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サッカー審判のサインの意味と迷わない見分け方
試合中、「いまの旗は何?」「腕を上げっぱなしってどういう意味?」と戸惑った経験、ありませんか。審判のサインは、実はプレーを速く、賢くするためのヒントの塊です。この記事では、公式規則に基づきつつ、実戦で迷わない見分け方をわかりやすく整理します。特に副審(アシスタントレフェリー)の旗サインは、攻守の切り替えに直結する重要サイン。読み違えをゼロにして、プレーの一歩目を速くしましょう。
はじめに:審判サインを理解するとプレーが変わる
サイン理解がもたらす3つのメリット(判断スピード・戦術理解・フェアプレー)
サインを正しく読むだけで、次の3つが確実に伸びます。
- 判断スピード:音と動きの合図を先読みできるため、次の一歩が速くなる。
- 戦術理解:再開方法ごとの「狙いどころ(速攻か、整えて蹴るか)」が明確になる。
- フェアプレー:ルールの共通理解があると、無駄な抗議が減り集中力が保てる。
この記事の読み方と前提(公式規則への準拠と実戦的な解釈)
内容はIFAB競技規則(最新年度版)をベースに、一般的な大会運用を踏まえた実戦的な解釈を加えています。主審・副審・第4の審判員・VARがどう連携するか、そしてプレーヤーが何を見れば迷わないかに焦点を当てています。地域・大会による細かな運用差はあり得るため、出場大会の要項は必ず確認してください。
審判チームの役割と視野を押さえる
主審の責任範囲とサインの原則(合図→再開の手順)
主審は試合全体の管理者。基本は「笛で止める→サインで内容と方向を示す→再開を許可」の順です。再開合図に笛が必要な場合(例:ペナルティキック、カード提示後、壁の管理を伴うフリーキックなど)と、不要な場合(多くのスローイン・ゴールキック・コーナーキックなど)があり、これを見分けられると動き出しが変わります。
副審(アシスタントレフェリー)の役割と観るライン
副審は主にオフサイドの判断(最後尾の守備ラインと同一線)、ボールの出入り、スローイン・ゴールキック・コーナーキックの方向、近くの反則の通報を担当します。旗サインは「情報提供」であり、最終決定は主審です。副審は“待って見極める”テクニックを使うため、旗は遅れて上がることがあります。
第4の審判員とVARが関わる場面の基礎
第4の審判員は交代手続きやテクニカルエリアの管理、表示板によるアディショナルタイムの掲示などを担当。VAR導入試合では、明白で重大な誤審や見逃し(ゴール、PK、直接退場、選手誤認)に限って介入し、主審はテレビの枠を描くサインでオンフィールドレビューを示します。
サインの基本ルールと見る順番
笛・腕・旗の優先順位(音→主審→副審)
迷ったらこの順で確認しましょう。
- 音(笛)…止まる・続けるの最優先合図。笛が鳴るまでプレーをやめない。
- 主審のサイン…反則の種類、再開方法、方向を示す“公式”。
- 副審の旗…主審の判断を助ける情報。旗が上がっても笛が無ければ続行が基本。
再開合図とボールがインプレーになる条件
- キックオフ/フリーキック/コーナーキック:ボールが「蹴られて明確に動いた」瞬間にインプレー。
- ゴールキック:相手はペナルティエリア外に退き、ボールが蹴られて明確に動いたらインプレー。
- スローイン:ボールがフィールド内に入ったらインプレー。
- ペナルティキック:主審の笛後、ボールが前方へ明確に動いたらインプレー。
- ドロップボール:ボールが地面に触れたらインプレー。
逆サイドでも迷わないための視線の配り方と位置取り
常に「ボール→主審→近い副審」の順で3点チェック。ボールが逆サイドに流れたら、視線だけでなく半身の向きを変え、遠い副審の旗も視界に入る角度を作りましょう。セットプレーでは主審の位置(壁管理か、クイック許可か)を見て、次の動きを先回りします。
主審のサイン徹底ガイド
直接フリーキックのサイン(片腕で進行方向を指示)
反則が直接FKに該当するとき、主審は腕を水平に伸ばして攻撃方向を指し示します。ファウルの種類まで示す専用サインは基本ありませんが、強度や場所(ペナルティエリア内外)で再開が変わります。
間接フリーキックのサイン(腕を上げ続ける理由)
間接FKは、主審が腕を頭上に上げたままにして「直接シュートは得点にならない」ことを知らせます。ボールが他の選手に触れるか、アウトオブプレーになるまで腕は上げ続けます。直接ゴールに入った場合は得点になりません。
ペナルティキックの指示とペナルティエリア内外の扱い
直接FKファウルが守備側のペナルティエリア内で起きればPK。主審はペナルティマークを指し示し、再開は笛の合図が必要です。間接FKファウル(危険な方法のプレー、GKの6秒超過など)はエリア内でも「間接FK」で、PKにはなりません。
