トップ » ルール » ペナルティエリアとは?わかりやすく範囲・反則・守備の要点

ペナルティエリアとは?わかりやすく範囲・反則・守備の要点

カテゴリ:

ペナルティエリアは、試合の勝敗を一気に動かす“最終局面”の舞台です。ここを正しく理解できているかどうかで、守備の落ち着きも、判定への対応力も、そして失点数も変わります。本記事では「ペナルティエリアとは?わかりやすく範囲・反則・守備の要点」をテーマに、競技規則に基づいた事実と、現場で役立つ実践的なコツをまとめて解説します。細かな数字や用語は噛み砕きつつ、実戦での判断に直結する視点を重視しました。

ペナルティエリアとは?基本の定義と役割

競技規則における正式な定義

ペナルティエリア(PA)は、各ゴール前に設けられた長方形のエリアで、守備側が直接フリーキックに該当するファウルを犯した場合にペナルティキック(PK)が与えられる、特別な意味を持つゾーンです。競技規則(IFAB)では、ゴールライン上でゴールポストの内側から16.5m離れた地点を基準に、フィールド内へ16.5mの深さで引かれた線で囲うと定められています。

ゴールエリア・ペナルティアークとの違いと関係

ゴールエリア(いわゆる「6ヤードボックス」)は、PAの内側にある一回り小さな長方形で、ゴールキックや守備側のフリーキックの置き位置に関する特例が適用されます。ペナルティアーク(D字型の弧)は、PKの際に他の選手を9.15m外に下げるための目印で、PAには含まれません。PK時、キッカーとGK以外の選手は「PAの外」かつ「アークの外」で待つルールです。

ラインはエリアに含まれるという原則

サッカーのラインは、原則としてそのエリアに含まれます。つまり、PAの線上に接触があれば「PA内」と判断されます。ファウルの有無が微妙なとき、接触点が線上かどうかは判定に大きく影響します。

試合の文脈での役割(得点・守備・判定の重み)

PAはゴール期待値が一気に跳ね上がるエリアであり、守備は「1つの判断ミス=PK」という重圧下での対応が求められます。判定は試合の流れを左右するため、選手はルール理解と冷静なコミュニケーションが不可欠です。

ペナルティエリアの範囲と寸法をわかりやすく

幅40.32m・奥行16.5mの根拠をシンプルに解説

PAの幅は40.32mです。内訳は「ゴール幅7.32m+左右16.5m+16.5m」。奥行(フィールド内への深さ)は16.5mで固定です。これが成人フットボールの標準寸法です。

ペナルティマーク(11m)とアーク(半径9.15m)の意味

ペナルティマークはゴールラインから11mの位置にあります。PKは必ずここから。アークはマークを中心とした半径9.15mの半円で、PK時の待機距離を示します。試合では「アーク外+PA外+9.15m」の3条件を一度に満たす必要があります。

ピッチごとの差異と年代・大会による例外

フルサイズの成人試合ではPA寸法は原則共通ですが、ピッチ全体の大きさ(長さ・幅)には幅があります。一方、ジュニア年代や8人制などのローカル規格では、縮小サイズのPAが採用されることがあります。出場大会の要項や会場掲示で事前に確認しておきましょう。

よく使う測り方・視覚的な把握のコツ

  • 幅の目安:ゴール(7.32m)を中心に、左右にゴール約2台分強=約16.5mずつ。
  • 奥行の目安:PKマーク(11m)よりさらにゴール側に5.5m行くとゴールエリア、その先がPAの端。
  • アークの活用:PK時はアーク外に下がることで9.15m確保を直感的に守れます。
  • 歩数換算:自分の自然歩幅を把握(例:1歩0.75〜0.8m)しておくとPKマークや壁の距離がイメージしやすい。

反則と判定:ペナルティエリア内で何が起きる?

