「アップはいつから始めればベスト?」——これ、試合直前に毎回迷うテーマですよね。結論から言うと、何分前に始めるかは「パフォーマンスがピークになるタイミング」と「冷えすぎない待機時間」を逆算して決めるのがコツです。この記事では、試合・練習それぞれでのベストな開始時刻、短縮版のアップ、天候やカテゴリー別の調整、交代選手のタイミングまで、具体的に落とし込んで解説します。今日のキックオフに、そのまま使える逆算シートもご用意しました。
目次
結論:ウォームアップは何分前に始める?試合・練習の目安
試合の日:集合からキックオフまでの基本タイムライン
目安は「キックオフの35〜30分前に全体アップ開始、10〜5分前にいったん切り上げてロッカーに戻る」。会場到着は60〜90分前が現実的です。
- 到着(60〜90分前):移動の疲れをほどき、装備チェックと補食。
- 全体アップ開始(35〜30分前):動的ウォームアップとスプリント前準備。
- ボールを使った連携・フィニッシュ(25〜10分前):ゲームスピードへの移行。
- ロッカー戻り(10〜5分前):集中・戦術確認・再活性化。
- 直前(3〜1分前):最後の刺激(加速2〜3本、ジャンプ1〜2回)。
ポイントは「アップのピークがキックオフ直前に重なる」ように設計すること。終えてから長く待つほど体温・筋温は下がりやすいので、待機を最小化します。
練習の日:開始前に押さえるべき準備時間
練習のアップは「開始15〜20分前にスタート」が使いやすい目安。チーム全体で時間が取りづらい場合も、個人で5分前から動き始めておくと入りがスムーズです。
- 個人準備(20〜15分前):モビリティ、弱点補強。
- チーム動的アップ(15〜5分前):走・跳・切り返しの基礎。
- メイン前の刺激(直前3〜5分):スプリント短本数、パススピード上げ。
短時間しか取れないときの最短ウォームアップ
最低6〜8分の「ミニマム版」で性能と安全性を確保します。
- 1〜2分:軽いジョグ+多方向スキップ(Raise)。
- 2〜3分:ヒップ・足首・胸椎のモビリティ+中強度ランジ(Activate/Mobilize)。
- 2〜3分:加速10〜20mを2〜3本、軽いジャンプ2〜3回(Potentiate)。
なぜ“何分前”が大切か:パフォーマンスとケガ予防の理屈
体温・筋温の立ち上がりとピークの持続時間
軽〜中強度の運動で筋温は数分で上がり始め、10〜15分程度で競技に適した範囲に到達しやすいとされています。上がった筋温は、その後の待機で緩やかに低下しますが、待ち時間が長いほど元に戻りやすく、スプリント能力や筋出力が落ちる可能性があります。だから「終えた後に長く待たない」設計が重要です。
神経系の活性化に必要な時間
加速・ジャンプ・方向転換などの高強度刺激は、短時間で神経系を活性化し、初速や反応のキレを引き上げます。効果は数分〜10分程度続くことが多く、使い所は「キックオフ直前」。やり過ぎると疲労が上回るので“少数精鋭”が鉄則です。
オーバーウォームアップとアンダーウォームアップのリスク
- 長すぎ:心拍・体温の上げ過ぎで前半途中の失速、足攣りリスク。
- 短すぎ:初速が出ない、筋の張りや違和感、接触プレーでの怪我リスク増。
時間配分で避けたいのは「勢いで長くやる」「終えてからボーッと待つ」の2つ。メリハリと逆算がすべてです。
参考指標:研究やガイドラインが示す時間の目安
筋温上昇に必要な時間の一般的なレンジ
- 軽〜中強度の連続運動でおよそ5〜10分で明確な上昇、10〜15分で安定域に達しやすい。
- 休止が10分以上空くと低下が進むため、短い再活性化(数分)を挟むと戻しやすい。
個人差・気温差が大きいので、時間はあくまで目安として捉え、感覚(汗の出方・呼吸・脚の軽さ)と心拍を指標に微調整すると精度が上がります。
ポテンシエーション効果の持続時間の目安
- ジャンプや短いスプリントなどの高強度刺激の効果は、数分〜10分前後で最も感じやすいケースが多い。
- 刺激後すぐは疲労の影響も出るため、実戦では「2〜5分後」にピークを合わせる設計が使いやすい。
試合前のベストタイミングを設計する
90〜60分前:到着後の準備(補食・装備・可動域チェック)
- 補食:消化しやすい炭水化物中心を軽く(例:バナナ、ゼリー、白パン)。
