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サッカーのボールキープ、小学生向け1日10分の試合直結ドリル12
ボールを「失わない」ことは、パスやシュートと同じくらい試合で大事。小学生でも、毎日10分の習慣でボールキープ力はしっかり伸びます。ここでは、狭いスペースでも安全にできて、しかも試合の状況にそのままつながる12のドリルを紹介します。準備は必要最小限。続けやすく、観る・判断する・体で守るを同時に鍛えます。
サッカーのボールキープとは?小学生が最初に押さえる基礎
ボールキープの定義と「失わない」判断基準
ボールキープとは、相手に奪われずに次の良いプレー(パス・ドリブル・シュート・ファウル獲得・タッチラインを有利に使う等)へつなげる技術と判断のことです。大事なのは「長く持つ」ではなく「必要な時間だけ持つ」。
- 成功の判断基準(目安)
- 1〜3秒の間に顔を上げ、次の選択肢を1つ以上確保できた
- 相手の届く範囲からボールを外し続けられた
- ゴール方向、または安全な味方方向へ前進・方向転換できた
- 失敗のサイン
- ボールを見続けて視野が止まる
- 体が正面を向いたまま当たられてずれる
- 強く蹴りすぎ、間合いが広がって奪われる
身体の向き・半身・軸足の使い方
小学生でもすぐ変えられるのが「半身」。相手に対して体を45度ほどずらし、ボールを遠い足で扱うことで、体そのものが盾になります。軸足はやや外向きに置き、つま先・膝・腰の向きをそろえるとブレーキとターンが安定します。重心は低め、膝と股関節を軽く曲げ、背中を少し丸める「猫背すぎない前傾」でOKです。
視野の確保とスキャン(見る→判断→実行)
スキャンは「受ける前2回、受けた後1回」が目安。ちらっとで十分。視線は「ボール・相手・味方・スペース」を順番に。言葉にすると「前よし、横よし、足もと」と唱えると習慣になります。見る→判断→実行の時間を短くするため、ドリルでも合図や制限を入れて鍛えます。
1日10分で差がつく練習設計
ウォームアップ30秒×3の考え方
いきなり強く動かず、30秒×3種で関節を起こします。
- 足首回し&つま先立ちリズム(30秒)
- 股関節ぐるぐる&膝の曲げ伸ばし(30秒)
- 軽いタッチドリブル(イン・アウト、足裏)左右各15秒
呼吸は止めず、体が温まる感覚を優先。ここに1分半、残り8分半をドリルへ配分します。
ドリルの選び方(学年・レベル別)
- 低学年(1〜3年):足裏・インサイド中心、接触は軽め。1つの動きに集中。
- 中学年(3〜4年):半身・ピボットターンを追加。簡単な接触や合図反応。
- 高学年(5〜6年):スキャン回数を意識。制限タッチや方向転換の時間計測。
その日の調子で「できた感」を1つ作るのがコツ。無理に難易度を上げ続けないことも継続のカギです。
安全とスペースの確保、家庭での注意点
- 床の滑り・段差・ガラス周りを確認。半径2m確保が目安。
- 室内は柔らかいボールか空気を少し抜いたボールを使用。
- 接触系は屋外のみ。室内では「壁・家具=相手」の想定に切り替え。
- 痛みが出たら中止。呼吸が乱れすぎる前に小休止。
試合直結ドリル12(小学生向け・各1分×2セット目安)
足裏ストップ&隠すシールドステップ
やり方:前進しながら足裏でボールを止め、相手が来る想定で体を半身に。止めた足でボールを自分の体側へコロコロ引き込み、反対足を一歩前に出して「体で隠す」。
- ポイント:止める→隠すを素早く。膝・腰は柔らかく。
- ミスと修正:ボールが体から離れる→足裏は足の中心で優しく、引く距離は靴1足分。
半身ピボットターン(内回り・外回り)
やり方:半身でボールを遠い足に置き、軸足のつま先でくるっと方向転換。内回り(体の内側へ)と外回り(外側へ)を交互に。
- ポイント:目線は先に回転先へ。ボールは足の甲寄りで小さく運ぶ。
- ミスと修正:回転でふらつく→最初は歩幅小さめ、かかとを浮かせたまま回る。
片手接触での背負いキープ(ライトコンタクト)
やり方:相手を背中に想定し、片手を軽く後ろへ伸ばして距離を感じながら、遠い足でタッチ。家族や友だちとやるときは押さない・ぶつからないライト接触で。
- ポイント:手は「触れるだけ」でOK。重心は相手側の足に6割。
- ミスと修正:手で押す→反則になる形はNG。肩と骨盤で距離管理。
つま先タップからのV字リリース