アドバンテージ(プレーオン)のサインと適用の考え方
主審が両腕を前方にスイープする動作が「プレーオン」。有利を継続すると判断した合図です。数秒内に有利が消えた場合は元の反則に戻すことがあります。選手は笛が鳴るまで集中を切らさないことが重要です。
ドロップボールの手順と再開位置
ボールが審判員に当たって有利不利が大きく変わる、外的要因が入った、などの際に実施。原則は、最後にボールに触れていた側へその地点でドロップ(ペナルティエリア内なら守備側GKへ)。他の選手は4.5m以上離れます。ボールが地面に触れた瞬間にインプレーです。
カード提示(警告・退場)とその後の再開方法
カードは個人の懲戒であり、再開方法は「止めた原因」によって決まります。反則を罰するために止めたならFK/PK。プレーと無関係の理由(言動など)で止めたならドロップボール。カード後の再開は主審の笛で統一されることが多いです。
ゴールの認定とセンターサークル指示
主審がセンターサークルを指し示せば得点認定。副審はタッチライン沿いをハーフウェー方向に走り出して合図します。オフサイドやファウルが疑われる場合は、主審と副審が短く協議することがあります。
アディショナルタイム表示と時計管理のポイント
第4の審判員が掲示する数字は「最低〇分」。治療やVAR、交代、遅延などでさらに延びることがあります。選手は掲示時間で「終わる」と思い込まず、笛が鳴るまでプレー継続が鉄則です。
副審の旗サイン完全版
オフサイドの旗サイン:位置の示し方(上・中・下)と流れ
副審は「関与が確定」してから旗を真上に上げ、主審とアイコンタクト。その後、反則の発生位置を旗の高さで示します(副審から見て)。
- 上(頭の高さ付近):遠いサイド
- 中(胸の高さ):中央
- 下(腰の高さ):近いサイド
主審が笛を吹いたら、主審は間接FKのサイン(腕上げ)と守備側の方向を示します。VAR導入試合では明確な得点機会では「遅らせ旗」が増えます。選手は旗が上がる前でも笛が鳴るまで続けるのが基本です。
スローイン方向の指示(最後に触れた選手の判定)
ボールがタッチラインを完全に越えたらスローイン。副審は旗を進行方向に真っ直ぐ指し示します。微妙なときほど副審は落ち着いて一拍置いてから示すので、選手も合わせて冷静に。
コーナーキック/ゴールキックの見分け方(旗の角度と指し示す先)
- コーナーキック:旗を下に向け、コーナーアークを指すように示す(45度下げるイメージ)。副審はコーナー近くの位置に素早く移動。
- ゴールキック:旗をピッチ内側へ水平気味に向け、ゴールエリア方向を示す。
「角度=再開場所」と覚えると迷いません。
ファウル・反則の通報:主審とのアイコンタクトと合図
副審の近くで主審の死角の反則があれば、旗を垂直に上げてから軽く振って注意を促し、犯行方向を指し示します。主審がプレーオンを適用する可能性もあるため、旗を上げてもすぐには止まらないこと。
ボールが外に出た判定(タッチライン/ゴールライン)
ボール全体がラインを完全に越えたらアウト。副審は身体の向きと旗で「どちらのボールか」を明確に示します。ゴールライン際の判断では、コーナーかゴールキックかを即座に旗の方向で伝達します。
ゴールの確認と微妙な得点機会のサポート
ゴールの成否(ボールが完全にゴールラインを越えたか)を主審に知らせるのも副審の役割。ゴールと判断したら素早くハーフウェー方向へ移動し続けます。微妙な場面では接触やオフサイドの有無など、短い情報共有が行われます。
交代やテクニカルエリア関連の支援(大会運用による違い)
第4の審判員がいない試合では、副審が交代希望を主審へ伝えることがあります(旗を上げる、声で合図など運用差あり)。ベンチの振る舞いは主審が管理しますが、副審も情報提供で支援します。
試合で迷わない見分け方の実践テクニック
オフサイドは「旗の高さ→方向→主審の腕」の順で確認
高さで反則位置、旗の向きで守備方向、主審の腕上げで「間接FK」を確認。この3点が揃えば、すばやく守備ブロックをセットできます。
ゴールキックかコーナーキックかを旗の角度で即判断
下向き(コーナー)か、水平(ゴールキック)か。ボールを拾いに行く動線も変わるため、最短で動く癖をつけましょう。
直接か間接かは主審の腕の上げ下げで判別する
腕上げ=間接FK。下げて方向のみ=直接FK。ハーフウェー付近のセットプレーでは特に見落としがちなので要チェックです。
アドバンテージ適用後の反則処置を見失わないために
プレーが切れた瞬間にカードや警告が出ることがあります。「さっきの接触に対する処置だな」と理解し、余計な抗議で集中を切らないこと。主審は可能な限り次の再開前に説明を試みます。
セットプレー時の主審の位置取りから意図を読む
壁の人数を整え、手に笛を構えていれば“笛での再開”。選手が準備OKで主審が干渉していなければ“クイック可”のサイン。キッカーと目線が合えば合図のタイミングが取りやすいです。
