目次
- サッカー 高温・多湿のコンディションを走り切る給水・冷却・配分術
- 高温・多湿が走力と意思決定を奪う理由
- 48〜72時間前からの準備: 水分・塩分・炭水化物の基礎
- 暑熱順化(Heat Acclimation)の進め方
- キックオフ前の最適化: プレクーリングとプレハイドレーション
- 試合中の給水: タイミングと量・濃度の目安
- 試合中の冷却: 外部冷却と部位別の工夫
- 暑さでの配分術: 戦術と走りのマネジメント
- ハーフタイム: 冷却・再補給・再配分
- 試合後90分のリカバリー
- リスク管理: 熱中症とハイポナトリミアを見逃さない
- トレーニング期の設計: 暑さに強い走力を作る
- データで可視化する水分戦略
- 子ども・学生アスリートへの配慮
- 大会・遠征・連戦の暑熱対策
- よくある誤解と正しい知識
- 用具と小物で差をつける
- ルールとガイドラインを知る
- 個別化の核心: 発汗率とナトリウム濃度のばらつき
- ケーススタディ: WBGT31の試合を走り切る計画例
- まとめ: 「暑さに勝つ」から「暑さをマネジメントする」へ
サッカー 高温・多湿のコンディションを走り切る給水・冷却・配分術
真夏のゲームは、走力だけの勝負ではありません。高温・多湿環境では、同じ走りでも心拍と体温のコストが跳ね上がり、判断も鈍りがち。ポイントは「飲む」「冷やす」「配分する」を事前〜当日〜試合後まで一貫してデザインし、チーム全体でオペレーションすることです。この記事は、今日から現場で使える具体策を、科学的な根拠と実務の知恵でまとめました。「気合い」ではなく「仕組み」で、90分を走り切りましょう。
高温・多湿が走力と意思決定を奪う理由
体温上昇と心拍ドリフトの関係
暑いほど、同じ速度でも心拍数がじわじわ上がる「心拍ドリフト」が起きます。体温上昇に伴う皮膚血流の増加で、筋肉へ回る血液が相対的に減るためです。結果として、ペース維持に必要な主観的負荷(RPE)が上がり、意思決定の質も落ちやすくなります。
発汗・血漿量・皮膚血流のトレードオフ
発汗は冷却に有効ですが、汗で水分とナトリウムが失われると血漿量が減少。皮膚へ血流を回すほど、筋への供血が厳しくなるというジレンマが生まれます。給水で血漿量を守ることは、すなわち走りの燃料線を守ることです。
湿度が放熱を阻害するメカニズム
湿度が高いと汗が蒸発しにくく、主力の放熱手段が機能低下します。汗だくでも体温が下がらないのはこのため。ミストや風、衣服の通気で「蒸発を助ける」外部冷却が効いてくる理由です。
WBGTの理解と限界
WBGT(暑さ指数)は気温・湿度・輻射を加味した熱ストレスの指標。運動現場では実用的ですが、個人差や風速、芝の状態などまでは反映しません。数値は「ポリシーを決める物差し」、戦術や交代は「現場の体感」で微調整が必要です。
熱中症リスクとパフォーマンス低下のレベル感
体重の2%以上の脱水でパフォーマンス低下が現れやすく、3–4%では判断とスプリントの質に顕著な影響。中枢症状(ふらつき、意識混濁)が出れば競技継続は危険域です。早めのシグナル検知と撤退ラインを共有しましょう。
48〜72時間前からの準備: 水分・塩分・炭水化物の基礎
日常の水分戦略とこまめな摂取
前日から透明〜淡黄色の尿色をキープ。食事や間食のたびに200–300mlを目安にこまめに飲み、のどの渇き待ちを避けます。大量一気飲みは尿として出やすく非効率です。
食塩とナトリウムの役割
ナトリウムは水分保持と神経筋機能に必須。汗かき体質は特に、食事での塩分(味噌汁、漬物、梅干し、塩入りおにぎりなど)を意識。減塩中の方は医師と相談のうえ調整を。
グリコーゲンと体内水分の関係
