交代のルールを正しく理解しておくと、試合運営のミスを防げるだけでなく、試合の流れを変える一手が打ちやすくなります。本記事では「サッカー交代ルール早わかり|回数・手順・再出場の可否」をテーマに、回数や交代機会(ウィンドウ)、手順、ゴールキーパー特則、延長戦や脳振盪対応など、知っておきたいポイントを一気に整理します。難しい専門用語はできるだけ平易に説明しますので、公式大会はもちろん、学生・アマチュアの現場に携わる方にも役立つはずです。
目次
交代ルールの全体像を30秒で
この記事の使い方
まず「結論の先出し」で概要をつかみ、その後は気になる見出しから読み進めてください。用語の整理→回数の標準と例外→具体的な手順→タイミング→再出場の可否→GK特則→カードと交代の関係→戦術活用→FAQ→チェックリスト、という流れです。大会ごとの細かい違いもあるため、最終的には出場する大会規程を必ず確認する前提でご活用ください。
結論の先出し:回数・機会・再出場の原則
- 回数(交代枠):トップレベルでは「最大5人」が主流(ただし大会規程に従う)。
- 機会(交代ウィンドウ):前後半の合計で「最大3回」(ハーフタイムはノーカウント)。
- 延長戦:多くの大会で「交代機会が1回追加」。ハーフタイム扱いの休憩(90分→延長前、延長前半→後半)もノーカウント。
- 再出場:交代で退いた選手は原則「再出場不可」。例外は大会規程で明記がある場合(少年・アマチュアなど)。
- 脳振盪疑い:一部大会で「追加の交代」が認められる試験的運用。実施有無は大会規程次第。
基本用語・考え方の整理
「交代枠」と「交代機会(ウィンドウ)」の違い
混同されやすいポイントです。
- 交代枠(人数):その試合で入れ替え可能な選手の合計人数。例:最大5人。
- 交代機会(ウィンドウ):プレーが止まって実際に交代を行える「回数」。例:前後半合計で3回。
1回の交代機会で複数人を同時に交代できます。つまり「5人を3回で使い切る」イメージです。ハーフタイム(および延長前、延長HT)は交代しても機会にカウントされません。
交代要員・控え選手・スタッフの役割
- 交代要員(控え選手):メンバー表に記載された選手。出場前でも警告・退場の対象です。
- スタッフ:交代申請や用具チェックの補助、交代ボード表示、選手への伝達・戦術確認などを担います。
- 第4の審判員:交代手続きの窓口。いない場合は主審・副審が対応します。
大会規程と競技規則の関係を理解する
国際的な基準は「競技規則(IFAB Laws of the Game)」ですが、具体的な交代人数や試験運用(脳振盪など)は「大会規程」で上書きされます。疑問があれば、競技規則をベースにしつつ、最終判断は大会規程を優先してください。
交代できる回数の標準と例外
一般的なトップカテゴリ:最大5人・交代機会は3回が主流
現在、多くのトップカテゴリでは「最大5人」「前後半で3回の交代機会」が主流です。交代を使うたびに機会を1つ消費しますが、同時に2人・3人と入れ替えても消費は1回です。ハーフタイムの交代は機会に含まれません。
延長戦の扱い:機会の追加とハーフタイム扱いの例外
- 交代機会:延長戦では多くの大会で「交代機会が1回追加」されます。
- ハーフタイム扱い:90分終了→延長開始前、延長前半→後半の休憩での交代は機会に数えません。
- 交代人数:延長戦だからといって交代可能人数(例:5人)が増えるとは限りません。人数が増えるかどうかは大会規程次第です。
脳振盪が疑われる場合の追加交代(大会の試験的運用)
一部大会では、脳振盪が疑われる選手を「追加の交代枠」で交代できる試験的運用が実施されています。共通するポイントは以下です。
- 追加交代は「別枠」。通常の交代人数とは別に使えることが多い(大会方式による)。
- 交代は「永久的」。疑いのある選手は試合に戻れません。
- 対戦相手にも追加の交代機会や交代枠が付与される方式が採用される場合があります。
脳振盪対応の有無や方式は必ず大会規程で確認してください。
少年・学生・アマチュア大会の独自ルール(無制限・再出場可など)
育成年代や地域リーグでは、選手保護や参加機会確保の観点から「交代無制限」「再出場可(ローリングサブ)」など独自ルールが採用されることがあります。これは各大会ごとに幅があるため、事前確認が必須です。
交代の手順と流れ
交代の申請:誰がいつ、誰に伝えるか
- 交代を希望するチームは、ボールがアウトオブプレーになったタイミングで第4の審判員(不在なら主審・副審)に申請します。
- 申請時には、入る選手の準備(用具の適合・ビブス外し)と、出る選手の背番号を明確にします。
