「サッカーのスタミナ鍛え方は小学生も鬼ごっこと坂道走で底上げ」。この一文に尽きます。長く走り続ける持久力だけでなく、試合のように止まる・走る・方向を変えるを繰り返せる“間欠的なスタミナ”こそがサッカー向き。そこで、ゲーム性たっぷりの鬼ごっこと、安全に負荷をかけやすい坂道走を組み合わせ、楽しく・安全に・継続できる方法をまとめました。今日から家庭でもチームでも取り入れられる、具体メニューと注意点、測定のやり方まで一気通貫で解説します。
目次
はじめに:小学生のスタミナは“楽しく・安全に・継続で”伸びる
サッカーのスタミナとは?有酸素と無酸素のバランス
サッカーで必要なスタミナは、マラソンのように一定ペースで走る持久力(有酸素)だけでは足りません。ダッシュや方向転換を繰り返す“間欠的”な動きでは、短い高強度の無酸素運動と、その合間に素早く回復する有酸素能力の両方が求められます。つまり「速く走る力」と「すぐ回復してまた動ける力」のバランスが鍵。鬼ごっこは間欠性と判断要素、坂道走は基礎心肺と脚の筋持久を高め、両輪で試合に強いスタミナを作れます。
小学生期の特性と練習設計の原則(成長期・神経発達・安全性)
- 成長期:骨や腱が未成熟。フォームの習得と安全最優先、過負荷は避ける。
- 神経発達が旺盛:動きの多様性に触れると吸収が早い。遊び要素は大歓迎。
- 疲労サインが出にくい子も:主観の「きつさ(RPE)」を言語化し、必ず休息日をつくる。
- 短く、回数多く:長時間やり続けるより、短いセッションを週に複数回が効率的。
鬼ごっこと坂道走がなぜ効くのか(ゲーム性と筋持久の両立)
- 鬼ごっこ:方向転換、ストップ&ゴー、相手・空間の認知などサッカーの動きが凝縮。楽しさで自然に高強度が出やすい。
- 坂道走:勾配により太もも・お尻・ふくらはぎの動員が増え、心拍も上がりやすい。着地衝撃が平地スプリントより小さく、ケガのリスクを抑えやすい。
- 組み合わせ:鬼ごっこで「間欠性+判断」、坂道で「基礎心肺+脚力」。相互補完で試合の走りが変わる。
鬼ごっこで鍛えるサッカー型スタミナ
鬼ごっこがサッカーに効く理由(方向転換・間欠的運動・判断)
- 方向転換(アジリティ):切り返し時の減速・加速がドリブル対応力に直結。
- 間欠性:追う・逃げるを短時間で繰り返し、ピッチ上のダッシュ→軽いジョグの波形に近い。
- 判断力:相手・壁・味方との距離を瞬時に見て動く認知負荷が、守備の寄せやカバーに活きる。
基本ルールと安全面の工夫(接触低減・スペース設計・人数)
- 接触は肩タッチまで。押す・引くは禁止。境界線(コーンやライン)を明確に。
- スペースは広めから。目安は一人あたり15〜25㎡。混雑は転倒リスク。
- 人数は小グループ(4〜8人)で回すと運動量・待ち時間のバランスが良い。
- 時間は短く区切り、こまめに水分補給。汗・息づかい・表情をチェック。
負荷設定の目安:時間・休憩・回数(RPEの活用)
- 1セット:30〜60秒/休憩:60〜120秒/3〜6セット。小学生は短めが基本。
- RPE(主観的運動強度)6〜8(10段階中)を目安に、笑顔で会話が少し苦しい程度。
- 週2〜3回、合計10〜20分の「実動時間」を目標に積み上げる。
目的別バリエーション5選
1対複数チェイス鬼(数的不利の回避力)
1人が逃げ、2〜3人が追う。四角コート(15×15m)で30秒×4本。逃げ手は“死角”に走る、急停止→再加速で背後を取る意識。追う側は声掛けで連携し、最短距離で囲む。接触はタッチのみ。
四角コートの角取り鬼(切り返し・ポジショニング)
コートの4隅を“セーフゾーン”にして、鬼は角を先回り。逃げ手は角に長居せず、角→角の移動で切り返しを増やす。20秒×6本。コーンを見ながら低い姿勢で腰を落とし、軸足の向きを意識。