筋グリコーゲンは1gあたり約3gの水と結びつくため、炭水化物の充足は「隠れた貯水」。前日は体重1食あたり1–1.5g/kgの炭水化物を中心に、3食でベースを整えます。
睡眠・アルコール・カフェインの影響
睡眠不足は体温調節と意思決定を直撃。アルコールは利尿と回復遅延の面で逆効果。カフェインは有効ですが、量とタイミングを事前に試しておきましょう。
発汗量テストで個別化するベースライン
練習で60分走り、前後体重差−摂取量+排尿で発汗率(L/h)を算出。天候別に2–3回測れば、自分の「1時間の汗の量」が見え、給水量の設計が精度アップします。
暑熱順化(Heat Acclimation)の進め方
7〜14日の基本設計と順化の指標
連日または隔日60–90分の暑熱トレーニングで、発汗の早期化・血漿量増加・心拍低下が進みます。指標は同一強度での心拍低下、RPE低下、体重減少率の安定です。
低〜中強度からの漸進負荷
初期はゾーン2中心で安全に。日を追って高強度を点在させ、スプリントや方向転換は終盤に短く。無理は禁物です。
室内バイク・サウナの活用と注意点
屋外が難しければ室内バイク+加湿、もしくは運動後のサウナ/温浴20–30分で負荷を追加。めまい・吐き気など兆候があれば即中止を。
順化後の維持戦略(Heat Maintenance)
週2–3回、30–60分の暑熱刺激で維持可能。遠征前や天候の変化に合わせて再点火しましょう。
若年層・既往歴がある場合の配慮
子どもは放熱能力が未熟。心疾患・腎疾患・熱中症既往がある場合は医療者に相談し、負荷は保守的に。
キックオフ前の最適化: プレクーリングとプレハイドレーション
3〜4時間前の食事・水分の取り方
炭水化物1–3g/kg+適量のタンパク質、脂質は軽め。水分は5–7ml/kgを目安に摂取し、ナトリウムも食事で確保します。
90〜60分前のスポーツドリンク活用
発汗が想定される日は、炭水化物4–6%のドリンクを3–5ml/kg。胃の張りを避けて小分けに。
15分前の少量追加摂取
150–250mlを口潤し程度で。嚥下と胃の快適さを最優先にします。
アイススラリー・冷却ベストの使い方
ウォームアップ後〜直前にアイススラリー(目安200–400ml)や冷却ベストで深部体温を下げてスタートダッシュの余裕を作る。冷やし過ぎで筋が固くならないよう、可動域ドリルとセットで。
カフェインの利点と利尿作用のバランス
60分前に1–3mg/kgで集中と努力感低減が期待できます。慣れていない人や夕方キックオフは控えめに。利尿は習慣者では軽微ですが、プレハイドレーションを丁寧に。
NSAIDs(鎮痛薬)使用の注意点
予防的な服用は腎負担と胃腸トラブルのリスクが上がります。痛み対応は医療者の指示で。脱水下での自己判断の使用は避けましょう。
試合中の給水: タイミングと量・濃度の目安
クーリングブレイク/飲水タイムの最大活用
ベンチ前動線を最短にし、個別ボトルを番号管理。飲む→首・腋窩を冷やす→戦術確認の順でルーティン化します。
プレーの切れ目での“一口法”
スローインやFK前に一口(50–100ml)。胃の負担を抑えつつ総量を稼ぐテクニックです。
体重ベースで考える摂取量の範囲
目標は体重減少2%以内。一般に400–800ml/時(発汗多い選手は最大1,000ml)を上限に、自分の発汗率で微調整。増量(体重が増える)まで飲むのは避けます。
スポーツドリンクと経口補水液(ORS)の使い分け
試合中は炭水化物4–6%のスポドリが主役。ORSはナトリウム高めで再水和に優れるが、糖質が少ないため高強度中は補助として小量に。
炭水化物濃度と胃腸トラブル回避
7%超は胃残留が増えやすく、張りや腹痛の原因に。気温が高い日は5%前後を目安に希釈して使うのも手です。
ジェル・咀嚼タイプの併用戦略
