「8人制サッカーって、11人制と何が違うの?」小学生の試合を初めて観ると、ピッチもゴールも小さく、ルールも少し違うように見えて戸惑いやすいもの。この記事では、8人制サッカーの基本からリスタート、反則、交代、当日の準備、観戦のコツまで、必要なポイントをまとめて解説します。大会ごとに細かな「ローカルルール」があるため、最終的には大会要項を必ず確認しつつ、ここで全体像をつかんで迷わず試合を楽しみましょう。
目次
8人制サッカーの基本をまず把握しよう
8人制サッカーとは?11人制との違い
8人制サッカーは、小学生年代を中心に行われる少人数のサッカー形式です。基本のルールはサッカー競技規則(IFABのLaws of the Game)に準じますが、ピッチやゴールのサイズ、試合時間、再開方法の一部などが、子どもの発達段階に合わせて簡略・調整されています。11人制との主な違いは次のとおりです。
- 人数:フィールドプレーヤー7人+GK1人の計8人
- ピッチ:11人制より小さい(大会要項で範囲が指定されることが多い)
- ゴール:11人制より小さいサイズ
- 試合時間:短め(例:15〜20分ハーフなど)
- 再開:一部でキックインやビルドアップライン(リトリートライン)を採用する場合あり
プレーの本質(ボール、相手、スペースの駆け引き)は同じですが、8人制は「関わる回数が増える」「状況判断がしやすい」などの特徴があり、育成に適した形式として広く採用されています。
小学生年代で8人制が採用される理由(育成・安全・運営面)
- 育成面:ボールタッチや関与回数が増え、攻守の切り替えや判断力を学びやすい。ポジションの固定化を避け、幅広い経験を積みやすい。
- 安全面:接触やロングスプリントの負荷が相対的に減り、無理のない距離・サイズでプレーできる。
- 運営面:会場確保や審判体制が組みやすく、試合回数を増やしやすい。
8人制サッカーの基本ルール一覧
人数・ポジションと選手登録の考え方
出場は1チーム8人(GKを含む)。ポジション名は3バック・2バックなど様々ですが、名称よりも役割の理解(ボール保持、サポート、カバー)が大切です。ベンチ入り人数や選手登録の制限は大会規定に従いましょう。試合前にメンバー表の提出が必要な大会も一般的です。
試合時間・ハーフタイム・決し方の目安
小学生の8人制では、15〜20分ハーフがよく見られます(ハーフタイムは5分程度)。ただし、12分×3ピリオド制など別形式もあり得ます。勝敗の決し方は、リーグ戦では引き分けを採用し、トーナメントでは延長なしでPK方式を採用するなど、主催者ルールに従います。
使用ボールと用具(レガースは必須)
- ボール:小学生は4号球が一般的(低学年対象の大会では3号球の場合あり)
- 必須用具:ユニフォーム上下・ストッキング・すね当て(レガース)・スパイクまたはトレーニングシューズ
- 禁止事項:アクセサリー類(ピアス・ネックレス等)は不可。テーピングで覆っての着用も不可。
- インナー(アンダーシャツ・タイツ):袖・裾の色はユニフォームと同系色で揃えるのが基本。
ピッチサイズ・ゴールサイズの目安とフィールド標示
大会要項で範囲が指定されますが、8人制のピッチは11人制より一回り以上小さく設定されます。ゴールは小学生向けサイズ(例:幅約5m×高さ約2m程度が用いられることがある)を採用するケースが多いです。ペナルティエリアやコーナーアーク、ペナルティマークの位置はローカルルールで示されます。ペナルティマークの距離表記(例:8mなど)も大会で異なるため、事前確認が確実です。
審判体制と帯同・保護者の関わり方
