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サッカーの目標設定シート 挫折しない作り方と実例

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「頑張る」は尊い。でも、頑張り方を設計できる人は少ない。サッカーで伸びる人は、感情の波に流されず、目標を「見える化」して、小さく回し、週ごとに修正します。本記事では、挫折しにくい目標設定シートの作り方と実例(FW、SB、GK、ジュニア対応)を、今日から実践できるレベルまで具体化しました。画像や図なしでもそのまま写して使えるテンプレート付きです。

先に結論:挫折しない目標設定の3原則

目標は「結果・行動・習慣」の三層で設計する

伸ばしたいのは結果ですが、直接コントロールできるのは行動と習慣です。そこで三層に分けます。

  • 結果目標(コントロール低):ゴール数、スタメン獲得、テスト合格など
  • 行動目標(コントロール中):1日20本の弱足シュート、試合でスキャン10回/前半など
  • 習慣目標(コントロール高):就寝23:00、練習前の10分ルーティン、週1レビュー

シートには三層をセットで書き、毎週「どの層が詰まっているか」を見直します。結果が出ないときほど、行動と習慣に戻すのがコツです。

最小達成単位から始める(1日5分・1項目・1回)

続かない最大の理由は「大きすぎる一歩」。最初の1〜2週は以下に制限してください。

  • 時間:5分だけ
  • 項目:1つだけ
  • 回数:1セットだけ

慣れてきたら負荷を少しずつ。続く人は「やる気」を頼りません。「小さすぎて失敗しようがない」設計を作ります。

可視化と週次レビューでフィードバックループを回す

見えると続く、振り返ると修正できる。週1回、同じ時間に、同じフォーマットでレビューします。

  • 見える化:チェックボックス、成功率、タイム、回数を数字で
  • レビュー:事実(数字)→原因(仮説)→次の一歩(具体)
  • ループ:翌週シートに反映(増やす/減らす/入れ替える)

目標設定シートとは?メリットと限界

なぜシート化が効くのか(注意の配分と意思決定の簡素化)

練習・勉強・生活を同時に回すと、注意は散りがち。シートは「今週の優先3つ」を前に出し、迷いを減らします。毎日の意思決定を「シートどおりやる」だけに簡素化でき、集中力を温存できます。

シートに書くだけでは変わらない:行動に接続する設計の必要性

紙やアプリはただの器。行動に変わるのは「場所・時間・やり方」が具体になったときです。If-Then(〜なら、〜する)で、練習や生活の流れに組み込みます。

よくある誤解(結果目標だけ/量に偏る/細かすぎる)

  • 結果だけ:達成/未達で感情が揺さぶられ、改善が止まります。行動と習慣を必ずセットに。
  • 量だけ:本数や距離が伸びても、質が伴わないと試合に繋がりません。成功率や難易度も。
  • 細かすぎる:項目過多は挫折の源。週の優先は3つまでが目安です。

挫折を防ぐ設計図:フレームワークの使い分け

SMART+WOOP+実行意図(If-Then)の組み合わせ

それぞれの役割を分担させます。

  • SMART:目標の条件を整える(具体、測定可能、達成可能、関連性、期限)
  • WOOP:障害を想定して先に対策(望み・結果・障害・計画)
  • If-Then:状況と行動を紐づける(もし〜なら、〜する)

例:SMARTで「弱足の枠内率を4週間で50%→65%」、WOOPで「練習場所が空いてない→廊下で壁当てに切替」、If-Thenで「帰宅後に靴を脱いだら5分だけ弱足ボレー」。

If-Thenプランニングの実例(練習・試合・生活)

  • 練習:もしパス練の前に5分空きがあれば、足裏タッチ30回×2
  • 試合:もし守備から攻撃に切り替わったら、最初の2歩を全力で前に
  • 生活:もし22:30になったら、スマホを充電場所に置き就寝準備開始

行動デザイン:摩擦を減らす5つの工夫(置き場・時間・トリガー・仲間・ご褒美)

  • 置き場:ボール・スパイク・チューブを玄関に常設
  • 時間:同じ時間に同じ習慣(例:風呂前5分)
  • トリガー:音(タイマー)や場所(机/公園)で開始合図
  • 仲間:家族・チームメイトと「今日やった?」の一言確認
  • ご褒美:週達成で好きな動画30分、好きな軽食など

KPIの選び方(サッカー特化)

テクニックKPI:ファーストタッチ・弱足・1対1・フィニッシュ精度

  • ファーストタッチ:方向づけ成功率、トラップ後2歩で前進できた割合
  • 弱足:枠内率、パスのミス率、弱足での決断回数
  • 1対1:仕掛け成功率(抜く/はがす)、ボールロスト数
  • フィニッシュ:枠内率、決定機でのシュートまで到達率

