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サッカーのけが、復帰まで何する?段階別チェックリスト

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練習や試合で「やってしまった…」という瞬間は誰にでもあります。大切なのは、焦らず安全に、そして賢く復帰すること。本記事では、サッカーのけがから復帰までに「実際に何をするか」を段階別のチェックリストとして整理しました。痛みゼロだけをゴールにするのではなく、プレーに必要な機能とパフォーマンスを取り戻す道筋を、わかりやすく具体的にまとめています。医療機関に行くべきサイン、セルフチェック、ポジション別の注意点、家でできるトレーニングまで幅広くカバー。今日からそのまま使えるチェックシートも用意しました。

はじめに:けがから安全に復帰するために押さえる考え方

復帰の目的設定(痛みゼロではなく機能とパフォーマンスの回復)

復帰のゴールは「痛みがないだけ」では足りません。サッカーでは、止まる・蹴る・走る・ぶつかる・着地する、といった複合動作が求められます。つまり、可動域、筋力、バランス、スピード、方向転換、そしてボールスキルが安全に機能していることが復帰条件です。痛みは指標のひとつに過ぎず、「機能+パフォーマンス」の回復を軸に計画しましょう。

段階的に進めるメリットとリスク管理

  • 段階を分けることで、過負荷による悪化を避けられる
  • 「昨日より今日できること」が見え、モチベーションが保ちやすい
  • 翌日の反応を見ながら微調整できる(腫れ、痛み、疲労)

近年は、軟部組織(筋・腱・靱帯)の初期対応として「PEACE & LOVE(保護・教育・回復を妨げない・圧迫・挙上/負荷・有酸素・血流促進・楽観的な心)」という考え方も知られています。ポイントは「早すぎる負荷はNG、でも適切なタイミングで動きを戻す」です。

医療者・指導者・選手(親)の役割分担

  • 医療者(整形外科・理学療法士など):診断、重症度判定、リハの設計と監督
  • 指導者:練習メニューの段階管理、合流タイミングの調整、安全配慮
  • 選手・親:セルフチェックの実施、痛みや反応の正確な共有、ホームリハの継続

復帰までの全体像:段階設計とゴールイメージ

痛み→可動域→筋力→動作→競技スキル→試合復帰の流れ

  1. 痛み・腫れのコントロール(安静・保護・冷却・圧迫・挙上)
  2. 関節の可動域づくり(痛みの出ない範囲で)
  3. 筋力・体幹・バランスの回復(軽負荷から段階的に)
  4. ラン・アジリティ(直線→加減速→方向転換)
  5. ボールワーク・対人を想定したスキル復帰
  6. 接触プレー→練習フル参加→試合復帰

段階移行の基準と「戻し過ぎ」を防ぐサイン

  • 痛みスケール(0〜10):運動中2/10以下、翌日も増悪なしが目安
  • 腫れ・熱感が翌日に明らかに増えるなら戻し過ぎ
  • 左右差(可動域・片脚テスト)10%以内を目標
  • フォームの乱れ、代償動作(かばい動作)が出たら一段階戻す

チーム練習への合流ステップ(見学→一部参加→全面参加)

  1. 見学+軽い個別ドリル(ボールタッチ、体幹)
  2. ウォームアップのみ合流→パス回し限定参加
  3. ポジショニング練習・非接触のポゼッション参加
  4. ゲーム形式の非接触制限で参加(接触禁止ビブスなど)
  5. 全面参加(接触あり)→試合形式の本数を段階増加

けがの種類と重症度の目安

よくあるサッカーのけが(足関節捻挫、ハムストリング、膝、鼠径部、シンスプリント、腰、肩)

  • 足関節捻挫:内反捻挫が多い。靱帯損傷の程度で復帰時期が変わる
  • ハムストリング肉離れ:再発が多い部位。走行・キックに直結
  • 膝(MCL/LCL、半月板、前十字靱帯など):ロッキングや不安定感は要受診
  • 鼠径部痛(股関節周囲・内転筋):方向転換・キックで悪化しやすい
  • シンスプリント(脛の内側の痛み):過負荷・フォーム・靴の影響
  • 腰痛:反る・捻る動作で痛むことが多い
  • 肩(GKや接触時の打撲・鎖骨周囲):転倒・着地での外傷

重症度の目安と自己判断の限界

  • 軽度(グレードI):軽い痛み、腫れ少、機能低下軽度
  • 中等度(グレードII):明らかな痛み・腫れ、動作制限あり
  • 重度(グレードIII):強い痛み、関節不安定、荷重困難や断裂が疑われる

自己判断には限界があります。特に膝・足首は同じ「捻挫」に見えても重症度が大きく異なることがあります。早期に適切な評価を受けると回復がスムーズです。

医療機関に相談すべきレッドフラッグ(強い腫れ・変形・荷重不可・しびれ・夜間痛など)

