「リフティングは何回できれば合格?」——答えは年齢や練習歴、目的で変わります。この記事では、年齢別に目標回数の目安と“合格ライン”を提示しつつ、回数だけに偏らない評価や、試合に生きるスキルに結びつける考え方まで、実戦的にまとめました。家や校庭での練習にそのまま使えるカウントルール、記録方法、7ステップの上達メニューも用意しています。今日からのリフティング練習が、迷いなく前に進めるようになります。
目次
はじめに:リフティングは何回できればOK?目的から逆算する
リフティングは「回数=努力の見える化」がしやすいスキルです。一方で、試合で効くのは“止める・運ぶ・蹴る”を乱れずに再現できること。まずは回数で土台を作り、そこから質(安定・左右差の解消・移動・部位の使い分け)へ段階的に広げていくのが近道です。
なぜ回数目標が役立つのか(技術の可視化と習慣化)
- 進捗が見える:連続回数や1分間テストは、週ごとの伸びが数字で分かる。
- 集中しやすい:「今日は50回クリアまで」という小目標が、練習の入り口になる。
- フォームが整う:回数を重ねるほど、同じ高さ・同じリズムで当てる感覚が定着する。
試合に直結させるための発想転換(回数→質・再現性・応用)
試合で必要なのは、プレッシャー下でも乱れない“再現性”。回数だけでなく、次の3点を意識して練習に組み込みましょう。
- 質:腰〜胸の高さで安定。ボールに回転をかけない。
- 再現性:左右交互・弱足主体・移動しながらでも崩れない。
- 応用:部位ミックス(足→もも→頭)や、トラップ→パス/シュートへの連結。
合格ラインの考え方:回数と質のバランス
回数だけでは測れない4指標(安定・左右差・移動・部位)
- 安定:高さと軌道がそろっているか。暴れ球が出ないか。
- 左右差:利き足と弱足の差が小さいか。弱足のみでも一定回数できるか。
- 移動:前後左右に1〜2歩動きながら、フォームが崩れないか。
- 部位:インステップ・インサイド・もも・頭など、用途に応じて使い分けできるか。
練習歴と体格差を踏まえた現実的な合格ライン設定
同じ年齢でも、始めた時期や運動経験、体格差で到達スピードは変わります。短期の“合格ライン”は「今のベスト+10〜30%」、長期の“目標”は年代の目安に合わせる、と二段構えで設定すると無理がありません。
- 短期(2〜4週間):自己ベストの更新。フォームの崩れが出ない範囲で。
- 中期(2〜3カ月):年代目安の下限〜中間を狙う。
- 長期(半年〜1年):年代目安の上限+質の指標(弱足・移動・部位)をセットで。
1分間カウント・落下許容回数など評価ルールの決め方
公平に比べるには、同じルールで測ることが重要です。おすすめは次の3つ。
- 連続回数テスト:落としたら終了。高さは腰〜胸。地面バウンドは不可。
- 1分間テスト:落としてOKだが拾い直しも時間内。連続性より作業量を把握。
- 左右交互テスト:右→左→右→左…の順のみカウント。乱れたら0に戻す。
家庭やチームで共通ルールを作ると、成長が比較しやすく、モチベーションも上がります。
年齢別のリフティング目標回数の目安と合格ライン
幼児〜小1:目標10〜30回/合格ライン5〜10回(静止リフティング)
まずは静止した状態で、インステップ(足の甲)中心にやさしくタッチ。ボールの高さを膝〜腰で安定させることが第一歩です。回数は欲張らず、5回をクリアしたら10回に挑戦する段階式でOK。
- 合格チェック:同じ足で5回、または左右混ぜて10回。
- コツ:両手は軽く広げてバランス、目線はボールの下半分。
小2〜小3:目標20〜50回/合格ライン20回(弱足10回を含む)
成長とともにリズム感が上がる時期。弱足の基礎づくりを始めましょう。利き足で20回できたら、弱足で10回を目指します。
- 合格チェック:連続20回(うち弱足のみ10回を別テストでクリア)。
- コツ:足首は固定、当たる面をフラットに。高さは腰あたりに統一。
小4〜小6:目標80〜150回/合格ライン50〜100回(移動リフティングで10m)
体の使い方が一気に伸びる時期。連続回数だけでなく、前進しながら10m運べるかも評価に入れましょう。視線を上げる練習も加えると、試合でのファーストタッチが安定していきます。
- 合格チェック:連続50〜100回+移動リフティング10m(落下1回まで許容)。
- コツ:接触時間を短く、真上に軽く持ち上げる。歩幅は小さく。
