許容されます。
現代サッカーの潮流として、不要な接触は避けることが求められています。

進路妨害の反則基準を正しく理解する

ルールブックに記載されている進路妨害の基準

サッカーのルール(競技規則)に基づき、進路妨害(イリーガル・ブロッキング)の反則基準は以下のように明記されています。
「ボールをプレーする意図がない状態で、身体で相手の進行を妨げる」
つまり、ボールと相手選手の間に自身の身体を割り込ませたり、ボールにアプローチせずただ立ちふさがるのは反則とみなされます。
ただし、正当なチャージ(肩と肩を使ったボールの奪い合い)の場合は反則にはなりません(ボールが十分にプレー可能な距離にある場合)。

故意・偶然の違いとグレーゾーン

進路妨害の判定は、故意か偶然かで大きく分かれます。
故意な進路妨害は迷わず反則ですが、偶発的な接触や「たまたま立っていた位置で相手がぶつかってきた」場合はグレーゾーン。審判の裁量に大きく依存します。
このグレーゾーンでは、ボールとの距離・選手の視線・足の動き・肩や腕の出し方など細かく観察されています。普段のプレーでも、「自分がボールをプレーできているか」を常に意識しましょう。

よくあるブロッキングの場面と判断基準

サイドライン付近での攻防

サイドライン際では、相手選手の突破を防ぐために無意識のうちにブロックポジションを取ってしまいがちです。ボールが出そうな状況で、「自分とボールの間に相手を入れず壁を作っただけ」だと反則になることがあります。
ジャッジとしては、「自分がボールをプレーする意思をもってポジションを取っていたか」、また「肩や足を不自然に広げて進路を遮っていなかったか」が見られます。

ゴール前でのポジショニング争い

ゴール前はセットプレー(コーナーキックやフリーキック)などで特にブロッキングの反則が発生しやすい場面です。
味方選手のための「ピックプレー」や「壁作り」は完全な進路妨害(意図的なブロッキング)として審判に見られやすいので注意が必要です。
一方で、正当なポジショニング争いや肩同士のチャージは許されます。腕や手で相手を掴む、一方的に進路を遮る、動きを止めると、すぐに反則につながります。

ブロッキングをしないための正しい守備方法

適切な距離と立ち位置の取り方

ブロッキングの反則を回避しつつ相手の進路を制限するために、「適切な間合い」と「位置どり」が重要です。
相手と1メートルほど距離を置き、反応できるスペースを自分の左右に確保します。
正面から構えず、やや横を向いたサイドオン姿勢で、どちらにも速く動ける体勢をとりましょう。
ポジション取りをするときも、ボールにチャレンジする意志を常に見せるよう意識してください。

足元と体の使い方

パスやドリブルに対応するには、重心を低くし、素早く一歩を踏み出せるようにするのがコツです。
足は広げすぎず、肩幅よりやや広めに構え、前後左右への体重移動をスムーズに。
身体ではなく足でボールを狙って位置を調整することで、不用意な接触プレーや進路妨害の疑念は避けることができます。
また、腕や手を使って相手を抑え込む癖は早めに直すとよいでしょう。

効果的なボディコンタクトと許されるプレーの境界線

身体の入れ方・肩によるチャージの使い方

サッカーでは一定のボディコンタクトが認められており、「肩同士のチャージ」は明確に許容されたプレーです。
大事なのは、ボールがプレー可能な状態で、お互いが真正面から肩をぶつけ合う場合のみが正当なコンタクトとされるということです。
チャージを仕掛けるときは、手や肘を使わず、肩をしっかり入れてバランスを崩さないように。瞬間だけでなく、1対1の駆け引き全体で「ファウルにならない」コンタクトを意識しましょう。

ファウルにならないための接触プレー

強くぶつかること自体は罪ではありませんが、手を使って引っ張る・押す・服をつかむ行為は間違いなくファウルです。
身体の正面(肩、胴体)を相手に合わせ、腕を体側に収めつつ、足を次の一歩に備えて軽く構えておく。この「構え」が、境界線を超えないための基本となります。
他にも「ボールに向かってプレーしているか」「相手選手のバランスを崩そうとしすぎていないか」など、意識するだけでファウルがぐっと減ります。

ブロッキングとフェアなディフェンスの違いを見抜くポイント

選手・指導者・親が気をつけたい観察点

選手自身や傍観する大人が「今の守備が反則となるかどうか」を見極めるには、「ボールへの意思」「相手との距離感」「手や腕の使い方」などが主な判断基準です。
いつもボールに身体を向けているか、単に身体で遮っていないか、反射的に手で相手を押していないか。これらをチェックリストのように見ておくと良いでしょう。

