サッカーの試合中、ときにはコーナーキックに匹敵する、あるいはそれ以上にチャンスとなる武器「ロングスロー」。近年は高校生やプロの試合でも注目され、その威力を発揮する場面が増えています。しかし、「思ったほど遠くに投げられない」「フォームがいまいち分からない」といった悩みを持つ選手や、指導に迷う保護者の方も多いはず。
本記事では、ロングスローの投げ方や飛距離を伸ばすコツを、豊富な経験と確かな情報に基づいて解説します。基本的なルールから、フォームやトレーニング、実戦での戦術的な活かし方までまとめた“保存版”の内容です。ぜひ参考にして、サッカーでの幅を広げましょう。
目次
ロングスローとは?基本を知ろう
スローインの種類とロングスローの特徴
サッカーのスローインは、ボールがサイドラインを出た際にプレーを再開するための重要なセットプレーです。スローインにはシンプルに味方へつなぐ「ショートスロー」と、大きく距離を稼ぎながら攻撃につなげる「ロングスロー」が存在します。
ロングスローの特徴はなんといってもその飛距離。通常のスローインが10~15m程度に対し、20~30m以上投げる選手も少なくありません。守備を一気に押し込んだり直接ゴールに絡む場面を生み出すなど、強力な武器となり得ます。
ロングスローが与える試合への影響
ロングスローは単なるリスタート以上の意味を持ちます。例えば相手ペナルティエリア付近では、セットプレーさながらの大チャンスを生みやすく、得点確率も高まります。また、ピンチの際には自陣から一気にクリアし、相手の陣形を崩す働きも。
そのため、「ロングスローの得意な選手が1人いるだけ」でチームの戦術バリエーションが広がり、試合に大きなインパクトを与えます。
ロングスローのルールと注意点
スローインの公式ルール
サッカー競技規則において、スローインにはいくつかの明確なルールが定められています。主なポイントは:
- 両手で頭の後ろから頭上を通してボールを投げること
- 投げる瞬間、両足の一部が地面につきライン上またはライン外側に接していること
- オフサイドにはならない(スローインから直接)
これらのルールを守った上でロングスローにも挑戦しましょう。
ルール違反にならないためのポイント
サッカーでは俗に「ファールスロー」と呼ばれるルール違反があります。良くある違反は、投げる際に:
- 片手で投げてしまう・持ち替えが不十分
- 足が完全に離れてライン外に出てしまう
- 頭の後ろから出ず、肩の横や下から投げてしまう
ロングスローを意識しすぎて、上記を無意識にやってしまうことが多いので注意が必要です。
審判による判定基準
ファールスローの判定は審判の目に委ねられますが、特に投球時の「頭の後ろから頭上」「両手」と「地面から足が離れていないか」は必ず見られます。遠くへ投げようとするほど乱れやすいため、試合前の練習やビデオチェックでフォームを確認しておくと安心です。
ロングスローに適したフォームの基本解説
足のスタンスと位置
ロングスローの安定感と飛距離アップには、しっかりとした土台作りがカギです。ほとんどの選手は「スタンディング」か「助走をつけて」スローインを行います。
初めは両足を肩幅よりやや広く、ライン外側に縦に並べましょう。投げる方向に対して利き手側の足を一歩前に出し、投げる直前までは安定して地面についていることが重要です。
助走を入れる場合は、踏み込み時のタイミングと位置をズラさないように何度も反復練習して感覚をつかむことが大切です。
両手の使い方・ボールの持ち方
ボールの持ち方は両手でしっかりホールドし、親指が下側、他の4本指が頭頂を包み込むようにセッティングしましょう。ボールが滑ったり、投げる直前まで片手が離れるとファールスローとなるため注意しましょう。
“腕”のみを使おうとせず肩甲骨~背中まで意識し、「背中を丸めた状態から一気に伸ばす」ことで脱力から一瞬にしてパワーを伝えやすくなります。
体重移動とタイミング
ロングスローでは「下半身から上半身へ」体重をスムーズに移動させることが重要です。助走を付ける場合は、最後の踏み込み時にしっかりと前足へ重心を移し、背中を反らせた反動(アーチ)から一気にリリースします。この一連の流れをスムーズに連動させることが最大飛距離のポイントです。