やり方:その場で左右つま先タップを8回→足裏で引いてインサイドでV字に出す→半身で隠す。テンポ良く繰り返し。
- ポイント:Vの角は小さく、出す足は遠い足。
- ミスと修正:強く出しすぎ→出す距離は靴1〜2足分が目安。
逆足インサイド壁当て想定の隠しパス風キープ
やり方:壁やマーカーを相手と見立て、逆足(利き足と反対)のインサイドで軽くコントロールし、体で隠しながら角度を変える。パス風に見せて出さず、キープを選ぶ練習。
- ポイント:逆足の面づくりを丁寧に。目線は一度パス方向へフェイク。
- ミスと修正:面がブレる→足首を固定、膝を軽く内側へ締める。
ステップバックシザース→体で隠す
やり方:相手が詰めてくる想定で半歩下がるステップバック→シザース1回→ボールを体側へ引き込み、背中でブロック。
- ポイント:下がる→見せる→隠すの3拍子。視線は相手の足元。
- ミスと修正:後ろへ下がりすぎ→半歩で止める。ライン際は出ないように。
低い重心の1m往復カバーリングドリブル
やり方:1m間隔でマーカーを2つ置き、往復しながら常に体とマーカーの間にボールを置く。相手がいる想定で「体で守る角度」を維持。
- ポイント:膝の高さは変えない。タッチは3〜4回/1mの細かさ。
- ミスと修正:ボールがはみ出る→タッチは小さく、足の内外を使い分け。
サイドライン想定の外逃げ・内逃げループ
やり方:ライン際を想定し、外へ逃げる(ライン側)→内へ逃げる(ピッチ内側)を交互に。片方は足裏引き、もう片方はインサイドプッシュ。
- ポイント:外逃げはボールを外足で、内逃げはターンを小さく。
- ミスと修正:ラインを割る→最初は仮想ラインを広めに設定。
受ける前のスキャン2回→ワンタッチキープ
やり方:親やパートナーがボールを軽く転がす。受ける前に左右を2回見る→ワンタッチで体側に置き直し、半身で止める。
- ポイント:「見てから触る」を徹底。声かけ合図でもOK。
- ミスと修正:止めすぎる→ワンタッチはあくまで位置調整。足を引くように。
からだの間に置くポケットトラップ
やり方:ボールを受ける瞬間、両足の間少し前(ポケット)に置く。相手方向へ片足を出し、もう片足でボールを守る角度を作る。
- ポイント:ボールはかかとより前、つま先より後ろ。膝を柔らかく。
- ミスと修正:股の下に入る→足幅を広げすぎない。ボールは片足寄りに。
触らせて外す誘いタッチフェイント
やり方:相手が届きそうな距離にあえて弱いタッチ→相手が足を出す瞬間に逆へ逃げる。壁や棒を相手に見立ててもOK。
- ポイント:誘いは低速、外すは加速。目線は常に相手の腰。
- ミスと修正:奪われる→誘いの距離を10〜20cm短く調整。
3タッチ制限での背後逃げ(シャドウDF想定)
やり方:背後から付かれている想定で「3タッチ以内」で前向きに抜けるor安全に預けられる位置へ運ぶ。タッチ数を声に出して数える。
- ポイント:1タッチ目で体側へ、2タッチ目で進行方向へ、3タッチ目で加速。
- ミスと修正:2タッチ目で迷う→事前スキャンで行き先を決めておく。
家や狭いスペースでできるボールキープ練習の工夫
室内用ボール・靴下ボールの活用
室内はミニサイズやスポンジ、空気を少し抜いた4号球が安全。靴下を丸めてテープで止めた「靴下ボール」もタッチ練習に使えます。
壁・家具を相手に見立てる安全なセット
壁から1m離れて、壁に背を向ける=相手が背後にいる想定。家具の角を「足を出してくる相手」に見立て、触らせて外す練習も可能です。ぶつからない位置取りを最優先に。
公園・庭でのマーカー代替アイテム
ペットボトル、軍手、落ち葉、チョークの線などでOK。風が強い日は少し水を入れたペットボトルが安定します。
対人に強くなるための体づくりと当たり方
体幹と股関節の可動性ミニルーティン
- ヒップヒンジ20秒(お尻を後ろへ引く)
- 世界一のストレッチ左右20秒(股関節と胸を同時に)
- サイドプランク左右20秒(肩〜骨盤を一直線)
安全な接触の基本(肩→胸→骨盤)
接触は「肩で触れる→胸で距離を保つ→骨盤で方向を固定」の順に軽く行うと安全。腕で押すのは反則になりやすいのでNG。目線は相手の胸・腰あたりに。
成長期に配慮した負荷管理
- 痛みや違和感がある部位は即中止。
- 接触は短時間・軽度から。連日強度を上げない。
- 睡眠・食事・水分で回復を優先。特に夏場はこまめに給水。