フィジカルKPI:スプリント・反復持久(Yo-Yo)・跳躍・片脚安定性

  • スプリント:10m/20mタイム、最高速度に近い区間の感覚
  • 反復持久:シャトル走の往復回数やYo-Yo系の目安(自主測でOK)
  • 跳躍:立ち幅跳び、片脚連続ホップ回数
  • 片脚安定性:片脚スクワットのフォーム維持回数

戦術・認知KPI:スキャン回数・ライン間受け・トリガー反応

  • スキャン回数:ボール受け前3秒間の視線移動回数
  • ライン間受け:受け直しから前向きで受けた回数
  • トリガー反応:味方/相手の動きに対する同時反応の回数

メンタル・回復KPI:自己対話・睡眠・RPE・HRVの基礎

  • 自己対話:ミス後10秒以内のリセット行動の実施率
  • 睡眠:就寝/起床の安定、睡眠時間
  • RPE:主観的運動強度(10段階など)を練習後に記録
  • HRV:変動の傾向を記録(対応機器がある人向けの任意指標)

生活習慣KPI:食事・水分・学業/仕事の両立

  • 食事:1日たんぱく質摂取回数(例:3回以上)
  • 水分:練習前後の体重差で大まかな水分補給を確認
  • 両立:学習/仕事の優先タスク完了数

測定と記録の簡易メソッド

自主練で測る指標(反復回数・成功率・タイム)

  • 反復回数:ターゲット10〜30回程度で短時間集中
  • 成功率:20本中の枠内/成功など割合で記録
  • タイム:10mダッシュ、ドリブルスラロームの秒数

試合で測る指標(シュート数・デュエル勝率・ボールロスト)

  • 攻撃:シュート数、決定機への関与(最終パス/前パス)
  • 守備:デュエル勝率、インターセプト/カバーの回数
  • ミス:ボールロスト数と要因(タッチ/判断/視野)

スマホと無料ツールでの記録術(ストップウォッチ・表計算・動画)

  • ストップウォッチ:区間タイムの計測
  • 表計算:週テンプレをコピーして数字だけ更新
  • 動画:短いクリップでフォーム確認。改善点をテキストで1つ記録

週次・日次のシート構成(テンプレート)

週間ページのレイアウト例(優先3・KPI・予定・レビュー)

【週の優先3】1)2)3)【今週のKPI】・テクニック:・フィジカル:・戦術/認知:・回復/生活:【スケジュール概要】・練習/試合/学業・仕事:【週末レビュー】事実:解釈:次の一歩:  

日次ページのレイアウト例(焦点2・実行意図・達成度・RPE)

【今日の焦点2】1)2)【If-Then(実行意図)】もし(状況)なら(行動):【実施ログ】・本数/成功率/タイム:・RPE(主観負荷):・睡眠/食事/水分メモ:【ひと言レビュー】良かった/課題/明日どうする:  

試合用レビュー欄(事実→解釈→次アクション)

【試合レビュー】事実(数値/出来事):解釈(原因仮説):次アクション(行動1つ):  

月次サマリーとスコアリング(達成率・改善点・維持点)

【月次サマリー】達成率(%):改善点(来月やめる/減らす):維持点(続ける/伸ばす):ベスト学び1行:  

作り方ステップバイステップ

シーズンの文脈を把握する(役割・日程・制約)

自分のポジション、チームのスタイル、試合日程、学校や仕事の繁忙期、移動時間などを書き出し、現実的な枠を先に決めます。

長期→中期→短期へ分解(ゴールツリー)

  • 長期(半年〜シーズン):例「リーグで二桁得点」
  • 中期(1〜3か月):例「枠内率を65%へ」「スプリント10mを1/10秒短縮」
  • 短期(1週間):例「弱足20本/日×5日」「週2で10m測定」

KPI選定と初期値の測定(ベースラインの確立)

最初の1週は測るだけでもOK。現状値がわかると、目標が具体になります。

実行意図の文章化と配置(いつ・どこで・どのように)

「いつ(帰宅後)・どこで(玄関前)・どのように(弱足ボレー20本)」の形で1行に。

リマインドと環境設計(視界・動線・チェックリスト)

道具は視界に入る場所へ。チェックリストはスマホのホーム1ページ目か、部屋の扉に貼ると習慣化が進みます。

週次レビューの儀式化(固定時間・3問・改善1つ)

