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自主練スケジュールの作り方学校・塾・部活を逆算で両立
「練習したいけど、時間がない」。それでも上手くなる人は、時間を“作る”のが上手です。コツは、余った時間に練習を詰め込むのではなく、試合やテストなどの動かせない日から逆算して、優先度の高い練習だけを設計すること。この記事では、学校・塾・部活を両立しながら、自主練を続けて結果につなげるための具体的な作り方を、テンプレートつきで紹介します。今日から使える「15分単位」のタイムログや、試合前後の調整、親やコーチと共有しやすい運用方法まで、丸ごと一本化。あなたに合った“回るスケジュール”を一緒に作っていきましょう。
この記事のゴールと前提
なぜ「逆算」が両立の鍵か
逆算は、「動かせない予定」から優先順位を決める設計手法です。試合日やテスト日、塾時間、通学、睡眠などを先に固定すると、残りの時間の質を最大化しやすくなります。“頑張る時間”ではなく“外せない時間”を先に確定することで、練習がバラけず、疲労の波もコントロールできます。
先に決めるべき制約条件(学校・塾・部活・通学・睡眠)
- 学校:始業・終業、行事、定期テストの週
- 塾:曜日・時間、テスト前補講の有無
- 部活・クラブ:練習曜日・時間、試合日、遠征
- 通学・移動:片道のドア・ツー・ドアの時間
- 睡眠:毎日同じ就寝・起床(目安7〜9時間)
自主練は“足し算”ではなく“設計”である
練習は「増やすほど伸びる」わけではありません。目的に対して最小のメニューで最大の効果を狙う“設計”が重要です。詰め込みではなく、優先度の高い課題にピンポイント投資。抜く日、整える日も“予定”に含めましょう。
現状の時間を見える化する(タイムオーディット)
1週間のタイムログの取り方(15分単位で棚卸し)
- 紙やスマホカレンダーで、1マス15分の表を用意。
- 起床から就寝まで、何をしていたかを大まかでOKなので記録。
- カテゴリを色分け(学校・塾・部活・移動・勉強・自主練・睡眠・自由)。
- 週末に合計時間を集計し、「ムダ」「活用できるスキマ」をマーキング。
最初の1週間だけでOK。数字で見えると、改善の糸口が一気に増えます。
学校・塾・部活・移動・食事・睡眠の所要時間目安
- 学校:7〜8時間/日(移動含まず)
- 塾:1.5〜3時間/回
- 部活・クラブ:2〜3時間/回+往復移動
- 通学・移動:片道30〜60分(人による)
- 食事:朝15分、昼30分、夜30〜45分
- 睡眠:7〜9時間/日(個人差あり)
この目安を基準に、実際の自分の数値に置き換えていきます。
可処分時間の算出と「死に時間」の拾い上げ
「可処分時間=1日の総時間−固定予定−睡眠−食事−移動」。さらに、移動や待ち時間を「死に時間」にしない工夫が鍵です。例:通学中に映像で戦術学習、エレベーター待ちで足裏ボールタッチ、風呂前に5分モビリティなど、小さな積み上げが効きます。
逆算のフレームワーク
シーズン目標→月間→週間→1日の分解手順
- シーズン目標(例:得点関与10、スプリント30mタイム0.1秒短縮)。
- 月間テーマ(例:左足の質、ビルドアップ時の判断、下肢筋力)。
- 週間フォーカス(例:壁当て合計600タッチ、状況判断ドリル3回)。
- 1日のメニュー(例:15分×3ブロックのショート自主練)。
上から決めて、下に落とし込むのが逆算。日々の練習は「目標と線でつながっているか?」でチェックします。
試合日・テスト日からのマイクロサイクル設計
- 試合が土曜の場合の一例
- 日:回復(30〜45分)軽いジョグ、モビリティ、テクニカル軽め
- 月:技術+神経系(短時間・高品質)
- 火:強度高め(スプリント、対人想定の判断ドリル)
- 水:中強度(技術反復+コア)
- 木:落とし込み(セットプレー確認、タッチ品質)
- 金:調整(20〜30分)睡眠優先
- 土:試合
- テスト週は「学習優先」でミニマム化(詳細は後述)。
受験期・定期テスト期の特殊スケジュール
受験期・テスト期は「維持とケガ予防」が軸。自主練は合計20〜40分/日でOK。内容は、ボールタッチ品質、モビリティ、コア、短いスプリント数本。強度は中まで。睡眠を1時間増やすだけでも学習効率と回復が安定します。
自主練メニューの優先順位づけ(80/20の考え方)
ポジション別・課題別の重点(技術/体力/判断)
- FW/サイド:ラストアクションの反復(ファーストタッチ→シュート)、スプリント再現性。
- MF:方向づけのファーストタッチ、スキャン回数アップ、ショートレンジパスの精度。
