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睡眠何時間が必要?部活生の最適目安

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睡眠何時間が必要?部活生の最適目安

練習量が増えるほど、伸び悩みの原因は「技術」ではなく「回復」に潜みます。回復の柱が睡眠。では、部活生は実際に何時間眠れば良いのか。この記事では、科学的根拠と現場での実践をつなぎ、今日から使える睡眠設計をわかりやすくまとめました。難しいことは抜きにして、成績とパフォーマンスの両立を狙うための具体策を一緒に整えていきましょう。

結論:部活生に必要な睡眠時間の最適目安

10代の推奨睡眠時間(8〜10時間)の根拠

10代の推奨睡眠時間は8〜10時間とする専門機関の見解が一般的です。成長期は脳と身体の発達が同時に進み、深い睡眠(徐波睡眠)中に成長ホルモンが多く分泌されることが知られています。部活で強度の高い練習をしているなら、同年代の一般的な推奨範囲の上限寄り(8.5〜10時間)を狙うのが合理的です。

ポイントは「毎日合計で確保」すること。夜だけで8.5〜9.5時間が難しい日は、昼寝を組み合わせて24時間での合計を8〜10時間に寄せればOKです。

競技パフォーマンスと怪我予防の観点からの目安

  • スプリント・反復ダッシュ:睡眠不足でピーク速度や反復の粘りが下がる傾向
  • 判断スピード:反応時間が遅くなり、ボールロストや被カウンターの増加に直結
  • 怪我リスク:短い睡眠と怪我発生の関連が報告されており、8時間未満は特に注意
  • 免疫・風邪:睡眠時間が短いほど上気道感染のリスクが上がるという報告がある

安全側に倒すなら、試合や高強度練習の前後は少なくとも9時間を目安にするとコンディションが安定しやすくなります。

個人差の見極め方(昼間の眠気・集中力・RPEで判断)

  • 昼間の眠気:授業中に舟をこぐ頻度が週に2回以上なら要増量
  • 集中力:1コマ(50分程度)持たないなら質・長さのどちらかが不足
  • RPE(主観的運動強度):いつもより同じメニューがきつく感じる日が続く→睡眠不足や回復不足のサイン

「朝すっきり起きられる」「午前中のパフォーマンスが落ちない」「放課後の練習で切り返しが軽い」なら、今の量と質が合っている目安です。

睡眠がサッカーのパフォーマンスに与える影響

スプリント・持久力・方向転換への影響

睡眠不足は筋出力のピークと神経の反応速度を鈍らせます。特にサッカーはスプリントと方向転換の連続。短時間化で「一歩目が遅い」「最後の5分で脚が止まる」状態になりやすく、1本1本のダッシュの質が目に見えて落ちます。

判断スピードと意思決定(ゲームインテリジェンス)

ボールと人の動きを同時に捉えるには、注意の切り替えとワーキングメモリが欠かせません。睡眠が足りないと、視野が狭くなり、プレッシャー下での最適解(縦か横か、運ぶか預けるか)の選択が遅れがちになります。これは得点・失点に直結します。

怪我・病気リスクと免疫・回復

回復が追いつかない状態は筋損傷や捻挫のリスクを高めます。また、睡眠不足は免疫力を下げ、風邪などの罹患率が上がる傾向があります。連戦や学業の負荷が高い時こそ、睡眠時間の確保が最大の予防策になります。

成長期の筋発達とホルモン分泌

深い睡眠中に分泌される成長ホルモンは、骨・筋の成長や損傷修復に関わります。トレーニング刺激だけ強くして睡眠を削るのは、種をまいて水をやらないのと同じ。身長や筋発達のポテンシャルを最大限引き出すには、睡眠の「量×質」が不可欠です。

部活生の1日のリズムと現実的な睡眠設計

朝練・通学・塾がある日のタイムテーブル例

  • 05:50 起床 → 強い光を浴びる・軽く補食(バナナ+水)
  • 06:30 朝練
  • 08:30 授業
  • 12:30 昼食 → 5〜10分の目つぶり休憩
  • 16:00 放課後練習
  • 19:00 帰宅・夕食(就寝2.5〜3時間前までに)
  • 20:30 入浴(就寝60〜90分前に湯船)
  • 21:00 課題・ストレッチ・端末オフへ移行
  • 22:30 就寝(目標8.5〜9.0時間)

