「サッカーのクリア小学生向け練習法|親子で怖がらずに蹴るコツ」というテーマで、家庭でも取り組める具体的な練習と声かけをまとめました。試合では“外へ高く遠く”に出すだけで流れを変えられます。怖さを減らすには、身体・技術・心理の3方向から小さくステップアップするのが近道。親子で安全に、そして楽しく身につけましょう。
目次
はじめに:小学生にとっての“クリア”とは?
クリアの目的と試合での価値
クリアの目的は、ゴール前の危険を減らし、チームに時間を作ることです。小学生年代の試合では密集やバタバタが起きやすく、強く正確にボールを「外へ」「高く」「遠く」出せるだけでピンチを切り抜けられます。きれいに繋がらなくても、方向が合っていれば十分価値があります。
- 外へ出す=相手の攻撃を止める
- 高く上げる=チームが整う時間を作る
- 遠くへ飛ばす=相手を自陣から遠ざける
小学生年代の特性と指導の前提
- 骨や筋の発達途中で、強く蹴るフォームが安定しにくい
- 4号球は大人より軽いが、当たりどころ次第で痛みを感じやすい
- 「怖い」が技術習得のブレーキになりがち。段階づけが効果的
- 速さ・距離の「量」より、方向・当てる面の「質」を優先
怖さを減らす3つの視点(身体・技術・心理)
- 身体面:すね当て・靴・ボールの空気圧・ウォームアップで安心感
- 技術面:軸足、当てる面(靴ひも・インサイド)、ミートとフォロー
- 心理面:小さく成功する体験設計と、短く前向きな声かけ
まず整える:安全と準備
用具と環境チェックリスト
- すね当て装着(ズレないようソックスで固定)
- 靴紐の結び直し(ほどけないダブルノット)
- ボールの空気圧(押して少し凹む程度/硬すぎ注意)
- 地面の状態(石・段差・濡れた場所を避ける)
- 周囲の安全(人やガラス、車までの距離を確保)
ケガを防ぐウォームアップ(足首・股関節・体幹)
- 足首:片足立ちで足首回し左右10回→つま先上下リズム20回
- 股関節:足を前後に振る10回、左右に振る10回→もも上げ20歩
- ランジ&ツイスト:前に踏み込んで体を捻る×左右8回
- ヒップヒンジ:お尻を引いて前傾10回(背中は丸めない)
- 体幹:サイドプランク20秒×左右→膝立ちでボール左右渡し20回
親子で決める練習ルール5つ
- 「3・2・1」の合図で蹴る(不意打ちをしない)
- 怖いと言えたら合格。言えたら1回休んでOK
- 成功の基準を先に決める(方向が合えばOKなど)
- スピードは段階式。上げるのは成功3回後
- 終わりは良いイメージで(成功1回で終了しても良い)
フォームの基礎:怖がらずに強く蹴るための体の使い方
軸足の置き方と体の向き:ボールとゴール・タッチラインの関係
- 軸足はボールの横10〜20cm、つま先は出したい方向へ
- 体はやや前傾、肩と骨盤を出したい方向に合わせる
- サイドへ出す時は、タッチライン方向に軸足のつま先を向ける
- コーナー方向へは45度の角度を作ると方向が安定
当てる部位の選び方(インステップ/インサイド)と使い分け
- インステップ(靴ひも):強く高く飛ばしやすい。外へ大きく出したい時
- インサイド:方向が安定。確実にタッチライン外へ出す時に有効
- 迷ったら安全優先でインサイド。慣れてきたらインステップも練習
ミートポイントとフォロースルーの感覚づくり
- ボールの中心よりわずかに下側を「厚く」当てる
- 足は止めず、当てた方向へ素直に振り切る
- バウンド球は「落ち際」を狙うとミートしやすい
- インサイドは足首を固定して、面を最後まで出す
上半身の役割:腕でバランス・目線で判断
- 腕を軽く開いてバランスを取る(体が起き上がりやすい)
- 目線は「ボール→出したい方向→ボール」の順で素早く切り替え
- あごを軽く引いて、胸は前へ。反りすぎは力が抜ける原因
心理の壁を越える:ボール恐怖を薄めるアプローチ
恐怖の正体を言語化する:『痛い』『当たるのが怖い』を分けて考える
- 「どこが」「何が」怖い?を言葉にする(例:足の甲が痛い)
- 0〜10の怖さスケールを作る(今日は3までにしよう、など)