ボール持ち鬼(ドリブル持久)
全員ボール持ち、鬼はビブス着用。鬼は他選手のボールに軽くタッチ。20秒進行/40秒休憩×6〜8本。ファール無し、接触を避ける。足裏ストップ、インアウトの細かいタッチで省エネドリブルを学ぶ。
ゲート通過セーフ鬼(認知負荷の追加)
コート内に小さなゲート(コーン2本で幅2m)を複数設置。逃げ手はゲートを通過すると5秒セーフ。鬼はゲートの“次”を読む。30秒×5本。視野確保と進路選択の判断力が身につく。
タグ式鬼(タッチバンドで安全性向上)
腰につけたタグ(布テープ)を奪う方式。接触を最小化。25秒×6本。タグを隠す身体の向き、フェイントで相手の重心をずらすなど、対人スキルの土台にも。
ウォームアップとしての導入例(週3回のメニュー設計)
- ステップ1(5分):ジョグ→スキップ→サイドステップ→軽い切り返し。
- ステップ2(8〜12分):上のバリエーションを1〜2種、短時間で回す。
- ステップ3(3分):呼吸を整え、水分補給。RPEを口頭で確認(「今日は7くらい?」)。
- 週3回を目安に、別日に坂道走を1回組み合わせると効果的。
坂道走で基礎心肺と脚力を同時に底上げ
坂道が平地より効く理由(勾配と筋群、着地衝撃の違い)
- 勾配で重力に抗うため心拍が上がりやすく、短時間でも刺激が入る。
- 大臀筋・ハムストリングスの動員が増え、推進力に直結。
- 上りは接地時間がやや長く、着地衝撃が平地スプリントより小さくなりやすい。
安全な坂の選び方(勾配5〜8%・路面・見通し・交通)
- 勾配5〜8%(目安:10mで50〜80cm上がる)。急すぎる坂はフォームが崩れやすい。
- 路面はフラットで滑りにくい。雨後や落ち葉は避ける。
- 直線で見通しが良い。歩行者・車両のない場所を選ぶ。
- 夜間は反射材・明るい服。保護者の帯同が安全。
正しいフォーム(軽い前傾・腕振り・接地・呼吸)
- 軽い前傾:くるぶしから全身がやや前へ。腰は反らない。
- 腕振り:肘を約90度、後ろへ引く意識でストライドが自然に伸びる。
- 接地:足裏全体で“置く”イメージ。つま先突っ込みや踵着地の強打は避ける。
- 呼吸:2歩吸って2歩吐くなどリズムを固定。息を止めない。
目的別メニュー例(スプリント/レピティション/テンポ走)
坂道スプリント(スピードと神経)
- 距離:10〜20秒で駆け上がれる区間。
- 本数:6〜10本、RPE8〜9。完全歩行で下り、90〜120秒休憩。
- 狙い:フォームづくりと瞬発+心肺の刺激。
レピティション走(試合向け間欠性)
- 距離:20〜30秒。
- 本数:6〜8本×2セット、セット間は3〜4分休憩。
- 狙い:ダッシュ→回復→再ダッシュの能力。
テンポ走(快適ペースの持久)
- 時間:上り区間を60〜120秒で往復、合計8〜12分。
- RPE6〜7。話せるが呼吸はやや苦しい。
- 狙い:有酸素の底上げとフォーム安定。
4週間プログレッション(量と強度の段階的増加)
- 1週目:スプリント6本+テンポ6分(計約12分)。
- 2週目:スプリント8本+テンポ8分。RPEは前週同等を維持。
- 3週目:レピティション6本×2セット。間に軽い鬼ごっこ5分を挟むと試合感アップ。
- 4週目:負荷調整週。前週比−30%でフォーム確認と回復。
下りの使い方と注意点(膝・アキレス腱の保護)
- 基本は歩いて下る。下りダッシュは膝やアキレス腱に負担大。
- どうしても行う場合はごく緩やかな傾斜で短時間、頻度低めに。
- 違和感が出たら即中止し、アイシングと休息。無理は禁物。
