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サッカー高校生の試合時間・交代ルール解説 実戦で迷わない
「今日は40分ハーフ?延長はある?交代は何人まで?」——試合直前にここで迷うと、プレーにも準備にも影響します。本記事は、高校生年代の試合でよく使われる試合時間・交代ルールを、公式ルール(競技規則)と大会規定の関係から整理。実際のベンチワークで使える手順や時間の使い方、よくある誤解、最新トレンドまで一気にまとめます。初見の大会でも迷わないためのチェックリストも付けました。
この記事のねらいと前提
公式ルールと大会規定の関係を整理する
サッカーの基本は国際基準の「競技規則(IFAB Laws of the Game)」です。ただし、ユース年代(高校生含む)は発育段階や安全を考慮して、大会主催者(協会・連盟・リーグ)が「試合時間」「交代人数」「再入場の可否」などを調整できます。つまり、基準は競技規則、運用は大会規定。この2階建て構造を理解しておくと、現場での判断がスムーズになります。
地域・大会で異なるポイントの把握方法
- 大会要項(実施要項・レギュレーション)を最優先。PDFで事前配布が一般的。
- 当日の主催者連絡(マッチコーディネーター・大会本部掲示)で最終確認。
- 審判の主導でキックオフ前ミーティングがある場合、疑問点はその場で明確に。
- 対戦相手が所属するリーグの常識はあくまで参考。横展開の思い込みは危険。
試合直前に必ず確認すべきチェックリスト
- 試合時間:前後半の分数、ハーフタイムの長さ
- アディショナルタイム:基本方針(付く/短縮運用など)
- 延長戦:有無、方式(10分×2など)
- PK方式(KFTPM):実施条件、実施場所
- 交代:人数、交代機会、延長時の追加枠の有無
- 再入場:認める/認めない(練習試合か公式戦か)
- ベンチ入り人数:スタッフを含む上限、交代要員の数
- 飲水タイム/クーリングブレイク:実施条件と回数
- 第4の審判:配置有無、交代ボードの扱い
高校生サッカーの試合時間の基本
前後半の基本構成(40分ハーフが主流/45分ハーフの例も)
高校生年代では「40分ハーフ」が広く使われています。一方で、上位カテゴリーのリーグや一部大会では「45分ハーフ」を採用する例もあります。どちらになるかは大会規定次第。初めて出る大会では必ず要項を見ておきましょう。
ハーフタイムの長さと調整のされ方
ハーフタイムは10分が目安ですが、運営上の都合や連戦日程、暑熱対策などで短縮・延長されることがあります。審判からの案内が優先されるため、ロッカーに下がる前に必ず確認。調整の余白を見込んで、給水・栄養補給・ストレッチの順番を決めておくと混乱しません。
アディショナルタイムの考え方と見積もりの目安
アディショナルタイム(AT)は、交代、負傷対応、VAR(ユースでは通常なし)、時間の浪費、飲水・クーリングブレイクなどで失われた時間を考慮して主審が決定します。高校年代でも基本の考え方は同じですが、会場の制約や連戦日程に配慮し「大きくは伸ばさない」運用になることもあります。目安は交代1回につき約30秒前後、負傷対応は状況次第。とはいえ実際の分数は主審の判断なので、見込みはあくまで仮置きに。
延長戦の有無と方式(大会規定に依存)
決勝トーナメント等で勝敗を必ず決める場合、延長戦を行う大会と、延長を行わずすぐにPK方式へ移行する大会があります。延長がある場合は「10分×2」や「15分×2」など方式が定められています。疲労管理・交代温存に影響するので、延長の有無は試合前の最優先確認項目です。
PK方式の基本フロー(KFTPM)と進行
- 対象選手:試合終了時(延長があれば延長終了時)にフィールド上にいる選手のみ。
