目次
- はじめに
- この記事の使い方:ドリブルチェックリストの前提と運用
- 事前準備のチェックリスト(装備・環境・安全)
- 身体準備のチェックリスト(ウォームアップとモビリティ)
- メンタル準備と目標設定のチェックリスト
- 技術基礎:ボールマスタリーのチェックリスト
- ファーストタッチと体の向きのチェックリスト
- スキャンニングと状況認知のチェックリスト
- 1対1テクニックのチェックリスト
- 方向転換・ターンのチェックリスト
- スピードに乗ったドリブルのチェックリスト
- 狭い局面のドリブルのチェックリスト
- 練習メニュー設計のチェックリスト(設計思想)
- レベル別・年代別アレンジ
- 設備が少ない日の代替案
- 時間別テンプレート(15/30/60分)
- テストと計測のチェックリスト(客観データ)
- 進捗管理とレビューのチェックリスト
- よくあるミスと即時修正ポイント
- 試合への落とし込み:意思決定のチェックリスト
- パートナー練と守備プレッシャー段階づけ
- コンディショニングとリカバリーのチェックリスト
- 安全とオーバーワーク防止
- チェックリスト総まとめ(練習前/中/後)
- 付録:印刷用チェックリスト雛形
- おわりに(まとめ)
はじめに
ドリブルは「足でボールを運ぶ技術」以上のものです。準備・身体・メンタル・技術・認知・意思決定が噛み合って、はじめて試合で通用します。本記事は、ドリブルに必要な要素をチェックリスト化し、事前・練習中・事後まで抜け漏れをゼロに近づけるための実用ガイドです。すぐに使える記録方法やテスト、設備が少ない日の代替案まで網羅しました。今日の練習から、そのまま活用してください。
この記事の使い方:ドリブルチェックリストの前提と運用
チェックリストの目的とメリット
- 抜け漏れ防止:準備や練習の「やり忘れ」を減らす。
- 再現性の確保:調子の波を減らし、安定して上達する。
- 客観化:感覚だけに頼らず、データで変化を把握する。
- 意思決定の質向上:ドリブルを「仕掛ける/離す」の判断まで結びつける。
活用の流れ(事前→練習→事後)
- 事前:装備・環境・身体・目標をチェック。
- 練習中:技術・認知・強度・記録を回し続ける。
- 事後:フォーム・データ・主観を振り返り、次回の処方へ。
記録方法と基準(○/△/× と数値の併用)
- 達成度:○=達成、△=不十分、×=未実施。
- 数値:タイム、成功率、回数、RPE(主観的きつさ 1〜10)をセットで記録。
- メモ:気づき1行(例「視線が落ちやすい→スキャンの合図追加」)。
用語の簡易定義(タッチ、スキャン、オープンスキル など)
- タッチ:足でボールに触れる一回の接触。
- スキャン:周囲(相手・味方・スペース)を素早く見る行為。
- オープンスキル:環境の変化に合わせて動作を調整するスキル。
- 方向づけのファーストタッチ:次の動作に有利な位置に最初の接触で置くこと。
- RPE:主観的運動強度(1=余裕、10=限界)。
事前準備のチェックリスト(装備・環境・安全)
シューズの状態・グリップ・サイズ確認
- アウトソールの摩耗(スタッド/トレッドの残り)
- インソールのズレ・へたり
- つま先の剥がれ・縫い目の緩み
- グリップと路面の相性(土/人工芝/天然芝/体育館)
- 紐の締め直し(甲の圧迫と踵のロック)
ボールのサイズ・空気圧・摩耗具合
- サイズとカテゴリーの整合
- 空気圧(指が1cm程度沈む目安)
- パネルの剥がれ・偏り・真円性
グラウンドの路面状況・混雑・照明
- 滑りやすい箇所/段差/穴の確認
- 人の導線(衝突リスク)
- 夜間の照度と影の出方
コーン・マーカー・ミニゴール・タイマーの有無
- コーン6〜12個、フラットマーカー10枚程度
- ミニゴール/マーカーゴールの代替可
- タイマー/スマホ/ホイッスル
水分・タオル・救急セット・天候対策
- 水分(電解質含む)と補食
- タオル/替えソックス
- テーピング/消毒/絆創膏
- 防寒/雨具/日焼け対策
撮影機材・計測アプリ・スペースの導線確認
- スマホ三脚/定点固定
- ストップウォッチ/測定アプリ
- 走行ラインと人の横切り防止の導線
身体準備のチェックリスト(ウォームアップとモビリティ)
一般ウォームアップ(心拍上げ・関節可動)
- 軽いジョグ2〜3分→サイドシャッフル→バックペダル
- ダイナミックストレッチ(ハム・クワッド・カーフ)
