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サッカーの練習は1回何分?最適な目安と組み立て方

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はじめに

「サッカーの練習は1回何分がベスト?」――これは多くの選手や保護者が一度は悩むテーマです。結論から言うと、年齢・レベル・目的・週のトータル量で変わります。ただし、どんな環境でも使える“決め方の軸”はあります。本記事では、科学的な視点と現場の実践をつなぎながら、最適な時間の目安と、今日から真似できるセッションの組み立て方を具体的にまとめました。

1回の練習は何分が最適か?結論と全体像

目的別・年代別の目安(早見)

個人練習の目安は45〜75分、チーム練習の目安は90〜120分がひとつの基準です。高校・大学・社会人(アマチュア)のチーム練習では90分前後が扱いやすく、試合強度を意識する日は100〜120分に拡張することもあります。個人練習は集中力の維持や疲労管理の観点から、45分の短時間高品質モデルが有効です。

  • 技術個人練習:45〜60分
  • 技術+対人/体力:60〜75分
  • チーム戦術+ゲーム:90〜120分

時間よりも「質×一貫性」という考え方

同じ60分でも、目的が明確で集中している練習は効果が大きく、漫然と続く120分より価値があります。大切なのは「質(集中・達成)」と「一貫性(週内の継続)」の掛け算。例えば、週3回60分の高品質セッションは、週1回180分の低密度より上達につながりやすいです。

週の合計時間との関係とオーバーワークの兆候

週の総量でみると、アマチュアの高校〜社会人は6〜10時間(練習+試合)でバランスを取りやすい傾向があります。増やすときは5〜10%ずつ段階的に。以下のサインが出たら過剰の可能性があります。

  • 朝の脈が普段より高い、寝つきが悪い
  • 筋肉痛が3日以上抜けない、関節の違和感
  • プレー精度の低下、イライラ感や無気力

年代・レベル・目的で変わる『適正時間』の決め方

高校・大学・社会人の目安と注意点

高校〜社会人は、チーム練習90分を基軸に、試合週や戦術テーマに合わせて+/-30分調整が現実的です。強度が高い日はボリュームを抑え、技術・戦術の理解が主目的の日は休憩を挟みつつ少し長めにしてもOK。仕事や学業の負荷が高い日は、思い切って60分に圧縮して質を上げる選択が回復に有利です。

小中学生の目安と保護者の関わり方

小学生は60〜90分、中学生は75〜105分が目安。成長期は疲労回復に個人差が大きいため、練習後の様子(食欲・睡眠・表情)を観察し、翌日のコンディションで調整しましょう。保護者は「長くやる=偉い」ではなく「集中してやれたか」を会話の軸にするのがおすすめです。

初心者〜上級者での違い(技術の習熟度別)

  • 初心者:短いセット×多めの休憩。45〜60分で反復と成功体験を増やす。
  • 中級者:60〜75分で技術→対人→ゲーム要素の流れ。強度管理を意識。
  • 上級者:質の高い意思決定とゲーム強度。75〜90分の中でテーマを絞り込む。

目的別:技術/戦術/フィジカル/コンディショニングの時間配分

1セッション内での配分例(60〜90分の範囲)

  • 技術中心:技術40〜50%、対人・ゲーム30〜40%、フィジカル10〜20%
  • 戦術中心:戦術40〜50%、ゲーム30〜40%、技術10〜20%
  • フィジカル強化:フィジカル40%、技術30%、ゲーム/戦術30%(ボールを使う負荷を推奨)
  • コンディショニング:量より回復。技術30%、軽いゲーム20%、可動域・補強・呼吸30〜40%

科学的な視点:集中力・疲労・回復から考える練習時間

集中の持続時間と休憩(マイクロレスト)の入れ方

ボールタッチの精度や判断が求められる練習は、20〜30分で集中の波が落ちやすいと言われます。10〜15分のドリルを2本組み、間に30〜60秒のマイクロレスト(水分・深呼吸)を入れると質が落ちにくいです。ブロック間は2〜3分の小休止で切り替えを。

心拍ゾーンと強度管理の基本

心拍計があれば、低〜中強度(会話できる強度)をベースに、高強度(息が切れるゾーン)を短く挟むのがスタンダード。最大心拍の推定は個人差が大きいので、トークテスト(話せる=低〜中、単語のみ=高)でも十分指標になります。

