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サッカーの視野の広げ方は親子で楽しく顔上げ練習

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はじめに

「顔を上げて周りを見る」——これだけでプレーはがらりと変わります。とはいえ、いざ練習しようとすると、ボールを見てしまいがちだったり、家だとスペースが足りなかったりしますよね。この記事では、サッカーの視野の広げ方は親子で楽しく顔上げ練習、をテーマに、狭い場所でも公園でもできる実践的なドリルをまとめました。短時間・ゲーム化・安全設計をキーワードに、今日からすぐ始められる内容だけを厳選。上手い子ほどやっている“スキャン(首振りで情報を取る)”を親子で習慣化して、試合での一瞬の判断力につなげましょう。

顔上げ=視野拡大の第一歩

顔を上げると何が変わるか(認知・判断・実行の連携)

プレーは「認知→判断→実行」の流れで進みます。顔を上げる回数が増えると、周囲の“絵”が増えて認知がクリアになります。結果として、判断が速くなり、実行(キックやドリブル)の質が上がりやすくなります。例えば、同じトラップでも、受ける前に空いているスペースと相手の距離を認知できていれば、体の向きや一歩目が自然と前向きになります。これは技術を魔法のように上げるものではありませんが、今ある技術が出やすくなる効果が期待できます。

スキャンとは何か(首振りと情報取得の違い)

スキャンは“首を振ること”ではなく“情報を取ること”。首を振ったのに情報が入っていないケースはよくあります。ポイントは以下の3つです。

  • 見る場所を決める(相手・味方・スペース)
  • 意味のある情報を拾う(距離、角度、空き)
  • 短く覚えておく(2〜3秒保持)

つまり、首振り=動作、スキャン=目的のある観察。親子練習では「何を見たか」を言葉にするだけで、ただの首振りがスキャンに変わります。

試合でのタイミング(受ける前・受けた直後・運ぶ最中)

  • 受ける前:2回見るのが基本。1回目は広く、2回目は細かく(距離や角度)。
  • 受けた直後:最短で前を向けるか、戻すのがベターかを一瞬で判断。
  • 運ぶ最中:1〜2タッチごとに周辺視とスキャンを組み合わせる。長く見ない、短く頻度高く。

タイミングを固定すると、練習から試合への橋渡しがスムーズになります。

親子練習に落とし込む3つのポイント(短時間・ゲーム化・明確な合図)

  • 短時間:1ドリル1〜3分。集中を切らさない。
  • ゲーム化:得点・制限時間・ランキングで楽しむ。
  • 明確な合図:言葉・色・手の合図を使い分け。合図は1回で短く。

親子で進める基本ルールと安全設計

スペースと安全確保(家具・段差・照明のチェック)

  • 床:滑りやすい箇所、段差、コード類の撤去。
  • 壁・家具:角を避け、割れ物や倒れやすい物を移動。
  • 照明:逆光で色が見えにくくならない配置を確認。
  • ボール:小さめ・柔らかめ(スポンジや軽量ボール)を優先。

声かけの型:短く具体的に(名詞+動詞+方向)

合図は「名詞+動詞+方向」が鉄則。例:「右・出す」「赤・通る」「裏・見る」。説明は練習前にまとめて行い、プレー中は合図のみ。迷いが減り、顔上げに集中できます。

距離・スピード・情報量の三段階で負荷調整

  • 距離:近い→中→遠い(2m→5m→8m)
  • スピード:歩き→早歩き→ジョグ
  • 情報量:1つ→2つ→複合(色だけ→色+数字→色+数字+方向)

一度に上げるのは1要素まで。崩れたら一段階戻すのがコツです。

ほめ方と振り返り(事実→良かった点→次の1つ)

例:「今、受ける前に2回見られた(事実)。だから前を向けたね(良かった点)。次は受けた直後にも1回見よう(次の1つ)。」事実を先に言うと納得感が上がります。

ウォームアップ:目・首・体幹を整える30秒ルーティン

首の可動域リセット(左右・上下・斜め)

左右→上下→斜めを各7秒、計21秒。力を抜き、痛みのない範囲で。首が動くと視野が一気に広がります。

目の追従と周辺視活性(親指追い+視野端チェック)

指を20〜30cm前に出し、左右にゆっくり動かして眼だけで追う7秒。次に正面を見たまま、左右の視野端で親の手の上下を当てる7秒。動かすのは眼、顔は固定がポイント。

