親子でサッカーを楽しみながら、技術も判断力も底上げしたい。そんな方に向けて、ボール1個・少スペースで完結できる実践メニューを12個まとめました。パスやシュートの「型」だけでなく、観る・判断する力まで育てるのが狙いです。各メニューには、すぐ使える声かけ例も載せています。準備と安全のポイント、レベル別のアレンジ、時間別の回し方、雨の日の代替案まで一気にどうぞ。
目次
この記事の狙いと全体像
親子でできる理由:ボール1個・少スペースで完結
ここで紹介するメニューは、直径5〜8mほどのスペースとボール1個があれば実施できます。公園の空きスペースや校庭の一角、芝・土いずれでもOK。親が「味方」「ディフェンダー」「キーパー」「コーチ」の役割を切り替えることで、ゲームに近い負荷と学びを引き出せます。
伸ばせるスキルの範囲(止める・蹴る・運ぶ・観る・判断)
- 止める:ファーストタッチの置き所、面の作り方、方向づけ
- 蹴る:インサイドの安定、インステップの飛距離、土踏まずのミート感
- 運ぶ:間合い、体の向き、ターンと減速・加速の切り替え
- 観る:首振り(スキャン)、合図への反応、相手・スペースの認知
- 判断:タッチ数の選択、パスorドリブル、シュートのコース選択
必要なもの・環境と所要時間の目安
- 道具:サッカーボール1個(年齢に合うサイズ)、飲み物、マーカー代わりのペットボトルや石
- スペース:5〜8m四方程度。人や物に当たらない場所を選ぶ
- 時間:10分・20分・30分の回し方を後述。ウォームアップ含めて無理のない範囲で
親子サッカー練習の前提:準備・安全・マナー
ウォームアップとケガ予防(足首・股関節・ハムストリング)
- 足首:足首回し各10回、つま先立ち+かかと歩き各20歩
- 股関節:腿上げ歩き10歩、開脚・閉脚のダイナミックストレッチ各10回
- ハムストリング:前に脚を振るスイング各10回、もも裏を伸ばすランジ歩き各5歩
- 仕上げ:軽いジョグ1分→サイドステップ→後ろ歩き→ジグザグドリブル各20秒
最初はゆっくり、心拍数と体温をじわっと上げること。痛みがある日は無理をしないでください。
公園・校庭でのマナーと周囲配慮
- 人通りの少ない方向へボールを蹴る。混雑時はシュートやロングキックを避ける
- 音声のボリュームは控えめに。大声の指示は最小限・短く
- スパイク禁止の場所もあるため、掲示を確認。芝を傷めないよう配慮
- 使った場所は来た時よりきれいに。ゴミ・ペットボトルは持ち帰る
ボール1個でも質を上げるためのコツ
- 制約を使う:片足限定・タッチ数制限・コース指定で「考える」を引き出す
- 短いセット×回数多め:1〜2分集中→30秒休憩→反復で質が上がる
- 声かけは「短く・具体的に・肯定ベース」。改善は1点ずつ
サッカー親子でできる練習12選(ボール1個・屋外/公園OK)
1. 2タッチ基礎パス(距離3〜8m)
目的
止める→蹴るの基本。面を作る、体の向きを前へ開く。
やり方
- 3〜8m離れて対面。インサイドで止めてインサイドで返す
- ボールは利き足→逆足の順に触れるなど、左右を均等に
時間/回数
1分×3セット(左右入れ替え)。
声かけ例
「止める足の面を広く」「次蹴りやすい位置に置けたね」「体を少し前に開こう」
発展/簡単化
- 発展:体の外側で方向づけトラップ→前置き→パス
- 簡単化:距離を縮める、ボールスピードを落とす
2. ワンタッチパスのリズムづくり
目的
タイミングと姿勢。支える足(軸足)の準備を早くする。
やり方
- 2〜5mで軽めのボールスピード
- 「置く」感覚でインサイドワンタッチ。3回に1回は2タッチでリセット
時間/回数
40秒×3セット。
声かけ例
「打点は体の真横で」「軸足を先に用意」「音が軽いといいね」
発展/簡単化
- 発展:親が左右に少し動き、受け手が小さく角度調整
- 簡単化:2タッチを多めに混ぜる
3. ゲート通しパス(方向づけトラップ)
目的
ファーストタッチで次の角度を作る。顔を上げる習慣。
やり方
- 中央にペットボトル2本で幅1mのゲートを作る
- 親子で向かい合い、受けたら方向づけトラップ→ゲートへパス
時間/回数
1分×2セット(左右トラップを切替)。
声かけ例
「触る前にゲートをチラ見」「トラップは前へ1歩分」「ボールの通る道を空けよう」
発展/簡単化
- 発展:ゲート位置をランダムに変える(親が動かす)
- 簡単化:ゲート幅を広く
4. ジャグリング交互リレー(左右足・太もも)
目的
タッチの柔らかさ、足先の感覚を磨く。
やり方
- 親子で交互に1タッチずつ。左右足→太もも→左右足の順
- 落ちたら0からリスタート。回数より質を意識
時間/回数
1分×2セット。
声かけ例