中学生:目標150〜300回/合格ライン100〜200回(左右交互50回)
スピードやパワーが上がる一方で、フォームが乱れやすい年代。左右交互のリズム化で再現性を高めます。弱足でのタッチ質が勝負を分けます。
- 合格チェック:連続100〜200回+左右交互50回。
- コツ:母趾球の真上で受ける意識、上体はやや前傾でブレを抑える。
高校生以上:目標300〜500回以上/合格ライン200回+弱足50回(1分間200回目標)
実戦では「回数の最大値」より「速く・低く・乱れない」が重要。1分間テストで200回(低い軌道でテンポ良く)を狙うと、タッチの洗練度が上がります。
- 合格チェック:連続200回+弱足のみ50回+1分間150〜200回。
- コツ:膝の屈伸を小さく、バックスピンをかけない。視線分離(顔を上げる練習)を週1で。
サッカー未経験の大人:目標30〜80回/合格ライン20〜50回(週3×20分で達成を狙う)
未経験からでも継続で伸びます。週3回×20分、最初の2週間は“片足10回×左右”の土台作りを優先。3週目以降で連続回数の自己ベスト更新を狙いましょう。
- 合格チェック:連続20〜50回、弱足10〜20回。
- コツ:空気圧をやや下げて(後述)扱いやすく。疲れたら早めに切り上げる。
レベル別の横断目標(初心者・中級・上級)
初心者:まずは10回→20回→50回の3段階
- 同じ足で10回→左右混合で20回→連続50回。
- 高さは膝〜腰、ボールの回転なしを徹底。
中級:100回連続+弱足30回+移動10m
- 連続100回を軸に、弱足のみ30回、前進10mで落下1回まで。
- 週1回は部位ミックス(足→もも→足)で応用力を磨く。
上級:300回連続+左右交互100回+部位ミックス(足→もも→頭)
- 低い軌道で崩れない300回、交互100回、足→もも→頭→もも→足のサイクルを10巡。
- 1分間テストで180〜220回を安定させる。
測定と記録の方法:公平に数えるルールを決める
カウントの基準(両足交互・同部位連続の扱い)
- 有効タッチ:足・もも・頭が地面に触れる前に連続して当たった回のみ。
- 高さ基準:腰〜胸。極端に高い・低いタッチは無効にしないが減点メモを残す。
- 交互ルール:交互テスト時は右→左の順以外はカウントしない。
動画記録・メトロノーム・1分間テストの活用
- スマホで足元を斜めから撮影し、回転・高さ・体のブレを確認。
- メトロノームを120〜160bpmに設定し、テンポに合わせてタッチ。
- 1分間テストは月1回の定点観測に最適。疲労時の乱れも把握できる。
自己ベスト更新を可視化する記録シートの作り方
- 項目:連続回数、1分間回数、弱足回数、交互回数、移動距離、メモ(気づき)。
- 週ごとに最高値と平均値を記録。伸びが止まったらメニュー変更の合図。
練習メニュー:合格ラインまでの7ステップ
ステップ1:正しい持ち方と高さ(腰〜胸の範囲)
- 足の甲のフラット面で真上に弾く。高さは一定(腰〜胸)。
- 10回×3セットから。セット間は30秒休憩。
ステップ2:片足連続→弱足強化(10回→30回)
- 利き足20回→弱足10回。達成したら利き足30回→弱足20回へ。
- 弱足は“置きにいく”軽いタッチで成功体験を増やす。
ステップ3:左右交互のテンポ化(一定リズム)
- 右→左→右→左を10回(計20タッチ)から。テンポはメトロノーム140bpm目安。
- 足を振るより、膝の屈伸で高さを調整。
ステップ4:低い軌道コントロール(回転を殺す・芯で当てる)
- 接触時間を短く、足首固定。インパクトは母趾球の上。
- ボールの下半分を真上に押し返す。横ブレが出たら一旦停止して再開。
ステップ5:移動リフティング(前後・円・8の字)
- 前進5m→後退5m→左回り→右回り→8の字2周。
- 歩幅は小さく、タッチの高さは変えない。視線は時々正面へ。
ステップ6:部位別(インステップ・インサイド・もも・ヘッド)
- 足の甲10回→インサイド10回→もも10回→頭5回を3セット。
- ももは膝を上げすぎず水平、頭は軽く額で前上方へ。
ステップ7:チャレンジ課題(1分間高回数・指定順序ミックス)
- 1分間でできるだけ多く(目安:中学生120回、高校生150〜200回)。
- 指定順序:足→もも→足→頭→足を1サイクルで10巡を目標。
つまずきを解決:よくある誤りと修正キュー
ボールに回転がかかる→足首固定と当てる面の作り方
