ワンツー(壁パス、ギブアンドゴー)は、最小のリスクで最大のリターンを狙える連携技です。初心者でも今日から始められ、しかも試合で即効性があるところが魅力。この記事では「サッカーのワンツー練習、初心者でも試合で効く最短メニュー」というテーマで、20分で回せる練習プラン、具体ドリル、成功のコツ、計測方法までを一気通貫でまとめました。道具はボール1個と数本のマーカーがあればOK。ペアがいなくてもできる代替案も用意しています。
目次
- 試合で効くワンツーとは何か:原理と勝ち筋
- 最短で身につく全体設計:ワンツー練習ロードマップ
- ウォームアップ:ワンツーに必要な身体と脳を起動する
- 個人基礎スキルの最短ドリル:ファーストタッチとパスの質
- 2人組のワンツー練習:初心者向けコアメニュー
- 試合で効く最短メニュー:制限付きゲームで落とし込む
- 合図とコミュニケーション:黙っていても通じる仕掛け
- 失敗パターンと修正法:なぜ通らないのかを分解する
- ポジション別の使いどころ:FW・サイド・中盤での活用
- 安全対策とフィジカル:ケガを避ける体の使い方
- 計測と振り返り:上達を見える化する
- よくある質問:初心者の疑問に答える
- まとめ:今日から始める“試合で効く”ワンツー最短メニュー
試合で効くワンツーとは何か:原理と勝ち筋
ワンツーパスの定義とルール上のポイント
ワンツーは、AがBへパス(ワン)、すぐにAが動き直し、Bからのリターン(ツー)を受けて前進する連携です。日本では「壁パス」とも呼ばれます。ルール面で押さえておきたいポイントは次の通りです。
- オフサイド:リターンパスの瞬間にAがオフサイドポジションにいないこと。Aがボールより後ろに残る、もしくは2人目の最終ライン(第2最後方の相手)より後ろ(自陣寄り)にいるようタイミングを調整します。
- 接触プレー:味方を盾に相手をブロックする「動く壁」になりがちですが、相手の進路を不当に妨げるのは反則になり得ます。あくまでボールを扱う中で自然なポジション取りを。
- ハンド:手・腕の不自然な広がりはリスク。特に狭い局面で腕を広げてスペースを作るような動きは避けます。
なぜ初心者でも通用するのか:時間と空間を奪う仕組み
ワンツーが強い理由はシンプルです。ボール保持者に寄せるDFの圧力を、素早いパス交換で逆利用し、背後の空間へ抜け出すから。守備者は「ボール」と「人」を同時に消しづらく、ボールが動いた直後は一瞬重心が遅れます。そこを2人で同時に“時間”と“空間”を奪って突破するのがワンツーの本質。高度なフェイントやスピードがなくても、角度・距離・タイミングが噛み合えば十分通用します。
成功率を上げる3つの要素:角度・距離・タイミング
- 角度:A→Bのパスはまっすぐより“斜め”。理想は30〜60度の入り。DFに対して体の向きを外に出し、縦・内どちらにも走れる角度を作ると読みづらくなります。
- 距離:8〜10mが基準。近すぎるとDFに狙われ、遠すぎるとパス速度が必要になります。初心者は8mから始め、慣れたら10〜12mへ。
- タイミング:返す側はできる限りワンタッチ、最大でも2タッチ。受ける側は渡した瞬間に“先に走る”。パス→走る→受けるの順番を徹底します。
最短で身につく全体設計:ワンツー練習ロードマップ
1週間の習得プラン(1日20分)
- Day1:基礎の徹底(半身の構え、インサイドパス、8m静止ワンツー)
- Day2:角度作り(45度の入り、受ける前の視線、2歩で加速)
- Day3:2対1突破(固定DFで重心ずらし、ワンタッチ制限)
- Day4:スピード×正確さ(タイム設定、通過ゲートで精度UP)