- 順番:各チーム5人ずつが交互に蹴り、同点ならサドンデスへ。
- GK:キッカーとして参加可。守るGKは対象選手内で交代可。
- 入退場:原則としてPK開始後は選手の交代は不可(GKの負傷など例外は競技規則に従う)。
- 注意:途中出場を想定したPK要員は、必ず延長終了時までにピッチ上へ。
交代ルールの基本と実務
交代可能人数の主流(5人まで)とベンチ入り人数の扱い
現在、多くの大会で交代可能人数は「最大5人」が主流です。ベンチ入りできる交代要員の数や、登録人数の上限は大会ごとに異なります(例:交代要員は多数登録可でも、ベンチ入りは上限あり等)。「連れて行ける人数」と「試合で使える人数」は別、を徹底しましょう。
交代機会(3回+ハーフタイム)と延長時の追加機会
5人交代の運用では、交代の「回数」が制限されるのが一般的です。試合中の交代機会は3回まで、ハーフタイムは機会にカウントしない扱いがよく用いられます。延長戦がある大会では、延長開始前(延長前のHT)や延長中に追加の交代機会が与えられる場合があります。人数や回数の扱いは大会規定で必ず確認を。
再入場の可否(公式戦は不可が原則/練習試合の例外)
公式戦では、交代で退いた選手の再入場は不可が原則です。一方、練習試合・トレーニングマッチでは「自由交代(再入場可)」を合意して実施することがよくあります。審判・相手チームと事前に合意し、ベンチで交代記録を明確に残しましょう。
GK交代・負傷時の特殊ケース
- GK→GKの交代は通常の交代枠・機会を使用。
- フィールドプレーヤーとのポジション交換は、プレー中でも審判の許可を得た上で可能。
- 負傷時は安全最優先。脳振盪が疑われる場合は即時にピッチ外で評価。
- 大会により「脳振盪追加交代」を試験導入している場合あり(詳細は後述)。
交代手続きの正しい進め方(第4の審判がいる場合/いない場合)
- 第4の審判あり:交代用紙を提出→装備チェック→交代ボード準備→主審の合図で実施。
- 第4の審判なし:タッチライン付近の副審に口頭で申請→主審の許可→交代ゾーンで入替。
- 必須ポイント:交代選手はピッチ外で準備完了(すね当て・用具・背番号確認)→退場選手が完全に外へ出てから入場。
大会別の代表例と違いの出やすいポイント
全国高校サッカー選手権・インターハイの傾向
全国規模の大会では、高校生年代としての標準に沿った「40分ハーフ」を採用するケースが広く見られます。連戦日程や会場運営の都合により、ハーフタイムやATの運用に調整が入ることもあります。延長・PKの扱いはラウンドや大会方針で異なるため、年ごとの要項で確認しましょう。
プリンスリーグ・都道府県リーグの傾向
上位のユースリーグでは、成人に近いゲーム負荷を想定し「45分ハーフ」を採用するリーグが多く見られます。一方、都道府県のカテゴリーや年代区分によっては「40分ハーフ」を基本とする場合も。交代人数は5人運用が主流ですが、交代機会やベンチ入り上限はリーグごとに差が出ます。
地区予選・練習試合での特別ルール(再入場・出場時間制限など)
地区予選や育成を重視した大会・練習試合では、再入場可、出場時間の最低保証、交代自由といった特別ルールが導入されることがあります。公式戦と同じつもりで臨むと手続きで混乱しやすいので、主催者・相手・審判で事前合意を。
炎暑時のクーリングブレイク・飲水タイムの運用
- 飲水タイム:各ハーフの中盤(目安25分前後)に短時間の給水。時計は止めない運用が一般的。
- クーリングブレイク:高温多湿時に90秒〜3分程度、積極的に体温を下げる休憩。ATに加算されるのが基本。
- 実施判断:主審および主催者の指針に従う。WBGTや気象条件を参考に決定されることが多い。
時間管理で勝つ:実戦のマネジメント
