サッカーのチームや部活動で「選手層が薄い」「どのポジションが手薄なのか把握できない」と悩んだ経験はありませんか?そんな時に役立つのが「デプスチャート」です。本記事では、デプスチャートの基本から具体的な作成ステップ、実践例、そして高校生や保護者の方も納得できる活用方法まで、丁寧かつわかりやすく解説します。
これを読めば、チームの現状を客観的に把握し、戦力強化に直結するアクションがきっと見えてくるはずです。
目次
サッカードプスチャートとは?
デプスチャートの定義と特徴
デプスチャートとは、各ポジションにおける選手の序列や控え選手(バックアップ)までを一目でわかるように表形式でまとめた資料です。
オフェンス・ミッドフィルダー・ディフェンス・ゴールキーパーなど、ポジションごとに「誰が第一候補か」「万が一の時に替わりが誰なのか」を整理でき、選手層の厚みや手薄な部分を可視化できます。
サッカー指導現場での導入背景
ヨーロッパや南米のトップクラブでは長年活用されてきた手法ですが、最近は日本の高校、クラブ、中学部活動、ジュニアユースなど幅広い現場でも注目されています。
理由は明白。選手個々の強み・弱みとポジションのバランスを「見える化」することで、戦略的なメンバー選考や指導が可能になるからです。
近年は選手一人ひとりが複数ポジションをこなす傾向もあり、柔軟かつ詳細な選手管理のためにもデプスチャートが欠かせない存在となりつつあります。
よくある誤解と本来の目的
「デプスチャート=ただの序列表で、スタメン固定化につながる」という誤解も見かけますが、本来の目的は別です。
あくまで「現段階での選択肢」を明確にし、ケガやコンディション不良の際の代案まで考慮することが重要です。
また、選手自身が自分の立ち位置を客観的に知り、成長のきっかけにできるという点も大きなメリットです。
デプスチャート作成の準備
必要な情報・データを集める
デプスチャートづくりは「情報集め」がスタートです。最低限、次のデータを集めましょう。
- 各選手の氏名・学年・背番号
- 主なポジション(複数可)
- 過去の出場実績や現在のコンディション
- コーチや選手自身の意見(アンケートなどでもOK)
なお、公式戦で起用したい戦術やフォーメーションも頭に入れておくと、より精度が高まります。
ポジション設定の基本
サッカーは守備的、攻撃的な選手配置の違いによってフォーメーションが多彩です。
デプスチャートを作る際、「4-4-2」「4-3-3」「3-4-3」など、自チームが原則採用するフォーメーションをベースに
- GK(ゴールキーパー)
- DF(CB・SBなど守備陣)
- MF(ボランチ・サイド・トップ下など中盤)
- FW(CF・ウィングなど攻撃陣)
といった主要ポジションを明確にします。
ただし、1つのポジションだけでなく流動的な役割も想定しておくのがコツです。
選手評価に使う指標とは
誰をどこで使うか、その根拠は明確にしておきたいところ。
選手評価時に参考になる主な指標として
- プレースキル(パス、ドリブル、守備力など)
- フィジカル(スピード、体力、ジャンプ力など)
- メンタル(集中力、チームワーク、リーダーシップなど)
- ゲーム理解度(判断力や状況適応力)
があります。
主観だけでなく、試合や練習でのスタッツ(データ)がある場合は合わせて使うと信頼性が上がります。
サッカードプスチャートの作り方ステップバイステップ
STEP1:ポジションの枠組みを決める
まず、ベースとするフォーメーションを決めましょう。例として4-4-2の場合、
- GK
- CB右・CB左
- SB右・SB左
- DMF・OMF・SMF・CMF
- FW右・FW左
など、できるだけポジションごとに細かく分けることがポイントです。
チームの構成やスタッフの慣れ具合によって、ポジション粒度を柔軟に調整して構いません。
STEP2:選手データを整理する
集めた情報を基に、各選手の基本プロフィールやポジション適性を書き出します。ExcelやGoogleスプレッドシートを活用してもOK。
「第一候補」「第二候補」だけでなく「どこまでが公式戦で計算できるか」も考えましょう。
STEP3:各ポジションに選手を割り当てる
いよいよ、各ポジションの枠へ選手を割り当てていきます。
一つの選手を複数のポジションに書いても大丈夫です。その場合は「本職」「兼任」「緊急時担当」など区分けすると整理しやすくなります。
割り当てに迷った場合はポジションごとの主要課題や過去の実績も参考にしましょう。
STEP4:優先順位とバックアップの可視化
最後に、各ポジションの「優先順位」を明記します。
例:
GK・・・1番手:田中 2番手:斎藤 3番手:佐々木
控え選手まで記載することで、万一の欠場時でも「穴を埋める策」がすぐに見える状態になります。
バックアップは「経験値」「適性」「緊急度」なども加味できれば理想的です。
実際の作成例とポイント解説
架空チームでのデプスチャート実例
実際に、高校サッカー部(22名在籍)の例を想定してみます。
基本フォーメーション:4-2-3-1
- GK:1.佐藤(3年・本職) 2.中村(2年・控え) 3.米田(1年・リザーブ)
- CB右:1.田村(3年) 2.川崎(2年)
- CB左:1.安達(2年) 2.高井(1年)
- SB右:1.松村(3年) 2.吉田(1年)
- SB左:1.堀内(2年・兼MF) 2.相馬(1年)
