「サッカー試合前の食事は何時間前?動ける最適量と時間」。試合で最後まで走り切るには、直前に“何を食べるか”だけでは足りません。“いつ”“どれだけ”食べるかが同じくらい重要です。食べる時間が早すぎるとエネルギー切れ、遅すぎると胃もたれ。この記事は、そのズレをなくすための実用ガイドです。体重や試合時間帯、ポジションに合わせて使える量の目安と、コンビニや和食で揃うメニュー例まで、現場で役立つ形に整理しました。
目次
導入:なぜ試合前の「時間」と「量」がパフォーマンスを左右するのか
エネルギー切れと胃もたれ、両方を避けるための基本原理
サッカーは有酸素と無酸素が混ざる“インターミッテント”な競技です。スプリントや切り返しのたびに筋グリコーゲン(筋肉の糖)を使い、90分を通して血糖も消費します。補給が足りないと後半の走力・判断力が落ち、逆に脂質や食物繊維が多すぎたり、食事が遅すぎると胃に残って動きが重くなります。消化のタイミングと糖の供給が噛み合うよう、時間と量を設計するのがコツです。
この記事でわかること(時間の目安・量の目安・具体例)
- 「何時間前に」「体重あたり何g」食べると動きやすいかの基準
- 消化しやすい食材の選び方と、避けたい落とし穴
- 試合時間帯(朝・昼・夕方)ごとの逆算スケジュール
- 暑い日、連戦、遠征での応用と、半固形・液体の使い分け
結論の要点:時間別・量の目安(詳細は後述)
3〜4時間前:炭水化物2〜3 g/kg+低脂質の主食中心
例:体重70kgなら炭水化物140〜210g。白米・うどん・おにぎり+低脂質のたんぱく(鶏むね・白身魚・豆腐)をセットで。
2時間前:炭水化物1〜2 g/kgの軽食に調整
例:70kgなら70〜140g。おにぎり+あんぱんやバナナなど、脂質と食物繊維は控えめに。
60〜90分前:高GIで炭水化物0.5〜1 g/kg
例:70kgなら35〜70g。カステラ、どら焼き、米粉パン、スポーツゼリーなど素早く吸収されるもの。
30分前・直前:20〜30 gの速やかな糖質補給
スポーツゼリー半量、グミ、ライスシロップ、果汁100%ジュース少量など。
水分:4〜2時間前に5〜7 ml/kg、15分前に200〜400 ml
例:70kgなら350〜490mlを2〜4時間前に、直前にコップ1〜2杯。暑い日はやや上乗せ。
消化とエネルギーの基礎知識
炭水化物・脂質・たんぱく質の役割と消化速度
- 炭水化物:主燃料。消化が速く、運動時の血糖維持に直結。
- 脂質:エネルギー密度は高いが消化が遅い。試合直前は控えめ。
- たんぱく質:回復・コンディション維持に必要。ただし直前は少量に。
胃排出と運動強度の関係(走り始めに起きやすいこと)
運動開始直後は血流が筋肉に集まり、胃の動きが鈍ります。脂質・食物繊維・大量の固形物は胃に残りやすく、差し込みや横っ腹の痛みにつながることがあります。時間をずらし、量と性状(液体・半固形)を調整するのがポイントです。
低GIと高GIの使い分け
- 3〜4時間前:低〜中GI(白米・うどん・ジャムパンなど)でゆるやかに。
- 60〜90分前・直前:高GI(ゼリー、砂糖・蜂蜜系、米菓)で素早く。
時間別の食事戦略:何時間前にどれだけ食べる?