直接FKファウルが守備側自陣PA内で発生=PKの基本

守備側が自陣PA内で直接フリーキックに該当するファウル(例:不用意・無謀・過度な力によるチャージ/タックル/押す/つまずかせる、保持、ハンド、接触を伴う妨害、噛みつき・つば吐き・物を投げる等)を犯すとPKです。接触地点が線上ならPA内扱いになります。

攻撃側の反則はどうなる?(押し・チャージ・ハンド・オフェンスファウル)

攻撃側がPA内で反則を犯した場合は、守備側の直接FK(または間接FK)になります。いわゆる「オフェンスファウル」も通常どおり適用され、PA内だからといって有利・不利の特別扱いはありません。

間接FKになるケース(危険なプレー・妨害・GKの6秒など)

  • 危険なプレー(足を高く上げる等)で接触なし:間接FK。
  • 接触のない進路妨害(インピーディング):間接FK。
  • GK特有:ボールのコントロールを6秒以上保持、味方の意図的な足によるキックやスローインを手で扱う、ボール放した後に他者が触れる前に再び手で触れる等は間接FK。

GKの特例と制限(手の使用・バックパス・スローインの扱い)

GKは自陣PA内でのみ手を使えますが、味方の意図的な足のキックやスローインを手で扱うことはできません。曖昧な場面では「意図的かどうか(クリアミスは可)」がポイントです。6秒ルールも含め、過度な遅延は注意の対象になります。

DOGSO(決定的得点機会阻止)に関するカード基準の整理

  • PA内でのDOGSOかつ「ボールにプレーしようとした」ファウル:PK+警告(イエロー)。
  • PA内でのDOGSOでも「プレーしようとしない/ハンドによる阻止」:PK+退場(レッド)。
  • PA外のDOGSO:状況に応じて退場が基本(例外は限定的)。

アドバンテージとVAR介入の考え方(概要)

PA内のファウルでも、直後に明確な得点が見込める場合はアドバンテージが適用されることがあります(そのまま得点ならPK不要)。ただし、長く引っ張らず早めに判定に戻るのが一般的です。VARは「PK/ノーPK、得点、直接退場」に関わる明白かつ重大な誤りのみ介入します。

リスタートのルール整理:PK・FK・ゴールキック・ドロップボール

PKの手順と反則(侵入・二度蹴り・GKの足位置)

  • キッカーはマーク上、GKは少なくとも片足の一部がゴールライン上(またはその延長線上)に接している必要があります。
  • 他の選手はPA外・アーク外・マークから9.15m以上離れる。
  • 侵入の取り扱い:守備側のみ侵入で得点→得点認定、得点失敗→原則やり直し。攻撃側が侵入→原則守備側の間接FK。双方侵入→やり直しが基本。
  • 二度蹴り(他者が触れる前にキッカーが再接触):守備側の間接FK。

守備側の間接FK/直接FKの置き位置と制限

守備側に与えられるFKは、反則地点から再開します。自陣ゴールエリア内での守備側FKは、ゴールエリア内の任意の地点から蹴ることができ、相手はボールがインプレーになるまでPA外に留まります。

攻撃側への間接FKがPA内で与えられたときの取り扱い

攻撃側に間接FKが守備側のゴールエリア内で与えられた場合、反則地点に最も近いゴールエリア外側線上(ゴールラインに平行な線上)にボールを置いて再開します。シュート可能ですが、必ず味方のワンタッチを挟む必要があります。

ゴールキックと守備側FKのボールインプレーのタイミング

ゴールキックも守備側FKも、ボールが蹴られ明確に動いた瞬間にインプレーです(PAの外に出る必要はありません)。相手はそれまでPA外にいる義務があります。これを理解していると素早いショート再開でビルドアップが安定します。

ドロップボールの最新ルールの要点

  • プレー停止時にボールがPA内にあった場合、原則として守備側GKへのドロップで再開。
  • 他の選手は4.5m以上離れる。争奪しない形で、地面に触れた瞬間にインプレー。
  • ドロップボールからは直接得点できません(直接相手ゴール→ゴールキック、自陣ゴール→コーナーキック)。

守備の要点:ペナルティエリアを守る原則と判断基準

飛び込まない・遅らせる・角度を切るの三原則

PA内は「一発PK」が怖いので、まず飛び込まない。ボール保持者を外へ誘導しつつ時間を稼ぎ、味方の帰陣を待つ。利き足側やシュートレーンを消す立ち位置で角度を切るのが基本です。

体の向きと距離感でファウルリスクを最小化

  • 体の向き:半身で後退し、相手のタッチに合わせて同じ歩幅で下がる。
  • 距離感:1.5~2mの間合いでフェイントに付き合いすぎない。腕を広げすぎない。
  • 接触の質:足先で触るのではなく、面で寄せてコースを限定する。

シュートブロックの足運びと手の位置(ハンド回避)

ブロックに行くときは「前足でストップ→後足を畳んで面で塞ぐ」。腕は体の幅内に収め、広げて当たらないように。跳ぶブロックよりも、低い姿勢での“寄せ切り”が有効です。