前庭系を整える軽い回転とステップ

その場でゆっくり1回転→前後サイドの軽いステップを7秒。目線は胸より上、呼吸を止めない。酔いやすい場合は回転を省略。

姿勢セット(胸を開く・骨盤の位置)

足は肩幅、軽く膝を緩め、骨盤を立てるイメージで胸を開く。つま先と膝の向きをそろえ7秒キープ。これで顔上げしやすい“土台”が完成します。

家の中・狭いスペースでできる顔上げドリル

ナンバーコール・タップ(視線は前・足元は触覚)

やり方:

  1. 子はつま先でボールを小刻みにタップ(トータップ)。
  2. 親は1〜4の数字をコール。子は顔を上げて、言われた回数だけタップ数を増減(例:3と言われたら3回素早く)。

ポイント:目線は胸より上。足元は“触覚”で触る意識。30秒×3セット。

カラーカード・スキャン(左右→前→決定)

やり方:

  1. 親が左右の手に色カードを持ち、前にも1枚置く。
  2. 子は左右→前の順に首だけでスキャンして色を確認。
  3. 親が「左の色!」など合図、子は言い当ててからタップを3回速く。

ポイント:首の順番を固定(左右→前)。合図は短く。30秒×2。

片足バランス+視野キュー(安定しながら情報取得)

やり方:片足立ちでボールを足裏に軽く乗せ、親は数字or色を静かに提示。子は声に反応して答える。左右各20秒。

狙い:動きながらも視点をブラさない練習。難しければ壁に指先を触れてOK。

チェックオーバー習慣化(2秒に1回の首振り)

やり方:その場で軽くタップしながら、タイマーの音に合わせて2秒に1回、左右をチラ見。親は時々、手で数を示し、見えた数を答えさせる。30秒×2。

ボールタッチと同時に顔を上げる基本ドリル

トータップ+コール(音への反応で顔上げ)

やり方:タップ中に親が「赤」「右」「3」など1語コール。子は顔を上げたまま返答し、言われた回数だけタップを速くする。

狙い:音からの意思決定。30秒×3、合図は1語限定。

インアウト・ドリブル+視線制限(目線は胸より上)

やり方:イン→アウトの交互タッチで1mの往復。目線は胸より上に固定。親は色カードを胸の高さに掲げ、色を言わせる。

ポイント:足元は見ないで触る距離感を作る。20秒×3往復。

スクリーンドリブル(TVや窓枠を視点基準に)

やり方:正面に“画面”となる基準(TVや窓枠)を設定し、常にそこを視線の帰る場所にしてドリブル。親は画面外で手の数サイン。子は画面→周辺→画面の順で視線を往復し、見えた指の数を言う。

狙い:視線のアンカーを作ると、ブレにくくなります。30秒×2。

逆視点ドリブル(見ないで触る距離感づくり)

やり方:目線は正面固定で、足裏・イン・アウトを触り分けて1m四方を移動。親は時々、手を挙げるor色を示す。子は言い当て続ける。

ポイント:タッチは小さく、姿勢は高く。20秒×3。

公園・校庭でできる2人ドリル

カラーゲート・スキャンドリブル(決定の早さを競う)

やり方:コーン(代用品OK)で3色ゲートを3〜5m先に設置。子は出発前に左右→前を2回スキャン。親が色コール、子は最短でそのゲートを通過。

採点:開始から通過までの秒数、前を向けた回数を記録。3本勝負。

ミラードリブル(親がリード・子が追従)

やり方:2m間隔で向き合い、親がゆっくりドリブルの方向を変える。子は顔を上げて鏡のように追従。30秒→交代。

狙い:相手の膝と腰を見るクセ付け。速度はゆっくり→普通へ。

方向チェンジ+外部合図(笛・手挙げ・色)

やり方:ドリブル中、親は笛1回=右、2回=左、手挙げ=前進、色カード=ターン、など事前にルールを設定。10〜15秒の短い区切りで連続実施。

ポイント:合図は1つずつ。混乱したらルールを減らす。

シャドー鬼ごっこ(顔上げ限定の駆け引き)

やり方:子がドリブル、親は背後1mで追走。親は時々、左右どちらかにフェイント。子は顔上げで背後の気配を拾い、進路を微調整。20秒×3。

狙い:背後情報の確保と進路管理。

パス&ムーブで視野と判断を鍛える

受ける前に2回見るルール(背後情報の確保)