- DF:対人前の姿勢づくり(ステップワーク)、ロングキックの再現、ビルドの判断。
- GK(可能なら):キャッチングの基本、ステップからのダイビング導入、配球精度。
課題に直結しない練習は後回し。あなたの“試合での失点・失機の原因”に一番効く20%を最優先にします。
技術・フィジカル・戦術理解・メンタルの配分指針
- 技術40%:ファーストタッチ、キック、ボール保持の基本。
- フィジカル30%:スプリント、アジリティ、コア、モビリティ。
- 戦術理解20%:映像視聴、ノート、シャドープレイ。
- メンタル10%:呼吸法、試合前ルーティン、振り返り。
大会期は技術と戦術比率を上げ、オフ期はフィジカル比率を上げて器を広げる、がシンプルな基準です。
オフ・リカバリーを“先に”確保する理由
伸び続けるのは「回復できる人」。週1の完全オフ(勉強はOKだが運動負荷は極小)と、試合直後のリカバリーは最優先で確保します。睡眠・栄養・軽運動・ストレスオフが、翌週の伸びしろを作ります。
週間テンプレート3例(学校・塾・部活を両立)
ケース1:部活週5+塾週2(ナイトショート自主練)
- 月:部活→帰宅後15〜30分(足裏タッチ300+モビリティ)
- 火:塾→帰宅後15分(コア+呼吸)
- 水:部活→帰宅後20分(壁当て150+スプリント3本)
- 木:部活→就寝前10分(ストレッチ+日記)
- 金:塾→帰宅後15分(タッチ100+ヒップヒンジ)
- 土:試合/部活→夜は回復のみ
- 日:45分回復セッション(軽ジョグ10+モビリティ15+ボール感覚20)
ケース2:部活週3+塾週3(朝活+通学活用)
- 平日朝(週3):起床後20分(ラダーステップ or マーカーでフットワーク+コア)
- 通学中:戦術動画10分+ノート要点3行
- 夜:塾の日は5〜10分の「姿勢リセット」、塾なしの日は30分技術ドリル
- 週末:60分の集中自主練(技術30+判断ドリル15+スプリント15)
ケース3:クラブチーム+予備校(高負荷週のミニマム化)
- 高負荷日(クラブ練 or 試合):自主練は0〜15分のケアのみ
- 中負荷日:技術の質を15〜30分(ファーストタッチ、キック精度)
- 低負荷日:戦術理解30分+コア15分
- テスト前:合計20〜30分/日に縮小、睡眠+60分
1日の時間割テンプレートと時短テク
朝活・通学中・スキマ時間の使い方
- 朝10〜20分:心拍を上げるドリル(ジャンプ系は少なめ)+コア。
- 通学:戦術動画、ポジション別の動き方、セットプレー確認。
- スキマ5分:足裏タッチ、股関節モビリティ、呼吸法4-7-8。
帰宅後45分プロトコル(ボールタッチ/コア/モビリティ)
- 15分:ボールタッチ(V字、インアウト、アウトサイド、壁当て50×3)
- 15分:コア&ヒップ(プランク、デッドバグ、ヒップリフト、ヒンジ)
- 15分:モビリティ(足首・股関節・胸椎)+軽いスプリント3本
時間がない日は各5分に短縮してもOK。ゼロより“やった”が積み上がります。
学習とのスイッチング:タイムボクシングと集中管理
- 25分集中+5分休憩を3セット(ポモドーロ)→休憩にモビリティ。
- 勉強→練習→勉強の切り替えに「冷水で顔を洗う」「短い散歩」。
- 通知オフ、机にスマホを置かない。終了時刻を先に決める。
場所と道具がなくてもできる自主練
自宅・公園・学校での安全なメニュー
- 自宅:マット1枚で足裏タッチ、ドリブル模倣、コア。
- 公園:壁当て(周囲に人がいない場所を選ぶ)、マーカー代わりのペットボトル。
- 学校:空きスペースでシャドープレイ(体の向き・スキャン)。
ボールタッチ・壁当て・シャドープレイの組み立て方
- ボールタッチ:各ドリル60秒×3(左右均等)。
- 壁当て:1タッチ、2タッチ、ターンを各50回×2セット。弱い足多め。
- シャドープレイ:相手・味方を想定しながら体の向きと最初の一歩を反復。
自重でできるスプリント/アジリティ/コア
- スプリント:10〜20mの加速3〜6本(完全休息)。
- アジリティ:Tドリル、505の簡易版(印だけ置いて切り返し)。
- コア:プランク系、デッドバグ、サイドプランク、ヒップヒンジ習得。
練習量と疲労を管理する(ケガ予防を含む)
RPEとトレーニング負荷の簡易記録法
RPEは主観的きつさ(0〜10)。セッションRPE=RPE×分数で記録し、週合計を把握します。急な増加(前週比+20%超)はケガリスクが上がる傾向があるため、ゆるやかに増やすのが安全です。
睡眠・栄養・水分補給の基礎
- 睡眠:毎日同じ時間に寝起き。昼寝は20分以内。