足首・股関節・胸椎のモビリティ
- 足首ロッキング(膝つま先正面で壁タッチ)左右各10回
- 股関節90/90・ワールドグレイテストストレッチ
- 胸椎回旋(四つ這いスレッドニードル)
アクチベーション(腸腰筋・臀筋・内転筋・コア)
- バンドウォーク(前後/左右)
- ヒップリフト/クラムシェル
- コペンハーゲンプランク(軽負荷)
- デッドバグ/プランク
スプリント前ドリル(Aマーチ・スキップ・加速準備)
- Aマーチ→Aスキップ→Aラン
- 3点スタートの加速2〜3本(短距離)
段階的プライオ(低強度→中強度)
- アンクルホップ/ラテラルホップ
- ストップ→2歩再加速のブレーキ感覚入れ
メンタル準備と目標設定のチェックリスト
今日のテーマ設定(例:方向づけのファーストタッチ)
- テーマを1つだけ選ぶ(例「守備の逆を取る角度」)
KPIと基準(回数・成功率・タイム・RPE)
- 例:L型ドリブル10本、平均6.5秒以下、成功率80%以上、RPE7
ルーティン・呼吸・イメージトレーニング
- 入場ルーティン(深呼吸×3→視線を上げる→合図)
- 成功イメージを具体的に1場面だけ描く
意思決定の狙い(仕掛ける/離すの条件)
- 仕掛ける:相手の重心固定・カバー遅い・味方サポート位置良い
- 離す:相手2枚以上・背後ケア速い・味方が前向き
技術基礎:ボールマスタリーのチェックリスト
インサイド/アウトサイドの連続タップ
- 左右各30秒×2セット(姿勢アップライト、視線は前>ボール)
ボールロール・ドラッグ・プルプッシュ
- 足裏ロール左右→前後ドラッグ→プル&プッシュの連結
V字・L字・ダブルタッチの基礎反復
- V字×20回、L字×20回、ダブルタッチ左右×20回
足裏コントロールと停球・リフト
- ストップ(足裏)→即リフト10回、反応速度を意識
コーン間の細かいタッチ(幅・リズム調整)
- 1.0m→0.8m→0.6mで難度を上げる
- リズム(一定→変速)を切り替え
ファーストタッチと体の向きのチェックリスト
方向づけるトラップ(守備の逆を取る角度)
- 相手の利き足側と逆へ45°〜60°の角度で置く
オープンボディの確保と軸足の向き
- 腰と胸を進行方向へ、軸足つま先は開きすぎず10〜20°
ファーストタッチの距離・強度・面の使い分け
- 距離:1.0〜2.0m(スペース広狭で調整)
- 面:インサイド=正確、アウトサイド=素早い離脱
二歩目の加速準備(前足荷重→爆発)
- 接地短く、二歩目で「前足に乗る→押し出す」
スキャンニングと状況認知のチェックリスト
スキャン頻度とタイミング(受ける前/触る前)
- 受ける1〜2秒前→0.5秒前→触る直前の最低2回
視線の高さと周辺視の意識
- 視線は顔の向きは前、目線だけで落とす
相手の重心・足の置き所・距離の読解
- 足幅が広がる瞬間=方向転換のチャンス
味方とスペースのトリガー(内/外/背後)
- 内:味方のサポートが内側に現れる瞬間
- 外:タッチライン側1v1の孤立を作る
- 背後:CBの背後の空白を確認
1対1テクニックのチェックリスト
フェイント(シザーズ/ダブルシザーズ/ステップオーバー)
- フェイントは「視線・肩・骨盤・タッチ」を同期
重心移動と逆足プッシュの同期
- 沈む→止まる→逆足で押す(間合い0.5〜1.0m)
ストップアンドゴー/チェンジオブペース
- 0→100→60→100の緩急でギャップを作る
シールド・腕の使い方・接触耐性
- 前腕で距離管理、肘は張りすぎず相手を感じる
抜いた後のボール保持と次の選択
- 2〜3タッチ先のパス/シュート/保持の選択を決めておく
方向転換・ターンのチェックリスト
クライフターン・ドラッグバック・アウトサイドカット
- 三種を連続でつなぐ(フェイク→ターン→加速)
90/180/270度での可変ターン
- 角度別に同一フォームで行えるか確認
減速→方向転換→再加速のリズム
- 減速の歩数を短く(2歩以内)
軸足と支点の安定・上半身の先行回旋
- 頭から先に回らず、胸→腰→足の順で素早く
スピードに乗ったドリブルのチェックリスト
大きめタッチと歩幅の整合
- ボールは1.5〜2.5m先、歩幅と同調
アウトサイド主導と足の入れ替え
- アウトサイドで細かく調整→大きく解放
視線配分(進行方向50%・周辺50%目安)
- 前方のスペースと周囲の圧力を半々で把握(目安)
接触を想定した体幹・腕の位置