毎週日曜夜など固定。3問「何がうまくいった?」「何が邪魔した?」「来週は何を変える?」で十分です。改善は1つだけ。

実例1:フォワード(高校生)の目標設定シート

長期・中期・短期目標とKPIの紐づけ

  • 長期:シーズン10得点、決定機でのシュート到達率80%
  • 中期(8週):枠内率65%→72%、最終局面のファーストタッチ成功率80%
  • 短期(今週):弱足枠内20/30本×5日、PA内のワンタッチシュート10本×3セット/週

週間シート記入例(優先3・射門KPI・崩しの行動目標)

優先3:①弱足枠内 ②PA内ワンタッチ ③背後への抜け直し5回/試合KPI:枠内率、決定機到達率、背後ラン回数If-Then:もし味方が前向きで持ったら、最初の2歩でDF背後へ全力  

試合レビュー例(XGに基づく振り返りの書き方)

厳密なxGは計算不要です。自分用に「距離・角度・体勢」で難易度メモを作り、難易度A/B/Cなどで分類します。

事実:シュート4(A1/B2/C1)、枠内2、決定機到達3/4解釈:Aの1本は体勢作りが遅くミート不十分。Bの2本はファーストタッチ改善余地。次アクション:来週は「体勢づくり」ドリルを5分追加。B→Aに変えるタッチを練習。  

よくあるつまずきと対策(ボールに寄りすぎ/決定力の錯覚)

  • ボールに寄りすぎ:受け直しの角度をKPI化(1試合で3回、DFの背中から出現)
  • 決定力の錯覚:本数が多くても質が低いと得点に直結しません。難易度Aの本数と枠内率を主要KPIに。

実例2:サイドバック(大学生/社会人)の目標設定シート

長期・中期・短期目標とKPI(クロスの質・守備対応)

  • 長期:クロスからの決定機創出を増やす、対人守備の後出し対応を安定
  • 中期:クロスの有効エリア進入回数/試合 6回、1対1対応の後退ステップ成功率80%
  • 短期:クロスポケット進入のタイミング練習、復帰スプリント10m×6本/週

週間シート記入例(位置取り・内外の駆け引き)

優先3:①内側で受け直し ②クロスポケット侵入 ③復帰スプリントKPI:侵入回数、早いクロスの精度、背後ケアの開始距離If-Then:もしウイングが絞ったら、外を一気にオーバーラップ  

試合レビュー例(デュエル・ラインコントロール)

事実:対人7(勝5)、ライン統率の声かけ8回、裏抜け対応遅れ2回解釈:ボールウォッチ2回でCBとの距離が広がった次アクション:トランジション時は「内→外→背後」の順で視線チェックをIf-Thenに追加  

よくあるつまずきと対策(クロス本数偏重・裏ケア漏れ)

  • 本数偏重:クロスは「出所の質」と「打つ位置」。ポケット侵入数とファー/ニアの狙い分け成功をKPI化。
  • 裏ケア漏れ:ボール方向だけ見ない。背後の走者チェックをトリガー化(ボールが外へ出た瞬間)。

実例3:ゴールキーパーの目標設定シート

長期・中期・短期目標とKPI(被枠内セーブ率・前進パス)

  • 長期:枠内シュートのセーブ率向上、ビルドアップの前進パス成功
  • 中期:至近距離1対1のブロック成功率、サードマンへの前進パス/試合 5回
  • 短期:構えの早さドリル、縦パス→落とし→前進の反復

週間シート記入例(ハイボール・1対1・ビルドアップ)

優先3:①構えの早さ ②至近距離ブロック ③前進パス角度の事前準備KPI:構え開始距離、ブロック成功、前進パス数/成功If-Then:もし相手の縦パス予兆を見たら、半歩前で構え準備  

試合レビュー例(ポジショニング・声かけ指標)

事実:クロス対応8(キャッチ5/パンチ2/流れ1)、コーチング14回解釈:逆サイドの絞りが遅い→事前声かけ不足次アクション:セット時に「逆!絞れ!」の事前コールをIf-Thenに追加  

よくあるつまずきと対策(構えの遅れ・配球選択の固定化)

  • 構えの遅れ:シュートモーションの前に半歩低く構えるトリガーを固定
  • 配球固定化:サイドばかり→中央の落としを意図的に1本入れる週間KPI

親子で使う目標設定シート(ジュニアのサポート)

子ども向けにする3つの工夫(視覚化・選べる目標・短時間)

  • 視覚化:丸シール/チェックで楽しく
  • 選べる:大人が決めず、子どもに2択から選んでもらう
  • 短時間:5分以内。成功体験を先に積む

保護者が手伝うポイント(事実の言語化と承認)

