ピッチでの脳振盪(コンカッション)は、「見逃さない」「無理をさせない」「段階的に戻す」がすべてです。激しいコンタクトや転倒は、誰にでも起こり得ます。この記事では、現場で迷わない初期対応(応急処置)と、その後の復帰基準(RTP:Return to Play)を、サッカーの実情に合わせて整理しました。難しい専門用語は控え、現場で使える言い回しとチェックリスト中心でまとめています。なお、ここでの内容は一般的な情報であり、最終判断は医療者の指示を優先してください。
目次
- 導入:なぜ脳振盪は「見逃し厳禁」なのか
- 脳振盪の基礎知識:定義・仕組み・よくある誤解
- 発生しやすいプレー状況とリスク要因
- 現場で迷わない初期評価フローチャート
- 応急処置の具体手順:フィールドからベンチまで
- その場で使える簡易評価ツールと注意点
- 現場で“してはいけない対応”チェックリスト
- 医療機関受診の目安と救急要請の赤旗症状
- 帰宅後24〜48時間の観察ポイントと記録
- 復帰の大原則:Return-to-Learnを優先してからReturn-to-Playへ
- サッカー向け段階的復帰プロトコル(RTP)
- ヘディングの再導入プロトコルと回数管理
- 年齢・立場別の注意点(高校生・大学生・社会人・保護者)
- チームで備える脳振盪対策:役割分担とルールづくり
- 予防のヒント:起きにくく、悪化しにくい環境づくり
- ケーススタディ:現場での判断を磨く
- よくある質問(FAQ)
- まとめ:今日から現場で使えるチェックリスト
- おわりに
導入:なぜ脳振盪は「見逃し厳禁」なのか
サッカーにおける脳振盪(コンカッション)の実態
サッカーでは、頭同士の接触、肘や肩の衝突、地面への激しい落下、さらには首のむち打ちのような動きでも脳振盪が起こります。脳振盪は「頭を強く打ったかどうか」だけでは判断できず、軽い接触でも発生し得る点が厄介です。また、10代は成人より回復に時間がかかる傾向があり、慎重な対応が求められます。
初動対応が結果を左右する理由
脳振盪の直後は、症状がまだ軽く見えることがあります。ここでプレーを続けると、症状悪化や回復遅延、まれに重篤な合併症につながるリスクが上がります。逆に、「疑わしきは外す」を徹底し、適切な休息と段階的な復帰を守れば、多くは安全に競技へ戻れます。
この記事のゴールと読み方
ゴールは3つ。「1)現場で迷わない初期対応」「2)帰宅後の見守り」「3)段階的復帰の基準」。各セクションは独立して読めるので、必要なところから活用してください。
脳振盪の基礎知識:定義・仕組み・よくある誤解
脳振盪とは何か:脳の機能障害と構造損傷の違い
脳振盪は、頭部や身体への衝撃で脳が一時的に正常に働かなくなる「機能障害」です。多くの場合、CTやMRIなどの画像検査で出血や骨折といった「構造的な損傷」は映りません。画像が正常でも、脳振盪はあり得ます。
典型症状と出現タイミング:すぐ出る症状・遅れて出る症状
すぐ出る症状の例:頭痛、ふらつき、ぼんやりする、吐き気、視界がにじむ、反応が遅い、記憶が抜ける、まぶしさ・音のつらさ、感情が不安定。
遅れて出る症状の例(数分〜数時間後):ひどい頭痛、めまい、集中しづらい、眠気、気持ちの落ち込み、首の痛み、吐き気の増悪。現場で「大丈夫」と言っていた選手が、ベンチや帰宅後に強い症状を訴えることも珍しくありません。
よくある誤解:気絶しなければ大丈夫?画像が正常なら安全?
