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サッカー持久走が苦手?着実に克服する走り方

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サッカー持久走が苦手?着実に克服する走り方

試合では「速く・長く・何度も」走る力が必要なのに、持久走はどうしても苦手…そう感じている人は少なくありません。実は、学校で行う一定ペースの長距離と、サッカーの走りは性質が違います。本記事では、持久走が苦手な理由を見直しつつ、サッカーに直結する形で着実に克服していく方法を、理論と実践、12週間のロードマップまで一気にまとめました。今日からの練習で使えるメニューを具体的に載せているので、必要なところだけ拾って実践していってください。

持久走が苦手に感じる理由とサッカーの走りの特性

試合で求められる走りは一定ペースではない

サッカーはジョグ、スプリント、ストップ&ターンを繰り返す「変化のスポーツ」。一定ペースで淡々と走る持久走とは負荷のかかり方が違います。試合中の心拍は波打つのが普通で、息が上がる場面と落ち着く場面を交互に経験します。つまり、試合に強くなるには「強弱をつけて長く動ける」体作りが大切です。

苦手意識が生まれる典型パターン

  • 最初に飛ばしすぎて早々に失速する
  • 呼吸が浅くなり胸だけで吸ってしまう
  • フォームが崩れて着地衝撃が増え、余計に疲れる
  • 練習の強度が毎回バラバラで、体が適応しない

原因を分解すれば対策は見えてきます。ペース配分、呼吸、フォーム、練習設計の4点を整えましょう。

「長く走る=遅くなる」の誤解を解く

適切な持久系トレーニングはスプリントを遅くしません。むしろ、乳酸が溜まりにくくなり、スプリント間の回復が速くなることで「試合の終盤に強い」選手になります。ポイントは強度とタイミングの設計です。

まず把握したい基礎知識(有酸素・無酸素と乳酸閾値)

サッカーで必要なエネルギー供給系のバランス

主に3つの仕組みが働きます。低〜中強度で長く動く有酸素系、短時間の全力で使う無酸素(解糖系・ATP-PCr系)、そして両者の橋渡し。サッカーはこの切り替えが命です。だからこそ「強弱」を意図的に練習に入れる必要があります。

VO2max・LT・ランニングエコノミーの位置づけ

  • VO2max(最大酸素摂取量):全身エンジンの大きさ。高いほど持久的に有利。
  • LT(乳酸閾値):息が上がり始める分岐点。ここを押し上げると、速いペースを楽に維持できる。
  • ランニングエコノミー:同じ速度で必要なエネルギー量。フォーム改善で伸びる余地が大きい。

インターバルとLSDの役割の違い

インターバルは心肺と脚への高強度刺激で、試合強度の上下に強くなります。LSD(ゆっくり長く走る)は土台作り。毛細血管や心臓の効率が上がり、疲労に強くなります。両方が必要で、割合は時期で変えます。

心拍ゾーンの目安と簡易的な測り方

  • 最大心拍の目安:220−年齢(個人差あり)。
  • ゾーン2(最大の60〜70%):土台づくり・会話できる強度。
  • ゾーン3(70〜80%):テンポ走・LT近辺。
  • ゾーン4(80〜90%):インターバルのメイン。
  • ゾーン5(90〜100%):短いレペティション。

心拍計がない場合は会話テストを併用。普通に会話できる=ゾーン2、短文ならOK=ゾーン3、言葉が出にくい=ゾーン4以上のイメージです。

現状を数値化するセルフテスト

クーパー走・1500m走での指標化

12分間で走れた距離(クーパー走)や1500mのタイムは有酸素力の目安になります。グラウンドや公園でOK。同じ条件で月1回測り、伸びを確認しましょう。

Yo-Yo回復テストの実施方法と解釈

20m間のシャトルをビープ音に合わせて往復し、合間に10秒の歩行回復を挟むテスト。レベル1はベース、レベル2は上級向け。止まった地点の距離がスプリント耐性と回復力の指標です。十分なウォームアップと、脚の違和感があれば中止を。