  • 明らかな変形、パキッという音+すぐに腫れた
  • 体重をかけられない、または数歩しか歩けない
  • 感覚異常(しびれ・灼熱感)や筋力低下
  • 夜間痛や熱感・発熱が続く
  • 膝のロッキング(引っかかって伸びない)や強い不安定感

初期対応の原則:腫れと痛みをコントロールする

安静・保護・圧迫・挙上・冷却の考え方

  • 保護(Protection):テーピングや装具で過剰な動きを防ぐ
  • 圧迫(Compression):弾性包帯で腫れを抑える
  • 挙上(Elevation):心臓より高く、むくみを軽減
  • 冷却(Ice/Cooling):痛み・腫れのコントロールに。皮膚保護と時間管理(例:15〜20分、間隔を空けて)
  • 安静(Relative rest):完全な不動ではなく、痛みの出ない範囲での微小な動きを許可

痛み止め・テーピング・サポーターの使い方の注意点

  • 鎮痛薬は医療者の指示に従い、痛みを隠して無理をしない
  • テーピングやサポーターは「万能」ではない。正しい装着と段階的な卒業が必要
  • 長期固定は筋力・可動域低下のリスク。固定期間は専門家と相談

初期にやってはいけないこと(無理なストレッチ・早すぎる負荷)

  • 痛みが強いのに伸ばす・揉む・熱を加える
  • ジャンプやダッシュなどの高強度動作
  • 「痛みが消えたから全開」は危険。翌日の反応を見る習慣を

段階別チェックリスト(保存療法の一般例)

以下は一般的な筋・腱・靱帯損傷(手術なし)の目安です。骨折や重度損傷、術後は必ず医療者の指示を優先してください。

0〜72時間:急性期チェックリスト

  • 腫れ・痛みの管理(圧迫・挙上・冷却を適切に)
  • 荷重は痛みの許す範囲。松葉杖の検討
  • 痛みゼロ域での関節の微小運動(足趾や膝伸展屈など)
  • 体幹・上半身の軽いエクササイズで循環維持

ミニドリル例

  • 足首なら足趾グーパー30回×2、アルファベット書き(痛くない範囲)
  • 腹式呼吸+ブレーシング10回×2、シーテッド上半身サーキット

3日〜1週:痛み・腫れの管理と軽い可動域づくり

  • 冷却の頻度を調整しつつ、温冷の切替は症状次第
  • 可動域エクササイズ開始(痛み2/10以下)
  • アイソメトリック(静的収縮)で筋の再活性化

基準

  • 安静時痛が軽減、夜間痛がない
  • 軽い体重支持で痛みが増えない

1〜3週:可動域回復と荷重の再獲得(片脚立ちの基準)

  • 関節可動域の左右差を縮小(10〜20%以内へ)
  • 体重支持の増加、歩行の質改善(びっこ歩きの解消)
  • 片脚立ちを左右30秒×2できるか(痛み2/10以下)

エクササイズ例

  • チューブで足関節/股関節の可動+軽い抵抗
  • ブリッジ、クラムシェル、ヒップヒンジの基本

2〜6週:筋力・体幹・バランスの再構築(段階的レジスタンス)

  • スクワット、ランジ、カーフレイズの段階負荷
  • 片脚系(片脚デッドリフト、片脚スクワットの補助)
  • 不安定面でのバランス(バランスディスク等があれば)

基準

  • 主要筋の筋力が健側の80%目安
  • 片脚スクワット5〜10回、膝の内倒れや骨盤崩れなし

3〜8週:ジョギング再開と直線走の基準(痛みスケールの活用)

  • 平地でのジョグから開始、距離とスピードを段階増加
  • 10〜30-30(10分ジョグ、30秒速歩/30秒ジョグなど)で様子見
  • 直線走80%強度まで。運動中痛み≦2/10、翌日増悪なし

4〜10週:加速・減速・方向転換ドリル(アジリティの安全な戻し方)

  • 加速/減速(10m・20m、ストップのフォーム重視)
  • 方向転換(45°→90°→180°)、コドリル、Tテスト
  • 小刻みのカッティング前に、減速能力を優先して獲得

基準

  • 減速で膝が内に入らない、足元だけで止まらない(体幹と股関節で制動)
  • タイムが主観的ベストの90%程度、痛み≦2/10

6〜12週:ボールワークとサッカー特異的スキルの復帰

  • ドリブル(直線→スラローム)、パス(ショート→ロング)
  • クロス、シュート(無人→GKあり)、トラップ→方向転換
  • 非接触の対人メニュー(2対1、3対1など)