試合で使うための落とし込み
受ける前の準備(スキャンと体の向き)
ボールが来る前に2回スキャン→半身で受ける→遠い足で置く。この3つをセットで反復。呼吸を止めないことも大切です。
サイド・中央・背負いの状況別キープ
- サイド:外逃げ→内逃げをセットで用意。ラインを味方に。
- 中央:ポケットトラップ→片手接触→ピボットで左右の出口を確保。
- 背負い:最初の1タッチで体側へ。誘いタッチを混ぜて反転or預ける。
奪われた後の切り替えとリカバリー
失っても0.5秒で切り替え。最短距離で相手とゴールの間に戻る、体を入れ直す、ファウルに頼らない。ここまで含めて「良いキープ」です。
よくあるミスと修正キュー
ボールを見すぎる
修正キュー:「ボールは足で感じる・目は前」。「前よし、横よし、足もと」と唱える。
体が正面を向きすぎる
修正キュー:「おへそは斜め」「遠い足」。靴1足分、相手からボールを遠ざける。
強く蹴りすぎて間合いが広がる
修正キュー:「タッチはささやき声」。靴1〜2足分の移動で十分。
上達を可視化するチェックリストと簡易テスト
10秒キープチャレンジ(狭いスペース)
半径1mの円内で10秒間、相手想定でボールを体側に置き続ける。顔上げは3回以上を目標。
背負いからの方向転換タイム計測
背中に相手を想定→ピボットターン→前向きになるまでを計測。低学年2.5秒、中学年2秒、高学年1.5秒を目安に短縮を狙う(あくまで目安)。
ミス率・成功率の記録方法
- 1分で奪われた回数(またはラインアウト回数)を数える。
- 週のベストと平均をメモ。増減を見て強度を調整。
1週間のメニュー例(10分×7日)
月〜日の配分と休息
- 月:ウォームアップ→ドリル1・2・3
- 火:ウォームアップ→ドリル4・5・6
- 水:ウォームアップ→ドリル7・8・9
- 木:リカバリー(軽いタッチ+体幹)
- 金:ウォームアップ→ドリル10・11・12
- 土:チェックテスト+弱点ドリル1つ
- 日:完全オフor散歩・ストレッチ
ドリルの入れ替え・負荷調整
同じドリルを2週続けたら1つ入れ替え。タイム短縮やタッチ制限で微調整。疲れている日はセット数を半分に。
試合前日の軽め調整
接触・強いターンは控え、スキャン→ワンタッチ→半身の確認を中心に5〜8分。寝る前ストレッチで体をリセット。
保護者・指導者ができるサポート
声かけ例と観点
- 「今どこが空いてた?」「次はどっちに逃げる?」と選択を促す質問
- 「半身ナイス!」「遠い足OK!」と体の使い方を具体的に褒める
家でのルール作りと安全管理
- 練習スペースの範囲を明確化。割れ物は事前に移動。
- 時間はタイマーで管理。短く集中、終わったら片付け。
継続の仕組み化(チェック表・タイマー)
カレンダーに◯×と一言メモ。「10秒キープ成功」「半身意識できた」などの小さい達成を見える化すると続きます。
用具選びと環境づくり
ボールサイズと空気圧の目安
小学生は4号球が一般的。室内や低学年は軽量タイプも選択肢。空気圧はおおよそ0.6〜0.8bar(600〜800hPa、約8.7〜11.6psi)を目安に、指で少しへこむ程度に調整します。
室内・屋外のシューズ選び
- 室内:フラットソールのインドアシューズ。滑りにくさ優先。
- 屋外:トレーニングシューズ(トーフィン)。芝はTFまたはHGを状況で。
マーカー・コーンの代用品
ペットボトル、雑誌、タオルで代用可能。踏んでも安全な柔らかい物が安心です。
まとめ:10分の積み重ねが試合の自信に変わる
ボールキープは「体で守る」「半身で置く」「見る→決める→動く」の3点セット。1日10分でも、意図を持って続ければ確実に試合へ直結します。うまくいかない日は、ドリルを1つだけ、時間を半分にしてOK。続ける仕組みを作って、週ごとの小さな変化を楽しみましょう。
よくある質問(Q&A)
毎日やっても大丈夫?
強度を調整すれば問題ありません。接触や強いターンは連日避け、週1日は完全休養か軽い調整日に。
ドリブルが苦手でも効果はある?
あります。キープは「置く・守る・見る」が中心で、派手なテクニックより基礎の精度が重要。むしろ苦手な人ほど伸びを実感しやすいです。
相手が強いと怖い時の対処
半身で受けて最初の1タッチを体側へ置く。無理しないで安全な方向へ預ける判断も立派な技術。怖さは準備の不足から来やすいので「スキャン2回→半身→遠い足」をルーティン化しましょう。