- DMF(守備的):1.伊藤(3年) 2.福田(2年)
- OMF(攻撃的):1.橋本(3年) 2.和泉(1年)
- 右SH:1.大森(2年) 2.丹羽(1年)
- 左SH:1.大塚(2年) 2.内田(3年)
- CF:1.西野(3年・本職) 2.古谷(1年・緊急時)
※例ゆえ簡略化しています。
作成時に注意したこと・工夫点
このチャートを作る際、高校生の成長スピードやポジション兼任も十分に考慮しました。
たとえば、「SB左」堀内選手がMFも兼ねている場合、双方のバックアップに少し余裕をもたせる、一人が複数役割を持つ場合は「負担やケガリスク」を議論対象にする…といったように、現場の事情に寄り添った柔軟な設計が大事です。
また「本職」でない選手を起用する場合は、本人の納得感や試合経験も確認しました。
選手や保護者と共有する際のポイント
デプスチャートは、作成するだけでなく「どう伝えるか」も重要です。
- 順位を決まったものではなく「現時点での目安」と説明する
- ポジション変更や成長でいつでも序列が動くことを伝える
- 実力だけでなく、チーム状況や戦術理解も評価に入ることを明示する
- 保護者には選手起用の理由や今後伸ばしたいポイントを丁寧に伝える
感情的な受け止め方を防ぎ、「活発な競争」「努力の方向性が見える」メリットを強調するのがおすすめです。
デプスチャート活用のコツとよくある失敗例
データの定期的更新と柔軟性の重要性
デプスチャートは「一度作ったら終わり」ではありません。
成長著しい高校生年代、怪我や不調、試験休みなどで序列はすぐ変わります。
月に一度程度でも「再評価」し、必ず最新データを反映しましょう。
柔軟性を持たせつつ、選手の変化を見逃さないのが強いチーム作りのコツです。
ポジション適性の過信とその落とし穴
「この選手=このポジション専業」という思い込みは危険です。
身体成長や戦術変化で適性が変わるだけでなく、その選手の隠れた才能を埋もれさせる原因にもなります。
複数ポジションへの挑戦、トライアルを設けることで新たな発見が生まれることもしばしば。柔軟な視点を持ち続けましょう。
起こりがちな問題とその対処法
デプスチャート運用時にありがちなトラブルと、解決策をまとめます。
- 「一軍・二軍化」してしまい、特定メンバーのモチベーション低下⇒ポジションルールや評価基準を随時公開し、努力次第で昇格できることを説明。「成長記録」として使うことも鍵。
- 「出来上がった表が、監督・コーチしか読めない」⇒誰でも見てわかる、シンプルなレイアウトにこだわる。専門用語多用は避け、おおまかな役割も明記する。
- 「ケガや離脱時に全く代役がいない」⇒複数ポジションへの適性付与や、定期的なバックアップ案の検討をセットに。
どんな場合でも「共有とアップデート」を忘れずに運用するのが大切です。
デプスチャートの活用で選手層を強化する方法
育成・強化のPDCAを回す
デプスチャートの真価は「現状把握」だけでなく、「どう改善するか」にあります。
問題点が可視化できたなら、“PDCAサイクル”(Plan-Do-Check-Action)を実施しましょう。
- Plan=強化したいポジションや選手像の仮説立て
- Do=個々やグループでの課題設定とトレーニング
- Check=再評価・チャート更新
- Action=起用や役割に反映、また再スタート
このサイクルを繰り返すことで、選手層そのものが確実に底上げされます。
モチベーションアップにつなげる使い方
競争意識がチーム力につながる一方、「冷遇されている」と感じる選手が出てきやすいのも事実です。
このリスクを防ぐには、チャートを「成長の可視化ノート」として活用するのがおすすめです。
- これまで「控え」だった選手のステップアップ実績を明示
- ポジション練習での積極性や新しい役割への挑戦を評価として加点
- 変動や昇格がしやすい「動的なチャート」とする
頑張りが必ず評価につながるストーリーを作れば、全員が前向きに取り組めます。
親世代・保護者として知っておきたい視点
お子さんがどんなポジションを担当し、「なぜ今そこで起用されているか」は、保護者としてもとても気になるポイントです。
デプスチャートがあることで「透明性ある起用方針」「選手全員を大切にする視点」を実感しやすくなります。
不透明な起用や特定選手偏重への不安を払拭し、信頼関係構築の助けにもなりますので、「公式戦だけでなく日々の練習やTM(トレーニングマッチ)での起用意図」もあわせて伝えるとより理解が進みます。
まとめ:デプスチャートでチーム力を底上げしよう
可視化することのメリット再確認
選手層やポジションバランスを「見える化」することで、課題改善・選手育成・全員の納得感が一気に進みます。
監督やコーチだけでなく、選手・保護者みんなが「今どこに課題があるのか」「自分がどう成長できるのか」を客観的に見られる環境づくりに、ぜひデプスチャートを取り入れてみましょう。
即実践できるアクションまとめ
- できるだけ早く現有選手の情報をまとめてみる
- エクセルや紙でもOK、まずはシンプルな表を作成
- 定期的なアップデートを欠かさず、変動も可視化する
- 選手や保護者への共有時は「目的」と「今後の改善策」も一緒に伝える
- 結果だけでなく「努力や変化」も評価軸に加える
チームを強くしたい、選手一人ひとりの成長を後押ししたい。そう考える全ての現場に、おすすめできる手法です。ぜひチャレンジしてみてください!