接触プレー復帰前の最終チェックリスト

  • 片脚ホップテスト(前方・左右・クロス):左右差10%以内
  • 片脚カーフレイズ25回以上、疼痛最小
  • Tテストやプロアジリティ(5-10-5)で主観90%以上
  • ディフェンス動作(体の入れ替え、寄せ)で恐怖感がない

試合復帰の合格基準(客観テスト例とセルフ評価)

  • 筋力・バランス・アジリティが健側の90%以上
  • 練習フル参加を2週間継続し、翌日反応の問題なし
  • 恐怖回避思考が低い(「怖さ」0〜10の主観で2以下)
  • ポジション特異的ドリルを痛みなく実施可能

客観テストとセルフチェックのやり方

痛みスケール(0〜10)と翌日反応の確認

  • 運動中の痛み:0(なし)〜10(最悪)で記録。目安は≦2/10
  • 翌日の朝の痛み・腫れ・こわばりを3項目で記録
  • 増悪があれば前日の負荷を20〜30%減らす

片脚スクワット・ドロップジャンプ・バランステストの例

  • 片脚スクワット10回:膝が内側へ入らない、骨盤が水平
  • ドロップジャンプ(台20〜30cmから):着地の静止、膝のブレなし
  • Yバランステスト(簡易):前・後内・後外方向へリーチ、左右差10%以内

タイムベースからクリテリアベースへの切替え

「〇週間だから次へ」ではなく、「基準を満たしたら次へ」。痛み、可動域、筋力、動作、心理の各項目で合格したら段階を進めます。これが再発を減らす近道です。

自主トレ・ホームリハの進め方

1週間のサンプルメニュー(量と強度の上げ方)

  • 月:下肢筋トレ(中強度)+モビリティ
  • 火:ジョグ/バイク(軽中強度)+体幹
  • 水:アジリティ基本(低強度)+ボールタッチ
  • 木:休養 or 上半身サーキット
  • 金:下肢筋トレ(中高強度)+バランス
  • 土:直線走・加減速(中強度)+パス
  • 日:リカバリー(ストレッチ、散歩、睡眠確保)

原則は「週あたりの総負荷増加は10〜20%以内」。痛みや翌日反応で調整します。

家でできるモビリティと補強(足首・股関節・体幹)

  • 足首:ヒールロッカー、カーフレイズ、タオルストレッチ
  • 股関節:90/90モビリティ、ヒップエアプレーン、クラムシェル
  • 体幹:デッドバグ、プランク、サイドプランク、パロフプレス

有酸素を落とさない代替トレ(バイク・上半身サーキット)

  • エアロバイク:RPE(主観的きつさ)4〜6で20〜40分
  • 上半身サーキット:プッシュアップ、ロー、ショルダープレス、30秒オン/30秒オフ×3〜5周
  • ロープスキッピング(許可される場合):両脚→片脚の段階

ポジション別・動作別の注意点

DF:対人・空中戦・着地衝撃の管理

  • 空中戦後の着地ドリル(両脚→片脚)。膝の内側倒れ防止
  • 寄せ→ストップ→体の入れ替えを低強度から反復

SB/WM:反復スプリントと方向転換の戻し方

  • 反復スプリント(RSA)を20〜30mで段階増量
  • 縦→横→斜めのカッティング。減速テクニックを優先

MF:狭い局面のねじり・接触に向けた準備

  • 体幹回旋の安定化(パロフプレス、メディシンボールスロー許可時)
  • 接触ありのポゼッション前に非接触でのキープ練習

FW:シュート動作と急減速の負荷管理

  • シュートは助走短→長、無人→GKありの順で強度調整
  • 裏抜け→急減速→方向転換を短距離で精度重視

GK:ダイビング・投擲・腰のケア

  • 膝肘からの段階的な着地衝撃、短距離ダイブから開始
  • 投擲はワンバウンド→ハイボールと段階的に距離を延ばす

栄養・睡眠・メンタル:回復を早める土台づくり

エネルギー不足を避ける食事設計(タンパク質・鉄・ビタミンDなど)

  • 総エネルギーを十分に。極端な減量は回復を遅らせる
  • タンパク質は1日体重×1.6〜2.2gを目安に分割摂取
  • 鉄・ビタミンD・カルシウムは不足に注意(必要なら医療者に相談)

睡眠スケジュールと日中の回復リズム

  • 7〜9時間の安定した睡眠。就寝・起床時刻を固定
  • 日中の短いアクティブレスト(散歩、軽いストレッチ)

モチベーション維持とチームとのつながり方

  • 週ごとの小目標設定(例:片脚立ち30秒達成)
  • 練習に顔を出す、戦術ミーティングに参加するなど役割を持つ

予防と再発を防ぐルーティン

ウォームアップの定着(例:神経筋ウォームアップ)