自覚的運動強度(RPE)で時間を調整する

RPE(主観的きつさ)を0〜10で自己評価し、セッションの平均RPE×時間で負荷を見積もる方法は広く使われています。きつい日(RPE7〜8)が続く場合は次回の時間を短縮(例:90→70分)し、軽い日(RPE4〜5)に少し足す、という波を作るのが安全です。

怪我予防と過負荷のサイン

  • プレー中にフォームが崩れて精度が急落
  • 片足着地や切り返しで膝・足首に違和感
  • 同部位の張りが慢性化、朝のこわばり

こうしたサインが出たら、その日のボリュームを下げるか、ドリルを技術の質重視に切り替える判断が必要です。

代表的な練習時間モデル

個人練習45分モデル(技術集中)

  • ウォームアップ(8分):動的ストレッチ+ボールタッチ
  • ボールマスタリー(15分):両足インアウト、V字、ターン
  • シュート/パス精度(12分):固定目標に回数と成功率を記録
  • スピード/アジリティ(5分):5〜10m加速と切り返し
  • クールダウン(5分):軽いジョグとストレッチ

個人練習60〜75分モデル(技術+対人/体力)

  • WU(10分)→技術(20分)→対人/影対人or1v1想定ドリル(15分)→体力(10〜15分:シャトル・ボールを使った反復)→CD(5分)

チーム練習90分モデル(ゲーム強度中心)

  • WU(12分)→基礎技術/ロンド(15分)→戦術ドリル(20分)→ゲーム形式(11v11 or 7v7:30分)→CD(5〜8分)

チーム練習120分モデル(戦術+ゲーム拡張)

  • WU(15分)→ポジショニングゲーム(20分)→戦術トレ(30分)→ゲーム(35分)→セットプレー(10分)→CD(5〜10分)

セッションの組み立て方の基本

ウォームアップの狙いと時間の目安

目的は「体温を上げる」「関節可動域を広げる」「神経系を起こす」。動的ストレッチ→スキップ・ラン→ボールタッチの流れで8〜12分。長過ぎるWUは主課題の時間を圧迫します。

技術ドリルの配置とボリューム

難易度は低→中→高へ。1ドリル10〜12分、成功率が下がったらセットを切る。狙いは「反復×正確性×左右差の是正」。

対人・ゲーム形式の入れ方と時間管理

ゲームは楽しくて長引きがち。1本のゲームは6〜10分、間に2分休憩で質を保つ。テーマ(ビルドアップ、プレスなど)を1つに絞り、観点を統一すると短時間でも効果的。

フィジカル要素(スピード/筋力/持久力)の組み込み方

  • スピード:疲れていない序盤に5〜10分。距離短め、休息長め。
  • 筋力:体幹・股関節回りの補強を技術の前後に5〜10分。
  • 持久力:ボールを使ったインターバルで置き換えると時間効率が良い。

クールダウンと翌日に疲れを残さない工夫

5〜10分の軽いジョグとストレッチ、ゆっくりした呼吸で副交感神経を優位に。練習後30分以内の補食(炭水化物+たんぱく質)で回復を早めましょう。

試合週の時間配分(ピーキングとリカバリー)

試合2〜3日前:スピードと戦術の最適ボリューム

合計60〜90分。スプリントや切り返しは量を抑え、質は高く。戦術確認はテンポよく短時間で。

試合前日:短時間×高品質の調整

40〜60分で終了。ゲームは省略または超短時間、セットプレーとリズム確認をメインに。疲労感を残さないのが最優先です。

試合翌日:30〜45分の回復セッションという選択肢

出場時間が長い選手は軽いジョグ・ストレッチ・可動域、ボールタッチを少し。サブ組は技術と対人を短時間で。いずれも長引かせないのがコツ。

中2日・中3日のローテーション例

  • 中2日:試合→回復30〜45分→調整60分→試合
  • 中3日:試合→回復30〜45分→通常強度75〜90分→調整40〜60分→試合

時間がない日に効く短時間テンプレ

25分の最小有効セッション

  • WU(4分)→ボールマスタリー(10分)→シュート/パス精度(8分)→CD(3分)