3〜4時間前:主食を中心にしっかり補給(2〜3 g/kg)
目安は「体重×2〜3g」の炭水化物。脂質は控え、たんぱく質は少〜中量。スープや味噌汁で水分・塩分も軽く確保。
2時間前:量を落として消化しやすく(1〜2 g/kg)
主食の量をやや抑え、揚げ物・乳脂肪・生野菜の山盛りは回避。甘めのパンや果物で素早く。
60〜90分前:素早く吸収される糖質(0.5〜1 g/kg)
固形なら咀嚼しやすい柔らかいもの、できれば水分とセットに。血糖の山谷を作らないよう、脂質はほぼゼロに。
30分前・直前:少量の簡易補給(20〜30 g)で仕上げる
ベタつかない・散らからないものを。アップ前後で分けてもOK。
食べない選択はあり?空腹・満腹のリスク管理
“全く食べない”は後半の失速リスクが高め。緊張で食べにくい人は、液体やゼリーで20〜40gだけでも入れておくと違います。
量の決め方:体重・体調・競技特性で微調整
体重別の目安(例:60/70/80 kgでの計算例)
- 3〜4時間前(2〜3g/kg):60kg=120〜180g/70kg=140〜210g/80kg=160〜240g
- 2時間前(1〜2g/kg):60〜120g/70〜140g/80〜160g
- 60〜90分前(0.5〜1g/kg):30〜60g/35〜70g/40〜80g
- 直前(20〜30g):体重に関わらず同程度でOK
運動量とポジションの違いをどう反映するか
SB/MFは走行距離・スプリントが多く、やや多めの炭水化物が合う人が多いです。CB/GKはやや控えめでも動きやすい場合あり。自分の消費感と胃腸の反応で調整しましょう。
胃腸が繊細な人の低FODMAPアレンジ
- 合いやすい例:白米、米粉パン、うどん、バナナ(完熟し過ぎない)、硬めのジャム、味噌汁(具は消化良く)
- 避けたい例:玉ねぎ・にんにく多め、乳糖の多い乳製品、糖アルコール入り菓子
緊張で食べられないときの液体・半固形の使い方
スポーツドリンク(4〜6%濃度)やゼリー飲料、米由来のライスシロップを小分けで。冷たすぎる飲料は腹部刺激になる人もいるので、常温〜やや冷たい程度が無難です。
具体的メニュー例(和食・コンビニで揃う現実解)
3〜4時間前の例:白米・うどん・おにぎり+低脂質たんぱく
- 白米300g(炭水化物約110g)+うどん並1玉(約55g)+鶏むね塩ゆで80g+味噌汁
- おにぎり3個(1個約38g×3=約114g)+卵焼き少量+果物少し
2時間前の例:おにぎり・あんぱん・バナナの組み合わせ
- おにぎり2個(約76g)+あんぱん1個(約45g)=計約120g
- バナナ1本(約23g)+はちみつトースト(約30g)=計約53g(体格小さめ・食欲低下時)
60〜90分前の例:カステラ・どら焼き・米粉パン
- カステラ2切れ(約50〜60g)
- どら焼き1個(約35〜40g)+スポーツドリンク少量
30分前の例:スポーツゼリー・果汁グミ・ライスシロップ
- スポーツゼリー半〜1個(20〜30g)
- 果汁グミ小袋半分(約20g)
避けたい/要注意:揚げ物・乳脂肪の多い菓子・辛味・食物繊維の摂りすぎ
コロッケ・唐揚げ、クロワッサンや生クリーム系、激辛、サラダの生野菜大盛りは直前には不向き。どうしても食べるなら3〜4時間以上前に。
水分・電解質・カフェインの扱い
開始4〜2時間前の水分量(ml/kg)と追加の目安
体重×5〜7mlをゆっくり。喉が渇く前に少しずつ。トイレ状況も踏まえて、汗かきの人は+200〜300mlを追加してもOK。
15分前の最終補水とナトリウム濃度の目安
200〜400mlを目安に。スポーツドリンクはナトリウム約460〜690mg/L(20〜30mmol/L)程度が一般的で吸収しやすいです。
暑熱時の電解質強化と量の調整
暑い日は摂取量をやや増やし、塩分タブレットや塩入りゼリーを併用。汗で白い塩跡がつくタイプは特にナトリウム補給を意識。
カフェインは必要?年齢・個人差・摂取タイミングの注意
- 使うなら試合60分前に1〜3mg/kgが一般的な範囲。
- 心拍上昇や不安感が強まる人は無理に使わない。
- 未成年は控えめにし、就寝時間との兼ね合いにも配慮。
試合時間帯別の逆算スケジュール
朝キックオフ(9〜10時)のタイムライン
- 起床直後:水分200〜300ml+軽い糖質(バナナ半〜1本)
- 2.5〜3時間前:主食中心で1.5〜2g/kg(時間が短いのでやや軽め)
- 60分前:ゼリーやカステラで0.5g/kg
- 15分前:水分200〜300ml
昼キックオフ(13〜14時)のタイムライン
- 9〜10時:3〜4時間前食(2〜3g/kg)
- 11〜12時:補食(0.5〜1g/kg)
- 15分前:最終補水
夕方・ナイター(18〜19時)のタイムライン