- 交代ボードで番号が表示され、主審の合図があって初めて交代に進めます。
入退場の順序:先に出てから、主審の合図で入る
- 原則、出る選手が先にフィールド外へ。
- その後、主審の合図で入る選手がピッチに入ります。
- 合図前に入ると反則となり、警告の対象になることがあります。
最も近い境界線からの退出の原則と例外
交代で退く選手は、原則として最も近いタッチラインまたはゴールラインから退出します。これにより不要な遅延を防ぎます。次の場合は主審の判断で例外が認められます。
- 安全上の配慮が必要な場所(相手サポーター席付近など)
- 負傷・出血でスタッフの介助やストレッチャーが必要な場合
- その他、試合運営上の安全・秩序維持の観点で主審が指示する場合
用具チェック・背番号表示・記録のポイント
- 用具(スパイク、すね当て、ユニフォーム、アクセサリーの有無など)は必ずチェック。
- 背番号の表示で入退場を明確化。記録係(第4の審判員)が公式記録に反映します。
- 交代選手はビブスを外し、すぐにプレー可能な状態で待機しておくとスムーズです。
交代が成立する瞬間と選手のステータス
- 主審の合図後、入る選手が「ピッチに入った瞬間」に交代成立。
- その瞬間から、新しい選手は「競技者(プレーヤー)」、退いた選手は「交代された競技者」となります。
- 退いた選手は原則として試合に戻れません(再出場不可)。
交代できるタイミング(いつ可能か)
原則:あらゆるプレーストップで可能
スローイン、ゴールキック、コーナーキック、フリーキック、得点後、ファウルなど、プレーが止まったタイミングであれば交代可能です。相手チームのリスタートでも交代自体は認められます(審判の許可が必要)。
ハーフタイム等は交代機会に数えない
- 前半→後半のハーフタイム
- 90分→延長戦開始前の休憩
- 延長前半→延長後半の休憩
これらは交代機会に数えません。交代を計画的に使う上で重要な節目です。
クーリングブレイク/飲水タイムの扱い
気温・湿度が高い環境では飲水タイム(短時間)やクーリングブレイク(やや長め)が設けられることがあります。原則として、そこで交代を行えば「交代機会を1回消費」します。ただし扱いは大会規程に委ねられる部分があるため、事前確認をおすすめします。
アディショナルタイム中の交代は可能か
可能です。アディショナルタイム中でも、プレーが止まっていれば交代できます。時間稼ぎ目的の過度な遅延は警告の対象になり、追加のアディショナルタイムが加算されることがあります。
再出場はできる?できない?
原則:交代で退いた選手の再出場は不可
競技規則の原則では、一度交代で退いた選手は同じ試合に再び出場できません。これは戦術・体調に関係なく共通です。
例外:大会規程で再出場可とするケース
育成年代やアマチュアでは、出場機会の確保や熱中症対策などの観点から「再出場可(ローリングサブ)」を採用する大会もあります。例外はあくまで大会規程によります。
治療・用具・出血対応による一時退場と復帰の違い
- 治療や用具不備、出血対応などで一時的にフィールド外に出るのは「交代」ではありません。
- 主審の許可を得て、プレーの妨げにならないタイミングで再入場できます。
- これらは交代枠や交代機会には影響しません。
ゴールキーパーに関する特則
フィールドプレーヤーとのポジション交換(交代ではない)
GKとフィールドプレーヤーは、試合中のプレーストップ時に主審へ申告すればポジションを交換できます。これは「交代」ではないため交代枠を使いません。ただし、ユニフォーム(色)と用具はGKの規定に適合させる必要があります。
GKを交代する場合の手順と注意点
- 通常の交代手順に従います。特別な追加ウィンドウはありません。
- 機会を使い切っている場合は、ハーフタイムや延長の休憩まで待つ必要があります(大会規程に特段の定めがない限り)。
- PKの場面でも、試合中の通常のペナルティーキックであれば、交代枠・機会の範囲内でGK交代は可能です。
GK負傷・退場時のリスク管理と選択肢
- 負傷でプレー不能になっても追加の交代機会は付与されません。交代枠・機会の残りを計算して判断を。
- GKが退場になった場合、フィールドプレーヤーがGK用具を着用して務めるか、交代枠があればGKを出場させます。退場者は交代で補充できません。
退場・警告と交代枠の関係
退場者は交代で補充できない
赤紙(退場)を受けた選手は試合に戻れず、人数は1人減ったままです。これは交代枠とは関係なく適用されます。
出場前の控え選手が退場/警告を受けた場合