タイミングが遅すぎると失速し、早すぎるとボールが浮きすぎてしまうため、最適な打点(リリースポイント)を感覚で掴みましょう。
飛距離を伸ばす重要ポイント
身体全体を使う動作
腕や手だけに頼らず、身体全体の連動がロングスローのカギです。特に重要なのは:
- 踏み込み足から骨盤・体幹をしならせる
- 背中の反動を残したまま、素早く上半身を振り切る
- 投げ終わりまで一気に体重を投げる方向に乗せる
この動作がスムーズに行えると、ボールに充分な初速が加わり、より遠く・鋭いスローインが可能となります。
リリースポイントの最適化
ボールをどの位置(高さ・角度)でリリースするかは、飛距離や軌道に大きく影響します。頭上やや前方45度ぐらいが理想とされますが、高く上げすぎると失速し、低すぎるとバウンドしてしまうため、自分に合った最適なポイントを探しましょう。動画撮影やペア練習を活用すると客観的に分析できます。
握力と腕力の強化
ロングスローにおいて、ボールをしっかり握って推進力を伝える「握力」と、一気に腕を振り切る「腕力」も重要です。鍛えることで持続的なスローイング力がつき、安定した遠投がしやすくなります。
具体的には、ハンドグリップや懸垂トレーニング、各種ラバーバンドを使った負荷トレーニングなどが効果的です。
体の部位別・スローイン動作のコツ
下半身(脚・腰)の使い方
意外と軽視されがちな下半身ですが、ロングスローの基礎は「踏み込みからのパワー発生」です。助走時に歩幅を広めに取り、大きく一歩踏み込む。その際、膝を柔らかく使いクッション性を持たせることで地面から反発力を得やすくなります。
ここで作ったパワーを腰の回転(骨盤のひねり)へと素早く伝えることで、上半身への流れが途切れずにスムーズにパワーが伝達できます。
上半身(胸・肩・背中)の役割
背中、肩、胸のしなり(アーチ)をしっかりと作ることで、背骨を軸とした反動が生まれます。
きれいに丸めた背中を「弓」のように使い、投げる瞬間に一気に解放しましょう。また、肩や胸の広背筋・大胸筋もロングスローのパワー源ですので、腕立て伏せやチューブトレーニングなども生かすと良いでしょう。
指先・手の細かなテクニック
グリップがしっかり効いていないと推進力がボールに伝わらず、ズレたり滑ったりします。
親指と人差し指でしっかりとボールを“はさみ”、リリース時に指先でボールを押し出すような感覚を持ちましょう。雨天や汗で滑りやすい時は、手袋の利用やこまめなタオル拭きでグリップ感覚を大切に。
練習方法とトレーニング例
効果的な練習メニュー
ロングスロー習得には反復練習が必須です。以下の練習メニューが効果的です:
- マーカーや的を置いて狙った距離・方向へ投げる「ターゲットスロー」
- 助走を付けたスローの距離測定と反復
- テニスボールや小型ボールで素早い腕の振り抜き練習
短時間でも組み入れやすく、コツコツ継続が技術向上の近道となります。
自宅や屋外でできるトレーニング
自宅ではペットボトルやダンベル、ゴムチューブを利用した体幹&肩回りの筋トレがオススメです。
屋外では壁当てスローイン(フォーム修正用)、階段や坂道を使った下半身強化運動も活用しましょう。
握力トレーニングはハンドグリッパーを使うほか、雑巾絞り運動や重いものの持ち運びなども効果的です。
ペアやチームでの練習法
仲間やチームでできる練習には、以下のようなメニューがあります:
- 互いに一定の距離を取り、ロングスローで正確性と飛距離を競い合う
- 実戦を想定し、味方がゴール前で合わせる形のパターン練習
- 審判役を立て、ルール違反がないか常にチェックしあう
ゲーム形式に組み込むことで、より実戦的な感覚が身に付きます。
ロングスローでよくある失敗・改善策
ファールスローになりやすいミス
初心者や飛距離を伸ばそうとする際、特に起こりやすいミスは:
- 助走時に足が浮いてラインから離れる
- 片手に力が偏り、両手でボールを操作できていない
- リリース位置が肩の横や下になってしまう(肩投げ・砲丸投げのような動作)