やり方:5〜7mでパス交換。子は「受ける前に2回見る」を口に出しながら実行。親は合図で背後に移動し、受け手がどれだけ把握できているか確認。

ワンタッチ制限で前進(体の向きと次の絵)

やり方:ワンタッチのみで2人の間を前進(パス→一歩出る→またパス)。前進距離を競う。コツは受ける前の体の向きと、次の“絵”を描くこと。

背後情報キャッチゲーム(親は後ろで合図)

やり方:子の背後で親が手を挙げる本数や色を提示。子は受ける直前にスキャンし、受けた直後に答える。5本×2セット。

リターンパスの角度発見(三角形の最短経路)

やり方:親子+マーカー1つで仮想の三角形を作り、壁パスの角度を変えながら最短で前進できる位置を探す。成功した角度を言語化する(「斜め45度が楽」など)。

1対1を『顔上げ』で優位にする限定ルール

間合いを測る目線(膝・腰・つま先)

守備者の膝が止まった瞬間は仕掛けやすい、腰が浮いたら縦が通りやすい、つま先が内を向けば外が有利、など“見る場所”を限定。1v1の前に3秒だけスキャンする時間を設定。

偽視線とフェイント(見る方向と行く方向をずらす)

やり方:右を見る→左へ出る、胸は正面→ボールは外へ、など視線と進行をズラす練習。5本中、2本だけ本当に見た方向へ行くと効果的。

懐に入る前のスキャン(ディフェンスの利き足)

やり方:間合いに入る前に、相手の利き足側を確認。利き足側にボールを置かない・触らせないだけで奪われにくくなります。

下を見たら減点ルールで自然に顔上げ

ルール:1v1中に1秒以上ボールを凝視したら−1点。代わりに足裏の触覚でボール位置を確認。得点制でゲーム化すると面白いです。

認知負荷を高めるゲーム化アイデア

デュアルタスク(色+数字の同時処理)

やり方:親が「赤3」のように同時提示。子は「赤のゲート→3回タップ」を実行。10秒間で何回成功できるか。

スキャンビンゴ(見えた情報を揃える)

やり方:3×3のマスに「味方」「相手」「スペース」「利き足」など“情報”を書いた紙を置く。ドリル中に見えた情報を申告してマスを埋める。縦横斜めにそろえばクリア。

コール遅延ルール(合図→0.5秒待って決断)

やり方:合図が出た瞬間に動かず、0.5秒待ってから実行。先走りを防ぎ、短い保持と計画性を促します。反応が遅くなりすぎれば中止。

10秒間スキャン回数チャレンジ(質と量の両立)

10秒で何回スキャンできるか競い、同時に「何を見たか」を言語化。量だけでなく質(具体性)にポイントを付けるのがコツ。

成果を見える化:シンプルな指標と記録法

スキャン回数/10秒(直前・直後の内訳)

「受ける前」「受けた直後」で別カウント。例:前6回/直後3回。タイミングの偏りを把握できます。

前向きで受けられた回数(体の向きの成功数)

1セッションにつき、前を向いて受けられた回数を数える。距離やスピードを上げた時にどう変化するかをチェック。

ミスの原因分類(視野・技術・判断)

ミスのたびに一言でラベル付け。「視野(見てない)」「技術(触れない)」「判断(選択違い)」。対策が明確になります。

週次トラッキングシートの作り方

  • 項目:日付/ドリル名/スキャン回数/前向き受け回数/気づき1つ。
  • ルール:1行30秒で記録。グラフ化は週末にまとめて。

レベル別カスタマイズと年齢配慮

初心者:情報は1つ・距離短め・速度ゆっくり

色だけ、数字だけ、2m以内、歩き速度。成功体験を積む期間。

中級者:情報を2つ・方向転換を追加

色+数字、数字+方向など複合。ターンやステップを入れても顔を上げ続ける練習へ。

上級者:偽情報やノールック要素を導入

フェイントの合図、ディレイコール、ノールックパスの安全な導入で判断の質を引き上げる。

年齢に応じた道具と間隔設定の目安

  • 小学生:軽量ボール、ゲート間2〜3m。
  • 中高生:4〜5号球、ゲート間3〜5m。
  • 大人:実球、ゲート間5〜8m。疲労時は情報量を減らす。

家にあるもので代用できる道具アイデア

ペットボトル・洗濯ばさみ・付箋・紙皿

ゲートはペットボトル、色は付箋や紙皿で代用。洗濯ばさみは色分けクリップとして視認性良好。

カラーとコントラストの選び方(見やすさ優先)

