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サッカーのインサイド、小学生向け万能ドリル集
「止める・蹴るの基本はインサイドから」。小学生のうちにインサイドの正確さと使い分けを身につけると、パス、コントロール、方向転換、さらには守備からの一歩目まで、プレーの土台が一気に安定します。本記事は、家の前・公園・グラウンドで実践できる“嘘なし・再現性重視”のインサイド万能ドリルを、準備から計測、学年・ポジション別の使い方まで一気通貫でまとめました。今日の10分から、積み上げていきましょう。
はじめに:インサイドは“サッカーの母音”
この記事の狙いと使い方
本記事の狙いは、インサイドのフォームを正しく身につけ、実戦につながる反復を“短時間・高品質”で回すことです。以下の順番で読むとスムーズです。
- 基礎フォームを理解する
- よくある間違いを先に知る
- ウォームアップで体を整える
- 個人→2人→少人数へと段階的にドリルを進める
- 計測して成長を見える化する
各ドリルには「目的・やり方・回数/時間・チェックポイント・失敗例」を明記しています。必要なところだけを選び、1回10〜20分で回してください。
インサイドが小学生期で重要な3つの理由
- 再現性が高い:足の内側という“面”で当てるため、ボールの方向と速さをコントロールしやすい。
- 応用範囲が広い:パス、トラップ、方向づけ、キープ、壁パスなど多くの局面で使える。
- 認知の練習と相性が良い:顔を上げ、相手と味方の位置を見ながら“安全・前進・スイッチ”を選びやすい。
練習前の前提(安全・用具・スペース)
- スペース:周囲に人・車・ガラスがない場所。ボールが道路に出ない工夫(ネット、壁際)。
- ボール:小学生は4号球が一般的。低学年は空気圧をやや低めにして扱いやすく(メーカー推奨値を基準に、指で軽く押して5〜8mm沈む体感を目安)。
- シューズ:土・人工芝はトレーニングシューズ、体育館はインドア用。靴ひもは長すぎないように結ぶ。
- コーン/マーカー:柔らかい素材を使用し、転倒しない配置に。段差や濡れた地面は避ける。
- ウォームアップ:足首・股関節・膝周りの可動域づくりを3〜5分。
インサイドの基礎:正確さを生むフォーム
接触面と足首の固定:当てる“面”をつくる
足の内側(親指の付け根から土踏まずの内側)を大きく使い、くるぶしの下で当てる意識。足首は軽く内側にひねりつつ固定。つま先は上げすぎず、地面とほぼ平行。
- チェック:当たった瞬間の音が「トン」。ベチャッと鈍い音は足首が緩んでいるサイン。
- ミニドリル:壁に向かって1mの至近距離で、足首固定だけ意識して10本×2セット。
軸足の置き方と身体の向き(ボディシェイプ)
軸足はボール横、つま先は狙いのやや手前を向ける。胸と腰は送りたい方向に対して45°〜正面で調整。上半身を固めすぎず、肩の力は抜く。
- チェック:蹴った後に自然に一歩前へ体重が移動するか。
- 失敗例:ボールの真後ろに軸足を置いてしまい、足が伸びずに当たりが弱い。
支える膝と体重移動のコツ
膝は軽く曲げ、蹴り足は“振る”より“押す”。膝から先のブレを減らすため、股関節から足を運び、最後に足首の面で押し出す感覚。
- 練習法:片脚立ちでボールに軽く触れる→片脚バランスを崩さない範囲で10回。
視線とボールの捉え方(打点とタイミング)
視線は「相手→ボール→相手」の順で往復。打点はボールの赤道(真ん中)を軽く押す。浮くなら下を当てすぎ、転がらないなら上すぎ。タイミングはボールが最も足元に近づいた瞬間。
逆足(非利き足)を伸ばす考え方
非利き足は「距離を短く」「テンポをゆっくり」「回数を多く」。成功体験を先に作ることでフォームが安定します。逆足の練習は先にやる(疲れる前に)。