前半・後半で各1本(20–30g)を目安に、必ず水とセットで。合計30–60g/時の糖質を狙います。
試合中の冷却: 外部冷却と部位別の工夫
氷水・冷水・ミストの使い分け
氷水は急冷用、冷水は広範囲の拭き取り、ミストは蒸発を促して走りながらでも使いやすい。環境と動線で選択を。
頸部・腋窩・鼠径部の重点冷却
大血管の近くを冷やすと効率的。短時間でも体感と心拍の落ちが違います。
冷感タオル・氷嚢の運用実務
個別に名前付け、ベンチ下に保冷ボックスで管理。出し入れの役割を明確化し、混乱を防ぎます。
ユニフォームの通気・色・フィット感
薄手・軽量・通気の高い生地を。濃色は日射の強い昼間に不利になりやすい。サイズは風抜けも考慮。
ベンチ配置と動線最適化
日陰・送風・保冷の3点セットを確保。ウォータークーラー→タオル→戦術ボードの順で一直線に。
暑さでの配分術: 戦術と走りのマネジメント
前半のペース配分と“貯金”の作り方
前半はRPEを1段下げ、体温とグリコーゲンの貯金を作る。無理押しは後半にツケが来ます。
プレス強度の波とトリガー設定
全体で行く時間と、回収して守る時間を明確に。相手のバックパスやタッチが流れた瞬間のみ強度を上げるなど、トリガーを共有します。
ブロックの高さ調整と省エネ守備
ミドル〜ローブロックでインテンシティを温存。縦スライドより横スライド重視で走行距離を節約します。
カバーシャドウ/誘導で走行距離を圧縮
身体の向きでパスコースを消し、相手を外へ誘導。1人の“賢い1歩”が3人の全力疾走を減らします。
ボール保持での“クーリング”時間
後方での落ち着いた回しや、スローイン〜リスタートで呼吸を整える。プレーモデルとして許容する文化を。
交代枠の戦略(5人交代制の活用)
WBGTが高いときは早め・細かく。プレス役は短い区間で切る、CK・FKのタイミングに重ねるなど、流れを断たずに交代。
ポジション別の走行配分(SB/WG/CM/CF/CB/GK)
SB・WGはスプリントを選択的に、CMは縦横のカバーを優先度付け、CFは寄せる角度で消耗を抑制。CBはライン統率で走らせない、GKは給水・冷却のハブ役に。
ハーフタイム: 冷却・再補給・再配分
体温・心拍を素早く落とす手順
ユニフォームの上を脱ぐ→頸部と腋窩を氷嚢で2–3分→扇風機/送風で蒸発促進。体感を戻してから戦術確認へ。
炭水化物・電解質の再補給プラン
スポドリ200–400ml+ジェル20–30g。汗が塩っぽい選手はナトリウムを追加(300–600mg目安)。
シューズ・ソックスの入れ替え判断
濡れと摩擦はマメの原因。予備があれば後半に向けて交換を検討。
ストレッチ/リリースで痙攣を予防
腓腹筋・ハムの静的伸張を短く、フォームローリングは軽めに。過度な刺激は逆効果です。
後半の戦術再配分ポイント
最初の10分はリスクを抑え、落ち着いて相手の出方を見る。交代と強度の波を再合意。
試合後90分のリカバリー
再水和: 体重差からの目標摂取量設定
失った体重1kgにつき1.25–1.5Lが目安。小分けで60–90分かけて戻します。
ナトリウム/電解質で保持を高める
水だけだと尿で抜けやすい。スポドリや塩分を食事で補い、保持率を上げます。
タンパク質×炭水化物の同時補給
30–60分内にタンパク質20–30g+炭水化物1.0–1.2g/kg。回復と免疫を両立。
アイスバスや冷水浴の適応と注意
過度の長時間は避け、10–15分×冷水で体温を落とす。筋肥大目的の時期は頻用しすぎないように。
睡眠設計と翌日の再始動
就寝前の軽い補食とぬるめのシャワーで入眠を助ける。翌日は軽い有酸素とモビリティで血流を回し、暑熱に慣れた感覚を保ちます。
リスク管理: 熱中症とハイポナトリミアを見逃さない
熱けいれん・熱疲労・熱射病の兆候
けいれん、立ちくらみ、吐き気、頭痛、意識変容は危険サイン。特に中枢症状は即座の中止が必要です。