- 気絶(意識消失)がなくても脳振盪は起こります。
- 画像が正常でも「安全」を意味しません。症状があれば復帰は不可。
- 痛み止めで症状が軽くなっても、脳の回復が進んだとは限りません。
セカンドインパクトの危険性と回避の原則
回復前に再び頭部や体に衝撃を受けると、まれですが重篤な脳障害に至ることがあります。これを防ぐ最重要ルールが「疑わしきは即離脱・同日復帰なし」です。
発生しやすいプレー状況とリスク要因
競り合い・空中戦・ヘディングでの接触
空中戦では、肘・肩・後頭部の接触が頻出。ボールに集中し過ぎて相手・味方の位置情報が抜けるとリスクが跳ね上がります。ヘディング練習では反復回数と強度の管理がカギ。
GKとフィールドプレーヤーの交錯
高速で正対する衝突はエネルギーが大きく、頭部だけでなく胸部・頸部にもダメージが及びます。視野と声かけ、ルールの徹底が予防に有効です。
地面やゴールポストへの頭部衝突
滑りやすいピッチ、雨天、スパイクの摩耗なども一因。ポスト・看板周辺の安全確保も忘れずに。
見落としやすい間接的加速減速(首のむち打ち様動き)
頭部に直接の打撃がなくても、体幹への衝撃→首のむち打ちで脳が揺さぶられ脳振盪に。接触なしでも症状が出るケースがあります。
疲労・雨天・視認性・用具などの環境要因
疲労や暗い照明、反射の強いナイター、汚れたゴーグル・メガネ、サイズが合わない用具はリスクを高めます。
現場で迷わない初期評価フローチャート
原則:疑わしきは即離脱・同日復帰なし
脳振盪が少しでも疑われたら、その場で交代。練習でも同様にプレー中止。同日中の復帰はしません。
安全確保と声かけ:まずプレー中断と味方への指示
- 笛や声でプレーを止め、周囲の選手を下げて安全なスペースを確保。
- 選手には簡潔に声かけ:「今は動かない、深呼吸、こちらを見て」。
初期観察ポイント:意識・見当識・バランス・言語・眼の動き
- 意識:反応の速さ、ぼんやり、目の焦点。
- 見当識:「ここはどこ?スコアは?直前のプレーは?」の質問。
- バランス:立位のふらつき、まっすぐ歩けるか。
- 言語:ろれつ、遅延、的外れな回答。
- 眼:左右の瞳孔差、眼振、素早い追視ができるか。
赤旗症状の判定:救急要請の基準
以下があれば119番通報や救急搬送を検討(可能なら頸椎保護)。
- 意識がはっきりしない、悪化する眠気、呼びかけに反応しない
- 1分以上の意識消失、繰り返す嘔吐、けいれん
- 激しい・増悪する頭痛、ろれつが回らない、麻痺・しびれ・片側の弱さ
- 瞳孔の左右差、視力低下、二重に見える
- 首の強い痛み、頸部の圧痛
- 耳や鼻からの出血・透明な液体(髄液の疑い)、頭蓋骨の陥没・分泌
- 落ち着きのなさや異常な興奮、ひどい混乱
サイドライン移動の可否判断と役割分担
- 立位でふらつく場合は歩かせず、複数人でサポート。
- 頸椎が不安ならその場で安静保持、不要な移動を避ける。
- 役割分担:救急要請・家族連絡・観察記録・人垣づくりを分けて実施。
応急処置の具体手順:フィールドからベンチまで
頸椎を疑う場合の対応:頭頸部の手当と不要な移動の回避
- 頭頸部の中立位を保持し、選手を動かさない。ヘルメット等はサッカーでは通常ないが、装具がある場合はむやみに外さない。
- 呼吸がない・大出血など生命危機があれば救命を最優先。
ABCD(呼吸・循環・意識・神経)チェックの要点
一般的にはA:気道、B:呼吸、C:循環、D:意識・神経の順に確認します。
- A(気道):詰まりがないか。嘔吐物は横向きで吐かせ、気道確保。
- B(呼吸):胸の上下、呼吸数、苦しさの訴え。
- C(循環):脈の有無、顔色、出血。
- D(意識・神経):反応、簡単な指示に従えるか、手足の動き。
嘔吐・けいれん・重度頭痛への対処
- 嘔吐:横向き回復体位で誤嚥予防。水分はむやみに与えない。
- けいれん:周囲の危険物をどけ、頭部を保護。口に物を入れない。