よくある間違いとセルフチェック
つま先の向きが安定しない
- 症状:パスが毎回左右に散る。
- 対策:つま先を“止める方向”へセット→蹴る前に一度静止→ゆっくり押す。
- チェック:つま先とボールの出ていく方向が同じ直線上か。
膝から振ってしまう・足首が緩む
- 症状:当てた瞬間にボールが跳ねる、芯を外す。
- 対策:短距離(1〜2m)で足首固定のみを意識したタッチ→連続20本。
- 合言葉:「振らないで押す」。
ボールに寄り切れていない・ステップ不足
- 症状:最後の一歩が届かず、当たりが薄い。
- 対策:小刻みステップ→ラスト1歩でグッと寄る。ボールが止まる前に半歩動く準備。
打点のズレで浮く/転がらない
- 症状:パスが浮く、または死んだボールになる。
- 対策:赤道へ当てる練習。地面に薄いマーカーを置き、そこを通すと自然に打点が安定。
声と合図がないパスでミスが増える
- 症状:相手が見ていない、合わない。
- 対策:必ず「はい」「ワンツー」「返して」など短いコール。手で指し示す合図も追加。
ウォームアップ&コーディネーション
足裏タッチとボールフィーリング基本3種
- 左右足裏タップ:30秒×2
- インサイド・インサイドの足元タッチ:30秒×2
- V字ドラッグ(足裏で引いてインサイドで押す):30秒×2
リズムステップ+インサイドタッチ
両足チョキチョキのリズム(前後ステップ)に合わせ、2拍ごとにインサイドで軽く触れる。リズム感と足首固定の両立を狙う。
可動域ドリル(足首・股関節のモビリティ)
- 足首円運動 内外10回
- 股関節オープナー(外回し/内回し)各10回
- ランジ+上体ひねり 5回×左右
反応ゲーム(カラーコーン・コール反応)
4色のマーカーを置き、コーチ/保護者が色をコール。指定マーカーにボールをインサイドタッチで運んでストップ。認知→決断→実行の流れを温める。
個人練習ドリル(1人でできる)
壁当てインサイドパス:距離別3段階
目的:フォームの安定と距離感。壁がある場合の定番。
やり方
- 近距離1.5m:10本×2(両足)
- 中距離3m:10本×2(両足)
- 長め5m:10本×2(両足)
チェック:1タッチでリズムよく返す。ボールが左右に散らないか。
ゲート通しパス(正確性ターゲット)
コーン2つで幅50〜80cmのゲートを作り、通過を狙う。距離2m→3m→4m。成功7/10になったら距離を伸ばす。
1タッチコントロール&パス(止めて蹴る)
壁からのリターンをインサイドで前に止める→次の一歩でインサイドパス。止める位置は自分の蹴り足の前20〜30cm。
逆足集中5分メニュー
- 至近距離壁当て(1.5m):30本
- ゲート2m通し:20本
- 1タッチ返し:20本
コツ:成功3連続を積み上げる意識。失敗したら距離を下げる。
ジグザグゲート→方向転換→フィードパス
ゲートをジグザグに5つ配置。インサイドタッチで通過→最後にターゲットへインサイドでフィード(4〜6m)。身体の向きを作る練習。
タイムアタック:正確性×スピード
30秒でゲート通過何本できるか。条件は「通過+ボールが完全停止しない」。スピードが上がってもフォームが崩れないか確認。
親子・2人組ドリル
ショートレンジのテンポパス(リズム×コール)
距離2〜3m、1タッチでテンポよく。コールを「はい」「ワン」「ツー」で合わせる。30本×2セット。
片足制限パスゲーム(右のみ/左のみ)
片足のみ使用で1タッチ。利き足→逆足の順。フォーム固めと非利き足の慣れに効果的。
内→外→内のコントロールオリエンテッド
受けて内(インサイド)で触る→外(アウトサイド)で一歩運ぶ→内で返す。相手の位置に身体を開く意識。