どれもよくあるエラーですが、反復練習と動画撮影等で修正しやすくなります。
飛距離が伸びない時の対処法
「全然遠くに投げられない…」という場合、フォームや体重移動がうまく連動できていないことがほとんどです。腕や手だけに頼らず、下半身のパワーをしっかり腕~指先へとつなげる動作を意識しましょう。したがって、投げ終わりに自然と前へ倒れるぐらい重心が乗っている感覚が持てるとベストです。
怪我防止のポイント
意外に腕・肩・背中周りに負荷がかかるロングスロー。疲労がたまった状態でムリをすると、肩や肘の炎症、筋断裂、腰の痛みのリスクがあります。
練習前後には重点的なストレッチ、アイシング、そして十分な休息と栄養補給を忘れずに取り入れましょう。
子供・初心者のためのロングスロー指導ポイント
年齢別・段階的な練習案
ロングスローはある程度の筋力や体の成長が不可欠です。小学生のうちは正しいフォームを身につけることを優先し、中高生以降で飛距離アップや筋力強化に取り組むのが安全かつ上達の近道です。
幼児~小学生:フォーム作り、体重移動の感覚遊び
中学生:徐々に助走付きフォーム、距離・方向のコントロール練習
高校生以上:本格的な筋トレやパワースロー、実戦応用へ
モチベーションの維持方法
ロングスローはすぐに成果が見えにくい技術ですが、成功体験を積み重ねることで本人の自信につながります。
「どこまで飛ばせたか」「新しいメニューにチャレンジできたか」など、小さな達成を家族や仲間と一緒に褒め合い、継続的な取り組みをサポートしましょう。
さらに距離を延ばしたい人向けアドバイス
上級者向け身体強化トレーニング
さらに上を目指す選手には、体幹・肩・背筋・握力を強化する以下のようなトレーニングが効果的です:
- メディシンボールを使ったジャイアントスロー
- チューブを使った肩の外旋・内旋運動
- 側転やブリッジなど体幹を意識した柔軟トレ
バーベルやダンベルでの筋トレはフォームを崩さないよう、慎重に指導のもとで取り組みましょう。
フォーム改善のための意識点
上級者になればなるほど「細部の技術修正」が大切になります。動画撮影で一連動作を確認し、「どこで力が逃げているか」「体幹・腕・指の連動はスムーズか」を分析しましょう。もし違和感や違う動作になっていれば、スローインの工程ごとに分解して反復練習を。
動画やセルフチェック活用例
最近はスマートフォンで手軽に動画撮影が可能です。自分のスローインを撮って見返し、横・正面・真後ろなど様々な角度でチェックします。
また、「プロ選手のロングスロー動画」を観て動きを真似するのも、正しいイメージ形成に非常に役立ちます。定点カメラで比較してみると、自分の癖や課題が見つかりやすくなります。
競技戦術におけるロングスロー活用法
攻撃につなげる具体的な使い方
ロングスローは実質的な“手によるキック”とも言われ、ゴール前でのスローインはコーナーキックに匹敵するチャンスとなります。
例えばDFの頭上を越してFWにピンポイントで届けたり、ニアゾーンへ一気に供給して混戦を生み出すなど、セットプレーとして戦術活用が可能です。「スローインのサインプレー」をチームで用意しておくことで得点期待値も高まります。
守備につなげる工夫やメリット
守勢時でも、長距離でのスローインを持つと局面打開ができます。自陣深くのスローイン時、ロングスローで一気に相手陣地へボールを運ぶことでプレッシャーを回避、ピンチの連続を断ち切る役割もあります。また、相手に「この選手はロングスローがある」と印象付けるだけでも、守備ブロックの形成やポジショニングに影響を与えられます。
まとめ|ロングスロー習得でサッカーの幅を広げよう
ロングスローは単なるプレースキルの一つではなく、「サッカーを劇的に変える切り札」になることもある重要な技術です。
正しいルールとフォームを理解し、身体全体の動きやトレーニングも工夫して継続することで、誰でも着実に距離と精度を伸ばせます。
高校生や大人の選手だけでなく、子供や初心者にも段階的な習得がおすすめです。
ぜひ今回の記事を参考に、あなた自身やご家族でサッカーの武器を「ロングスロー」に増やして、より自由なプレーを楽しんでみてください。