- Day5:3対2サイド突破(タッチ制限、縦抜けと内カットの選択)
- Day6:制限付きミニゲーム(ワンツー加点、片側ゾーン突破ボーナス)
- Day7:計測・動画チェック(成功率、体の向き、パス速度の見直し)
ペアがいない場合はDay1〜2の個人基礎+壁当て、Day3〜6はコーンをDFに見立てて動線を再現します。
1回の練習の流れ(ウォームアップ→基礎→連携→実戦)
- ウォームアップ(4分):方向転換、減速・加速、視線のスキャン
- 基礎(6分):インサイドパス、ファーストタッチの置き所、片足・両足
- 連携(6分):2人ワンツー静止→移動、タッチ制限、角度のバリエーション
- 実戦(4分):2対1 or ミニゲームに条件付与(ワンツーは+1点など)
習得のKPIとチェック方法
- 成功率:8〜10mのワンツーを20本中16本成功(80%)を合格ラインに。
- 時間:パス→リターン→受けまでを2秒以内。メトロノーム的にテンポ良く。
- 精度:返球は受け手の進行方向1m先に置く(足元固定はNG)。ゲート通過率で可視化。
- 動画確認:受ける前の半身・肩の向き、リターンのワンタッチ率、DFに対する角度の作り方。
ウォームアップ:ワンツーに必要な身体と脳を起動する
ボール無しの方向転換と減速・加速
マーカーを5m間隔で3つ。往復で「加速→減速→再加速」を繰り返します。
- ドリル1:5mスプリント→減速ストップ→方向転換(外足で踏んで内側へ)×6本
- ドリル2:加速3歩+細かいステップで減速→2歩で再加速×6本
ポイントは、減速時に腰を落として重心を足元に収めること。ワンツーは「止まる→出る」が速いほど効きます。
ボールタッチ基礎:アウト・インでの体の向き作り
- イン→アウトタッチ往復30秒×3本(利き足/逆足)
- 外足インサイドで内に置き、次の一歩で前に押し出すリズムを作る
タッチの強弱でボールを“置く”感覚を養い、次のパス・走りに繋がる体の向きをキープします。
認知ウォームアップ:視線と合図の習慣化
- 受ける前に肩越しスキャン2回(前方→背後)。
- 味方の足元・スペースを1秒で判断し、コールを1語で出す(例:「壁」「裏」「足」)。
視線→判断→合図を短時間で回す癖が、ワンツーの成功率を底上げします。
個人基礎スキルの最短ドリル:ファーストタッチとパスの質
受ける前の準備:半身の姿勢とスキャン
- 半身:腰と肩をやや開き、アウトサイド側の足で前へ出られる構えに。
- スキャン:ボールが出る前に2回、出た後に1回。DFの位置と背後のスペースを確認。
ファーストタッチの置き所:縦に出すか横に逃がすか
- 縦置き:背後にスペースがある時。触った足と逆足で一歩目を加速。
- 横逃がし:DFが縦を切ってくる時。横へずらしてリターン角を作る。
「止める」のではなく「置く」。触った場所が次のプレーの行き先になります。
試合で効くパススピードと足元/スペースの使い分け
- 対足:相手に寄せられる前、距離が短い時。強いインサイドで膝下へ。
- 対スペース:相手の進行方向1m先。走りやすいボールは“加速を助けるパス”。
- スピード:複数回バウンドしない低く速い弾道。浮かせるのは最後の選択肢。
2人組のワンツー練習:初心者向けコアメニュー
静止からの基本ワンツー(距離8〜10m)
セット:AとBが8〜10m間隔。AがBにパス→Aは縦へ出る→BはワンタッチでAの進行方向へ返す。
- 回数:左右10本ずつ×2セット(合計40本)
- ルール:返球はAの進行方向1m先。Bは必ず体の向きを前へ作ってから返す。
- 評価:成功=Aが加速を落とさず受けられたら1点。