RPEと会話テストでの主観評価

RPE(主観的運動強度)を1〜10で記録。終わった直後に「今のキツさ」を数字で残します。心拍とセットで見ると配分の失敗に気づけます。

安静時心拍・心拍回復(HRR)のチェック

朝起きてすぐの安静時心拍が下がるのは持久力向上のサイン。運動後1分間でどれだけ心拍が落ちるか(HRR)も回復力の目安です。

データ記録テンプレートの作り方

  • 日付/メニュー/距離・時間/平均心拍・最大心拍/RPE/メモ(睡眠・体調・天候)

スマホのメモや表アプリで十分。週末に振り返りましょう。

苦手克服のためのフォームづくり

接地と重心の位置を整える

体の真下に近い位置で柔らかく接地し、やや前傾(胸から前に倒れるイメージ)で進みます。かかとベタ着きやブレーキ接地は疲労の元です。

ピッチとストライドの最適化

心地よい短めのストライドでピッチを安定させると、スタミナ効率が上がります。疲れたら足を遠くに伸ばすのではなく、接地位置を体の近くに戻す意識を。

腕振りと体幹の安定で上下動を抑える

肘を軽く引く腕振りで重心を前へ。体幹がぐらつくと上下動が増えます。腹圧を保ち、視線は遠くに。

呼吸フォームと姿勢の連動

鼻+口でリズミカルに。2歩吸って2歩吐く、または3-3のリズムを試し、苦しくなったら吐く時間を少し長く。胸だけでなく腹部も使いましょう。

スマホ動画での自己分析手順

  • 横と正面を各10秒撮影(ジョグ・レースペース)。
  • 接地位置、上下動、腕振りの対称性、着地音をチェック。
  • 1項目だけ改善ポイントを決め、次回撮影で変化を確認。

ペース配分と心拍・呼吸のマネジメント

ネガティブスプリットの練習法

前半控えめ、後半やや上げるのが基本。例えば20分走で、最初の10分は会話できる強度、後半10分はややきつい強度へ。成功体験が苦手意識を消します。

心拍ベースの配分とRPEの連動

ゾーン3の上限で入って、後半はゾーン4の下側へ。RPEで言えば6→7。数字で管理すると「頑張りすぎ」を防げます。

坂・向かい風・芝での調整術

ペースではなく努力感(RPE)で合わせるのがコツ。向かい風や芝は心拍が上がりやすいので、速度は落としてOKです。

失速を防ぐ呼吸リズムの作り方

序盤から一定のリズムを意識し、きつくなったら「長めに吐く→リセット」のルーチンを入れると心拍が落ち着きやすいです。

12週間のロードマップ(ベース→ビルド→ピーク)

ベース期(1〜4週)の目的とメニュー

  • 目的:有酸素の土台、フォーム安定、ケガしない体作り。
  • 週3〜5回:ゾーン2中心のジョグ+短い流し(80m×4)/LSD(60〜90分)を隔週。
  • 補強:体幹・臀筋活性、モビリティ。

ビルド期(5〜8週)のテンポ・インターバル

  • テンポ走:20分(ゾーン3上限〜LT付近)。
  • インターバル:1000m×4(各間3分ジョグ)または4分走×5(2分レスト)。
  • 週末に70分前後のイージーロングで疲労を流す。

ピーク期(9〜11週)の試合強度への接続

  • 90秒走/30秒レスト×8〜12本(芝やトラック)。
  • Yo-Yo形式のシャトル、スモールサイドゲーム(強度管理)。
  • レースペース走や変化走で実戦感覚。

テーパリング(最終1週)の整え方

  • 走行量は普段の40〜60%に減らす。
  • 短い刺激(流しや30秒上げ)でキレだけ残す。
  • 睡眠と栄養を優先。

週例サンプルスケジュール

  • 月:オフ/モビリティ
  • 火:テンポ走20分+補強
  • 水:イージージョグ40分
  • 木:インターバル(4分×5)
  • 金:オフまたは軽いジョグ20分
  • 土:スモールサイドゲーム or 変化走
  • 日:イージーロング60〜80分