- 原因が分かると対策が見える(面を変える、距離を変える)
段階的な慣れ(小・軽・柔→標準球)
- 新聞紙ボール→スポンジボール→空気弱めの4号→通常4号
- 距離:近い→中→遠い、速さ:ゆっくり→普通→速い
- 各段階で「3回成功したら次へ」。戻るのも立派な一歩
成功体験の積み上げと声かけフレーズ集
- 「方向OK!」(距離より方向を評価)
- 「靴ひもに当たったね!」(当てる面を褒める)
- 「外に出せたら100点!」(目標を単純化)
- 「いまの速さキープで3回連続いこう」(条件の固定)
段階別ドリル:親子でできるクリア練習メニュー
ステージ0:室内での“当てる練習”(柔らかボール)
- 膝立ちで足の甲にポンと当てる。面の感覚づくり×10回
- 足裏で止め→甲に転がし→靴ひもで軽くタッチ×10回
- 親が手で軽く投げた柔らかボールをインサイドで外へコロコロ
ステージ1:止まったボールを確実にクリア
- マーカーで狙う方向を作る(タッチライン想定)
- 「タ・ターン」(最後の二歩)と声を合わせてミート10本×2
- インサイド→インステップの順で段階アップ
ステージ2:ゆるい転がり球を外へ出す
- 親がゆっくり転がす→子は一歩動いて軸足セット→外へ
- 右から来たら右足で外、左からは左足で外(安全優先)
- 方向コーンの間を通せたら成功。10本中7本を目標
ステージ3:バウンド球へのタイミング合わせ
- ワンバウンドの「落ち際」を合図して蹴る(3・2・1・今)
- 体を後ろに倒さない意識で前傾キープ
- 慣れるまでインサイド中心→次にインステップへ
ステージ4:浮き球をワンバウンドで処理
- 親が軽く上げる→ワンバウンド→インステップで高く外
- 足首のロックを意識(つま先を少し下げる)
- 狙いは「外・高く」。距離は二の次でOK
ステージ5:プレッシャー有りの方向付きクリア
- コーンで相手役を置いて、3秒以内に「右・左・外」へ
- 親が声で方向指示→子がワンタッチで外へ出せたら1点
- インターバル短めで5本×3セット(疲れすぎ注意)
逆足クリアを強化するショートセット
- 逆足のみでインサイド10本→インステップ10本
- 軸足をボールの横10〜20cmに置くことに集中
- 成功2回でスピードを少し上げる。5分で終了
技術のコツ:ここを直すと一気に安定する
つま先で蹴らないための『靴ひもを見る』合図
- ミート直前に「靴ひもを見る」と声をかける
- 足首をロック(インステップはつま先少し下げ、インサイドは直角)
- 感覚チェック:当たった瞬間に音が「ドン」なら厚い当たり
体が後ろに倒れない“3点ライン”(鼻・膝・つま先)
- 鼻・膝・つま先が斜め一直線に並ぶ姿勢を意識
- 後ろに倒れると当たりが薄くなりやすい→前傾で厚く当てる
- 腕を軽く開き、胸を前に運ぶと倒れにくい
最後の一歩のリズム“タ・ターン”でミートを安定
- 小さく「タ」→しっかり踏む「ターン」で軸足安定
- 親が声でリズムを刻むと、タイミングが合いやすい
強さより高さ:危険回避の『外・高く・遠く』
- 迷ったら外へ。無理につなごうとして中央へは返さない
- 「高く」を先に意識すると、相手の時間を奪える
- 距離は後から伸びる。まずは方向と高さの安定
判断力を育てる:どこへクリアするか
3秒で決める進路(タッチライン・コーナー方向・大外)
- ゴール前=サイドへ
- サイド深い位置=コーナー方向へ高く
- 中央で密集=一番外(大外)へ逃がす
仲間の位置と相手の人数で選ぶ優先順位
- 数的不利や密集→安全最優先の外
- 味方が外にいる→足元ではなくスペースへ高めに
- 逆足側に相手が寄っている→利き足側へワンタッチ
声のかけ方:“右・左・外”のシンプルコール訓練
- 短く、はっきり、1ワード(例:「右!」)
- 親は背後から状況役でコール→子は即クリア
- コール→ミートまで2秒以内の反応を目安に
家庭での工夫:限られたスペースでもできる
壁当てを“クリア練習”に変える設定
- 壁に45度で立ち、インサイドで外へ弾く軌道を作る
- 養生テープで「外ライン」を床に貼る→そこを越えたら成功
- ワンバウンド→外を目標にすると実戦に近い