よくある勘違いと誤審に見える場面
オフサイドと意図的なバックパス(間接FK)の取り違え
オフサイドは「攻撃側の位置と関与」の反則。バックパスは「守備側の故意のキックをGKが手で扱う」反則で、どちらも間接FKですが内容は別物。副審の旗(位置の高低)と主審の説明で整理しましょう。
ハンドの適用基準とサインだけでは伝わらない事情
「手や腕で不当に優位になったか」「腕の位置が不自然に大きくなっていたか」などを総合判断します。サイン自体は共通ですが、状況説明は試合後になりがち。感情的にならず次のプレーに備える方が得です。
ファウルアピールと副審の沈黙の意味(プレーオンの可能性)
副審が旗を上げないのは「見ていない」だけでなく、「有利継続」や「主審が近くで見て判断した」ケースも多いです。最終的には主審の笛が基準です。
笛が鳴っていないのに止まってしまう癖への対策
旗や相手の声に反応して止まるのは損。練習から「笛までプレー」を合言葉に徹底すると、公式戦でも迷いが減ります。
ジュニア・アマチュアでの運用差を理解する
少年・育成年代では簡略化されるサインとその理由
審判人数が限られ、サインが簡略化されることがあります。子どもに伝えたいのは「止まらない・聞く・見る」の基本。旗よりも笛を最優先にする習慣をつけましょう。
地域大会でのレフェリング差とコミュニケーションの工夫
運用差はゼロにはなりません。主審の基準を早い時間帯で観察し、キャプテンやキッカーが短く確認するだけで混乱は減らせます。
観戦・指導で子どもに伝えたい『止まらない・聞く・見る』
観客席からの指示よりも、選手自身の観察と判断を尊重。誤解を広げないためにも、判定への感情的な反応は抑え、次のプレーに目を向ける姿勢を共有しましょう。
最新ルール更新への追随方法
IFAB競技規則の確認方法と年度版の扱い
競技規則は毎年更新され、適用開始時期が明記されます。最新年度版を確認して、「いつからの試合に適用か」を把握しましょう。
国内連盟通達・大会要項の読み方
国内では連盟や大会が補足通達を出すことがあります。試合形式(VARの有無、交代枠、給水タイムなど)も要項で確認を。
サインや運用が年度またぎで変わる可能性への備え
再開条件や位置取りが微調整される年もあります。プレシーズンに一度、チームでアップデートの共有をおすすめします。
試合前におさえるチェックリスト
チーム内で共有したい合図の優先順位と合言葉
- 優先順位:「笛→主審→副審」
- 合言葉:「笛まで」「旗見て」「間接(腕上げ)!」
セットプレーのリスタート合図の確認(主審との呼吸)
キッカーとリスタート役(ショート、ニア・ファー担当)が「笛あり/なし」を一言で確認。主審の位置とホイッスルの有無を全員が見られる配置を取ると良いです。
ベンチワークと第4の審判員へのリスペクト行動
交代は速やかに、ボードの表示をよく見る。アディショナルタイムは最低分である点を共有。審判チームへのリスペクトは自分たちのプレー機会を守ることにもつながります。
まとめ:サインが読めればプレーが一歩速くなる
1試合で実践するミニ課題(見る順番・声かけ・再確認)
- 前半前:チーム内で「笛→主審→副審」を声出し共有。
- 前半中:セットプレーで主審の腕(直接/間接)を必ず一人がコール。
- 後半:オフサイドは「旗の高さ→方向→主審の腕」を3秒で確認。
- 試合後:迷ったサインを1つだけ振り返り、次戦へメモ。
次に読むべき関連テーマ(反則の種類・VARの基礎)
サイン理解は入り口です。直接/間接FKの具体的な反則、ハンドの判断基準、VARの介入条件を押さえると、試合の全体像がよりクリアになります。
よくある質問(FAQ)
副審の旗が一度上がってから下がったのはなぜ?
「待って見極める」運用や、主審との確認で再評価された可能性があります。VAR導入試合では、明確な得点機会で意図的に旗を遅らせることも。最終的には主審の笛が基準です。
主審が腕を下ろすタイミングの意味は?
間接FKで腕を上げていた場合、ボールが他の選手に触れた、またはアウトオブプレーになった時点で腕を下ろします。つまり「直接得点不可」状態が解除された合図です。
VARが入るとサインの出し方はどう変わる?
副審は得点機会でオフサイド旗を遅らせることが増え、主審はレビュー時に四角形(モニター)を描くサインを出します。最終決定は主審で、ピッチ上のサインはこれまで通り基本に忠実です。
あとがき
審判のサインは、プレーヤーに「次の最短ルート」を教えてくれる共通言語です。特に副審の旗は、守備のラインアップや速攻の起点を決める重要なコンパス。今日から「笛→主審→副審」を合言葉に、サインを味方につけてプレーを一歩速く、賢くしていきましょう。最新の競技規則と大会要項の確認も、習慣にしておくと安心です。