移動しながらのワンツー:角度を作る45度の入り
セット:Aがドリブルで斜めに入り、Bはコーン脇で待機。DF役のコーンをAの前方に設置。
- 手順:Aが斜め45度に接近→Bへパス→Aはコーンの“背中”へ回り込む→Bがワンタッチで縦へ。
- バリエーション:Bは時々ダイレクトで「足元返し」(Aが受けて方向転換)を混ぜて読み合いを作る。
- 回数:左右8本×2セット。
壁当てがわりの一人練習(壁・リバウンダー活用)
- 8mの距離を取り、壁へインサイドパス→跳ね返りをワンタッチで前方へ流しながら走り込む。
- コーンを“DFの背中”に見立てて回り込み、前へ持ち出す。左右交互に。
- 回数:20本×2セット。返球の強さが一定になる距離と力加減を探す。
試合で効く最短メニュー:制限付きゲームで落とし込む
2対1の突破ドリル:ディフェンスの重心をずらす
エリア:10×8m。攻撃2、守備1。攻撃は3タッチ以内、ワンツーでゴールライン通過を狙う。
- コーチング:ボール保持者はDFに“寄せさせてから”パス。受け手は背後へ抜ける。
- 勝ち筋:DFの足が止まった瞬間、リターンの背後へ。ワンタッチ返し徹底。
3対2のサイド突破:タッチ制限でテンポを上げる
エリア:20×15mの縦長。サイドに2m幅のレーンを設定。サイドレーン内は2タッチ以内、中央は3タッチ以内。ワンツーでサイドの奥を取れたら+1点。
- 狙い:縦抜け(ラインブレイク)と内カットの二択でDFを迷わせる。
- ルール:同じ列での横パス連続は3本まで。必ず縦か斜めを混ぜる。
ミニゲームのルール設定:ワンツーに加点する方法
- 加点案:ワンツー起点のシュート=+1点、PA付近のワンツー成功=+1点。
- 制限案:全員2タッチ以内、または受けたら2秒以内にパスorドリブル開始。
- 評価:チームで1試合にワンツー3回以上使用を目標にする。
合図とコミュニケーション:黙っていても通じる仕掛け
視線・手・体の向きで出すサイン
- 視線:返してほしい方向へ一瞬だけチラ見(長く見ない)。
- 手:進行方向へ軽く指差し。大げさに振らない。
- 体:返し側は前足のつま先を返す方向へ向ける(相手に“読ませて”逆も可)。
声かけの言語化:一言コールの作り方
- 「壁」=ワンタッチ返し
- 「裏」=スペースへスルー気味に
- 「足」=足元に強く
- 「待て」=タイミング遅らせ
一言コールは事前に意味を統一。反応速度が上がります。
チーム内で統一するルール例
- ワンツーの返球は基本ダイレクト。難しい時だけ2タッチOK。
- パス出し人は出した瞬間に“走る”。返しを見てからは遅い。
- 返球は進行方向1m先を原則に、DFが背後を切る時だけ足元へ。
失敗パターンと修正法:なぜ通らないのかを分解する
距離が近すぎる・遠すぎる問題の解決
- 近すぎ:DFに同時に挟まれる。最低6m、できれば8mを確保。
- 遠すぎ:球速不足でカットされる。10〜12mで強いインサイドが届くかを基準に調整。
ファーストタッチが流れる/止まる場合の対処
- 流れる:足首が緩い。固定して面を作り、ボールの中心を真ん中で捉える。
- 止まる:置き所が近い。半歩分前に置いて体の前で触れるよう矯正。
DFに読まれる時の角度変更とフェイント
- 角度変更:45度→30度→60度と入りの角度をランダムに。
- フェイント:受け手は足元要求の体で「裏」へ、もしくは肩を落として逆へ。
- 遅らせ:出す側が1タッチ余らせ、DFの重心が戻る瞬間に返す。
ポジション別の使いどころ:FW・サイド・中盤での活用
FWの背負いからのワンツーで裏を取る