「今日の良かった事実を1つ」「次はどうする?」の2問で十分。できたら短く承認。「よく気づいたね」が最強です。

週1の家族ミーティングの進め方(よかった・困った・次の一歩)

  • よかった:できたことを具体に
  • 困った:邪魔した要因を一緒に特定
  • 次の一歩:行動を1つだけ決める

シーズンサイクル別アレンジ

プレシーズン:基礎構築と負荷漸増のKPI

技術の反復とフィジカル基礎。量→質へ段階的に移行。睡眠と栄養の安定もKPIに。

インシーズン:維持と微調整のKPI

試合優先。週のボリュームは抑え、弱点1つを継続。RPEで負荷管理。

オフシーズン:弱点強化と回復のKPI

時間を使える時期。フォーム改善や弱足など地味な課題を集中強化。回復KPI(睡眠・痛み0〜10)を併記。

怪我・受験・多忙期の特別版シート

怪我中のリハビリKPI(ROM・痛みスケール・復帰基準)

医療者の指示を優先してください。自分のシートでは「可動域(ROM)」「痛み0〜10」「できる動作」を記録。復帰は段階的に(ジョグ→方向転換→接触あり練習→試合)。

受験・繁忙期のミニマム版(1日1アクション)

毎日5分の体幹、寝る前のストレッチ、弱足10本など、1アクションだけに絞ります。継続を最優先。

復帰ロードマップと段階的復帰の指標

  • 痛みが0〜2で安定→次の段階へ
  • 片脚安定・スプリントの再測定で客観確認
  • 最初の試合は出場時間を制限し、翌日の反応を記録

失敗例とリカバリーの手順

目標が多すぎる→減らす基準(優先3ルール)

「勝ち筋に直結」「今だけのチャンス」「ワンアクションで効果が広がる」の3条件から3つだけ選択。

KPIが曖昧→定義の言い換えと測り方の明確化

例:「守備を頑張る」→「自陣ハーフでの1対1で相手を前に向かせない回数」などに置き換え、数える方法を決めます。

記録が続かない→摩擦削減と自動化

  • 項目を半分に削る
  • スマホのホーム1枚目にチェックリスト
  • 開始タイマーを固定(毎日同時刻の通知)

モチベ低下→環境・仲間・ご褒美の再設計

人は環境に勝てません。練習相手を作る、SNSで週報を一言発信、達成週のご褒美を設定など、外部の力を借りましょう。

便利ツールと運用Tips

紙・表計算・ノートアプリの使い分け

  • 紙:視認性と書きやすさ。部屋に貼る
  • 表計算:グラフ化とコピペで継続しやすい
  • ノートアプリ:スマホで瞬時に記録、動画とセットで管理

タイマー・チェックリスト・習慣トラッカーの活用

ポモドーロ(25分)も有効ですが、まずは5分から。チェックが増えるとモチベが自然に上がります。

コーチ/チームとの共有方法(スクショ・週報・一言要約)

  • 週1でシートスクショを共有
  • 一言要約「今週は弱足×5日達成/枠内63%」
  • 相談したい1点を添えると具体的な助言がもらいやすい

よくある質問(FAQ)

どれくらいの頻度で更新・見直しすべき?

日次はチェックだけ、週次で小さく修正、月次で大枠を評価。大きな方針転換は学期や大会区切りで。

データが取れないときはどうする?

主観メモでOK。「良かった/困った/次の一歩」を言葉で残す。可能なら翌週に動画を1本だけ撮って確認。

目標が早く達成/未達のときの調整方法は?

  • 早期達成:負荷を1段だけ上げるか、別の弱点に1枠振る
  • 未達:目標を半分に、小さく分割、If-Thenを追加。まずは達成体験を取り戻す

まとめと次の一歩

今日から始める最小ステップ(5分・1項目・If-Then)

  1. 紙またはスマホで「週テンプレ」を作る
  2. 今週の優先を1つだけ決める(例:弱足20本/日)
  3. If-Thenを1行:「風呂前になったら弱足20本」

継続のチェックリスト(週1レビュー・達成率・環境)

  • 日曜夜に5分の週レビューを固定
  • 達成率を数字で見る(%)
  • 道具の置き場とタイマーは固定。仲間に一言報告

大事なのは「続ける仕組み」。目標設定シートは、その仕組みを小さく確実に回すための道具です。最初の1週は、5分・1項目・1回だけ。そこから、あなたのサッカーは確実に前に進みます。

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