- 肘はコンパクト、体幹で衝突吸収
狭い局面のドリブルのチェックリスト
足裏の活用とタッチの密度
- 足裏タッチ/ロールを多用しボールを体の下に保つ
体の開閉(半身)で出口を作る
- 半身を作り、常に2方向の逃げ道を確保
相手の足を固定して抜くタイミング
- 相手の踏み込み足が着いた瞬間に逆へ
最小限の動作での角度変更
- 切り返しは小さく速く、腕で距離をキープ
練習メニュー設計のチェックリスト(設計思想)
クローズド→セミオープン→オープンの段階づけ
- 型の反復→ランダム提示→対人・ゲーム局面
制約主導設計(片足縛り/方向限定/タッチ制限)
- 片足のみ/2タッチ以内/出口は外限定…など
個人/ペア/小集団の配分
- 個人でフォーム→ペアでタイミング→小集団で意思決定
強度・回復・ボリューム(作業:休息比)
- 技術:休息=1:1〜1:2、対人は1:3目安
転移性(試合へのつながり)の評価
- 練習の直後に「試合で起こる状況」を1つ言語化
レベル別・年代別アレンジ
初級:反復とフォーム優先
- コーン幅広め、タイムより正確性
中級:認知とタイミングの融合
- コーチの合図で出口変更、スキャン回数を指定
上級:高強度・意思決定・フェイクの連結
- フェイク→ターン→加速→選択(パス/シュート)を一連で
ジュニア/ユース/大人での負荷調整
- ジュニア:時間短め、回数多め
- ユース:時間中程度、強度高め
- 大人:ウォームアップ長め、回復長め
フットサル/屋外の違いと適応
- フットサル:足裏多用、密度高い
- 屋外:タッチ大きめ、走力連動
設備が少ない日の代替案
狭小スペース(自宅前/廊下想定)の工夫
- 足裏・V字・L字・プルプッシュ中心、30秒インターバル
壁当て応用(ファーストタッチ→方向づけ)
- 壁→ファーストタッチで45°に置き2歩加速
コーンがない時の地面マーク・影・線活用
- 落ち葉/石/ラインで代用、間隔1m目安
ペアなしでの疑似プレッシャー設定
- タイマー合図で出口変更、影に寄せられた想定でターン
時間別テンプレート(15/30/60分)
15分:超短時間ブースト
- ウォームアップ3分→ボールマスタリー6分→1v1代替/ターン4分→計測/メモ2分
30分:基礎×ゲーム転移
- ウォームアップ5分→ファーストタッチ7分→1対1テク7分→スピードドリブル7分→振り返り4分
60分:フルセッション(測定含む)
- ウォームアップ15分→技術基礎10分→認知/スキャン10分→1対1/方向転換15分→計測5分→クールダウン5分
週内配分(軽→中→高強度)の目安
- 軽:技術・フォーム(RPE4〜5)
- 中:認知・対人ライト(RPE6〜7)
- 高:対人/全力スプリント連動(RPE8〜9)
テストと計測のチェックリスト(客観データ)
スラロム10m/20m(コーン間1.5m目安)
- 2本の平均タイム、ライン踏み/コーン接触は減点
L型ドリブル(ターン精度評価)
- 5m→直角→5m、ターンのタッチ数と減速歩数も記録
30秒タッチ数(質と量の両面)
- 指定動作のタッチ数+ミス回数(質の指標)
Y字アジリティwith ball(判断+速度)
- 合図で左右選択、タイム+進行判断の正答率
成功率・タイム・RPEの三点記録
- 数値+一言メモで、次回の処方につなげる
進捗管理とレビューのチェックリスト
目標→指標→実行→振り返りのフレーム
- 目標(例:1v1突破率↑)→指標(成功率/タイム)→実行→振り返り(次の処方)
動画撮影のアングル(正面/横/俯瞰)
- 正面=左右差、横=姿勢/加速、俯瞰=ライン/間合い
フォームの基準(膝/股関節/胸の向き)
- 膝は内に入らない、股関節で方向付け、胸は前向き維持
週次レビュー(伸び/停滞/次週の処方)
- 伸びた指標/停滞指標/原因仮説/具体策を1行ずつ
よくあるミスと即時修正ポイント
視線が下がる→スキャン合図の挿入
- タッチ3回ごとに正面のマーカーを見る合図を設定
タッチが大きすぎ/小さすぎ→歩幅と面の調整
- 大=面をインからアウトに、小=歩幅を広げる
減速が不足→ブレーキングドリル追加
- 5m加速→2歩で停止→方向転換→2歩加速を反復
利き足偏重→非利き足制約の導入
- 非利き足のみタッチ/出口方向を逆へ縛る
腕の使い方→シールドとバランス再学習
- 前腕で相手を感じる練習+片足立ちで上体ツイスト
体幹の硬さ→モビリティと基礎補強
- 胸椎回旋→デッドバグ→短いスプリントで連結確認