良い守備・悪い守備の具体例

良い守備:相手の足元ギリギリでカットやタックルを狙う。ボールの動きに自分も反応している。
悪い守備:ボールを無視して肩や身体を相手の前に立ちはだかせる。手で相手の体を押さえる、腕で押し返す。味方のために相手の前に入って止める(ピックプレー)など。
実際にピッチでビデオ判定される場合も、「ボールへのプレーの意思が見えるか」が大きな分かれ目になるとされています。

審判の視点から見るブロッキングの判定基準

審判がよく見るポイント

審判の方々が進路妨害を判定する際によく注視するのが、ボールからプレーヤーまでの距離接触発生の前後の動きです。
プレーヤーが「先にポジションを取ったか」「相手が後から無理に進路を取ってきたか」「身体が不自然に横向きになっていないか」など、細やかな観察がなされています。
ボールと相手と自分の3者の位置関係が絶対的なポイントと言えます。

判断が分かれるケースと最新傾向

近年は、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が導入されたことで、ピッチ上でもリプレーを通じてブロッキングの微妙な判定がなされるケースが増えています。
特に競り合いが激しい場面では、「本当にボールを意識していたか」「自分が正当なチャレンジとしてポジションを取ったか」がより重視される傾向です。
選手自身がルールの意図を理解し、曖昧なプレーをしないことで、誤解されるリスクも減らせます。

高校生以上が注意したい!ブロッキングに関する実践的アドバイス

試合でやりがちな失敗例

高校生や大人の試合では、「ポジショニングの賢さ」がしばしば進路妨害ギリギリの線と隣り合わせです。
ありがちなのが、相手の進路を想像して予測的にふさぎに行く、あるいは「ボールが遠いのに味方のために壁をつくる」といったプレー。これは、審判が見逃していても明らかな進路妨害ですので避けましょう。
また、熱くなって腕で振り払ったり後ろから押したりするのも全てファウルにつながります。

日々のトレーニングで磨けるポイント

練習では、「ボールを取りに行く守備」と「ボールを狙わない進路遮断」を明確に分けて体に覚えこませましょう。そのためには1対1の実践練習で常に「ボールの移動を追って反応する」ことを意識してください。
ときには動画で自身のプレーを確認し、「自分では気付かない進路妨害」を見直すのも大きな成長につながります。
判断力と身体の使い方、この両面を意識したトレーニングがフェアプレーへ直結します。

子供のプレーとブロッキング―親が知っておくべき指導ポイント

ジュニア年代で多い進路妨害の例

子供たちのサッカーでは、どうしても「一生懸命守ろう」と思うあまり相手の前に無意識で立ちふさがったり、手で相手を抑えてしまったりすることが多いです。
ただ「抜かれたくない」という気持ちを強くもつほど進路妨害や不要なファウルが増えがちなので、まずは「ボールを追いかけ続けるプレー」が大切だと教えることがファーストステップです。

正しい守備を教えるための声かけとサポート

親や指導者がアドバイスできるポイントとしては、「ボールにチャレンジしたかな?」「相手の前に立つだけになっていなかったかな?」と、振り返りを促す声かけが効果的です。
また、反則を恐れすぎて守備の積極性が落ちるのも良くありません。守備は攻撃と同じく一生懸命トライする場なので、正しく学び堂々とプレーすることの重要性を伝えてあげましょう。
一緒に動画を見たり、試合後にフィードバックするのも力になります。

まとめ:真に強い守備力を身につけるために

フェアプレー精神と守備力向上の両立

ブロッキングのルールを正しく把握してプレーすることは、自分だけでなくチームメイトや相手選手を守るためにもとても大切です。
守備力を磨く上で大切なのは、「ボールを奪いたい!」という強い気持ちと、「正しく身体を使う」技術、この二つのバランスです。
決して反則ギリギリのプレーで守備をするのではなく、ピッチ全体で堂々と戦える守備者を目指しましょう。

強く賢いディフェンダーを目指して

サッカーにおいて一流のディフェンスとは、ルールを理解し、相手と正々堂々と勝負しながらもボールを奪える選手です。ただ身体をぶつけるだけではなく、ボールの位置、相手の動き、自分の体勢をすべてコントロールできること。
そしてフェアなプレーはチームや仲間、なにより自分自身を高めてくれる大きな自信にもつながります。
ぜひ今日から、ブロッキングの反則基準をしっかり覚え、強くて賢いディフェンダー、頼れる守備者を目指してください。

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