鬼ごっこ×坂道走の組み合わせで“間欠的スタミナ”を伸ばす
1回60分のモデル練習(ウォームアップ→鬼ごっこ→坂道→整理)
- 0〜10分:動的ウォームアップ(ジョグ、スキップ、モビリティ)。
- 10〜25分:鬼ごっこ(バリエ2種×各3本)。RPE6〜7。
- 25〜30分:水分+フォームドリル(腕振り、もも上げ)。
- 30〜45分:坂道レピティション(20秒×6〜8本)。RPE7〜8。
- 45〜55分:ボール遊び(ゆるいパスゲームや1対1)。
- 55〜60分:クールダウン(スロージョグ→ストレッチ)。
チーム練習と家庭での使い分け(人数・時間・場所に応じて)
- チーム:鬼ごっこで対人・認知、短い間欠走を組み込む。
- 家庭:近所の緩やかな坂でレピティション、親子鬼ごっこで楽しく実施。
- 時間がない日は10〜15分のミニ版でもOK。継続が最優先。
雨の日・場所がない日の代替(階段・シャトル・ラダー)
- 階段:10〜15段をテンポ良く上る×10本。手すり側で安全確保。
- シャトル:5-10-5mの往復を20秒×6本。室内は滑り止め必須。
- ラダー:インアウト、サイドなど2〜3種目×各30秒。
小学生でもできるセルフ測定と効果の見える化
20mシャトルランの活用と注意点
- 20m間を合図に合わせ往復。終了時の回数や段数を記録。
- 体調万全の日に実施。屋内は滑りにくい靴で。終盤は無理をさせない。
6分間走のやり方(安全基準と記録方法)
- 平坦なトラックや公園で6分間の走行距離を測るだけ。
- 事前にRPE目標(6〜8)を決め、終盤にスパートしない。
- 月1回の定点観測で伸びを確認。
Yo-YoテストJr.の代替案(簡易インターバルテスト)
- 15mシャトルを20秒走+20秒休×10〜15本。完遂本数を記録。
- 距離を短く(10m)して低学年向けにも調整可能。
自己記録シートと目標設定(主観的運動強度RPEの使い方)
- 項目例:日付/メニュー/本数/RPE(1〜10)/体調/一言感想。
- 数値は“自分比”でOK。前回より楽なら進歩。RPE9が続く日は負荷を下げる。
ケガ予防とリカバリーの基本
動的ストレッチとドリル(準備運動の流れ)
- 足首回し→股関節回し→レッグスイング→ランジ+ひねり。
- スキップ、サイドシャッフル、カリオカで体温を上げる。
クールダウンと補強(ストレッチ・足首/膝周り)
- スロージョグ→ふくらはぎ・もも裏・前もも・お尻の静的ストレッチ。
- 補強:ヒールレイズ、チューブ外転、体幹プランク各20〜30秒。
成長痛(オスグッド等)への配慮と中止基準
- 膝下の痛みや腫れ、走ると痛む場合は無理をしない。痛みが出たら中止。
- 痛みが続く・強い場合は医療機関へ。早めの相談が安全。
頻度・強度の目安(10%ルール・週の休息日)
- 総量は週ごとに10%以内の増加に留める。
- 最低でも週1〜2日は完全休養。睡眠と成長の時間を確保。
睡眠・栄養・水分でスタミナを守る(炭水化物・鉄・間食)
- 睡眠:小学生は9〜10時間目安。練習後は早めに就寝。
- 栄養:主食(ごはん・パン・麺)でエネルギー補給、たんぱく質は魚・肉・卵・大豆をバランス良く。
- 鉄:成長期は不足しがち。赤身肉、青菜、しらすなどを習慣的に。
- 水分:練習前後にコップ1〜2杯、長時間は塩分・糖分を含むドリンクを適量。
よくある失敗と解決策
走りすぎてボール練習が疎かになる→“短く頻度高く”に修正
走る日は15〜20分で切り上げ、ボール練習とセットで。週トータルでスタミナ刺激を確保すればOK。
坂で腰が反る・ふくらはぎが張る→フォームと勾配の見直し
- 前傾は“胸から”ではなく“足首から”。骨盤は立てる。
