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主審と副審の役割をわかりやすく解説|勝敗を分ける判定の違い

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プレーの質を一段上げたいなら、まずは「判定の仕組み」を味方につけることが近道です。誰が何を見て、どう決めているのか。主審と副審の役割を正しく理解すれば、不要なファウルやオフサイドが減り、勝敗を分ける局面で冷静にふるまえます。本記事では、競技規則に沿ってわかりやすく解説しつつ、日々の練習や試合運びに落とし込む具体策までまとめました。

はじめに:判定は勝敗を左右する

この記事の狙いと読むメリット

審判の見ているポイントを理解すると、選手はプレー選択が洗練され、指導者は修正指示が明確になります。オフサイドの境界、アドバンテージの考え方、時間管理など、勝負所で差が出る判断基準を「なぜそうなるか」まで整理します。

審判理解がプレーに与える影響

判定は偶然ではありません。主審・副審のポジショニングと役割から「見える/見えない」角度が生まれ、その情報で判定が決まります。これを前提に動けば、同じ接触でもファウルを取られにくい体の使い方や、オフサイドを避ける動き出しが自然に身に付きます。

主審と副審の基本的な役割の違い

ルール上の定義と権限の範囲

主審は競技規則の適用者であり、試合の管理者です。全ての反則・再開・時間の決定権を持ちます。副審は主審を補助し、特にオフサイドやボールアウト、主審の死角の反則を伝達します。両者はチームとして機能しますが、最終決定は主審が行います。

主審の最終決定権と試合管理

主審はプレーの継続/停止、ファウルの種類(不注意/無謀/過剰な力)の判定、警告・退場、時間の加算などを決めます。また選手の安全を最優先し、頭部の負傷や危険なタックルでは迅速にプレーを止めます。

副審の担当エリアと主な任務(オフサイド・ボールアウト等)

副審は最終ラインと同一線を保ちながら、オフサイド位置と関与を観察します。タッチライン/ゴールラインの出入り、コーナーかゴールキックかの判断、主審の死角の反則や相手選手の妨害、交代のサポートも担当します。

第四の審判員・追加審判員がいる場合の役割

第四の審判員は主にテクニカルエリアの管理、交代手続き、掲示板による追加タイムの表示、用具の確認、ベンチの振る舞いの監督などを担当します。ゴール横に立つ追加副審員(大会による)や、映像を用いるビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)は、いずれも主審を補助する存在で、決定は主審が下します。

用語整理:ラインズマンではなく副審

現在の正式名称は「副審(Assistant Referee)」です。「ラインズマン」は旧称で、役割はライン判定に限らず、反則や交代の補助まで多岐にわたります。

勝敗を分ける代表的な判定と役割分担

オフサイド判定:副審が主役、主審が最終判断

副審は瞬間的な「パスの出手」と「受け手の位置」を同一視野で捉え、干渉の有無まで見ます。主審は副審の情報と全体像(キーパーの視界妨害や別の選手の関与)を合わせて最終判断します。

実戦ポイント

  • 攻撃側は出し手と受け手の視野共有(合図・タイミング)で誤差を減らす。
  • 守備側は最終ラインのステップで一体化。バラつきは致命傷。

ペナルティエリア内の反則:主審の近接確認と副審の補助

主審はゴール前で角度を確保して接触の強さや責任の所在を判断。副審は引っ張り・押しなどの継続的な反則、ボールから離れた妨害を補足します。重大なファウルや安全に関わる事象では、プレーを即時停止する優先順位が高くなります。

ボールが完全に出たかどうか(タッチライン・ゴールライン)

ボール全体がラインを完全に越えたときにアウトです。副審が主に判定し、どちらのスローイン/ゴールキック/コーナーかを旗で示します。微妙な場面では主審と目を合わせたうえで合意形成します。

アドバンテージの適用と取り消しの判断

反則があっても、反則された側に有利な攻撃が継続できるなら主審はアドバンテージを適用します。数秒内に利得が得られなければプレーを戻します。カードは次の停止時に出すことができます。安全性が脅かされる場合は適用しません。

時間管理と追加タイム(遅延行為への対応を含む)

時間の管理は主審の権限です。交代、負傷、VARチェック、遅延行為などの「失われた時間」を加算します。ボールのキープやスローインの遅延、ボールの蹴り飛ばし、距離を取らない行為は警告対象です。