試合への落とし込み:意思決定のチェックリスト
仕掛ける/離すの判断トリガー
- 仕掛け:相手の足が揃う/重心が後ろ/カバー遠い
- 離す:縦が閉じる/味方が前向き/背後ケアが速い
ゾーン別の優先行動(自陣/中盤/敵陣)
- 自陣:リスク最小、前進優先
- 中盤:数的優位を作るドリブル
- 敵陣:1v1で優位作り→PA付近はPKリスク考慮
味方の位置・相手の枚数・カバーの計算
- 味方のサポート角度/相手の背後の空き/セカンドカバー
ファウル管理とリスク/リターンの釣り合い
- 時間帯/スコア/カード状況で判断を切替
ドリブル後の選択(パス/シュート/保持)
- 突破後2タッチ以内に次を決める原則
パートナー練と守備プレッシャー段階づけ
マーカー→影圧→受動→能動の四段階
- コーン相手→影圧(距離固定)→受動(触らない守備)→能動(奪いにくる)
1v1の距離・角度・制約設定
- 開始距離3〜5m/角度斜め45°/片側ラインアウト
2v1/3v2トランジションへの接続
- 突破後の数的優位でパス or 2人目で追い越す
GK有りのフィニッシュ連動
- 抜いた直後のシュート精度(ニア/ファーを事前決定)
勝敗条件とリセットルールの明確化
- 制限時間/得点/カバーライン到達で勝敗、ファウルでリセット
コンディショニングとリカバリーのチェックリスト
足部/ふくらはぎのケア(ローリング/ストレッチ)
- 足裏リリース→カーフのローリング→アキレス腱ストレッチ
補強(内転筋・腸腰筋・ハムストリング)
- アダクターサイドプランク/ヒップフレクサーマーチ/ノルディック軽負荷
栄養・水分・睡眠の基本
- 練習後30分以内に炭水化物+たんぱく質補給
- 水分と電解質の補給、睡眠時間の確保
翌日に残さないためのクールダウン
- 軽いジョグ→ストレッチ→呼吸3分
安全とオーバーワーク防止
痛みのレッドフラッグ(中止基準)
- 鋭い痛み/腫れ/しびれ/違和感が悪化する場合は中止
負荷管理(週当たり量・強度の目安)
- 強度は週ごとの増加を少しずつ(急増を避ける)
休養日・軽日・高日バランス
- 休養/軽/高を1:2:1などで配置し回復を確保
再開プロトコル(休止後の段階復帰)
- フォーム→低強度→中強度→高強度の順で戻す
チェックリスト総まとめ(練習前/中/後)
練習前:装備・環境・身体・目標
- 装備/ボール/路面/導線→ウォームアップ→今日のKPI設定
練習中:技術・認知・強度・記録
- 技術→認知→意思決定→強度管理、○/△/×+数値を同時進行で
練習後:整理・計測入力・動画確認
- タイム/成功率/RPE入力→動画でフォーム確認→一言メモ
翌日のフォロー(可動/軽いボールタッチ)
- モビリティ+軽いマスタリー5〜10分で固まり予防
付録:印刷用チェックリスト雛形
日次チェック項目テンプレート
【日付】____ 【テーマ】____ 【RPE】_/10[装備] □シューズ □ボール圧 □コーン/タイマー □水分/救急[環境] □路面 □混雑 □照明 □導線[身体] □ウォームアップ □モビリティ □アクチベーション[技術] □マスタリー □ファーストタッチ □1v1 □ターン □スピード[認知] □スキャン頻度 □視線配分 □判断トリガー[計測] タイム:__ 成功率:__% 回数:__[メモ] ________________________
数値記録欄(タイム・回数・RPE)
スラロム10m:_秒・_秒(平均_)L型:_秒(減速歩数_) 30秒タッチ:_回(ミス_)Y字:_秒(正答_/_)RPE(全体):_/10 痛み:無・有(部位__)
自由記述メモ欄
今日の気づき:____________________次回の処方:_____________________
親子/指導者と共有するための確認リスト
- 今日のテーマは達成できたか(○/△/×)
- 次回に優先する課題は1つか
- 安全面の問題はなかったか
おわりに(まとめ)
ドリブルの上達は、足元の練習量だけで決まりません。準備・身体・メンタル・技術・認知・意思決定・レビューを一つの流れにすると、積み上げがそのまま試合で活きます。今日のテーマをひとつ決め、○/△/×と数値で記録し、動画で確認。これを回し続けるだけで、突破力もボールロストの減少も着実に変わっていきます。チェックリストは「型」ではなく「土台」。自分用に少しずつカスタマイズして、抜け漏れゼロのドリブル練習を定着させていきましょう。