「足首を固定」「上に軽く、真っ直ぐ」「落ち着いて呼吸しよう」
発展/簡単化
- 発展:1→2→1→2のタッチ数でリズム遊び
- 簡単化:手で一度キャッチしてから再開
5. ドリブルシャドウ(親子で追いかけっこ)
目的
運ぶ技術と体の向き。相手を背にする・見ながら運ぶ。
やり方
- 子がボール保持、親は1m後ろで追従。合図で方向転換
- 親は軽くプレッシャーのみ。奪わない
時間/回数
30秒×3往復。
声かけ例
「肩越しにチラ見」「タッチ細かく、加速は短く」「体でボールを隠そう」
発展/簡単化
- 発展:親が手を出してフェイントを誘う
- 簡単化:スピードを落とす、スペース拡大
6. 対面フェイント→抜き差しドリブル
目的
間合いとタイミング。相手の重心を見る。
やり方
- 対面1.5〜2mで静止。子がフェイント→左右どちらかへ抜き差し
- 親は半歩の反応のみ。抜いたらすぐ戻る
時間/回数
40秒×3セット。
声かけ例
「見るのは足じゃなくお腹の高さ」「止まる→出るのメリハリ」「最初の一歩を速く」
発展/簡単化
- 発展:親がタッチ制限(子は2タッチ以内で突破)
- 簡単化:親の反応を遅く設定
7. 親キーパー vs 子どもシュート(コーナー指定)
目的
コース選択とミート。狙いを決めてから蹴る。
やり方
- 2本のペットボトルをゴールポスト代わりに設置(幅2.5〜3m)
- 親はキーパー役。子はコーナーを口で宣言→シュート
時間/回数
各10本×2セット。
声かけ例
「狙いを先に決めよう」「踏み込みはボールの横」「ミート後の振り抜きまで」
発展/簡単化
- 発展:親が遅れて動くフェイントを入れる、走り込みからシュート
- 簡単化:ゴール幅を広く、コース宣言なし
8. ロングキック的当て(ボトル/コーン狙い)
目的
飛距離よりも方向と高さのコントロール。
やり方
- 10〜20m先にボトルやコーンを1〜2本設置
- インステップでボールの中心やや下をミート
時間/回数
6本×2セット(休憩長め)。
声かけ例
「助走はゆっくり、最後2歩だけ速く」「目線は狙い→ボール→狙い」「倒れ過ぎない」
発展/簡単化
- 発展:ワンバウンドで当てる、弱い足で挑戦
- 簡単化:距離短縮、ターゲットを大きく
9. クイックターン3種(インサイド/アウト/クルフ)
目的
減速→向き直り→再加速の一連動作。
やり方
- 5m往復の直線。片道ごとにターンを変える
- インサイドカット、アウトサイドカット、クライフターン(足の内側の後ろを通す)
時間/回数
30秒×3セット。
声かけ例
「減速は小刻みステップ」「ボールは体の近くに」「ターン後の1歩を大きく」
発展/簡単化
- 発展:親が手を出す位置合わせのフェイント
- 簡単化:スピードを落としてフォーム重視
10. ランダムコール認知ドリル(色・数・方向)
目的
観る→判断→実行のスピードを上げる。
やり方
- 色の物(帽子・マーカー代わり)や数(1/2/3)を口頭で親がコール
- 子はドリブル中にコールに合わせて方向転換やターンを選択
時間/回数
40秒×3セット。
声かけ例
「コールの瞬間に首を振ろう」「反応は小さく速く」「一度ミスしても次の合図へ」
発展/簡単化
- 発展:二重コール(色+数)で条件分岐
- 簡単化:コールの間隔を長く、動きは1種類に絞る
11. 背中パス→ファーストタッチで前進
目的
背後からのボール処理、体の向き作り。
やり方
- 親が子の背後2〜3mからパス。子は背中側から来るボールを半身で受ける
- ファーストタッチで前へ運び、2タッチ目で返す
時間/回数
1分×2セット。
声かけ例
「受ける前に肩を入れ替える」「半身で受けよう」「触ったらすぐ前へ」
発展/簡単化
- 発展:親が左右どちらかへパスをずらす(肩の入れ替えを強調)
- 簡単化:山なりのゆるいボール
12. 1対1小スペースゲーム(通過ゴール)
目的
実戦の判断と駆け引き。守備の寄せと攻撃の突破。
やり方
- 幅2mの通過ゴールを2つ設置。どちらを通っても得点
- キックオフから10〜15秒で決着。終わればすぐ交代
時間/回数
10本勝負(休憩こまめに)。
声かけ例
「見る→仕掛けるのタイミング」「無理なら一度下げよう」「守備は体の向きを作って追い込む」
発展/簡単化
- 発展:攻撃はタッチ数制限、守備は寄せる距離を短く
- 簡単化:ゴール幅を広く、時間を長めに
声かけのコツ:やる気と学びを引き出すフレーズ集
観察→承認→提案の順番で伝える
- 観察:「今のは左足で止めたね」
- 承認:「ボールが体から離れなかったのが良かった」
- 提案:「次は止めた後、半身を作ってみよう」
ミスの扱い方(事実と言葉の切り分け)
- 事実:「ボールが少し前に流れたね」