カットバック対策:ペナルティスポット周辺の優先順位

  • 第一優先:ペナルティマーク周辺のフリーの選手を消す。
  • 第二優先:GK前のゾーン(ニアの折り返し)。
  • 第三優先:ファーサイドの遅れて入るランナー。

ボールウォッチを避け、背中側を常にスキャン。受け渡しの声を短く明確に。

クロス対応(ニア・ファー・折り返し)の分担

ニアは先に触る、中央は相手CFと同歩で身体を入れる、ファーは絞り過ぎない。ゾーンとマンのミックスで「ボール基準→人」の順に判断します。GKはライン統率とスタートポジションの声で全体を前倒しに整えます。

セカンドボールとリバウンドの即時回収

ブロック後・セーブ後のこぼれ球が最大の失点要因。PA外縁(トップ・ハーフスペース)に回収役を配置し、シュートコースに入る準備を前もって共有しておきましょう。

数的不利時の撤退ラインと受け渡し

数的不利では無理に奪いに行かず、「ゴールとボールの間」を優先して撤退。縦スイッチの受け渡しは、声のキーワード(例:「入れ替わる」「渡した」)を統一して混乱を減らします。

ゴールキーパーの戦術:PA内の最適ポジショニング

角度を消す基本原則とスタートポジション

ボール—中心—ゴールの三点を結ぶ“ショットライン”に正対。シュート距離が短くなるほど前に出て角度を狭めますが、背後のチップやスルーパスに対応できるギリギリのラインを見極めます。

出るか出ないかの基準(クロス・スルーパス対応)

  • クロス:落下点へ最短で先着できるか、味方と被らないか。迷ったら一歩下がりセービング準備。
  • スルーパス:相手の最初の触球前に到達できるか。遅れるならポジション維持でブロッキング。

セービングとセカンド対応(弾く方向のセオリー)

至近距離はブロッキング形(Kブロック等)で面を作り、弾くならサイド方向へ。中央前方への弾きは厳禁。弾いた直後のリカバリーステップをルーティン化しておくと失点が減ります。

セットプレーでのライン統率とマーク指示

ゾーンの基準位置(ニア・中央・ファー)とマンの受け渡しを事前に決め、合図は短く統一。「ニア寄せ」「外切れ」などのキーワードを固定化すると混乱が減ります。

PK対応:心理・ルーティン・事前準備

  • 相手の傾向データ(利き足、助走の癖、視線)を事前メモ。
  • 助走開始の合図で微細にステップ、蹴り足の開きと軸足の向きで読みを補強。
  • 直前のルーティン(呼吸→膝のバウンド→手の位置固定)で反応速度を安定。

攻撃側の視点を知って守る:PA攻略のセオリーを逆手に取る

三人目の動き・レイオフ・カットバックの狙いどころ

攻撃は「引き付け→空けたスペースに三人目」が定番。レイオフからの即シュート、深い位置からのカットバックが狙いです。守備は三人目の侵入レーンに先回りし、ペナルティマーク周辺を最優先で埋めましょう。

ブラインドサイドランとゾーン間侵入のトリガー

相手は視野の外(ブラインドサイド)からファーへ飛び込みます。クロッサーが顔を上げた瞬間やボールが外→中へ動いた瞬間がトリガー。肩越しのスキャンを癖にして、背中側のランを常に捕捉します。

ハーフスペースからの侵入と偽クロスの対処

ハーフスペースのドリブルは、カットインとスルーの二択でDFを縛ります。外切りで角度を制限し、味方のカバーで内へ通さない。偽クロス(跨いでから内折れ)には飛び込まず、二手目を待つ余裕が鍵です。

ファウルを誘う仕掛けに対する身体の使い方

接触を誘うタッチ(ボールを体の外側へ置く等)には、腕を広げず体を並走させてコース限定。ボールに先に触れられなくても、コースを消して遅らせれば十分です。

よくある誤解Q&A:ペナルティエリアの“あるある”を解消

「6ヤードはGKの聖域」ではない理由

ゴールエリアは特別な“所有権”を与える場所ではありません。GKがボールをコントロールしていなければ、正当な競り合いは可能です(危険なチャージや接触はNG)。

PA内のハンド基準は特別ではない(自然な位置の考え方)

PA内でもハンドの基準は原則同じです。腕が不自然に体から離れてシュートやパスを阻んだ場合はハンドの可能性が高く、体に密着・自然な動きの範囲なら不問となることがあります。

