タッチライン際でのスローインは、実は「簡単そうで反則になりやすい」プレーのひとつです。試合のリズムを止めず、相手にボールを渡さないためには、競技規則に沿った正しい投げ方と、審判が注目するポイントを押さえることが近道。この記事では、サッカースローインのルール:初心者が反則しない投げ方を、最短で身につく順番で解説します。実戦で使えるチェックリスト、失敗しないフォーム、ロングスローの安全な伸ばし方、チーム戦術へのつなげ方までまとめました。
目次
スローインの基本ルールを最短理解:まずは全体像
スローインはいつ与えられるか(ボールがタッチラインを完全に越えたとき)
スローインは、ボールが地面や空中に関わらず「タッチラインを完全に越えたとき」に行われます。どちらのチームに与えられるかは、最後にボールに触れたのがどちらかで決まります。最後に触れたチームの相手側にスローインが与えられます。
再開の地点は、ボールがタッチラインを越えた「その地点付近」。基本はその点から行います。
正しい投げ方の4条件:体の向き・両手・頭上・両足接地
競技規則(スローインの項目)の要点は次の4つです。
- フィールド(ピッチ)の方向を向くこと
- 両手でボールを持ち、左右の手で均等に扱うこと
- ボールを「頭の後ろから通して頭上を越える」軌道で投げること
- ボールを離す瞬間、両足の一部が地面に接地し、かつ「タッチライン上」または「タッチラインの外側の地面」にあること(フィールド内側は不可)
この4条件を満たしていれば、助走の有無や投げるスピードは自由です。
ボールがインプレーになる瞬間と取り直しの扱い
スローインのボールは、「フィールド内に入った瞬間」にインプレー(プレー可能)になります。もしボールがフィールド内に入る前に地面に落ちたり、投げたのにフィールドに入らなかった場合は「同じチームの取り直し」です。
一方で、投げ方自体が不正(片足が浮いた、片手投げ、フィールド内側から投げた等)の場合は、原則として相手ボールのスローインになります。実際の試合では主審が位置の修正を促してやり直させることもありますが、厳密には相手ボールに変わる可能性がある点は覚えておきましょう。
反則にならないための必須チェックリスト
足の位置の正解:ライン上はOK/フィールド内側はNG
ボールを離す瞬間に、両足の一部が必ず接地している必要があります。足の位置は「タッチライン上」もしくは「タッチラインの外側の地面」ならOK。「フィールド内側」に少しでも踏み込んでいると反則です。つま先やかかとの一部でも地面に触れていれば接地とみなされます。
両手で“頭の後ろから頭上を通す”を崩さない
ボールは両手を使い、頭の後ろから頭上を通す動きでリリースします。片手の比重が極端に大きい、脇の下から投げる、横方向から振り投げるといったフォームは反則の原因になります。リリース時に両腕が左右対称に伸び、ボールが頭の上を越えていく感覚を大切にしましょう。
投げる地点の誤差と主審の許容範囲
競技規則上は、ボールが出た地点から行うのが原則です。実戦では数歩程度の誤差を主審が許容することもありますが、相手に不利益が出るほど位置がずれると反則(相手ボール)とされる可能性があります。迷ったら副審(線審)の指示やジェスチャーに合わせましょう。
相手は2m離れる義務:距離が確保されないときの対処
相手選手は、スローインを行う地点から「2m以上」離れなければなりません。近づいて妨害する、目の前でジャンプするなどは警告(イエローカード)の対象です。素早い再開でプレー続行が可能な場合を除き、妨害を受けたら主審にアピールして距離の確保またはやり直しを求めましょう。
投げた本人の二度触りの反則(間接FK/ハンドは直接FK)
スローイン後、ボールが誰かに触れる前に投げた本人がボールに触れると「二度触り」で間接フリーキック(相手ボール)になります。もしその二度目が手や腕の反則に該当する触れ方であれば、直接フリーキック(自陣ペナルティエリア内ならペナルティキック)で再開されます。
得点・オフサイド・GKに関わる特例を理解する
スローインから直接ゴールはできない:自陣・相手陣での再開
スローインから直接ゴールは認められません。相手ゴールへ直接入った場合はゴールキック、自陣ゴールに直接入ってしまった場合はコーナーキックになります。
スローインからはオフサイドなし:活用の場面
スローインからはオフサイドが適用されません。相手最終ラインの裏に味方がいても、その選手に投げること自体は可能です。素早い再開で前線に入れる、3人目の関与で一気に前進するなど、攻撃のチャンス作りに使えます。