小学生の大会では主審1人制が一般的で、必要に応じてチーム関係者がラインズマン(記録やボールアウトの補助)を務める場合があります。観戦者はタッチラインから一定距離を取り、審判・相手チーム・選手へのリスペクトを守りましょう。判定への過度な抗議や指示出しは控え、子どものプレーを後押しする雰囲気づくりが大切です。
リスタートの進め方を簡単解説
キックオフ(得点可否と陣形の注意)
- 開始・得点後の再開はセンターサークル中央から行います。
- ボールは前後どちらに蹴ってもOK。原則としてキックオフから直接得点は可能です(ローカルで別規定の場合あり)。
- 相手選手は自陣に戻り、ボールが蹴られるまでセンターサークルの外に位置します。
- 陣形は、蹴る側が一斉に前がかりになりすぎるとカウンターを受けやすいので、バランスを意識しましょう。
スローインの基本(地区によってはキックイン採用あり)
- ボールがタッチラインを越えたら相手ボールでスローイン。両足を地面につけ、頭の後ろから両手で投げ入れます。
- 小学生対象の一部大会では「キックイン」を採用することがあります。キックインは置いたボールを蹴って再開。どちらが採用されるかは大会要項で確認を。
- スローインからは原則直接得点はできません(味方に触れて入れば得点)。
ゴールキックの手順とビルドアップラインの有無
- 攻撃側が最後に触れてゴールラインを越えた場合は守備側のゴールキック。
- 現在の基本ルールでは、ボールは蹴られ動いた時点でインプレー。ペナルティエリア内で味方が受けてもOKです。
- 小学生の大会では、相手が一定ライン(ビルドアップライン/リトリートライン)まで下がる規定を設け、ビルドアップを促す場合があります。ラインの位置と再開条件は必ずチェックしましょう。
コーナーキックの基礎と合図
- 守備側が最後に触れてゴールラインを越えたら、攻撃側のコーナーキック。
- コーナーアーク内に静止したボールを置き、主審の合図後に蹴ります。直接ゴールも可能。
- 小学生ではショートコーナー(近くの味方への短いパス)も有効。守備側のマークが緩くなりやすい場面です。
ドロップボールの扱いと再開位置
- 負傷や外的要因で競技が停止したときの再開方法です。
- 基本はボールが最後に触れたチームの選手に対してドロップし、相手は所定の距離(約4.5m)離れます。
- ペナルティエリア内で停止した場合は、守備側GKにドロップされるのが一般的です。
反則・ファウル・カードの基礎
直接FK・間接FK・PKの違い
- 直接フリーキック(DFK):ハンド、チャージング、キック、つかむ等の反則。直接シュートで得点可。
- 間接フリーキック(IFK):危険なプレー、オブストラクション、GKの6秒オーバーなど。ゴールするには他の誰かが触れる必要あり。
- PK:直接FKの反則が自陣ペナルティエリア内で起きた場合に与えられる。
オフサイドの考え方(小学生で迷いやすいポイント)
- 味方からボールが出た瞬間、相手陣内で「ボールと相手2人目の後ろ」にいるとオフサイドポジション。関与(プレーに干渉、相手に干渉、利益を得る)があると反則。
- 小学生大会では、オフサイドラインをハーフウェーラインや専用ラインに簡略化する場合があります(導入例)。大会規定を確認しましょう。
- ボールより前に出る時は、タイミング(出し手のボールタッチの瞬間)を意識するのがコツ。
スライディングタックルや接触の安全基準
- ボールに対する正当なスライディングは許容されますが、危険な接触(足裏を見せる、過度な勢い、後方からのチャージ)は反則。
- 体格差が大きい年代なので、安全第一。無理な突進や腕の使用(引っ張る・押す)は避ける。
- 審判は、安全優先の基準でファウルやカードを判断します。
GKの6秒・バックパス・配球のルール
- 6秒ルール:GKが手でボールを保持できるのは目安として約6秒。