FWが背負って足元→落としてくれた味方にワン→縦へ抜けてツー。CBの背後を狙う王道パターン。ポイントは、落としのパス角をほんの少し斜めにしてDFの正面を外すこと。
サイドでの縦抜けワンツーと内側カットイン
- 縦抜け:サイドが内へ運び、SBとワンツーで縦ライン突破。
- 内カット:サイドが縦を見せて内へ、IHとワンツーでPAアーク侵入。
中盤の狭い局面での壁パスと展開
中盤では“壁”を作って方向転換が有効。ボランチ間での壁パス→逆サイド展開や、2列目の足元→落として3人目が受ける“第三の動き”も組み合わせると効果的です。
安全対策とフィジカル:ケガを避ける体の使い方
減速テクニックと接触のいなし方
- 減速は小刻みステップで重心を下げる。ブレーキは膝だけでなく股関節で。
- 接触は正面衝突を避け、肩で軽くいなす。腕は広げない。
足首・膝を守るステップとストレッチ
- 足首:カーフレイズ20回×2、足首回し各方向10回。
- 膝:ハム・臀筋ストレッチ各30秒、サイドランジ10回×2。
練習強度の上げ方と休養の取り方
- まず精度(成功率80%)→次にスピード→最後に接触ありの実戦へ。
- 高強度日は翌日に軽めの回復メニュー(ジョグ、可動域、軽タッチ)。
計測と振り返り:上達を見える化する
成功数と成功率の記録方法
- 静止ワンツー20本中成功数、移動ワンツー16本中成功数を毎回記録。
- 2対1ドリルの突破成功(時間内クリア)を試行回数で割って%化。
動画チェックの観点:体の向きとパススピード
- 半身の角度:受ける瞬間に縦へ出られる向きになっているか。
- リターンの質:受け手が減速せず触れる位置に置けているか。
- テンポ:パス→走る→受けの間に“待ち時間”がないか。
次の練習メニューへのフィードバック
- 成功率70%未満:距離を短く、角度を固定、返球は必ずダイレクトへ。
- 80%以上:DFを追加、タッチ制限、時間制限で負荷を上げる。
よくある質問:初心者の疑問に答える
相手が壁役をしてくれない時は?
壁・リバウンダー・フェンスで代用可能。距離8mを目安に、返球の強さが一定になるポイントを探しましょう。人とやる時は、返すコースを“進行方向1m先”に統一するだけでも壁役の意識が上がります。
足が遅くてもワンツーは通用する?
通用します。必要なのは“最初の2歩の速さ”と“タイミング”。出した瞬間に走ることと、返球が来る場所を先に取ることができれば、直線的な最高速がなくても十分勝てます。
少年サッカーでも同じメニューでいい?
基本は同じでOK。距離を6〜8mに短くし、タッチ数を緩め、成功体験を優先。安全面では減速のフォームを丁寧に指導し、接触を避けた条件で行いましょう。
まとめ:今日から始める“試合で効く”ワンツー最短メニュー
まずは20分の核メニューから
- 4分:方向転換+視線スキャン
- 6分:インサイドパス&ファーストタッチ(置き所の徹底)
- 6分:8〜10mワンツー(静止→移動、ダイレクト返し)
- 4分:2対1または制限付きミニゲーム(ワンツー加点)
試合に持ち込むためのチェックリスト
- 距離は8〜10mを基準に調整しているか
- 渡した瞬間に走れているか(見てから走るはNG)
- 返球は進行方向1m先へ置けているか
- 角度は30〜60度の斜めを作れているか
- 成功率80%以上のメニューを次の負荷へ進めているか
継続のコツ:小さな成功を積む
ワンツーは「正しい反復」で驚くほど早く形になります。動画で1つの改善点だけに絞って修正→翌練習で試す→また撮る。このサイクルが最短ルート。今日の20分が、週末の試合で1本の決定機につながります。まずは8m、ダイレクト返し、出した瞬間に走る。ここから始めましょう。