GKは味方のスローインを手で扱えない(間接FK)
ゴールキーパーであっても、味方からのスローインを手でキャッチすることはできません。手で扱った場合は間接フリーキックです(反則が起きた地点から再開。自陣ゴールエリア内であれば、規則に基づくゴールエリア内の所定位置から)。
審判が見ているポイントとマナー
リスタートのスピードと遅延行為の基準
交代やリード時にありがちな「ゆっくり拾う・モタつく」といった遅延行為は警告の対象です。ボールが戻ってきたら素早く再開する姿勢を示しましょう。逆に、主審が笛を吹いて止めている状況で勝手に投げるのもNG。笛の有無や合図を確認してから再開します。
フェイントは許される?スポーツマンシップの線引き
スローインのモーションに軽いフェイントを入れること自体は認められていますが、相手や主審を欺く目的の過度な演技、再開を遅らせるようなフェイントは不当な行為として注意・警告の対象になり得ます。スポーツマンシップの範囲で、テンポよく実行しましょう。
相手を妨害する行為(目の前ジャンプ等)の扱い
相手が2m以内に詰めて、目の前でジャンプしたり手を振り上げたりするのは妨害行為です。主審はこれを不当な行為として注意・警告できます。投げ手側は無理に投げず、審判の介入を待つか味方のサポートを引き出して安全に再開しましょう。
初心者でも反則しない投げ方:手順とフォーム
ボールの持ち方(親指の位置・手のひらの使い方)
両手のひらでボールを包み、親指は後方でボールを固定する形に。指は軽く広げ、手首は固め過ぎず、肘を開き過ぎない。ボールは胸の前から頭の後ろにスムーズに移動させます。手のひらで押し出す感覚を持つと両手のバランスが保てます。
足幅とスタンス:両足接地を安定させるコツ
肩幅よりやや広い足幅が安定します。つま先はピッチ方向へまっすぐ、または軽く外向き。かかとが浮きやすい人は、膝を少し曲げて重心を下げると接地を保ちやすいです。必ず「タッチライン上」または「外側」に置き、内側に入らないようラインを視野に入れておきましょう。
助走からリリースまでの流れ:片足が浮くタイミングの理解
助走は自由ですが、リリースの瞬間に両足接地が絶対条件。おすすめの流れは以下です。
- ボールを胸の前で保持し、2〜3歩の助走
- ライン手前で一度しっかり止まる(ストップで反則予防)
- 骨盤を引き、上体をやや後方に反らせて負荷をためる
- 骨盤→体幹→肩→肘→手の順にしなりを解放してリリース(両足は接地)
- フォロースルーで前へ体重移動。リリース後に足が浮くのはOK
「止まってから投げる」を習慣化すると、片足浮きの反則をほぼ防げます。
リリース角度と軌道の作り方
狙いが近距離なら山なり、遠距離ならやや低めの強い弾道。目安としては30〜45度の範囲で調整すると、距離とコントロールのバランスが取りやすいです。相手のプレッシャーが強いときは、足元ではなく体の側面(利き足側)へ投げると次のタッチが安定します。
投げた後の動き:セカンドタッチ回避と次の選択肢
投げ手はすぐにボールへ触れられません。次の動きは次の3択が基本です。
- 投げた相手の背後に回り込む(マークを引きつける)
- 即座に中へ絞ってパスコースを作る(3人目関与)
- カウンター対策として残る(守備バランスの確保)
二度触りを避けつつ、次の選択肢を味方と共有しておきましょう。
ロングスローに発展させる安全なテクニック
上半身だけに頼らない:股関節ヒンジと体幹の連動
ロングスローは腕力勝負ではありません。股関節を折りたたむ「ヒンジ動作」で後方にエネルギーをため、骨盤の前傾戻し(ヒップスラスト)と体幹の回復でパワーを前方へ伝えます。膝は軽く曲げ、足裏全体で地面を押す感覚を持つと、両足接地を保ちながらパワーを出せます。
滑り対策と用具の注意(タオル使用やユニフォーム規定)
手が濡れていると反則リスク(片手化)と距離低下につながります。袖口で拭く、汗をしっかり処理するなど滑り対策を。タオル使用の可否は大会規定で異なる場合があります。事前に確認し、規定に従ってください。レフェリーが再開を急がせている状況での過度な準備は遅延と見なされることもあるので注意しましょう。
フリップスローは合法だが無理は禁物:条件とリスク
助走から前転の勢いを使う「フリップスロー(サマーソルトスロー)」は、投げ方の4条件を満たせば合法です。ただし難易度が高く、首・肩・腰への負担も大きいので、専門的な指導や十分な練習環境がない場合は控えた方が安全です。まずは通常フォームを安定させ、距離を伸ばす基礎を積み上げましょう。