1メートル間合いの受け直しサイクル
1mの距離でパス→受けた人が半歩下がる→また1mに詰め直す。この“受け直し”で前向きと体勢を作る。
ナンバーコールパス(認知×決断)
パサーが「1」「2」「3」とコール、レシーバーは番号に応じたターゲットへ1タッチで返す。頭を上げる習慣が身につく。
浮き球を抑えるインサイドトラップ
軽く浮かせたボールをインサイドで“吸収”。接地の瞬間に足をわずかに引く。落とす位置は次のパスの蹴り足前へ。
少人数&チームでのドリル
三角パス(オープン→クローズの切替)
3人で三角形。身体を開いて受ける→次のパス先を見てクローズ(閉じる)→再度オープン。1タッチ/2タッチを切り替える。
ロンド(3vs1/4vs1)インサイド制限
守備1人に対し、攻撃は1〜2タッチのインサイドのみ。角度を作る、サポートの距離感、顔上げを学べる。
移動式ゲート通過のパス回し
2つのゲートを動かしながら、通過する方向を変える。足元だけでなく“通すパス”の意図を持たせる。
方向転換付きワンタッチ回し
コーチのコールで回す方向を反転。ボディシェイプの切替とつま先の向きが問われる。
サーバー固定の前進パターン(前向き作り)
中央にサーバー1名固定。外周の選手は受ける前に身体を開き、前方向へ1タッチで落とす→前進。MFの前向き作りに有効。
レベル別の進め方(初級/中級/上級)
初級:正しい当て方と“止める・蹴る”の徹底
- 近距離壁当て、ゲート2m、2タッチ中心。
- 成功7/10を目安に距離やスピードを上げる。
中級:ワンタッチ/ツータッチの判断
- 相手との距離、味方の位置でタッチ数を選ぶ。
- ロンドで1タッチ優先、プレッシャーが強い時は2タッチで確実に。
上級:方向づけトラップとボディシェイプ
- 受けた瞬間に次の方向へボールを置く(半歩先へ)。
- 常に45°開く→前向きがなければ安全に“逃がす”。
逆足強化の週間プラン
- 月水金のうち2回は練習の前半5分を逆足のみ。
- 計測は右/左を分けて記録し、差が20%以内を目標。
1日10分のルーティン
60秒ドリル×5種の回し方
- 足裏タップ→インサイドタッチ(60秒)
- 至近距離壁当て(60秒)
- ゲート通し2m(60秒)
- 1タッチ返し(60秒)
- 方向づけトラップ→パス(60秒)
合間の休憩は15〜20秒。逆足デーは全て逆足で実施。
成功基準と中断基準の設定
- 成功基準:各ドリルで成功率70%以上。
- 中断基準:フォームが2回続けて崩れたら距離/スピードを下げる。
家の前・公園・室内での工夫
- 家の前:柔らかいボールやスポンジボールで音と破損を防ぐ。
- 公園:人の少ない時間帯を選ぶ。土や芝の凹凸でバウンドを学習。
- 室内:ラインテープでゲートを作り、軽量ボールでコントロール練習。
計測と成長の見える化
命中率・到達時間の記録方法
- ゲート通過率:10本中の成功数。
- 到達時間:3mパス→壁→戻りを10往復のタイム。
- 記録ノート:日付/ドリル/右・左/成功率/気づきを一行で。
右足/左足の差を把握するチェック
- 同条件(距離・ゲート幅・時間)で左右を交互に測る。
- 差が大きい項目を翌週の重点に設定。
月次テスト(5項目の目安)
- ゲート3m命中率(右/左)
- 1タッチ返し10本の成功時間
- 方向づけトラップ→パス10本の成功数
- ロンド参加時のタッチ数の選択(観察評価)
- 逆足のみ30本のフォーム安定度(自己評価:安定/やや不安/不安定)
ポジション別の使い方ヒント
DF:インターセプト後の安全な前進
ボールを奪った直後は、身体を外へ開き安全なサイドへインサイドで逃がす→前向きの味方へ短く刺す。2タッチ以内を意識。