サッカーに直結する持久系ドリル

90秒走/30秒レストの反復

コート外周を目安に、90秒は試合の守備移動をイメージして強め、30秒はジョグ。8〜12本。心拍の上下に慣れます。

シャトル走とコーナーフラッグドリル

ペナルティエリア幅や20m間を利用して、ターンと加減速を反復。コーンタッチを入れて判断も同時に刺激。

ボール保持しながらの周回走

ボールを転がしながら外周を走り、30秒ごとにスプリントを挿入。技術と持久を一体化します。

スモールサイドゲームの強度管理

3vs3〜5vs5でピッチを小さめに。時間は4〜6分×4〜6本、間は2分。RPEや心拍で強度を確認しましょう。

坂道レペティションで効率を上げる

30〜60mの緩い坂を8〜10本。フォームが崩れにくく、地面反力の使い方が身につきます。

時間がない日の時短メニュー集

20分テンポ走でLTを刺激

アップ10分→20分テンポ→ダウン5〜10分。合計40分で要点を押さえられます。

15分ファルトレクで変化走

「1分速く+1分ゆっくり」を7セット。場所を選ばず、試合の強弱に近い刺激が入ります。

階段・狭小スペース活用法

階段走20秒×10本、間は歩き。駐車場周回や校庭の直線でもOK。安全に配慮して実施を。

雨天時の屋内代替メニュー

縄跳び2分×5、マウンテンクライマー30秒×6、バーピー20秒×8(レスト10秒)。換気と足元に注意。

走りを変える補強トレーニングとモビリティ

臀筋群・腸腰筋の活性化ドリル

グルートブリッジ、ヒップヒンジ、バンドウォーク、ニーアップ。走る前に5〜8分でOK。

ハムストリングス・下腿の耐久強化

ノルディックハムの簡易版、RDL、カーフレイズ(膝伸ばし・曲げ各15回×2)。

足関節・股関節の可動域づくり

足首の前後・内外モビリティ、ヒップオープナー、90/90ストレッチで可動域を保つ。

ランニングスキルドリル(A/Bスキップ等)

Aスキップ、Bスキップ、ハイニー、バットキックを各20m×2。本練習前に神経系を目覚めさせます。

ケガを避けるコンディショニング

ウォームアップとクールダウンの要点

5〜10分の軽いジョグ→動的ストレッチ→スキルドリル。終わりは心拍を下げるジョグと静的ストレッチでリセット。

週間走行距離の安全な増やし方

前週比+10〜15%を目安に。2〜3週積んだら1週軽くして回復を。

痛みのサインと休む判断基準

鋭い痛み、腫れ、片脚だけの違和感が続く場合は中止して休養を。早めの対応が長期離脱を防ぎます。

睡眠と回復のルーティン

睡眠は最優先。軽いストレッチ、入浴、たんぱく質と炭水化物の補給をルーティン化しましょう。

シューズ選びと交換目安

サイズと足型に合うことが最重要。ミッドソールがへたったら交換(走行距離の目安はおよそ500〜800km)。

栄養・水分・補助戦略

トレ前の炭水化物戦略

60〜90分前に軽めの炭水化物(おにぎり、バナナ、パンなど)。消化の重いものは避けます。

練習中の水分・電解質補給

発汗が多い日は電解質を含むドリンクを。目安は喉が渇く前に少量ずつ。

リカバリーでのたんぱく質と炭水化物

終了30分以内にたんぱく質20g前後+炭水化物。牛乳+果物、ヨーグルト+シリアルなど手軽な組み合わせでOK。

鉄・ビタミンDなどの留意点

持久系では鉄不足がパフォーマンス低下につながることがあります。食品からの摂取を意識し、気になる場合は専門家に相談を。

カフェイン活用の可否とタイミング

個人差が大きいですが、開始60分前の少量摂取で集中が上がる人もいます。夜間の練習では睡眠に影響しない範囲で。

苦手意識を乗り越えるメンタル設計

目標設定と小さな成功体験の積み上げ

「12分走+100m」「テンポ走20分完遂」など達成基準を明確に。毎週1つ“できた”を作ります。

苦しい区間の対処スキル(セルフトーク等)

「腕」「呼吸」「接地」のキーワードを回す、100mごとに区切る、吐くリズムを長めにする。具体策が不安を消します。

習慣化のトリガー設計

時間・場所・音楽を固定するだけで継続率が上がります。前日準備も効果的。

チームや家族の支援を活かす

テスト日を共有し、応援と記録係をお願いするだけで続けやすくなります。

音楽・音声ガイドの活用法

BPM一定のプレイリストや音声コーチアプリでペース維持が楽に。

進捗を可視化して伸び続ける方法

GPS・アプリでのログ管理

距離・時間・心拍・コースを記録。週の総走行時間も合わせて見ましょう。

月次レビューのやり方

ベスト3練習、課題3つ、翌月の重点を1枚に。数字と感覚の両方を残すのがコツ。

停滞期の打開策(刺激の変更)