チームで生きるスローイン戦術の基礎
三角形を作る:3人目の関与で前進する
投げ手・受け手・3人目で小さな三角形を作るのが基本。受け手は背中で相手をブロックし、3人目は前方のスペースへ角度を変えて顔を出します。ワンタッチで3人目に預ける形を準備しておくと、プレスを受けても前進しやすくなります。
リターンパスとワンツーでプレスを外す
受け手が即座に投げ手へリターン → 投げ手が前方へ運ぶワンツーは強力です。投げ手は二度触りを避けるため、受け手が触れたのを確認してから動き出すこと。敵陣ではこれに合わせてインサイドハーフが前向きで受ける形を作ると、攻撃へスムーズに移行できます。
サインプレーと合図の作り方(コミュニケーション)
合図はシンプルで、相手に読まれにくいものを。例えば「胸にボール=足元」「頭上タッチ=背後」「手を下げる=近いサポート」など。約束事は3つ程度に絞り、全員が同じ絵を持つことが成功の条件です。素早い再開とサインの併用で、相手が整う前に仕掛けましょう。
反則しないための練習メニュー
1人でできる壁当てとフォーム確認ドリル
- ライン意識ドリル:地面にテープでラインを作り、つま先・かかとの接地を確認しながら10本×3セット。毎回、頭の後ろ→頭上の軌道を声に出して確認。
- ターゲット投げ:壁に高さ別のマーカー(低・中・高)を貼り、角度を変えて各10本。リリース角を体で覚えます。
- 動画チェック:正面と横から撮影し、両手の左右差、リリース位置、足の接地を見直す。
2人組での距離・角度調整ドリル
- 近距離テンポ:5〜7mの距離でワンタッチ受け→即リターンを連続20回。素早い再開の感覚を養う。
- 角度チェンジ:投げ手中央—受け手サイド—3人目前方の三角形を組み、投げ→落とし→前進を反復。3人目の走り出しのタイミングを合わせる。
- 対人プレッシャー:受け手の背中に軽いプレッシャー(肩で触れる程度)を入れて、体の側面で受ける→内へターンの2パターンを練習。
実戦形式:サイドでの崩しとスローインからの再開
- 5対5+サーバー:ボールアウトしたら即スローインで再開。3回連続で反則ゼロを目標にゲーム継続。
- 時間制限ルール:ボールがタッチを割ってから5秒以内に再開。役割分担(近いサポート、3人目の走り、後方の安全パス)を固定してテンポアップ。
- ロングスロー限定ゾーン:相手PA付近のサイドでのみロングスロー可とし、落下点への走り込みとセカンドボール回収を徹底。
よくある質問(FAQ)
走りながら投げてもよい?助走のルール
助走自体はOKです。ただし「ボールを離す瞬間」に両足が接地し、ライン上または外側にあることが条件。止まってから投げる癖をつけるとミスが減ります。
片足が一瞬浮いたら反則?“リリースの瞬間”が基準
基準はリリースの瞬間。投げるより前や後に片足が浮いても問題ありません。離す瞬間だけは両足接地を厳守しましょう。
相手に当ててアウトにするのは反則?
故意に相手へ当てて自分のボールにするのはルール上可能です(その後は二度触りではありません)。ただし、危険・過度な力・相手を傷つける意図があると判断されれば反則・警告の対象になり得ます。安全第一で、至近距離で顔面を狙うような行為は避けましょう。
小中学生の大会でのローカルルールはある?確認ポイント
育成年代では、初回はやり直しを認めるなどの運用を採用している大会もあります。大会要項・競技規則の補足を事前に確認し、審判の説明にも耳を傾けましょう。ボールサイズやピッチサイズが異なると、スローインの感覚も変わります。
まとめ:反則ゼロのスローインが試合を変える
自動化すべき3つの習慣
- 投げる前に「ライン確認→両足接地→両手・頭上」を声に出す
- 止まってから投げる(片足浮きの反則を防ぐ)
- 近い・遠い・背後の3パターンを常に用意しておく
今日からのチェック項目と次の一歩
- 相手との2m距離を主審の前で明確に確保する
- リリース角30〜45度の感覚づくり(壁ターゲットで反復)
- 三角形の位置関係をチームで統一(合図は3つに集約)
- ロングスローは股関節と体幹の連動で、安全に少しずつ距離を伸ばす
スローインは「ただの再開」ではなく、相手の隙を突ける攻撃の起点。ルールを正しく理解し、反則ゼロの投げ方を体に染み込ませれば、試合の流れを自分たちに引き寄せられます。今日の練習から、まずは基本の4条件を完璧に。そこから戦術とテクニックを積み上げていきましょう。