- 装備:スパイク、インソール、テーピング、GPSや心拍計の準備。
- 可動域:股関節・足首・背骨周りを1〜2セットずつチェック。違和感があれば早めに修正。
45〜30分前:全体アップの開始(RAMP方式)
- Raise(6〜8分):ジョグ、スキップ、サイドシャッフル、加速気味のステップ。
- Activate/Mobilize(6〜8分):ランジ、ヒップエアプレーン、キャリオカ、アンクルシリーズ。
- Potentiate(4〜6分):10〜20m加速2〜3本、軽いジャンプ、90%スプリント1本。
25〜10分前:ボールを使った連携・スプリント刺激
- テンポパス、ロンド:認知と技術の温度を上げる。
- クロス→フィニッシュ、縦への推進:ポジション別に調整。
- 短い全力スプリント(1〜2本):ゲームスピード確認。
10〜5分前:ロッカー戻りと集中、再活性化
- 水分・補食微量(必要なら)、シューズ最終調整。
- 戦術確認とメンタルの集中。
- 立位での軽いアクティベーション(カーフレイズ、ヒップドリル)を30〜60秒。
キックオフ直前:最後のポテンシエーション
- 加速10〜15mを1〜2本、ジャンプ1〜2回。
- 深呼吸で心拍を整え、視線をボールと相手配置へ。
練習前のベストタイミングを設計する
20〜15分前:セルフモビリティと弱点補強
- 股関節外旋・内旋、足首背屈のチェック。
- ヒップヒンジ、コペンハーゲン系など弱点1〜2種を1セット。
15〜5分前:チームでの動的ウォームアップ
- 直進+多方向のスキップ、ランジ、肩甲帯の動き。
- 段階的なスプリント(60%→80%)。
メイン練習前:強度を上げるプレパレーション
- その日のテーマに直結した短いドリル(例:狭いロンド→2タッチ縛り)。
- 最後に1本だけ高強度の動きでスイッチを入れる。
カテゴリー・状況別の時間調整
高校生・大学生・社会人での現実的な目安
- 高校生:全体アップ20〜25分+直前刺激。集合は60分前を目安に。
- 大学生:戦術確認が増える分、集合は70〜90分前、アップ自体は25分前後。
- 社会人:移動・仕事疲れを考慮し、個人準備を手短に、全体は20分弱でもOK。
ジュニア選手を持つ親が押さえるべき開始時刻の目安
- 集合は試合60分前、アップ開始は30分前が目安。
- 待ち時間が長くならないよう、上着の着脱で体温管理を手伝う。
GK/フィールドプレーヤーの違い
- GK:上半身(肩甲帯・胸椎)と反応スイッチに時間を割く。キャッチ→ダイブ→キックで段階的に。
- FP:加速・減速・方向転換の反復を優先。ポジション別に長短スプリントの比率を調整。
朝キックオフ・ナイトゲームでの調整
- 朝:起床後すぐに軽い動き(5分)。会場到着後のアップはやや長めに。
- 夜:仕事・授業後の凝りをほどくモビリティを追加。カフェインは個人差に注意。
暑熱・寒冷・雨天時の調整
- 暑熱:アップ時間を少し短くし、強度の波をつくる。水・電解質を早めに。
- 寒冷:アップ時間をやや長く。待機中は防寒着で冷えを防ぐ。
- 雨天:滑りやすさを想定し、足首・股関節の安定化ドリルを増やす。
交代選手・ベンチスタートのアップタイミング
前半のアップ:何分から動き始めるか
- 試合開始10〜15分後:3〜4分の軽い動き。
- その後は10分おきに2〜3分の再活性化。寒い日は頻度を上げる。
ハーフタイムの再活性化
- 後半開始5〜7分前から3〜5分のミニアップ。
- ピッチサイドでの加速10〜15mを1〜2本、ジャンプ1〜2回。
後半の交代に向けたタイムキープ術
- 交代予定の約8〜10分前に4〜6分の本格アップ。
- 呼ばれる可能性が高い時間帯は、1〜2分の小刻みな動きで温度をキープ。
ハーフタイムと想定外の遅延への対応
ハーフタイム中の再ウォームアップの時間配分
- 前半終了〜5分:補水、装備調整。
- 残り5〜6分:動的ドリル→短いスプリント・ジャンプで締める。
キックオフ遅延・進行の遅れに対する再調整
- 遅延が5〜10分:2〜3分のジョグ+ドリル→短刺激1〜2本。
- 遅延が10分超:小休止→再び5分のミニアップを組み直す。
よくある失敗とタイムマネジメントのコツ
早く始めすぎて疲れる問題を防ぐ