床や背景と色が被らない組み合わせを選ぶ。暗い床には明るい色、明るい床には濃い色。

音・言葉・身振りの合図で多感覚トレーニング

笛、手叩き、手の数、短い言葉を混ぜると、実戦に近い情報処理ができます。

片付けまでゲーム化して習慣にする

「30秒で色別に回収」「ミス0で終了」など、片付けもスコア化。終わり方が良いと次も続きます。

よくあるつまずきと解決策

ボールを見過ぎる→触覚と音を使う工夫

足裏で2回こする→インで1回→親が手を叩く、の順で反応。足と音でリズムを作ると視線を上げやすい。

首は動くが情報が入らない→見る場所と順番を固定

「左の相手→右の味方→前のスペース」の順に固定。終わったら何が見えたか一言で言う。

親の指示が多すぎる→合図は1回・言葉は短く

プレー中は説明をしない。うまくいかない時は一旦止めて、次の1点だけに絞る。

モチベが続かない→スコア化とランキング化

10秒スキャン回数、前向きで受けた回数など、見える数字を1つ育てる。前回比+1を目標に。

練習を試合に接続する具体的ヒント

キックオフ前のスキャンルーティン

センター付近で「相手CBの位置→味方の高さ→空いているサイド」の順に2回見る。ルーティン化で緊張が減ります。

セットプレー時の見る順番(ボール→相手→味方→スペース)

キッカーも受け手も同じ順で確認。見る順番を固定すると、迷いが減り役割が明確に。

ゴール前での周辺視の使い方(視線は枠外・意識は中央)

視線はゴール枠の外側に置き、意識は中央に広く向ける。ボールに吸われない工夫です。

翌日の60秒復習で定着率を上げる

前日のベスト1プレーを口で説明→同じ順で30秒ドリル→記録。短時間でも記憶が定着します。

週3回・各15分のモデルプラン

月:家ドリル(基礎スキャン+トータップ)

  • 30秒ルーティン
  • ナンバーコール・タップ 30秒×3
  • カラーカード・スキャン 30秒×2
  • 逆視点ドリブル 20秒×3
  • 記録 1分

水:公園ドリル(カラーゲート+ミラー)

  • カラーゲート・スキャンドリブル 3本×2
  • ミラードリブル 30秒×2(交代)
  • 方向チェンジ+外部合図 15秒×4
  • 10秒スキャン回数チャレンジ×2
  • 記録 1分

金:パス&1v1(受ける前2回見る+制限付き)

  • 受ける前に2回見るパス交換 2分
  • ワンタッチ制限で前進 2分
  • 1対1(下見たら減点)20秒×3
  • 背後情報キャッチゲーム 5本×2
  • 記録 1分

雨の日の代替案と疲労時の軽負荷メニュー

  • 代替:スクリーンドリブル、片足バランス+視野キュー、チェックオーバー習慣化。
  • 軽負荷:情報量を1つに、速度は歩き、セット数は半分。記録だけは継続。

まとめと次の一歩

継続のチェックポイント(時間・頻度・楽しさ)

  • 時間:1回15分以内で切る。
  • 頻度:週3回を基本、無理なら週2回でもOK。
  • 楽しさ:毎回1つはゲーム化し、必ず成功体験で終える。

3人以上への拡張(三角形・ロンドへの橋渡し)

3人になったら三角形を作り、受ける前スキャン2回→ワンタッチの原則でミニロンドへ。合図係を1人入れて情報量を調整。

自主トレへの移行(タイマーと記録の自立)

子が自分でタイマーを押し、終わったらスキャン回数を書き込む。自立が始まると伸びが加速します。

楽しさ最優先で『顔上げ習慣』を生活に組み込む

サッカーの視野の広げ方は親子で楽しく顔上げ練習。これを合言葉に、家でも公園でも30秒から。首を振る、見る、覚える、決める——小さな積み重ねが試合の一瞬を変えます。次回は今日の中から1ドリルだけ、タイマーをセットしてやってみてください。終わったら「何が見えたか」を一言で共有。そこからまた一歩、視野は広がります。

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