塾がある日は、帰宅後の行動を「食事→入浴→低刺激ルーティン→就寝」に一直線でつなぐのがコツ。短い昼寝(15〜20分)で夜の入眠が崩れない範囲にとどめます。

平日と休日の時差(ソーシャル・ジェットラグ)対策

  • 起床時刻のズレは±1時間以内に抑える
  • どうしても寝不足を補う日は、午前中の短い昼寝で調整
  • 日曜に寝だめしすぎると月曜が重くなる→日曜夕方は外で光を浴び、就寝前は静かに整える

テスト期間・合宿・遠征時の調整ポイント

  • テスト週:勉強は早朝活用。夜は深追いせず就寝固定
  • 合宿:ルームメイトと「就寝前60分は端末オフ」ルールを先に合意
  • 遠征:移動中の仮眠と水分・電解質を確保。到着後は太陽光を浴びて体内時計を整える

試合前後の睡眠戦略

試合前日の過ごし方と入眠準備

  • 就寝前60分は画面オフ、間接照明で落ち着く
  • 入浴はぬるめ(38〜40℃)で10〜15分、就寝90分前が目安
  • 戦術確認は紙メモにして、ベッドに入ったら考え事を終える

試合当日の昼寝・カフェインの使い方

  • 昼寝:開始3〜6時間前に15〜20分のパワーナップ
  • カフェイン:未成年は摂取量に注意。目安として1日100mg未満を推奨する専門家もいます。試合の6時間前以降は控えると夜の睡眠に響きにくい
  • エナジードリンクは糖分・高カフェインでかえって崩れることがあるため慎重に

試合後のリカバリー睡眠とクールダウン

  • 低強度のジョグと呼吸で副交感神経に切り替える
  • 夕食は炭水化物+たんぱく質+野菜、就寝2.5時間前までに
  • 入浴→ストレッチ→端末オフ→就寝の順で流れを固定

睡眠の質を高める習慣づくり

光・デバイス・ブルーライトのコントロール

  • 朝は3〜10分、外の自然光を浴びる
  • 夜は画面の明るさを最低、就寝60分前はオフ
  • どうしても使うなら音声だけ・ナイトモード・距離をとる

入浴・夕食・就寝前ルーティンの最適化

  • 入浴は就寝90分前、出た後に体温が下がる流れを作る
  • 就寝前は歯磨き→明日の準備→軽いストレッチ→読書の固定ルート
  • 甘いお菓子や大量の油物は寝つきを悪くすることがある

寝室環境(温度・遮光・騒音・寝具)

  • 温度はやや涼しめ(目安18〜22℃)・湿度40〜60%
  • 遮光カーテン・アイマスク・耳栓でノイズを減らす
  • 枕は首の自然なカーブを保てる高さに調整

カフェイン・エナジードリンクとの付き合い方

  • 学校日の午後は基本オフ、どうしても使うなら昼までに
  • 未成年の大量摂取は避ける。成分量を必ず確認
  • 眠さの根本解決は睡眠時間の確保。ドリンクでごまかさない

昼寝(パワーナップ)の上手な取り入れ方

最適な長さと時間帯(15〜20分/約90分)

  • 15〜20分:眠気リセットと注意力アップ。午後早めに
  • 約90分:睡眠サイクル1周で深い回復。ただし夜の入眠が遅れやすいので試合翌日や休日向き

仮眠前の準備と目覚めのリセット方法

  • アイマスク・耳栓・タイマーを準備
  • 目覚めたら強い光を浴び、冷たい水で顔を洗い、30秒のその場ジョグ

授業・移動時間での実践アイデア

  • 昼休みは机に突っ伏さず、壁にもたれて目を閉じるだけでも効果的
  • 通学の電車・バスではアラームで乗り過ごし対策を

睡眠不足になった日の応急処置

当日のパフォーマンス低下を最小化する方法

  • 朝:屋外で5分の光+水分+たんぱく質を含む軽食
  • 昼:15分のパワーナップで反応速度を底上げ
  • 練習:ウォームアップで心拍を段階的に上げ、怪我予防を最優先

短時間回復ルーチン(強い光・呼吸・軽いストレッチ)

  • 3分のボックスブリージング(4-4-4-4)で過緊張をリセット
  • 肩甲骨まわり・股関節のダイナミックストレッチ

翌日に響かせないためのリセット計画

  • その日はカフェインを夕方以降オフ
  • 就寝前のルーティンを徹底し、翌朝も同じ時刻に起きる
  • 翌日、昼寝で不足分を少し取り返す(20分以内)