- 勾配を下げてピッチ(回転)重視に変更。接地は足裏全体。
鬼ごっこが盛り上がらない→ルールの難易度調整と役割交代
- セーフゾーンやゲートを増やして成功体験を作る。
- 鬼役を短時間で交代し、待ち時間を減らす。
継続できない→記録・ご褒美・仲間づくりで習慣化
- カレンダーに〇を付けるだけでも効果的。
- 2週間達成で小さなご褒美。友だちや家族を巻き込む。
年間計画の例と季節ごとのポイント
オフ期(基礎づくり):量を確保し多様性を高める
- 鬼ごっこ2〜3種と坂道テンポ中心。新しい遊びや競技も試す。
プレシーズン(負荷上げ):間欠走とスピード持久
- 坂道レピティションと鬼ごっこスプリント系をミックス。週3〜4回の刺激。
試合期(維持):短時間・高質で疲労管理
- 10〜20分のミニ鬼ごっこ+坂道スプリント少量。試合2日前は軽め。
学校行事や気候との調整(熱中症・寒冷対策)
- 猛暑:朝夕の涼しい時間に短時間、日陰活用、給水徹底。
- 寒冷:ウォームアップ延長、手袋・ネックウォーマーで体温保持。
保護者・指導者の関わり方
安全チェックリスト(場所・装備・体調)
- 場所:路面・勾配・交通・照明の確認。
- 装備:靴のソール、紐、反射材。ビブスやタグの準備。
- 体調:睡眠・食事・便通・痛みの有無。RPEを聞く習慣化。
声かけのコツ(結果より努力・プロセスを承認)
- 「最後まで走れたね」「判断が早かったよ」と具体的に褒める。
- 失敗は改善のヒント。「次は角を早めに取ろう」など一言でOK。
競争心と協働性のバランス(役割ローテーション)
- 勝敗だけでなく、鬼役の工夫やチーム連携を評価軸に加える。
記録とコミュニケーションでモチベーション維持
- 記録シートや壁カレンダーを共有。成長が見えると自然に続く。
まとめ:今日から始める3ステップ
週のスケジュール例(鬼ごっこ2回+坂道1回)
- 火:鬼ごっこ(15分)+ボール練習(20分)。
- 木:坂道レピティション(15分)+ドリル(10分)。
- 土:鬼ごっこ(10分)+ゲーム形式(20分)。
まずは2週間のチャレンジプラン
- 1週目は“余裕を残す”。RPE6〜7で揃える。
- 2週目は本数+1。記録シートで実感を残す。
“見える化→微調整→習慣化”の循環を作る
- 結果よりも継続。小さな成功を積み上げると、試合の走りが自然と変わる。
FAQ:よくある質問
坂がない地域はどうする?(階段・傾斜の代替)
階段上り(手すり側で安全確保)や、公園のゆるい土手を活用。なければ5〜15mのシャトル走を20秒×6〜10本でも同等の刺激が入ります。
低学年と高学年の負荷の違いは?
- 低学年:時間短め(20〜30秒)・本数少なめ・RPE6前後。遊び中心。
- 高学年:30〜40秒やレピティション2セットも可。RPE7〜8を目安に。
持久走が苦手でも効果は出る?(間欠的アプローチ)
大丈夫。短い高強度+休憩を繰り返す間欠的トレーニングは、走るのが苦手な子でも取り組みやすく、サッカー仕様のスタミナに直結します。
サッカーのチーム練習とどう両立する?(週内配分のコツ)
- 試合2日前は軽め、前日は休養かストレッチ中心。
- 走る日は15〜20分に留め、ボール練習とセットで質を上げる。
あとがき
サッカーのスタミナ鍛え方は小学生も鬼ごっこと坂道走で底上げ——このシンプルな発想は、続けやすさと安全性、そして試合で使える力を両立します。特別な道具はいりません。今日の放課後に5分から、週に2〜3回。小さな一歩を積み重ねれば、最後まで走り切る力、ここぞでもう一歩スピードを上げる力が育っていきます。無理なく、楽しく、賢く。次の試合で“足が動く自分”に会いにいきましょう。