MF:前向きを作るワンタッチ
受ける前に首を振り、背後の情報を取る→1タッチで味方の前へ。インサイドで“置く”強さが鍵。
FW:落とし・壁役の質を高める
強いボールをインサイドで“面”に吸収→味方の走る方向へ落とす。軸足の位置と接触時間を長く。
GK:ショート配球の精度アップ
センターバックやサイドバックへ、少し前に出す“前進パス”。インサイドで転がす高さゼロを目指す。
学年別の指導ポイント
低学年:フォーム習得と遊び化
- 面当てゲーム(壁に当たった音で合格)。
- ゲートは広く、距離は短く。成功体験を増やす。
中学年:認知と方向づけトラップ
- 色コールやナンバーで頭を上げる習慣。
- 受けた瞬間に次の方向へ置くトレーニングを増やす。
高学年:スピード下の精度と逆足強化
- タイムアタックやプレッシャー付きのロンド。
- 逆足での1タッチ回数を週ごとに伸ばす。
安全対策と用具の選び方
ボールサイズと空気圧の目安
小学生は4号球が一般的。空気圧はメーカー表示を基準に、指で押して少し沈む程度で扱いやすく調整。
コーン/マーカーの配置と転倒防止
- 滑りやすい床では平たいマーカーを使用。
- 人の導線を塞がない配置にする。
シューズ選びと足首の保護
- 足に合うサイズ、つま先に余裕5〜10mm。
- ハイソックスでくるぶしの擦れを防止。
よくある質問(Q&A)
インサイドとインフロントの違いは?
インサイドは足の内側で“面”を作り、正確に転がすのが得意。インフロントは足の甲の内側で曲げたり浮かせたりが得意。まずは再現性の高いインサイドを優先。
力が弱くて届かない時の対策は?
- 距離を縮める(1.5〜2mから)。
- 足首を固定して“押す”当て方にする。
- ボールの空気圧を少し下げて扱いやすく。
壁がない環境での代替案は?
- ゲートを作ってターゲット通過を狙う。
- 段ボールやネット、リバウンドネットを活用。
家の中での騒音対策は?
- 軽量のソフトボールを使用。
- 床にマットを敷き、低い強度で“面の当て方”だけを練習。
練習メニューの組み立て方(週3の例)
ウォームアップ→基礎→認知→ゲーム化
- 月:可動域3分→壁当て→ゲート→ナンバーコール
- 水:足裏タッチ→1タッチ返し→方向づけ→ロンド
- 金:逆足集中→ジグザグ→三角パス→小ゲーム
停滞時のテコ入れ(刺激の入れ替え)
- 距離・ゲート幅・時間制限のどれか1つだけ変える。
- 記録の項目を増やし、変化を確認する。
コーチ・保護者の声かけ例
良いフォームを引き出す具体ワード
- 「面で押そう」
- 「つま先で方向を決めてから」
- 「止まる前の半歩」
ミス時のリフレーミングと再挑戦
- 「浮いたね。次は赤道を押してみよう」
- 「強さはそのまま、距離だけ半歩詰めてみよう」
競争設計とご褒美の使い方
- 「10本で7本通せたら距離アップ!」
- 「逆足30本成功したら今日のミニゲームのキャプテン」
まとめと次のステップ
今日から始めるチェックリスト
- 足首を固定して“面”で押せたか
- つま先の向きとボールの方向が一致したか
- 受ける前の半歩と身体の向きを作れたか
- コールと指差しの合図を使えたか
- 右/左の成功率を記録したか
次につながるドリル(アウトサイド/インステップ)
インサイドが安定したら、アウトサイドでの方向転換、インステップでの中距離キックへと拡張。基礎は共有できるので、足首固定と打点の意識はそのまま応用してください。
あとがき
インサイドは“母音”のように、どんなプレーにも混ざっています。毎日の10分が、1か月で約300分、3か月で900分の積み上げになります。焦らず、記録しながら、できたことを一つずつ増やしていきましょう。フォームが整えば、ボールは正直に応えてくれます。