40分の放課後/仕事後セッション

  • WU(6分)→技術(12分)→対人想定ドリルor小ゲーム(15分)→CD(7分)

室内・狭いスペースでできる時短メニュー

  • 片足バランス+タッチ、壁パス、ボール保持リフティング、ミニバンドで股関節補強(合計20〜30分)

週・月単位の計画と時間の増やし方

頻度×時間の最適バランス

週2回長くより、週3〜4回中程度が効果的になりやすいです。疲労が溜まりすぎない頻度で、1回あたり60〜90分を基準に。

段階的にボリュームを増やすときの考え方

週あたり5〜10%の増加を目安に。まずは時間ではなく「成功率や意思決定の質」が維持できるかを優先して判断します。

オフシーズン/プレシーズン/インシーズンでの違い

  • オフ:技術の再学習と基礎体力。量は中〜やや多め、強度は漸進。
  • プレ:戦術浸透とゲーム強度の確立。90〜120分の質重視。
  • イン:試合中心。量を抑え、回復とピーキングに比重。

親が支える『時間外の質』

睡眠・栄養・水分で練習の効果を最大化

睡眠は成長期で特に重要。目安は中高生で8時間以上。栄養は炭水化物でエネルギーを確保し、たんぱく質で回復をサポート、こまめな水分補給で集中力を維持します。

移動・準備の時短アイデア

  • 練習バッグは「補食・水分・替え靴下・タオル」まで固定セットで前夜準備
  • 移動中に戦術メモや動画でイメージ作り(酔いやすい人は音声のみ)

見守りと声かけのベストタイミング

練習直後は「良かった点」を先に。翌日に「次は何を狙う?」と短く目標を確認する形が、継続と質の両立につながります。

よくある失敗とリカバリー策

長時間化で質が落ちる問題

対策:時間を固定(例:60分)し、達成度で終了。延長は最大+10分までをルール化。

休憩不足・水分不足が招くパフォーマンス低下

対策:10〜15分に1回の30〜60秒給水を“必ず入れる”。合計量はキープしつつ小休止で質を担保。

目的が曖昧なまま始めるミス

対策:「今日の1行目的」を紙かスマホにメモし、終了時に達成チェック。

同じメニューの反復による停滞

対策:2週間サイクルで難易度と条件を微調整(距離、制限時間、タッチ数、体の向き)

記録と振り返りで最適時間を見つける

セッションRPE×時間のログ化

「RPE(0〜10)×実施分数=負荷」としてメモ。週合計の推移を見れば、無理の有無が視覚化されます。

技術指標(成功率/タッチ数)を数える

パス何本中何本成功、ドリブルの抜けた回数、ターンのミス数など。時間が同じでも質が見えてきます。

2週間サイクルでの微調整方法

  • 成果が出ている:同時間帯で難易度のみ上げる
  • 質が落ちた:次の2週間は時間を−10〜15%、狙いを絞る

Q&A:練習時間に関する疑問

週に何回・合計何分が目安?

学校・仕事とのバランス次第ですが、週3〜4回・合計240〜480分(4〜8時間)が現実的。試合がある週は練習量を少し抑えましょう。

雨の日やオフはどう過ごす?

完全休養も選択肢。軽い可動域、体幹補強、室内ボールタッチ20〜30分で“質を落とさず量を増やしすぎない”のがコツです。

怪我明けは1回何分から再開する?

部位や状態によって異なります。一般論では20〜30分の低〜中強度から、反応を見て10〜15分ずつ増やす方法が使われます。医療・指導者の方針に従い、痛みが出たら中止を優先してください。

まとめ:『何分やるか』はゴールからの逆算で決める

今日の目的を1行で書く

例:「前を向く1stタッチの成功率を上げる」。目的が時間を決め、時間がメニューを決めます。

時間枠を先に決めて中身を当てはめる

45、60、90分の固定枠に、WU→技術→対人/ゲーム→CDの順で割り当て。延長は最大+10分まで。

終わったら質で自己採点する

RPE、成功率、気分をメモ。2週間単位で微調整すれば、あなたにとっての「最適な1回の練習時間」が見つかります。

最短で上達するコツは、長くやることより「狙いを絞った短時間×継続」。今日の60分を、明日の成長につながる60分にしていきましょう。

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