主審と副審の連携とコミュニケーション

旗・ホイッスル・無線の使い分け

副審は旗で事実を伝達(オフサイド・ボールアウト・ファウル示唆)、主審はホイッスルで決定を示します。無線がある場合は静かな合意形成がしやすくなります。

アイコンタクトと合図のプロトコル

再開前や微妙な判定の直後には視線で合図し、矛盾を避けます。たとえば副審が旗を立てても主審が「プレーオン」を示す状況では、直ちに旗を下ろすなど、事前の取り決めが重要です。

担当の重なりとカバーリング(死角の補完)

主審の背後や逆サイドの死角は副審がカバー。セットプレー時はニア/ファーの分担を明確にします。

セットプレー時の事前合意と役割分担

CKでは、副審がゴールライン上のボールイン/アウトやGKへの妨害、主審が競り合いの接触とセカンドボールを主に監視…など、合意済みの分担で精度を上げます。

カテゴリー別の実際:プロと育成年代での違い

VARやゴールラインテクノロジーの有無による運用差

VARやGLTがある大会では、主審は「明確で重大な誤審」が疑われる場合に映像確認で修正できます。オフサイドの旗遅らせ(決定機継続時に即時停止を避ける運用)もあります。一方、多くの育成年代では映像支援がないため、その場の判定が全てです。選手は「止まらない」「切り替える」が原則になります。

審判員が少ない試合(クラブアシスタントレフェリー)の注意点

副審をチーム関係者が務める試合では、役割がボールアウト中心に限定される場合があります。試合前に主審から説明があるので、合図や担当範囲を必ず確認しましょう。

地域・大会規定で異なる裁定手順の確認

飲水タイムの有無、交代回数、ベンチ人員、延長の方式などは大会要項で異なります。競技規則の上にローカルルールが乗るイメージで、事前共有がミスを防ぎます。

選手・指導者が押さえるべき審判リテラシー

レフェリーのポジショニングを読む:見られている/見られていないの境界

主審が斜めの対角線上を走る特性から、逆サイドの裏は副審がカバーします。相手と接触しやすい局面では「審判からの角度」を意識して、手の使い方や体の当て方をコントロールしましょう。

伝わるアピールとNG行為:冷静な伝達で判定を味方に

冷静な一言(「引っ張られてます」「ハンドです」)は有効ですが、集団で取り囲む、カードのジェスチャーをする、過度な抗議は警告対象です。ゲームキャプテンが代表して伝えるとスムーズです。

遅延行為・不正な駆け引きと見なされる動作

フリーキック地点から故意にボールを持ち去る、交代の際にゆっくり歩く、壁の距離を詰めるなどは遅延や非紳士的行為に該当します。短期的には得でも、カードや追加タイムで損をします。

試合前の確認事項(用具・装身具・ユニフォームのルール)

すね当ては必須。ネックレス・ピアス・指輪等の装身具は安全のため禁止です。インナーの色はユニフォームと同系色が原則。違反は試合に出られない、または一時退場の対象になります。

ケーススタディで学ぶ判定の基準

オフサイドの三要素(位置・関与・利得)の捉え方

  • 位置:味方のボールがプレー/触れられた瞬間に、相手陣内で2人目の相手(通常はGKを含む)より前か。
  • 関与:プレーへの関与(ボールを触る/プレーに関与)または相手への干渉(視界妨害・競り合いへの影響)。
  • 利得:ポスト/バー/相手の「セーブ」から跳ね返ったボールを得る等。

相手の「意図的なプレー」によるボールはオフサイドをリセットしますが、「セーブ」はリセットしません。

ハンドの基準:不自然な拡大・肩より上・直前の得点関与

  • 体を不自然に大きくする手/腕の位置は反則の可能性が高い。
  • 上腕の境界は腋の下のラインより下が「手/腕」とみなされます。
  • 偶発的でも、得点者本人の手/腕に当たって直後にゴールした場合は反則。味方に当たっただけでの得点は原則反則ではありません。
  • 至近距離のリフレクションや「支え手」など、自然な動きは反則にならないことがあります。

接触プレーの線引き:チャージング/ホールディング/トリッピング

判定の鍵は「強さ」「タイミング」「配慮」。不注意(警告なし)/無謀(警告)/過剰な力(退場)で重さが変わります。ボールに触れても、危険な方法で相手に接触すればファウルになりえます。

GKとバックパスの取り扱い(意図的なキックの解釈)