場所を変える、坂を入れる、セット数を減らして質を上げる、完全休養を1〜3日入れる。

テスト再実施の頻度とタイミング

クーパー走やYo-Yoは4週ごと。試合直前ではなく、疲労がない週の前半に。

よくある失敗とリカバリーのコツ

毎回追い込みすぎ問題への対処

週の7割は楽に終える“余白”を。ハードは週2〜3回までに収めます。

フォーム崩れと着地音増加のサイン

着地音が大きい=疲労の合図。そこでやめる勇気が翌週の伸びを作ります。

補給不足と脱水の見分け方

頭痛・めまい・尿の色が濃いのは要注意。練習時間と気温に合わせて事前に飲む量を決めましょう。

オーバートレーニングの兆候と回避

安静時心拍の上昇、眠りの質低下、やる気の低下が続く場合は早めに練習量を落とします。

年代・レベル別のアレンジ方法

中高生の成長期に配慮すべき点

急な負荷増は疲労骨折やシンスプリントのリスク。週あたりのジャンプ・ダッシュ量も管理し、痛みが出たら即調整を。

大学・社会人の時間設計と継続術

週3本の柱(テンポ/インターバル/ロング)に時短メニューを差し替え。通勤ランや昼休みの15分変化走で継続性を担保。

初級者/中級者/上級者の負荷調整

  • 初級:ゾーン2多め+短い刺激。
  • 中級:テンポ・インターバルを週2、合計時間を管理。
  • 上級:Yo-Yoや試合形式でピーク強度を精密にコントロール。

保護者ができるサポートの具体例

テストの計測、記録の手伝い、補食の準備、休養日の確保。過度な追い込みを促さず、プロセスを褒めることが長続きの鍵です。

試合前の調整と当日の走り方

最終1週間のメニュー例

火:テンポ12〜15分/木:90秒走×6(軽め)/土:20分ジョグ+流し。全体量は抑え、キレを残す。

前日〜当日の食事と水分計画

前日は炭水化物多め、塩分も適度に。当日は消化に優しい軽食を。こまめな水分と電解質で脱水を防ぐ。

当日のウォームアップ手順

ジョグ→動的ストレッチ→スキルドリル→30秒上げを2〜3本→軽いボールタッチ。心拍を一度上げておくとスタートが楽です。

試合中の省エネ走とリカバリー走

ボールから遠い局面では姿勢を崩さず省エネ移動。プレー切れの瞬間に鼻+口で深呼吸し、心拍を落とす習慣を。

よくある質問(FAQ)

週何回走れば効果が出る?

目安は週3回。うち1〜2回は強度を上げ、他はイージーに。忙しい週は質を優先しましょう。

ボールなしの持久走は必要?

必要です。ボールありでは得にくい「一定負荷」や「心拍管理」を学べます。両方やるのが最短です。

シンスプリントになったらどうする?

痛みがある間はランを控え、アイシングや負担軽減を。再発防止には走行量の調整とふくらはぎ強化、靴の見直しが有効です。

体重は落としたほうが有利?

無理な減量は逆効果。パワーとコンディションを保ちながら、食事の質と練習で自然に整えるのが安全です。

最高心拍が分からない時の目安は?

「220−年齢」はあくまで目安。実際の練習データで更新していきましょう。

おわりに(まとめ)

サッカーの持久走が苦手に感じるのは、才能の問題ではなく「やり方のミスマッチ」であることがほとんどです。試合で求められるのは一定走ではなく強弱のある走り。だからこそ、土台(有酸素)を作り、LTを押し上げ、インターバルで試合強度に慣れ、フォームと配分、呼吸を整えれば、必ず伸びます。まずは今週、クーパー走で現状を測り、12週間ロードマップの最初の一歩を踏み出してください。小さな成功の積み重ねが、苦手意識を最速で塗り替えてくれます。

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