- バックパス:味方が意図的に足で蹴ったボールを、GKは手で扱えません。スローインを直接受けてのハンドも不可。
- 配球:投げる・転がす・蹴るなどで再開。ビルドアップライン採用時は、相手の位置が整ってからプレー再開する規定が設けられる場合があります。
交代とベンチワークのルール
交代方法と再交代の可否(大会規定で異なる)
- 基本はプレーが止まった時に主審の許可を得て交代。センターライン付近から入退場します。
- 小学生大会では再交代(自由な交代)を認めるケースが多い一方、回数制限や同一選手の再出場禁止など、独自規定もあります。
ベンチ入り・メンバー表・背番号の注意点
- ベンチ入り人数やスタッフ数は大会要項で確認。メンバー表は事前提出のことが多い。
- 背番号は判別しやすいものを。GKのビブスやユニフォームは他と識別可能な色に。
- 飲料・医療品はベンチ内で管理し、ピッチ内への持ち込みは審判の指示に従う。
タッチラインでのマナーと声かけ
- 選手交代時以外はタッチラインに出ない。コーチングは簡潔に。
- 審判や相手へのリスペクトを徹底。判定への過度な抗議は子どもにも悪影響です。
大会ごとに違うローカルルールを見極める
フリーキックの相手距離の設定(例:6〜9m)
大人は9.15mが標準ですが、小学生8人制では相手選手の距離を短縮(例:6〜9mの範囲で設定)する大会があります。主審が距離を調整するので、速いリスタートの可否や合図の要否も含めて確認を。
PKマークの距離とサイズ表記の違い
ペナルティマークの距離は大会により異なる場合があります(例:8mなど)。ライン計測は主催者の基準に従うため、練習時も想定距離でシミュレーションしておくと安心です。
オフサイドライン/リトリートラインの導入例
守備側が一定ラインまで下がる「リトリートライン(ビルドアップライン)」や、判定を簡易化する「オフサイドライン」を導入する大会があります。ラインの位置(ハーフウェー、ペナルティエリア延長線、専用マークなど)と、再開条件(ボールが一定地点を通過したら寄せてよい等)を事前に共有しましょう。
安全確保のための特別規定(装具・中断基準など)
- 装具:メガネはスポーツ用ゴーグル推奨。寒冷時の手袋・ニット帽は安全性を損ねないものに限る。
- 中断基準:雷鳴や落雷の兆候があれば即時退避。高温時はクーリングブレイクや給水タイムを設ける場合あり(WBGT等の指標を用いる大会も)。
当日の準備チェックリスト
レガース・スパイク・インナーの色合わせ
- レガース:必須。ストッキング内に完全に収まるサイズを。
- スパイク:ピッチ(芝・土)に合ったソールを。シューレースは結び直しやすく。
- インナー:ユニフォームと同系色。背中や袖口から大きくはみ出さない。
水分・暑熱寒冷対策・補食の準備
- 水分:水・スポーツドリンクを状況で使い分け。試合30〜60分前にこまめに。
- 暑さ:帽子や冷却タオル、日陰確保。寒さ:ウィンドブレーカー、手袋。
- 補食:消化に良いもの(おにぎり、バナナ、ゼリー等)。直前は量を控える。
爪・アクセサリー・テーピングの可否
- 爪は短く切る。引っかけ事故の予防。
- アクセサリーは外す。テープで覆っての着用は不可。
- テーピングは可だが、安全と識別の妨げにならないように。
保険・健康チェック・同意書の確認
- スポーツ保険の加入状況を確認。
- 体調・睡眠・食事のチェック。発熱や体調不良は無理せず。
- 大会で求められる同意書・健康申告書の提出忘れに注意。
観戦・応援で迷わないポイント
8人制の基本フォーメーション例(2-3-2、3-3-1)
- 2-3-2:攻撃に厚みを作りやすい。プレス回避に中盤で数的優位を作る狙い。
- 3-3-1:守備の安定を図りつつ、前線1枚に明確な基準点を置く形。