  • 味方が足で「意図的に」キックしたボールをGKが手で扱うのは反則。ヘディングや胸、相手のキックに対しては適用外。
  • 故意に頭や胸を使うフリをして回避する「トリック」は非紳士的行為として罰せられます。
  • 味方からのスローインをGKが手で扱うのも反則。

PKの手順と反則:GKの足位置・侵入の扱い・やり直し

  • キックの瞬間、GKは少なくとも片足の一部がゴールライン上(またはその上空)にある必要があります。
  • 攻撃側の早い侵入で得点→やり直しなしで守備側の間接FK。守備側の侵入で失敗→原則やり直し。両方侵入→やり直し。
  • 過度なフェイント(キック直前の急停止など)は警告対象です。

よくある誤解と正しい理解

『ボールに触れたらノーファウル』は誤り

ボールに触れていても、相手への危険や無謀な接触があればファウルです。方法が問われます。

スライディングタックルは方法が危険なら反則

足裏を見せる、両足で飛び込む、遅れて相手の脚へ当たるなどは反則・カード対象です。角度とタイミングが重要です。

アドバンテージ=流せば良いではない

利得がなければ戻します。カードは後からでも出せますが、安全が脅かされる場面では止めるのが原則です。

『手に当たればすべてハンド』ではない

距離、反応可能性、腕の位置の自然さなど、総合的に判断されます。

最新ルールのチェック方法とアップデートのポイント

毎年の改正時期と確認先(IFAB・国内協会の公式資料)

競技規則は例年夏前後に改正が反映されます。IFABの公式資料や国内協会の公開文書で原則を確認しましょう。

チーム内での共有・テスト形式での周知方法

ミーティングで映像と合わせたクイズ形式にすると浸透が早まります。練習試合で意図的に検証するのも効果的です。

大会要項・ローカルルールの読み合わせ

交代回数、延長の有無、飲水タイムなどは必ず事前に共有。ベンチ入り資格やビブスの色まで確認しておくと当日の混乱を防げます。

プレーに落とし込む練習メニュー

オンサイドを保つ攻撃トレーニング(出し手と受け手の同期)

出し手の視線とステップを合図に、受け手は「逆足の設置」でスタート。オフサイドライン上で止まらず、斜めに入る動きで余白を作ります。

最終ラインのコントロールとステップワーク

4バックの横移動と統一の合図(声・手)。一人が遅れる状況を想定したカバーリングと、ラインコントロールのリカバリーを反復します。

セットプレーでのマークと反則予防(ホールディング対策)

腕を回すのではなく、胸と前腕で「面」を作る体の当て方を練習。審判の視野に入る位置での不用意な引っ張りを避ける配置を設計します。

ファウルを減らす守備の身体の向きと距離管理

相手に背を向けさせる角度取り、足を出す前のステップワーク、接触前の減速で「不注意の接触」を減らします。

保護者・観戦者のふるまいが選手を守る

レフェリーリスペクトの実践

審判への罵声は試合環境を悪化させ、選手の集中を削ぎます。前向きな声かけと拍手で選手の判断力を引き出しましょう。

子どもに伝えたい判定の受け止め方と切り替え

判定は変わらない。次のプレーに備える、を合言葉に。事実の確認はキャプテンに任せ、全員でリスタートに集中します。

試合当日のチェックリスト

主審・副審への事前確認事項(キックオフ前のブリーフィング)

  • 交代手順とボールの種類(予備球の運用)。
  • ウォームアップ時のゴール・用具確認のタイミング。
  • セットプレー時の距離管理やベンチワークに関する運用。

用具・身だしなみ・交代手順の最終確認

  • 装身具の外し忘れ、すね当て、スパイクの状態。
  • インナーの色、背番号やキャプテンマークの確認。
  • 交代カードやベンチ入りメンバー表の準備。

まとめ:判定を味方にするために

今日からできる小さな工夫

  • 主審・副審の位置を常に把握して、見える角度で正直に戦う。
  • オフサイドは「出し手の合図」と「受け手の斜めラン」で削減。
  • 接触は方法が命。スピードを落として角度を作る。
  • 抗議より切り替え。事実の共有はキャプテンが短く。

次の一歩:公式資料と映像での復習

競技規則の最新情報を確認し、試合映像で「審判の視点」を追体験してください。理解が深まるほど、判定の裏付けがプランに落ちていきます。審判を知ることは、勝つ準備を整えること。今日から一歩、実行に移しましょう。

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