前半のゲームプランとアディショナルタイムの使い方
前半は「相手の狙いを見極める時間」+「自分たちの強みを1回は出す時間」。ATは長くても1〜3分が目安になりやすいので、25分以降はセットプレーの準備(キッカー合図、ニア・ファーの役割固定)を済ませ、ATで一度ギアを上げられるように。AT前に交代で流れを切るより、ハーフタイムにまとめて入れ替える方が得策な場面も多いです。
交代カードの切り方:流れを保つ3つのタイミング
- 守備がズレ始めた瞬間:ボールサイドに寄り切れない、2nd回収が遅い時に早めの1枚。
- 給水・飲水直後:再開直後は集中が落ちやすい。決めごとを一言で伝えて投入。
- AT直前ではなく、ATに入ってから:審判の合図を待つ時間で無駄に時計が進むのを防ぐ。
終盤のリード時/ビハインド時の時間戦術
- リード時:スローインは近い選手、FKはシンプルに。相手陣内でのファウルは悪くないが、不要な抗議は禁物。
- ビハインド時:リスタートの速さを全員で共有。ボールボーイ動線や予備球の位置を事前に把握。
- どちらでも:交代は「走力の底上げ」優先。走れる選手を一列前にずらすのも有効。
遅延行為での警告を避けるための注意点
- 交代時は最寄りのラインから速やかに退出。
- スローインの位置を大きく前に持っていかない。
- ボール保持者のキック前に相手の前でボールを触らない。
- ゴール後の過度なパフォーマンスは時間とカードのリスク。
交代で変える守備・攻撃の強度管理
終盤に強度を落とさないコツは「二段加速」。60〜70分に1枚、75〜80分にもう1枚で前線のプレス強度を維持。守備では、交代直後の選手に「最初の3分はファウルOKのつもりで寄せ切る」と明確な指示を。攻撃は、交代選手に最初のタッチで縦パスか裏抜けを要求し、相手CBに“新しい対応”を強いるのが効きます。
選手・保護者が知っておくと得する実務知識
遠征・連戦での出場時間マネジメント
- 40分ハーフ×2試合/日が見込まれる場合、合計プレー時間の目安を事前に決める。
- 朝食〜試合間の補食は「消化しやすさ>量」。後半に胃もたれを持ち込まない。
- 氷・タオル・替えソックスはチームで共有できる数を確保。
審判とのコミュニケーションの基本マナー
- 交代申請は早め・簡潔に。合図の前にタッチラインへ出ない。
- 説明はキャプテンが代表して行い、感情語より事実を短く。
- 判定への過度なアピールはチーム全体の印象を下げ、接戦で不利になりがち。
負傷・脳振盪が疑われる際の交代判断
頭部の衝撃後に「ぼんやりする」「ふらつく」「吐き気」などが1つでもあれば、原則として即交代し評価を優先。脳振盪追加交代がない大会では通常の交代枠を使うことになりますが、安全は何よりも優先されます。復帰可否は医療的判断に従いましょう。
ベンチワークの役割分担(タイムキーパー/交代準備)
- タイムキーパー:自前の時計でATの見込みを共有。飲水・クーリングの実施時刻も記録。
- 交代係:ゼッケン・すね当て・シューズ確認、戦術メモを簡潔に伝える。
- スタッツ係:交代時間、得点・カード、セットプレーの成功/失敗を簡易記録。
ケーススタディ:よくあるシーン別の判断
同点終盤、セットプレー直前に交代すべきか
キッカーやターゲットを変える交代は、配置の混乱リスクが高く非推奨。蹴った直後の流れが切れた瞬間に実施するのが安全。例外は、明確な高さのミスマッチを解消する時や、専任キッカーを入れる時のみ。
延長戦突入を見据えた交代温存の可否
延長がある大会では、90分(または80分)で追いつける見込みが薄いなら、走力の大きな入替は延長開始前に回すのが定石。延長専用の追加交代枠があるかどうかで最終判断が変わります。枠がない大会では、終盤の相手の消耗を見て前線の2枚替えで圧を維持。