- 再現:「次は面をもう少し上向きに」
- 切り替え:「今の気づき1個でOK、次やってみよう」
具体化する声かけ例(視線・軸足・ファーストタッチ)
- 視線:「触る前にチラ見」「蹴る前にコースを見る」
- 軸足:「ボールの横、握り拳1個分」「つま先は狙い方向」
- ファーストタッチ:「前へ1歩分」「相手から遠い足で受ける」
レベル別アレンジ(幼児〜中高・競技者)
初級:止める・蹴るの土台をつくる工夫
- 距離とスピードを落とし、フォームを言葉で描写(「面を四角に」など)
- 成功体験重視:小さなゴール、近い距離、回数少なめ
中級:方向づけ・認知負荷・逆足強化
- 2→1タッチの切替、ゲート位置をランダムに
- 逆足からスタート、弱い足にボーナスポイント
上級:スキャン・タイミング・強度の上げ方
- コールの二重化(色+数)、背中からのパス頻度を上げる
- 短時間高強度(20〜30秒全力→40秒休憩)で再現性を磨く
時間別メニュー例:10分・20分・30分で回す
忙しい平日の10分ショートセット
- ウォームアップ2分
- 2タッチ基礎パス(1)1分×2
- クイックターン(9)30秒×2
- 1対1通過ゴール(12)3本
放課後20分の基礎+判断ドリル
- ウォームアップ3分
- ゲート通しパス(3)1分×2
- ランダムコール(10)40秒×3
- 親キーパーvsシュート(7)各6本
週末30分のゲーム形式までの流れ
- ウォームアップ5分
- ワンタッチリズム(2)40秒×3
- 対面フェイント(6)40秒×3
- 背中パス(11)1分×2
- 1対1通過ゴール(12)10本
雨の日・室内でできる代替練習(ボール1個)
足裏コントロールとターン(省スペース)
- 足裏の前後ロール、インサイド→アウトサイドのV字ターン
- 30秒×3、滑りやすい床は避ける
壁当て活用の安全ルールと工夫
- クッション性のある壁、近隣迷惑にならない場所のみ
- 2タッチ→1タッチ、左右交互、目線は壁→ボール→壁
体幹・コーディネーションを+5分
- プランク20秒、サイドプランク各20秒、シングルレッグバランス20秒
- ラダー代わりに床テープでステップ練習
よくある失敗と解決策
親が“教えすぎる”問題への対処
- ルール:1セットにつきフィードバックは1個だけ
- 良かった点→次の提案→自由トライの順で進行
単調で飽きる問題を避けるメニュー設計
- 制約を1つだけ変える(距離、タッチ数、時間、ゴール幅)
- 勝負要素を入れる(何本先取、連続成功で2点など)
スペースが狭い・人が多い場所での工夫
- ジャグリング、足裏ターン、背中パスなど直線距離が短いメニューへ切替
- ボールスピードを落とし、シュートやロングは避ける
親の体力が持たない時の進行管理
- 親はコール役・パサー役に回る。動くのは子どものみ
- 短時間高集中→休憩のリズムで全体の濃度を保つ
よくある質問(FAQ)
週にどれくらいの頻度・量が最適?
目安は週2〜3回、1回10〜30分。疲労や学業とのバランスを優先し、短くても継続する方が効果的です。
ボールサイズ・シューズ選びの目安
- ボール:年齢・カテゴリーに合うサイズ(例:小学生は3〜4号、中高生・大人は5号)
- シューズ:場所に合わせてトレーニングシューズ(トレシュー)かフットサルシューズ
スパイクは必要?トレシューとの違い
公園や舗装面ではスパイクは不向き・禁止の場合もあります。土・人工芝のグラウンドではトレシューが扱いやすく、滑りにくいのが利点です。
公園・芝・土でのボールの扱い方と注意
- 芝:スリップ注意。スピードを抑え、ステップで対応
- 土:バウンドが不規則。ファーストタッチは気持ち強めに
- 舗装:転倒リスクが高いので、低強度メニュー中心に
まとめ:親子で続けるコツと次の一歩
小さな達成を記録する仕組みづくり
「今日は右足ワンタッチ10回成功」「ゲート通し3連続」など、数で残すとモチベーションが上がります。週末に見返して、次の目標を1つだけ決めましょう。
習慣化のトリガー(時間・場所・合図)
「夕食前の10分」「このベンチの前で」「赤帽子を置いたらスタート」など、固定化すると続きます。天候や予定に左右されにくいルールを作るのがコツです。
安全第一と楽しさ優先のバランス
痛みや違和感がある日は中止・変更を。勝負要素やコール遊びを混ぜて「笑い」と「集中」を両立させましょう。親子で交互に役割を変え、褒めポイントを探す時間も忘れずに。
ボール1個・少スペースでも、観る・判断する力はしっかり伸ばせます。今日のメニューから1つだけでも構いません。外に出たら、まずは2分やってみる。そこから、親子のサッカーはグッと楽しく、強くなります。