睡眠を可視化して改善する

睡眠日誌と主観指標(眠気・気分・RPE)の活用

  • 寝た時刻・起きた時刻・昼寝・眠気・練習のきつさ(RPE)を1行で記録
  • 週単位で見直し、眠気やRPEが高い日は睡眠時間を+30分

ウェアラブル・アプリの使い方と注意点

  • 傾向を見る道具。1日単位の正確さに固執しすぎない
  • アラートではなく行動(就寝時刻)を変えるために使う

HRV・安静時心拍から読む回復度

  • 朝の安静時心拍が普段より高い、HRVが低い日は追い込みを調整
  • 2〜3日のトレンドで判断。単日の上下で焦らない

栄養と睡眠の関係

夕食のタイミングと栄養バランス

  • 就寝2.5〜3時間前に、主食+主菜(魚・肉・卵・大豆)+副菜(野菜)
  • 脂っこい・辛いメニューは控えめにすると寝つきが良い

就寝前の軽食はアリ?ナシ?

空腹で眠れないなら、消化の良い軽食(牛乳やヨーグルト、バナナ、温かいスープなど)を就寝30〜60分前に少量。満腹は避けます。

水分・電解質と夜間覚醒

  • 日中からこまめに水分補給し、就寝直前の大量摂取は避ける
  • 汗を多くかいた日は電解質も補うと夜間こむら返り対策になる

未成年のアルコール・ニコチンを避けるべき理由

  • 未成年の飲酒・喫煙は法律で禁止
  • いずれも睡眠の質を下げ、回復と学習定着を妨げる

チーム・家庭でできるサポート

コーチが整える練習時間・ルール設計

  • 終了時刻の上限を決める(例:20時完全撤収)
  • テスト週のボリューム調整をチーム内で合意

保護者ができる環境づくりと送迎の工夫

  • 帰宅後の動線を短縮(夕食→入浴→就寝の順にしやすい配置)
  • 早朝試合は前夜の荷造りサポートで寝る時間を確保

スマホルールと家族の合意形成

  • 就寝60分前の全員オフを家庭ルールに
  • 充電は寝室の外に固定すると守りやすい

よくある誤解への回答

短眠でも慣れれば大丈夫?への科学的見解

「慣れ」は主観的で、客観的な認知・反応速度の低下は残りやすいことが報告されています。短眠に適応するより、8〜10時間の範囲で安定させる方が安全で伸びます。

週末の寝だめは有効?限界と上手な使い方

寝だめは一時的な回復には役立ちますが、完全には取り戻せません。起床時刻を大きくズラさず、昼寝20分で微調整するのが無難です。

ストレッチや入浴は睡眠薬の代わりになる?

ストレッチや入浴は入眠を助けますが、睡眠時間の不足を帳消しにはできません。ベースの睡眠時間確保が最優先です。入眠に支障が続く場合は医療機関に相談を。

チェックリストと実行プラン

7日間スリープチャレンジ

  • 毎日同じ就寝・起床時刻を設定(±15分)
  • 就寝前60分の端末オフを徹底
  • 1日1回、太陽光を浴びる(3〜10分)
  • 昼寝は15〜20分まで
  • 日誌に眠気・気分・RPEを記録

目標設定テンプレート(就寝・起床・昼寝)

  • 就寝:22:30/起床:6:30(必要に応じて調整)
  • 昼寝:放課後練習がある日は15:30に15分
  • カフェイン:昼12時以降は摂らない

進捗チェックの頻度と見直し基準

  • 週1で見直し:眠気が週に2回以上→+30分
  • RPEが継続して高い→ボリューム調整か睡眠延長
  • テスト週は学習を朝型へ移し、就寝時刻は固定

まとめ:今日から実践できる3ステップ

まずは合計睡眠時間8〜10時間を確保

夜+昼寝で24時間の合計を管理。部活がある日は上限寄りを狙う。

就寝前60分のルーティンを固定

端末オフ・入浴・ストレッチ・低照度の4点を毎日同じ順番で。

データと体感で週ごとに微調整

眠気・RPE・安静時心拍のトレンドを見て、+/-30分でチューニング。

あとがき

伸びる選手ほど、練習と同じ熱量で「眠ること」を整えています。睡眠は才能ではなく設計です。生活の制約があっても、できる範囲の工夫で必ず変わります。まずは7日間、ルーティンを試してみてください。体が軽くなり、判断が速くなり、怪我が減る。そこから先の技術練習が、今よりずっと楽しくなるはずです。

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