  • ジャンプ・着地、方向転換、コア安定を含むプログラム(例:FIFA 11+)
  • 毎回10〜15分、形だけでなく質を重視

練習後のクールダウンと翌日のリカバリー

  • 軽いジョグ→ストレッチ→呼吸で副交感神経優位に
  • 翌朝のセルフチェック(痛み・腫れ・眠気・疲労感)

過密日程・移動・学業ストレスの管理

  • 週内の強度分布を整える(ハードとイージーの波を作る)
  • テスト期間はトレーニング量を意図的に落とす

部活・クラブ・家庭でのサポート

復帰計画の共有と練習参加の段階管理

  • 医療者の所見をもとに、監督・コーチと段階表を共有
  • 「できることリスト」を作り、参加感を保つ

用具の見直し(スパイク、インソール、サポーター)

  • グラウンドに合うソール(スタッド長・配置)を選ぶ
  • 擦れ・ゆるみ・摩耗の点検。必要ならインソールで調整

通院・リハ期間中の役割とコミュニケーション

  • 親やスタッフは「痛みを我慢させない」環境づくり
  • 練習参加の合否は、「基準クリアか」で会話する

よくある失敗とその回避策

痛みの我慢と早期復帰での逆戻り

「試合が近いから」で無理をすると、結局長引きます。痛み≦2/10、翌日反応良好を合言葉に。

下肢ばかりで上半身・体幹をサボる問題

体幹・背筋群の安定が下肢の制動を助けます。上半身サーキットは毎週入れましょう。

量だけ増やして強度を上げない落とし穴

走行距離を伸ばすだけではゲーム強度に耐えられません。減速と方向転換のドリルを早めに組み込むこと。

「良い痛み」と「危険な痛み」の見分け方

  • 良い痛み:筋肉に張り、運動中≦2/10、翌日消える
  • 危険な痛み:鋭い痛み、関節深部の痛み、夜間痛、翌日増悪

コピペで使える段階別チェックシート

毎日のセルフチェック項目

  • 今日の痛み(0〜10):__
  • 腫れ・熱感(なし・少・中・強):__
  • 可動域(左右差の主観%):__
  • 歩行の質(びっこ:なし・少・中・強):__
  • 睡眠時間:__h/疲労感(0〜10):__

週次レビュー項目

  • 片脚立ち30秒(左右):合/否
  • 片脚スクワット10回(フォーム良好):合/否
  • ジョグ20分(翌日増悪なし):合/否
  • 方向転換ドリル(痛み≦2/10):合/否

段階移行の合否基準テンプレート

  • 可動域:左右差10〜15%以内 → 合/否
  • 筋力:主要動作で健側の80%以上 → 合/否
  • 動作:片脚スクワット・着地の安定 → 合/否
  • 主観:怖さ≦2/10、運動中痛み≦2/10、翌日増悪なし → 合/否

よくある質問(FAQ)

復帰までの期間はどのくらいが目安?

けがの種類と重症度で大きく異なります。軽度の足首捻挫で1〜3週、中等度で3〜6週、筋肉の軽い肉離れで2〜4週が一般的な目安ですが、個人差が大きいです。時間ではなく、基準クリアで判断しましょう。

アイシングはいつまで続ける?

初期の痛み・腫れのコントロールに役立つ場合があります。症状が落ち着いてきたら頻度を減らし、必要性をみて切り替えます。皮膚の保護と時間管理(15〜20分)に注意。迷ったら医療者へ。

テーピングとサポーター、どちらを使う?

目的次第です。短時間の固定や動きの制限にはテーピング、日常的なサポートにはサポーターが便利。いずれも「外せる基準」を決め、ずっと頼らないことが大切です。

痛みが少し残るときに練習していい?

運動中の痛みが≦2/10、翌日の増悪がなければ多くの場合は可。痛みが増える、腫れが出る、フォームが崩れる場合は負荷を一段階下げてください。

参考情報と信頼できる情報源

ガイドライン・専門団体へのアクセス方法

用語解説(重症度・クリテリア・主観指標など)

  • 重症度:損傷の程度(グレードI〜IIIなど)
  • クリテリアベース:時間ではなく達成基準で段階を進める考え方
  • 主観指標:痛みスケール、怖さ、疲労感など本人の感じ方

まとめ:復帰は「基準で決める」とうまくいく

サッカーのけが、復帰まで何する?段階別チェックリストのポイントは、焦らず、でも止まりすぎず、基準を満たして一段ずつ上がること。痛み→可動域→筋力→動作→競技スキル→試合、という道筋をたどりながら、毎日のセルフチェックと翌日反応で微調整しましょう。医療者・指導者・選手(親)が役割を分担すれば、再発を防ぎながら最短距離でピッチに戻れます。今日から使えるチェックシートを活用して、自分の復帰計画を「見える化」していきましょう。

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