- 14〜15時:主食中心で2〜3g/kg
- 16:30〜17時:0.5〜1g/kgの補食
- 直前:20〜30g+補水
学校・仕事の合間でも回せる現実的プラン
持ち歩きやすいのは、おにぎり、あんぱん、バナナ、カステラ、ゼリー、グミ。保存が効き、手が汚れにくいものを常備すると崩れにくいです。
連戦・遠征・暑熱対策への応用
ダブルヘッダー/連戦日の食事間隔と量の組み方
- 試合間が短い:直後に糖質30〜60g+塩分+水分。固形が厳しければドリンクとゼリー。
- 2〜3時間空く:消化しやすい主食1〜1.5g/kg→60分前に0.5g/kg。
遠征・移動中に崩さない補給プラン(持ち運べる定番)
おにぎり、米粉パン、どら焼き、個包装ようかん、ライスシロップ、塩飴、500mlボトル(スポドリ・水)を組み合わせ。車酔いがある人は炭酸・高脂肪は避けると無難。
暑い日の塩分・水分戦略とけいれん対策
発汗量が多い人はナトリウム入りドリンクを中心に。けいれん対策は、十分な水分・塩分・炭水化物・コンディショニング(睡眠・疲労管理)の総合対応で。
前日からの準備:軽いカーボローディングという考え方
前夜の夕食で意識すること(量・質・塩分)
主食をいつもよりやや多め(例:白米+1杯)、脂質は控えめ、塩分は極端に減らしすぎない。消化の良いおかずで整えると翌朝が楽です。
起床時のチェック:体重・尿色・空腹感
前日比の体重変化、尿の色が濃すぎないか、空腹の度合いで当日の量を微調整。重だるいときは直前の固形を減らし、液体・ゼリーを増やす判断も。
ハーフタイム・延長を見据えた『試合前の設計』
ハーフタイム補給を前提にした前食の配分
前食で“満タン”を狙いすぎず、ハーフタイムに糖質20〜40gを確実に入れる設計だと、後半の後半に効きます。オレンジ、ゼリー、ようかん、グミが現実的。
延長・PKに備える糖質戦略(枯渇を避ける工夫)
延長が想定される大会では、後半30分前後での糖質追加(10〜20g)も検討。足つり予防には水分・塩分も同時に。
よくある質問(FAQ)
糖質制限中はどうする?一時的な調整案
試合当日〜前日はパフォーマンス優先で糖質を戻すのが一般的です。少なくとも直前の補食は入れ、合わない食品は避ける形で。
プロテインシェイクは必要?摂るなら量とタイミング
直前は不要なことが多いです。摂るなら3〜4時間前に20g前後。試合後の回復で20〜30gを意識。
エナジードリンクはアリ?成分とリスク
糖とカフェインで一時的に楽になることはありますが、心拍・胃腸の不調や睡眠の質低下に注意。原材料とカフェイン量を確認し、未成年は控えめに。
バナナとゼリー、どちらが良い?使い分けの基準
咀嚼が面倒・緊張で食べにくい→ゼリー。持ち運びやすさと手軽さ→バナナ。どちらも20〜30g/本(個)程度の糖質です。
胃もたれ・下痢を避けるには?個人差とテストの重要性
新しい食品は本番でいきなり使わない。練習日で同時刻に試す→記録→修正が鉄則です。
朝食を抜いたほうが軽い?空腹で動ける/動けないの分岐点
軽さとパワーは別物。空腹でキレを感じても、後半に失速しやすいです。ゼリーや飲料でもいいので最低限の糖質は入れましょう。
ガイドラインの根拠と注意点
国際的なスポーツ栄養ガイドラインに沿った目安の範囲
本記事の量・時間の目安は、国際的なスポーツ栄養ガイドラインに示される範囲(例:運動前の炭水化物1〜4g/kgを1〜4時間前、事前の水分5〜7ml/kgなど)を、日本の食文化・入手性に合わせて具体化したものです。個人差は必ずあるため、練習での検証を前提にしてください。
既往症・薬の影響がある場合は専門家へ相談
胃腸疾患、糖代謝、心血管系、食物アレルギー、薬の服用がある場合は、医療者・管理栄養士等に相談のうえで調整してください。
まとめ:あなたの最適解を見つけるチェックリスト
1週間で試す→記録→修正のサイクル
- 量:体重×(時間別のg/kg)に対して“自分は±どれくらい”が快適か
- 食品:合う主食トップ3とNG食品を把握
- 水分:尿色・体重変化・口渇のクセを把握
- 時間:学校・仕事の動線に落とし込んだルーティンを固定
当日の最終確認ポイント(食事・水分・体調・排便)
- 3〜4時間前:主食たっぷり、脂質控えめでOK?
- 60〜90分前:高GI補食は確保できた?
- 15分前:最終の補水200〜400mlは済んだ?
- 体調:胃の張り・空腹感・トイレは万全?
後書き
ベストな「時間」と「量」は教科書どおりにいかないこともしばしば。だからこそ、目安を“土台”にして、自分仕様へカスタムしていくことが大切です。今日の練習から小さく検証を始めて、本番では迷いなく食べられる形を一緒に作っていきましょう。走れる身体は、ピッチに立つ前の30分からできています。