警告持ち選手の扱いと交代判断
守備の要がイエローを持った場合、相手がそこを狙ってくるのは常。ファウル閾値が下がるため、ラインコントロールで対応できるかを即評価。無理なら交代、続行なら「被カウンター時は無理に止めない」とチームで共有を。
GKの軽傷/重傷時のリスク管理
- 軽傷:プレー続行可否をGK本人だけに委ねない。守備陣のカバー指示を即時共有。
- 重傷疑い:即交代。交代枠と機会を考慮しつつ、安全最優先で決断。
- PKの可能性が高い時:PKストッパー型GKへの入替は、延長終了までに完了させる。
最新トレンドと今後の見通し
5人交代ルールの定着と戦術的影響
5人交代は高校生年代でも幅広く浸透。試合の強度が上がる一方、交代機会の使い方が勝敗を分ける場面が増えています。特にウイングやボランチの二段替えでテンポを変える戦術が一般化しつつあります。
脳振盪追加交代(試験導入)の動向
一部大会・地域で、脳振盪が疑われる選手の安全を優先するため、通常の交代枠に加えて「追加で交代できる」制度が試験的に導入される動きがあります。運用方法(相手にも追加枠が与えられるか等)は方式により異なるため、要項と当日の説明を必ず確認しましょう。
育成年代における出場機会確保の議論
育成年代では「勝利」と「育成」の両立が課題。大会によっては出場機会を増やす目的で再入場可や交代自由を採用する動きも見られます。公式戦では原則に従いつつ、選手の成長に資する運営が今後も模索されていくでしょう。
試合前に使える確認表
試合時間・延長・PKに関する確認項目
- 前後半の分数(40/45)
- ハーフタイムの長さ(分)
- アディショナルタイムの方針
- 延長の有無・方式(分)
- PK方式の実施条件と場所
交代人数・交代機会・ベンチ入り人数の確認項目
- 交代可能人数(最大5人が主流か)
- 交代機会(3回+HTか)
- 延長時の追加機会の有無
- 再入場の可否(公式戦は不可が原則)
- ベンチ入り上限(選手・スタッフ)
飲水タイム・クーリングブレイク・暑熱対策の確認項目
- 飲水タイムの実施有無とタイミング
- クーリングブレイクの基準
- 氷・テント・ミスト等の会場設備
- 予備球・ボールパーソンの配置
よくある誤解Q&A
高校サッカーは必ず40分ハーフ?
必ずではありません。40分ハーフが広く使われますが、45分ハーフの大会・リーグもあります。大会要項で要確認です。
5人交代なら6人目は延長で使える?
人数や追加枠の扱いは大会規定によります。延長で「交代機会の追加」はあっても「人数の追加」はない場合があります。必ず要項を確認しましょう。
交代で出た選手は再び入れる?
公式戦では原則不可。練習試合では事前合意があれば再入場可の運用もあります。
アディショナルタイムは何分が普通?
状況により主審が決めます。交代・負傷対応が少なければ短く、飲水・クーリングがあれば長くなりがちです。固定の“普通”はありません。
まとめ:実戦で迷わないために
最重要ポイントの再確認
- 試合時間・延長・PK・交代枠は「大会規定が最優先」。
- 5人交代と交代機会(3回+HT)が主流。ただし大会差に注意。
- 公式戦は再入場不可が原則。練習試合は事前合意で柔軟。
当日の役割分担と連絡手順
- 試合前:規定の最終確認→選手へ共有→交代プランの初期案を明文化。
- 試合中:タイム管理・交代準備・スタッツの役割を固定。
- ハーフタイム:残枠と機会を再計算。延長の有無で後半の運用を調整。
規定を味方につける準備術
- 初見の大会は1週間前までに要項を読み、疑問は主催者へ事前照会。
- 交代ボードや用紙、氷・補食など「あると勝ちやすい備品」をルーチン化。
- 選手には「時間と交代が戦術の一部」であることを共有し、迷いを減らす。