- アップ総時間の目安を20〜25分に固定し、早く来た時間は準備・確認に使う。
- スプリントは“質重視で本数少なめ”。
長い待機で冷える問題への対策
- 切り上げからキックオフまでを10分以内に。
- 待機中は防寒・こまめな関節の曲げ伸ばしで温度維持。
時計・タイマーの使い方と役割分担
- スタッフまたは選手1人が「タイムコール役」を担う。
- アラームを10分刻み(開始、切り上げ、直前刺激)で設定。
ウォームアップの中身と時間配分の基本
RAMP(Raise/Activate/Mobilize/Potentiate)の時間目安
- Raise:6〜8分(心拍と体温)。
- Activate/Mobilize:6〜8分(関節・筋の可動と安定)。
- Potentiate:4〜6分(神経系のスイッチ)。
静的ストレッチはいつ行うべきか
- 長く伸ばす静的ストレッチは直前のメインアップでは最小限に。
- 可動域改善が目的なら、到着後や前日・練習後に回すのが無難。
- 短時間(目安20〜30秒)であれば、動的要素と組み合わせてOK。
ボールを使う時間と使わない時間の比率
- 試合前:非ボール(基礎動作)40〜50%、ボール50〜60%が目安。
- 練習前:テーマに応じて自由度高め。技術導入を早めに入れると効率的。
施設・スペースが限られる日の代替プラン
ピッチが使えないときの場所別アップ(廊下・駐車場・スタンド)
- 廊下:その場スキップ、ドロップジャンプ、カーフレイズ、短距離の加速。
- 駐車場:コーンの代わりにボトルをマーカー化して多方向ドリル。
- スタンド:階段スクワット、段差カーフ、上り下りで心拍上げ。
道具がなくてもできる時間効率の高いドリル
- ヒップエアプレーン、ワールドグレイテストストレッチ。
- 反転ダッシュ(5m)×数本、連続スキップ。
連戦・疲労がある日のタイミング最適化
疲労度が高い日の短縮版アップ
- 総量を20〜30%カット。動的は質優先、スプリントは本数を減らす。
- 呼吸法と軽いモビリティで“ほぐす”時間を増やす。
試合間隔が短いときの強度コントロール
- アップで疲れを作らない。90%程度の刺激で止める。
- 補水・電解質・カーボは早めに少量ずつ。
チェックリスト:今日のキックオフから逆算する
集合〜キックオフ逆算シート
- キックオフ:00:00
- 直前刺激:-03:00〜-01:00
- ロッカー戻り:-10:00〜-05:00
- ボール連携・スプリント:-25:00〜-10:00
- RAMP開始:-35:00〜-30:00
- 会場到着・準備:-90:00〜-60:00
遅刻・交通遅延時のリカバリ手順
- 残り時間10分未満:ミニマム版(6〜8分)に切替。
- 残り時間5分未満:加速2本+ジャンプ数回+関節の動的サーキットで即応。
Q&A:よくある疑問への短答
何分前からがベスト?状況別の即答チャート
- 試合:全体アップは35〜30分前開始、10〜5分前に一旦締める。
- 練習:15〜20分前開始。時間がなければ8分の短縮版。
- 寒い日:+5分。暑い日:−5分。
アップしすぎと短すぎ、どちらが危険?
どちらもマイナスですが、試合序盤の怪我リスクという観点では「短すぎ」の方が避けたい。一方で勝負どころの失速は「やり過ぎ」でも起こるため、時間よりも“終えた後に待たない”管理が鍵です。
朝練のときはどれくらい前に起きるべき?
体内のスイッチを入れるには起床後60〜90分で動きが良くなる人が多いと言われます。現実的には、起床→軽食→会場移動の中で、到着直後に5分のプレ・アップを入れると差が出ます。
まとめ:自分の最適“何分前”を見つける方法
テストと記録で個人プロファイルを作る
- 開始時刻、アップの長さ、直前刺激の本数、体感(脚の軽さ・集中度)、前半の走力をメモ。
- 気温やキックオフ時間帯も併記し、3〜4試合で傾向を掴む。
チーム全体のルーティンに落とし込む
- タイムコール役を決め、全員の時計を合わせる。
- 「35分前開始→10分前ロッカー→直前刺激」の型をベースに、天候とカテゴリーで微調整。
ベストな“何分前”は、理屈と習慣で作れます。今日の試合から、逆算と記録を始めてみてください。最初の10分の入りと、ラスト10分のキレが、着実に変わってきます。