- 控え選手でも不正行為があれば警告・退場の対象です。
- 退場となった控え選手は出場できません。ベンチ人数は減りますが、フィールドの11人は維持可能です。
- 控え選手が警告を受けても、出場自体は可能です(警告は記録されます)。
不正入場・交代手続き違反が起きたときの対応
- 主審の許可なくフィールドに入った場合、原則として警告対象。プレーが止められ、相手に間接フリーキックで再開されることがあります。
- 交代ボードの表示や番号の誤りなど手続きミスは、第4の審判員と即時に是正します。
- 故意の遅延が認められると警告やアディショナルタイムの追加につながります。
試合運営と戦術から見た交代の使い方
強度管理と怪我予防のための計画的交代
- 走行量が多いポジション(SB、WG、IHなど)は、後半の特定タイミングでの交代を事前に設計。
- 猛暑日はクーリングブレイクを活かし、交代機会を無駄にしない段取りを共有。
- 筋疲労の兆候(スプリント回数の低下、戻りの遅れ)をスタッフ間の合図で可視化。
流れを変える交代・相手へのミスマッチ作り
- 相手のSBが警告持ちなら、スピード型をぶつけて仕掛け回数を増やす。
- ターゲットマン投入でロングボールの回収率を上げ、セカンドボールの出発点を前に。
- 中盤の枚数を増やしてビルドアップの出口を変える、など構造そのものを動かす選択。
時間管理とゲームテンポのコントロール
- リード時は「ボール外の停止」で交代してリズムを切る。ただし遅延のしすぎは警告リスク。
- ビハインド時はハーフタイムや延長の休憩で交代し、機会を節約しつつテンポを維持。
延長戦・PK戦を見据えた交代設計
- 延長で機会が増える前提を踏まえ、90分内では機会を使い切らない設計も有効。
- PKが想定される場合はキッカー適性・GKの傾向(反応・コース読み)も人選に反映。
- GKの負傷リスクや痙攣対策として、終盤まで1枠残す判断も現実的です。
よくある質問(FAQ)
相手の交代に合わせて同時に交代できる?
できます。プレーが止まっていて主審が許可すれば、相手の交代と同時に自チームも交代可能です。
1回の交代機会で複数人を同時に交代できる?
はい。2人でも3人でも同時に交代できます。消費する交代機会は1回です。
ベンチ入り可能人数と交代可能人数の違いは?
ベンチ入り可能人数(メンバー表に記載できる控え選手の人数)と、実際に試合で交代できる人数(交代枠)は別です。多くの大会でベンチ入りは多めでも、交代枠は最大5人などに制限されています。
交代で遅延行為と見なされるのはどんなとき?
- 意図的に歩いて退出するなど、明らかな時間稼ぎ。
- 合図前にフィールドインしてやり直しを誘発する行為。
- 用具不備で再チェックを繰り返すなどの不適切な準備不足。
これらは警告やアディショナルタイムの上乗せにつながります。
オフサイド・PKの判定中にも交代できる?
VARの確認や判定協議でプレーが止まっている間も、主審の許可があれば交代可能です。通常のペナルティーキック(試合中)の前にも交代はできますが、手続きに時間がかかりすぎると遅延と判断されることがあります。なお、試合終了後のPK方式(Kicks from the Penalty Mark)では、原則としてその時点でフィールドにいる選手のみ参加でき、交代は制限されます(大会規程を確認)。
まとめ:今日から迷わないチェックリスト
試合前に確認すべき大会規程の項目
- 交代可能人数(例:最大5人)と交代機会(例:3回+延長で1回)
- 延長戦で交代枠が増えるかどうか
- 脳振盪の追加交代の有無と方式
- 飲水・クーリングブレイクでの交代機会の扱い
- 再出場(ローリングサブ)の可否(育成年代など)
ベンチ内での連携フロー(選手・スタッフ)
- 交代候補とタイミングの事前共有(体力指標・スコア状況・カード状況)
- 用具チェック担当と第4の審判員への申請役を明確化
- 退出ルート(最寄り境界線)と合図の徹底
終盤の交代運用ミスを防ぐ要点
- 機会の残数を常時ボードやメモで可視化
- 延長を見越して「枠」と「機会」を別管理
- 時間稼ぎと見なされないスムーズな退出・入場
- GKの想定外(負傷・退場)に備えた代替案の準備
後書き
交代は「誰を替えるか」だけでなく、「いつ」「どうやって」行うかが勝敗を左右します。交代枠と交代機会の違い、ハーフタイムや延長の扱い、再出場の原則、そして脳振盪など安全面の最新動向まで把握しておくことで、判断の迷いが減り、試合運びに余裕が生まれます。最後は必ず出場大会の規程に合わせて最終確認を。今日の試合から、無駄のない交代でチームの力を最大化していきましょう。