- 重度頭痛や悪化:赤旗として救急要請を検討。
同伴監視者の指名と情報の共有(受傷時状況・症状の推移)
- 同伴者を1名指名して帰宅まで付き添い。単独帰宅は避ける。
- 共有すべき情報:受傷時間・状況、初期症状、意識の有無、嘔吐回数、経過、既往歴(過去の脳振盪・偏頭痛・服薬)。
ベンチでの安静環境のつくり方(光・音・人の刺激を減らす)
- 強い光・音を避ける。サングラス・耳栓も可。
- 会話は最小限、短い言葉で。
- スマホや動画視聴は控える。
その場で使える簡易評価ツールと注意点
Concussion Recognition Tool(CRT)による“疑い”の把握
CRTは医療者以外でも使える認識ツールです。症状チェックや記憶テストで「疑い」を拾い上げるのに有用。ただし、陽性なら即離脱、陰性でも「疑わしさ」があれば離脱を優先します。
SCAT系ツールの位置づけ(医療従事者向け評価の概要)
SCATは医療従事者向けの複合評価(症状、認知、バランスなど)。場内での実施はトレーナー・医療者に任せ、一般のコーチは無理に評価しないことが安全です。
バランステスト・記憶課題の行い方と限界
- 簡易:直線歩行、片脚立ち、3〜5語の即時・遅延復唱。
- 限界:緊張や性格で成績が変わる、練習で覚える、環境に左右される。
ツールに頼り過ぎないための判断基準
ツールは補助。最優先は「いつもと違う」サインと選手・周囲の違和感です。ツールが陰性でも、違和感があれば外す。これが事故を防ぎます。
現場で“してはいけない対応”チェックリスト
根性論の続行・“様子見でプレー続行”の禁忌
「大事な試合だから」「本人が行けると言うから」は禁物。迷ったら外す、同日復帰なし。
頭痛薬や鎮痛剤の安易な使用、飲酒の回避
- 初期24時間はアスピリンや一部のNSAIDsは避けることが推奨されます(出血の見逃しリスク)。
- 服薬は医療者の指示で。飲酒は回復を遅らせ、症状を隠すため厳禁。
一人帰宅・運転・入浴やサウナなど体温上昇のリスク
- 単独帰宅や自動車・自転車の運転は禁止。
- 長風呂・サウナ・激しい入浴は避ける。のぼせは症状を悪化させます。
症状隠しや自己申告任せの危険性
選手は無理しがち。コーチ・仲間・家族が客観的に止める文化づくりが大切です。
SNSや動画撮影での刺激・プライバシー侵害
フラッシュや騒音は症状を悪化。受傷者の様子をSNSに上げる行為は厳禁です。
医療機関受診の目安と救急要請の赤旗症状
救急搬送が望ましいサイン一覧
前述の赤旗症状が一つでもあれば救急要請(119)。特に意識の低下、繰り返す嘔吐、けいれん、神経学的異常は緊急です。
当日受診を検討すべきケース
- 軽症でも初回の脳振盪、または10代の選手
- 症状が2〜3時間で改善しない、または徐々に悪化
- 抗凝固薬の内服、重度の頭痛、既往に偏頭痛や複数回の脳振盪
受診時に伝えるべき情報(受傷機転・経過・既往)
- 受傷時間、プレー状況、衝撃の方向・強さ、意識消失・けいれんの有無
- 現在の症状と変化、嘔吐回数、服薬、既往歴(脳振盪、偏頭痛、学習障害など)
画像検査の考え方(必要性は症状と所見で判断)
CT/MRIは出血や骨折の確認のために行います。脳振盪自体は画像に映らないことが多いので、「画像が正常=競技復帰OK」ではありません。
帰宅後24〜48時間の観察ポイントと記録
睡眠・頭痛・めまい・吐き気・感情変化のモニタリング
同居人は少なくとも24〜48時間は見守りを。睡眠は基本的にとってOKですが、悪化サインがあればすぐ起こして確認します。記録は時刻と症状のセットで残すと受診時に役立ちます。
悪化サインが出た場合の対応フロー
- 頭痛・吐き気・ふらつきが強くなる、意識がもうろう、けいれん→119番。
- 軽度の増悪→無理せず安静、早めに医療機関へ相談。
保護者・同居人の見守りチェックリスト
- 会話がかみ合うか、歩行が安定しているか
- 食欲と水分摂取、吐き気の有無