新聞紙ボール/スポンジボールの活用
- 新聞紙を丸めてテープで固定→室内でも安全に当てる面の練習
- スポンジボールは恐怖心を減らしやすい。フォームづくりに最適
雨の日にできる足首・股関節トレーニング
- チューブ足首プル:座ってつま先引き寄せ20回×2
- ヒップリフト:仰向けでお尻上げ15回×2
- サイドプランク・ニーアップ:各20秒×左右2セット
ミスの原因と修正法
空振り・かすり球の原因診断フロー
- 目線:最後にボールを見た?→見ていない→「靴ひもを見る」を合図
- 軸足:ボールの横に置けた?遠すぎ/近すぎ→10〜20cmに修正
- 足首:ロックできた?→できていない→つま先角度を固定
- タイミング:最後の二歩は「タ・ターン」になった?→声で合わせる
ボールが上がらない時のチェックポイント
- 体が前に乗れているか(後傾は当たりが薄くなる原因)
- ボールの中心より少し下側を厚く当てているか
- フォロースルーが途中で止まっていないか(振り切る)
怖くて足が出ない時のリセット手順
- 深呼吸3回→距離を2歩遠くする
- 柔らかいボールorゆっくり転がしに一段階戻す
- 1回成功したら今日は終了でもOK(良いイメージを残す)
ミニゲームで実戦化
2対2+サーバー“外へ出したら1点”
- 2対2で守備側が外へ出せたら1点。攻撃は再開ボールから
- コール「右・左・外」を義務化。声がないと得点無効など工夫
クリア後の2ndボール回収ゲーム
- クリア後にコーチ(親)が別のボールを投げる→拾ったら加点
- クリア→即反応の習慣づけ。守→攻の切り替えも育つ
時間制限つき波状アタックの守備練
- 15秒ごとにクロスやロングボール→連続で処理
- 3本中2本を外・高くで成功したらレベルアップ
週2〜3回で伸ばす練習プラン
30分メニュー例(平日)
- 5分:ウォームアップ(足首・股関節・体幹)
- 10分:フォーム基礎(止まったボール、面づくり)
- 10分:ステージ2〜3(転がり→バウンド)
- 5分:ミニゲーム(外へ出したら1点)
60分メニュー例(週末)
- 10分:ウォームアップ+逆足ショートセット
- 30分:ステージ1〜5を段階アップ(成功3回で次へ)
- 15分:判断トレ+声出し(コール訓練)
- 5分:振り返り(今日の成功3つを書き出す)
成長を見える化するチェックシート項目
- 靴ひもに当てられた回数(/10)
- 外へ方向一致(/10)
- 3秒以内の判断(/10)
- 逆足での成功(/10)
- 声(右・左・外)が出せた(○/△/×)
よくある質問(Q&A)
身長や体力が小さい子はどうする?
高さと方向を優先しましょう。強さは後からついてきます。インサイドで外へ確実に、インステップはワンバウンドの落ち際を狙うと飛ばしやすくなります。ボールの空気圧を少し弱めてフォーム作りから始めるのも方法です。
女子や初心者でも同じ方法でよい?
原則は同じです。スピード・距離の段階をより細かくし、成功基準を方向だけに絞ると入りやすくなります。体調に合わせ、無理のない範囲で続けてください。
ボールを怖がるときの中断と再開の目安
- 怖さスケールが6以上、表情が固い、動きが縮こまる→一度中断
- 柔らかいボール・距離を戻して2回成功したら再開
- 終わりは成功で締める(成功1回で終了も可)
まとめ:怖さを技術に変えるクリア習得のロードマップ
今日から始める3アクション
- 安全準備と「3・2・1合図」を習慣化
- ステージ1(止まったボール)で方向だけを10本
- 声かけは「外OK」「靴ひも当たった」で短く前向きに
親がフィードバックで言っていいこと/言わないこと
- 言っていいこと:方向・面・リズムなど具体的な1点だけ
- 言わないこと:抽象的な「もっと強く」「根性」だけの声かけ
- 良かった点→1つ、次にやること→1つ、で終えると続けやすい
クリアは「外・高く・遠く」を軸に、フォームと判断、そして心理の安心を積み重ねることで安定します。親子で段階を踏み、成功体験を切らさずに続けていきましょう。試合での一発のクリアが、自信と成長の起点になります。