「型」に縛られすぎず、ボール位置で流動的にポジションが入れ替わるのが8人制の面白さ。選手の特徴に合わせて柔軟に。
ゴールキック時の全体配置を見るコツ
- ビルドアップラインがある場合:相手が下がっているうちに素早い再開で前進。
- ない場合:幅(サイドバックの位置)と高さ(中盤・前線の立ち位置)で相手のプレスを分散。
- GK・CB・中盤の三角形を早めに作り、「次のパス先」を常に2つ以上用意する。
守備の優先順位(ボール・ゴール・人)
- 1:ゴールを守る(最終ラインとGKの位置)
- 2:ボールの前進を止める(遅らせる・限定する)
- 3:マーク(人をつかむ)
小学生ではボールに寄りすぎて背後が空くことが課題になりがち。縦のバランス(最後尾と前線の距離)に注目して観ると、チームの整理点が見えてきます。
子どもを伸ばす声かけのしかた
- 結果よりプロセスを褒める:「良いサポート位置だったね」「判断が早かった」
- キーワードを短く:「顔を上げよう」「幅を取ろう」「早く戻ろう」
- ミスは学びに変える:「今のはなぜうまくいかなかった?次どうする?」
よくある質問(FAQ)
GKグローブや帽子など装備の例外
GKグローブはもちろん着用可。寒冷時のニット帽や手袋、炎天下のキャップは、視界や安全を妨げない範囲で許可される場合があります。装具は金具・ひも・硬い突起など、接触で危険となる要素がないか確認しましょう。
交代選手の入退場位置はどこ?
基本はセンターライン付近のタッチラインから、主審の許可を得て入退場します。交代の合図を省略せず、交代相手が完全に出てから入るのが原則です。
審判が1人のときの線審協力
主審1人制の試合では、チーム関係者がクラブラインズマンとしてボールアウトの判定を補助する場合があります。原則としてオフサイドやファウルの判定は主審が行い、求められた範囲での協力にとどめます。
雷雨・猛暑時の中断と再開の目安
雷鳴が聞こえたり稲光が見えたら、速やかに安全な屋内や車内へ退避。再開は主催者・審判の判断に従います(雷は充分な時間の待機が一般的)。猛暑時はクーリングブレイクや給水タイムが設定される場合があり、状況により試合短縮・中止もあり得ます。主催者が示す基準(気温・WBGTなど)に従いましょう。
8人制から11人制への橋渡し
ピッチサイズ拡大への感覚づくり
- ロングレンジのコントロール(トラップの方向、ファーストタッチの強弱)
- 視野の拡張(首振りの頻度を増やす、ボール非保持時の観察)
- 走力の配分(スプリントとジョグの切り替え、戻りの習慣)
役割とポジショニングの移行
- 2列目・3列目の連動距離が広がるため、縦関係の距離感を意識。
- サイドはタッチラインをうまく使い、外→中、または中→外の優先順位を整理。
- 守備はチャレンジ&カバーを明確に。数的不利で無理に奪いにいかない判断を身につける。
練習メニューでの段階的なルール拡張
- ハーフコートでの9v9、10v10へ段階的に人数とサイズを拡大。
- オフサイドのラインを実線・マーカーで可視化し、認知を定着。
- セットプレー(CK・FK・PK)のバリエーションを11人制前提で設計。
まとめ:大会要項を確認しつつ、8人制サッカーを楽しもう
8人制サッカーは、ルールの本質は11人制と同じながら、子どもに合ったサイズと進め方に調整された育成特化の形式です。ピッチやゴールのサイズ、試合時間、相手選手の距離、オフサイドやビルドアップラインの運用などは大会ごとに差があるため、当日の迷いを減らすいちばんの近道は「大会要項を事前に読み込む」こと。装具・マナー・安全面をきっちり整え、保護者は前向きな声かけとリスペクトで子どもたちを後押ししましょう。ルールを味方につければ、プレーの意図が見えて観戦ももっと面白くなります。8人制サッカーを、安心して、思いきり楽しんでください。