オフサイドはPA内でも通常通り適用される

PA内であってもオフサイドの判定基準は変わりません。ボールおよび相手競技者より前に出た位置取りと、関与の有無(プレー、相手への妨害、利益の得方)で判断されます。

GKへのチャージと正当な競り合いの線引き

GKがボールを手でコントロールしている(片手での押さえ/手と地面の間に挟む/ボールを投げる準備等)ときは接触NG。コントロール前でボールにプレーできる距離なら、正当な競り合いは許容されます。

スライディングタックル=即PKではない

スライディング自体は反則ではありません。ボールに正しくプレーし、相手に不用意な接触がなければ問題なし。危険な進入、遅れての接触、過度な力はファウルとなり得ます。

試合運用:審判とのコミュニケーションとメンタルマネジメント

判定後のリセット術と次の1プレーの準備

判定は変わりません。深呼吸→役割確認→再開形の共有(壁人数、マーク順)を15秒で完了させるルーティンを用意しましょう。感情の切り替えが失点を減らします。

抗議を減らす言動とキャプテンの役割

事実ベースで短く確認(「接触は線上でしたか?」)。複数人で詰め寄らない。キャプテンが代表で話し、他の選手は整列と準備に集中するのが最善です。

試合前チェック:ラインの状態・滑りやすさ・視認性

ラインが消えかけていないか、PA内の芝や土の硬さ・滑りやすさ、足を取られやすい箇所をウォームアップ中に共有。スパイク選択にも直結します。

練習メニュー例:PAの守備力を上げるドリル集

1対1封じ(ペナ角スタート・ファウルなし制約)

ペナルティエリア角からの1対1。守備側はファウル禁止・スライディングは1回のみ。狙いは「遅らせる・角度を切る・手の位置管理」。30〜40秒でローテーション。

3対3カットバック守備(ゾーン優先ルール)

サイドからの侵入→カットバック限定で攻撃、守備は「マークよりゾーン優先」を明文化。ペナルティマーク周辺のケアを最優先に、背中側のランは受け渡しで対応。

クロス対応のゾーン別トレーニング(ニア・中央・ファー)

配球地点を3つに分け、各ゾーンの役割を固定化。ニアは先触り、中央は身体を入れる、ファーは遅れない。GKは出る/出ないのコールを統一ワードで。

PK対応ルーティンとセービング反復(GK/キッカー両面)

GKは助走トリガーからのリアクション反復、片足ラインキープの癖付け。キッカーは助走速度と踏み込み角度の再現性を高め、二度蹴り回避の意識付けを行います。

ビデオフィードバックでの判定学習法

  • PKになった/ならなかった事例を「接触の質」「線上か否か」「主審の位置」で分類。
  • 守備側は腕の位置・タックル角度、攻撃側は仕掛けのトリガーをチェック。
  • 次戦の合言葉(キーワード)を1〜2個に絞って共有。

試合で使えるチェックリスト:PA管理の要点

セットプレー前の役割確認(第1・第2優先度)

  • 第1優先:ニアの先触り役とマークの主責任者。
  • 第2優先:セカンド回収とPA外縁のシュートブロック担当。

マークの受け渡しと声のキーワード

  • 「渡す」「取った」「外切れ」「絞れ」など短い共通語に統一。
  • 受け渡し後は必ず「OK」で確認を取る。

終盤のPA内リスク管理(クリアの基準・時間帯別)

  • 80分以降は無理なつなぎを減らし、大外へのクリアを優先。
  • GKはハイボールで迷ったら一歩下がりセーブ準備を優先。
  • セカンド回収の人員を1枚増やす(PA外正面)。

まとめ:ペナルティエリアの理解が勝敗を分ける

範囲の正確な把握が判断速度を上げる

40.32m×16.5m、線上は内側扱い、PKマーク11mとアーク9.15m。この“数字の地図”を頭に入れておくと、迷いが減りプレーがスムーズになります。

反則とリスタートの知識が無駄な失点を減らす

直接FK=PK、間接FKの例外、GKの特例、ゴールキックの再開条件、ドロップボールの扱い。ルール理解は守備の武器です。判定への過剰反応を減らし、次の1プレーに集中できます。

守備原則の徹底がラストアクションを変える

飛び込まない・遅らせる・角度を切る。手の位置とブロック方向、カットバックの優先順位、セカンド回収。これらの共有と練習ルーティンで、PA内の一瞬の判断が安定します。今日のトレーニングから、ぜひ落とし込みを始めてみてください。

サッカーIQを育む

RSS