- まぶしさ・音過敏、感情の起伏、イライラ
学校・職場への情報共有テンプレートの作り方
- 受傷日、主症状、医療者の指示、当面の配慮(授業・画面時間・試験対応)。
- 期限と再評価の予定、緊急連絡先。
復帰の大原則:Return-to-Learnを優先してからReturn-to-Playへ
日常活動の段階的再開(学業・仕事・スクリーン時間)
- 初期は低刺激(静かな環境で短時間の学習)。
- 体調が安定→学業・仕事時間を少しずつ延長。
- スクリーン時間も短時間から、症状が出たら中止。
刺激コントロールと休息のバランス
完全に何もしない休息が長すぎるのも非推奨。軽い日常動作や短い散歩は、症状が悪化しない範囲で取り入れます。
症状再燃時の“1段階戻る”ルール
活動中に症状が再燃したら、その日は中止。翌日は1段階戻して再開します。
医療者の許可とチーム内合意形成
フルコンタクトや試合復帰には、医療者の許可を推奨。指導者・保護者・選手で計画を共有します。
サッカー向け段階的復帰プロトコル(RTP)
ステップ0:完全休息〜症状安定
静かな環境で休息。短い散歩や軽い日常動作は許容。症状がほぼゼロへ。
ステップ1:軽い有酸素(ウォーク/エアロバイク)
目安10〜20分、心拍は軽〜中等度。ヘディング・ダッシュはなし。
ステップ2:ランニングと基本スキル(ノンコンタクト)
ジョグ〜ラン、ラダードリル、ボールタッチ。対人なし、ヘディングなし。
ステップ3:ポジション別スキル強度アップ(ノンコンタクト)
方向転換、加減速、パスコンビネーション。対人は不可。
ステップ4:制限付き練習(コンタクトなし→制限下で接触再導入)
限定的なプレッシャー、セットプレー整理。医療者許可後に軽い接触を段階的に再導入。
ステップ5:通常練習(フルコンタクト)
フルコンタクトでの全体練習へ。練習後の症状再燃がないことを確認。
ステップ6:公式戦復帰
チーム内で最終確認し、公式戦へ復帰。
各ステップの目安所要時間と進行条件(最低24時間・症状ゼロ・医療者確認)
- 各ステップは最低24時間。症状が出たら中止→前段階へ戻る。
- ステップ4〜5への移行は医療者の確認を推奨。
ヘディングの再導入プロトコルと回数管理
段階1:軽量ボールでの座位・膝立ちトス
軽量ボール(柔らかいもの)で感覚を戻す。5〜10回程度、症状ゼロを確認。
段階2:立位の軽いヘディング(対人なし・回数制限)
短い距離のトスを10〜15回程度。間に休憩を挟み、症状が出たら即終了。
段階3:ランニング中の軌道合わせ(対人なし)
助走ありのコントロールヘディング。回数は15〜20回以内。
段階4:制限付き対人ヘディング(競り合い禁止)
コーチ管理下で軽いプレッシャー。肘・腕の使用は禁止。
段階5:通常の対人ヘディング
実戦に近い強度へ。翌日以降の症状再燃がないか確認。
回数・強度・回復日の設定と記録方法
- 各段階の翌日は「休養または低強度」で様子を見る。
- 回数は初回少なめ(5〜10回)から、1セッションあたり5〜10回ずつ増やす。
- 練習日誌に回数・強度・症状有無を記録。
年齢・立場別の注意点(高校生・大学生・社会人・保護者)
成長期の慎重な進行と観察ポイント
10代は回復が遅れやすく、RTPも保守的に。学校生活の配慮(課題・試験・画面時間)を先に整えます。
寮生活・遠征時の見守り体制
同室者に見守り方法と赤旗症状を共有。夜間も連絡が取れる体制に。
社会人の通勤・運転・夜勤への配慮
復帰初期は運転や長距離通勤、夜勤は避ける。可能なら時差出勤や在宅を調整。
保護者が見るべき行動変化と学校連携
いつもと違う怒りっぽさ、無気力、睡眠リズムの乱れは要注意。養護教諭・担任・部活動顧問と連携を。
チームで備える脳振盪対策:役割分担とルールづくり
監督・コーチの判断基準と交代方針
「迷ったら外す」「同日復帰なし」をチーム規則に。重要試合でも例外なし。
キャプテン・リーダーの声かけスクリプト