- 栄養:主食+主菜+副菜を基本に、練習後30分はタンパク質+炭水化物。
- 水分:練習前にコップ1〜2杯、練習中はこまめに、終了後も補給。
疲労サインと調整の判断基準(抜く勇気)
- 朝心拍がいつもより高い、倦怠感、寝つきの悪化、集中力低下。
- 関節の違和感や鋭い痛みは中止。違和感が続く場合は専門家に相談。
- 「やるべき」を「やれる範囲」に調整するのも実力です。
スケジュールを回す仕組み化
カレンダー・リマインダーの設定と色分け
- 青=学校、赤=塾、緑=部活、黄=自主練、紫=睡眠で色分け。
- 移動時間も予定化し、通知を出す。忘れにくく、遅れにくい。
習慣化ループ(きっかけ→行動→報酬)の設計
- きっかけ:帰宅して手を洗ったら5分モビリティ。
- 行動:15分タッチ→15分コア→15分モビリティ。
- 報酬:チェックリストに◯、好きな音楽、温かいシャワー。
親・コーチとの共有とリスケのコツ
- 週初めに予定を共有。試合・テスト・塾を最優先で見せる。
- 変動があったら即更新。代替案(短縮版メニュー)を常に用意。
テスト期間・大会前後の調整
学校テスト週のミニマム維持メニュー
- 1日20〜30分:タッチ200〜300、コア8〜10分、モビリティ10分。
- スプリントは週1に抑える。睡眠は+60分を目標。
試合前48時間の調整(タッチ品質と睡眠優先)
- 2日前:中強度で短め(技術の質、スプリントは数本)。
- 前日:20〜30分、ボール感覚とセットプレー確認、早寝。
試合後48時間のリカバリー(軽運動/栄養/振り返り)
- 試合直後:水分と糖質+タンパク質。軽いストレッチ。
- 翌日:30〜45分の回復セッション。映像で良かった点と課題を1つずつ。
目標確認と振り返りの仕組み
週次レビュー(できた/できない/次の一手)
- できた:継続・強化。
- できない:理由を1行で特定(時間?道具?疲労?)。
- 次の一手:障害を取り除く(朝に回す、短縮版にする、前日準備)。
テスト指標の設定(スプリント/敏捷/ボールタッチ)
- 30mタイム(月1計測)、505(切り返し)、壁当て100回の所要時間。
- 試合の関与指標(シュート、インターセプト、前進パス数など)。
スケジュール見直しのトリガーと頻度
- テスト前後、試合の山、季節の変わり目で月次見直し。
- 週次は15分で微調整。忙しくなったら即“引き算”。
よくある失敗と回避策
詰め込みすぎ問題と“引き算”の基準
「毎日60分」を目標にすると連鎖的に崩れます。最低ライン(15分)を決め、できる日は延長する方式に。前週比+20%を超える負荷増は避けるのが無難です。
メニューが目的化する問題(試合逆算で修正)
「やること」が目的になると、試合で活きません。週頭に「試合で起こしたい変化」を一文で書き、メニューがつながっているかを毎回確認しましょう。
家族・学校とのコミュニケーション不足への対策
予定は「事後報告」でなく「事前共有」。送迎や夕食時間の調整がある場合、早めに伝えるだけで摩擦が大幅に減ります。
Q&A(ピンポイント課題の解決)
塾が遅い日は何をやるべき?
最短版でOK。「呼吸1分→モビリティ4分→タッチ5分→コア5分」。合計15分。連続性を切らさないのが最優先です。
朝練が苦手でも続ける方法は?
- 起床時間は5分ずつ前倒し。完璧を狙わない。
- 前夜にウェアと道具を出す。迷いをゼロに。
- 朝は“質”だけ。10〜15分の固定メニューにする。
ボールが使えない日・雨天時の代替メニュー
- シャドープレイ(体の向き、最初の一歩、スキャン)。
- コア+モビリティ+ジャンプ基礎(着地コントロール)。
- 戦術動画+3行ノート→翌日の自主練に反映。
まとめと次のアクション
まずは1週間のタイムログから始める
15分単位で棚卸しすると、使える時間とムダが見えます。数字は嘘をつきません。
今日作れる逆算テンプレートの雛形
- 固定:学校、塾、部活、通学、睡眠をカレンダーに入力。
- 試合・テスト日から逆算して、強度の波を決める。
- 自主練は15分ブロックを毎日1つ。余裕があれば2つ目。
小さく始めて週次で改善する
完璧は不要。最低ラインを守りながら、週に1つだけ改善。続く仕組みが、強さになります。
あとがき
自主練スケジュールの作り方学校・塾・部活を逆算で両立のコツは、限られた時間に“勝つ設計”をすること。うまい人ほど、練習の量より質と回復を大切にしています。今日の15分が、3カ月後の“当たり前”を作ります。まずはタイムログ、そして逆算テンプレートを作ってみてください。積み上げていくあなたを、次の試合がちゃんと待っています。