現場対応プロトコル(冷却・搬送)
涼しい場所へ移動→衣服を緩め→冷水/氷で頸部・腋窩・鼠径部を冷却→意識が保たれていれば少量の水分・電解質→改善しなければ救急要請。
水の飲み過ぎによる低ナトリウム血症
体重増加、むくみ、頭痛、吐き気は過飲のサイン。電解質を含み、2%以上の増量を起こさないペースで。
救急要請/競技中止の判断基準
意識障害、反応鈍麻、体温高値が疑われれば即119番。WBGT31以上は原則中止、28–31は激しい運動を控える目安として運用します。
トレーニング期の設計: 暑さに強い走力を作る
反復走の回復比とセット数の調整
暑熱時は回復比を1:4→1:6へ延長し、質を確保。セット間は日陰+送風+小量補給で。
テンポ走/インターバルの気温補正
平常時のPaceから高温多湿日は3–6%オフを基準に。RPE主体でコントロールします。
RPE×心拍での内的負荷管理
心拍ドリフトを観察し、同一RPEで心拍が過度に上がる日は量を調整。内的負荷を揃える発想です。
GPSでのスプリント・高強度走の上限
HSRとスプリント回数に上限ラインを設定し、暑熱日は-10〜-20%で開始。体感と相談して戻します。
休養日の入れ方と非熱環境での質確保
冷房下の室内バイクやプールで心肺は維持。暑熱順化と競技スキルの質を両立させます。
データで可視化する水分戦略
尿色・排尿回数での簡易評価
尿色1–3が目標、日中5–7回の排尿が目安。朝一の濃さは割引いて考えます。
前後体重と発汗率の算出
(前体重−後体重)+摂取量−排尿=汗量。時間で割って発汗率(L/h)を記録。
WBGTと開始/中止基準の運用
数値を掲示し、練習強度・休憩頻度・給水ルールをセットで可視化。現場裁量の幅も明記します。
ハートレートドリフトの監視
同一ペースで心拍が+10bpm以上なら暑熱負荷が高いサイン。翌日のメニューを調整。
ログテンプレートとチーム共有
「気温/WBGT・体重・摂取量・排尿・体調」を1枚で。スタッフと選手で同じ言葉を使いましょう。
子ども・学生アスリートへの配慮
発汗機能の未熟さとリスク
子どもは体温上昇が早く、のどの渇き感も鈍い傾向。大人の主導で定時給水を徹底します。
部活の時間帯調整と休憩設計
午前早めか夕方へシフト。20分練習+5分休憩を基本に、WBGTでさらに延長。
保護者が準備すべき持ち物リスト
大容量ボトル、塩分タブレット/飴、冷却タオル、予備ソックス、日陰用の簡易テントや扇風機、保冷剤。名前記入を忘れずに。
学校・チームの安全基準整備
WBGT計測、開始/中止基準、救急連絡網、クーリングスペースの整備をルール化します。
大会・遠征・連戦の暑熱対策
中1日・中2日の補給・回復プラン
試合直後から3時間は炭水化物1.0–1.2g/kg/時で回復優先。睡眠時間の確保が最大のチートです。
移動中の温度管理と脱水防止
バスは冷房を効かせ、こまめに200mlずつ。カフェイン・アルコールは控えめに。
ホテルでの塩分・水分確保術
コンビニの味噌汁、塩むすび、ORS、スポドリを常備。氷はチェックイン直後に確保。
現地気候への短期適応プロトコル
到着初日は強度を落とし、短い暑熱刺激で体を慣らす。午前中にメインセッションを。
遠征用チェックリスト
ボトル/ジェル/ORS/塩タブ/冷却ベスト/氷嚢/クーラーボックス/携帯扇風機/替えウェア/救急連絡先リスト。
よくある誤解と正しい知識
真水だけでOK?電解質の必要性
大量発汗時は水だけだと希釈され、低ナトリウム血症のリスク。電解質はセットで。
辛い物やカリウムで足攣りは防げる?
痙攣は多因性。ナトリウム不足、疲労、神経過敏などが絡みます。辛味やカリウム単独に決定的な根拠は限定的です。
クレアチン/ビタミンCは暑さに不利?