- 「今は動かないで。こっちを見て。呼吸ゆっくり」
- 「大丈夫は確認してから。今は交代しよう」
メディカル担当・トレーナーが整えるキットと書式
- 手袋、アイスパック、吐物処理、ライト、記録用紙、緊急連絡網。
- 受傷報告テンプレート、RTPチェックリスト、赤旗症状カード。
試合前ブリーフィングに入れる“脳振盪合言葉”
「迷ったら外す、同日復帰なし」「画像が正常でも復帰なし」「症状を隠さない」。
練習設計:空中戦・ヘディングの頻度管理
反復は量より質。対人ヘディングは目的と回数を事前に決め、疲労時は避ける。
予防のヒント:起きにくく、悪化しにくい環境づくり
反則の抑止・安全な競り合い技術の徹底
肘・腕の使い方、体の入れ方、声で合図する習慣。審判・指導者・選手で共通理解を。
視界・照明・ピッチコンディションの管理
夜間や雨天は視認性の確保を優先。スパイクの点検、滑りやすい箇所の共有。
用具のフィットとマウスガード等の位置づけ
マウスガードは歯や口腔の怪我予防に有効ですが、脳振盪の予防効果は限定的とされています。頭部用プロテクターも脳振盪の確実な予防は示されていません。
ネックストレングスや周辺視トレーニングの活用
首の安定性・接触直前の体勢作りはリスク低減に寄与する可能性があります。周辺視・状況認知のトレーニングも有効。
記録と振り返り:インシデントログの運用
受傷場面・経過・対応を記録し、次の予防策に反映。チームで共有します。
ケーススタディ:現場での判断を磨く
空中戦後にふらついたFWの対応
状況:後頭部同士がぶつかり、数歩ふらつき。意識清明。
対応:即交代→サイドラインで観察。見当識テスト、バランス確認。軽い頭痛あり→同日復帰なし。帰宅後の見守りと赤旗説明。翌日、医療機関で評価。
GKと衝突し頭痛を訴えるDFの対応
状況:胸部と顎を強打。頭痛と首の痛み。
対応:頸椎疑いで頭頸部中立位保持。ABCD評価。赤旗なしでも救急受診を検討。画像は正常でもRTPはプロトコルに従い段階的に。
接触なしでも起こる“遅れてくる症状”の見抜き方
状況:シュート後に転倒、頭部直撃なし。30分後から吐き気と光過敏。
対応:接触なしでも疑いあり。即離脱・同日復帰なし。帰宅後の監視徹底、悪化で受診。
よくある質問(FAQ)
軽い頭痛だけなら翌日運動しても良い?
いいえ。症状が完全に消えてから、RTPのステップ1へ。自己判断での運動再開は避けてください。
画像検査が正常ならすぐ復帰できる?
できません。画像が正常でも脳振盪はあり得ます。症状ゼロ+段階的RTPが必須です。
鎮痛薬はいつから使える?
初期は医療者の指示を優先。一般的にはアセトアミノフェンが選択肢となる場合がありますが、NSAIDsは初期24時間は避けることがあります。
ヘディングはどの段階から再開?
RTPステップ3以降のノンコンタクトで体調が安定し、医療者が許可したら段階1(軽量ボール)から再導入します。
複数回の脳振盪がある場合の考え方
回数・回復の遅さ・間隔の短さは要注意。専門医に相談し、より保守的なRTPを。競技継続の可否を含めて検討します。
まとめ:今日から現場で使えるチェックリスト
初期対応の3原則と“同日復帰なし”の徹底
- 疑わしきは即離脱。
- 赤旗症状があれば119。
- 同日復帰なし、段階的RTPを厳守。
赤旗症状の共有と連絡体制の可視化
- 赤旗リストをベンチに常備。
- 救急・家族・医療機関の連絡先を一本化。
段階的復帰(RTP)を守るための記録シート化
- 症状日誌、運動内容、ヘディング回数を記録。
- 症状再燃時は1段階戻る、医療者と共有。
おわりに
脳振盪対応は「ルール化」と「迷わない仕組みづくり」がすべてです。判断に自信がなくても大丈夫。「外して、落ち着いて、記録して、段階的に戻す」。この4つをチーム全員で徹底すれば、ピッチはもっと安全になります。今日の練習から、合言葉を共有し、チェックリストをベンチに置いてスタートしましょう。