クレアチンは体内水分が増え体重が増える場合がありますが、熱障害リスクを直接高める決定的証拠はありません。ビタミンCは暑さへの不利は一般的ではありません。
氷で筋肉が固まる?冷却の実際
短時間の局所冷却は体温降下と主観的回復に有効。可動域ドリルと組み合わせれば問題は最小限に。
発汗は鍛えれば減る?順化の本質
順化で「汗が早く・効率よく」出る方向に変化します。減るのではなく、冷却効率が上がるのが本質です。
用具と小物で差をつける
軽量・通気ウェアの選び方
軽さ+通気+速乾。縫い目やタグが擦れないことも重要です。
メッシュベースレイヤーの可否
通気と汗拡散を助ける場合も。個人の好みと環境で試し、重ねすぎで熱がこもらないよう注意。
キャップ・ヘッドバンドの使いどころ
直射日光下では有効。汗止めは視界確保に貢献します。
滑り止めソックスと水ぶくれ対策
濡れた足はマメの温床。交換用ソックスとワセリン/テープで予防を。
携帯ボトル・ミスト・氷嚢の運用
個別管理で取り違い防止。ミストはノズルの詰まり対策に予備を。
氷の保管術(保冷材・クーラーボックス)
大粒氷+保冷剤で持ちを延ばす。直射日光を避け、開閉回数を最小に。
ルールとガイドラインを知る
IFABのクーリングブレイクの位置づけ
高温時には試合運営側の裁量でドリンクブレイク(約1分)やクーリングブレイク(約3分)が設定可能。大会規定と主審の判断に従います。
飲水タイムの申請と運用
事前合意がベスト。当日は第4審・相手チームと共有し、混乱を防ぎます。
JFA/環境省の暑さ指標と運動指針
WBGT31以上は原則中止、28–31は激しい運動を控える目安として周知。現場の体感も併記して柔軟に。
クラブ独自基準の作り方と周知
「数値→練習設計→給水→冷却→中止基準」を1枚に。保護者・選手・スタッフで共有します。
個別化の核心: 発汗率とナトリウム濃度のばらつき
自宅でできる簡易発汗テスト手順
1時間の練習で、前後体重・摂取量・排尿を記録。複数回の平均で自分のL/hを把握。
ナトリウム補給量の範囲感
目安は300–700mg/時、塩っぽい汗や白い塩跡が出る選手は800–1,000mg/時も検討。胃の許容量で調整します。
塩タブレット/塩飴の使い方と注意
飲み物とセットで。固形を多用しすぎると胃に残るので、分割摂取が無難です。
胃腸適応(ガットトレーニング)の進め方
練習で実戦量(600–800ml/時、糖質30–60g/時)を試し、徐々に腸を慣らす。試合で初めては避けましょう。
ケーススタディ: WBGT31の試合を走り切る計画例
70kgMFの給水・電解質計画
3–4時間前: 水350–500ml+食事で塩1–2g相当。
90–60分前: 6%スポドリ250–350ml+Na 300–500mg。
15分前: 水150–200ml。
前半: 合計300–400ml(ブレイクで200ml+切れ目で100–200ml)。
HT: スポドリ300–400ml+ジェル1本(25g)。
後半: 合計300–400ml。合計Na 700–1,000mg/試合を目安に。
冷却オペレーション手順(前半/HT/後半)
直前: アイススラリー200–300ml、冷却ベスト5分。
前半ブレイク: 頸部・腋窩を各60–90秒。
HT: 上着交換、扇風機+氷嚢2–3分。
後半ブレイク: ミスト+一口法。
配分と交代案のシナリオ
前半はRPE-1で開始、30分以降の全体プレスはトリガー限定。60–70分に高強度枠(WG/CM)を交代で回す。
よくある失敗パターンと修正方法
前半に飲み過ぎて腹が張る→一口法に切替え。
スポドリ濃度が高く胃が重い→5%へ希釈。
塩不足で脚が攣る→HTでNa 300–500mg追加。
まとめ: 「暑さに勝つ」から「暑さをマネジメントする」へ
実行の優先順位を決める
1) 48–72時間前からの水分・塩分・炭水化物、2) プレクーリングと定時給水、3) 戦術的配分と交代。この3つをまず固めましょう。
今日から始める3ステップ
発汗率テストを1回やる→個別ボトルに名前を入れる→WBGTを測ってチーム掲示。これだけで現場は変わります。
チームで共有すべきポイント
「飲む動線」「冷やす動線」「戦術の波」を言語化。役割を決めて、誰がいなくても回る仕組みに。
暑さは敵ではなく、条件のひとつ。準備と運用で優位に変えられます。次の試合から、チーム全員で“走り切る仕組み”を動かしていきましょう。