- 足首をL字で固定、甲のフラット面をつくる。
- ボールの赤道(真ん中)より少し下を真上に弾く。
弾道が高すぎる/低すぎる→接地点とフォロースルーの調整
- 高すぎる:接触時間が長い。タッチを短く、力を半分に。
- 低すぎる:足が当たる位置が上すぎ。ボールの下側をとらえる。
体が流れる→軸足の膝角度と上体の前傾
- 軸足の膝を軽く曲げ、上体は5〜10度前傾。
- 足元ではなく、ボールの下半分を見る。
弱足への恐怖心→“置きにいく”タッチからの段階設計
- 弱足は高さを膝程度に固定し、成功体験を10回×3セット。
- 次に交互リズムへ。失敗したら弱足のみ練習に戻る。
成長期の膝・足首ケア(回数より頻度を優先)
- 痛みがある日は回数を追わず、5分×2〜3本の短時間に分ける。
- 練習後はふくらはぎ・アキレス腱・股関節周りをストレッチ。
ポジション別に見た合格ラインの捉え方
DF:安定と第一タッチの質重視(低いリフティング)
守備はミスが失点に直結。低い軌道でのリフティングと、弱足での確実なタッチを重点に。左右交互50回を安定させると、クリア後の次の一手が早くなる感覚が得られます。
MF/ウイング:多部位ミックスと視線分離(顔を上げる)
視野を確保しながらのタッチが鍵。部位ミックスと移動リフティングに、定期的に視線を前に上げる課題を組み合わせましょう。1分間高回数はテンポの維持に役立ちます。
FW:トラップ→即シュート連結のための胸・もも活用
収める→置く→打つの連結速度が命。胸・ももでのコントロールリフティングを入れて、シュート動作に素早く移れる位置へ落とす感覚を磨きます。
家でできる安全対策と用具選び
ボールサイズ・空気圧の目安(年代別)
- 幼児〜小3:3〜4号球、小さめは扱いやすい。
- 小4〜中学生:4〜5号球。
- 高校生以上:5号球。
- 空気圧はやや低め(指で軽く押して1cmほど凹む)にするとコントロールしやすい。
狭い室内・庭での工夫(リフティング用ネット・軽量ボール)
- 家具やガラスから2m以上離れたスペースを確保。
- 軽量ボールやスポンジボールでフォーム練習。屋外では通常球で再確認。
親のサポートのコツ(声かけと目標管理)
- 結果より“高さがそろってたね”など過程を褒める。
- 週ごとの小目標(+10回、弱足+5回)を一緒に設定。
モチベーション設計と習慣化のコツ
SMART目標と週次プラン(負荷の波を作る)
- 具体的(S):1分間テスト150回。
- 計測可能(M):週1で動画と数値を記録。
- 達成可能(A)・関連性(R):年代目安に沿う。
- 期限(T):4週間で到達。3週目は負荷軽めに調整。
習慣トリガーとミニ目標(5分×3本)
- 帰宅後すぐ/風呂前など、行動に紐づけて5分。
- 「10回×3セットをノーミス」「交互20タッチ」など小さなクリアを積む。
ごほうび設計と停滞期の抜け出し方
- 週の目標を達成したら好きなスパイク手入れ時間など“ごほうび”を用意。
- 停滞したら部位を変える・空気圧を下げる・1分間テストに切り替える。
よくある質問(FAQ)
何回できれば“上手い”と言える?
年代目安の上限+質指標(弱足・交互・移動)をクリアできると、実戦での再現性が高い状態といえます。例えば中学生なら「連続200回+交互50回+移動10m」がひとつの目安です。
逆足が苦手。回数以外で伸びを測る方法は?
弱足での“高さの安定”(ばらつき幅)や、交互テストの成功率で評価しましょう。動画でタッチの接点(母趾球寄りか、つま先寄りか)を確認すると改善が早まります。
毎日どれくらい練習すればいい?疲労管理は?
目安は10〜20分を1〜2本。成長期は「短く・頻度高く」を基本に、痛みが出たら即中断。週1日は完全休養を入れましょう。
まとめ:“回数の合格”から“試合で効く合格”へ
年齢別目安を踏まえた個別の合格ライン設定
幼児〜小1は5〜10回、小2〜小3は20回(弱足10回)、小4〜小6は50〜100回+移動10m、中学生は100〜200回+交互50回、高校生以上は200回+弱足50回(1分間150〜200回)を合格ラインに。未経験の大人は20〜50回を目標にしましょう。
回数→質→応用の順に伸ばすロードマップ
まずは回数で土台を作り、次に高さ・回転・左右差を整える。そのうえで移動・部位ミックス・1分間テストへ。ルールを決めて公平に測り、記録で成長を見える化。今日の10分が、明日の“止める・運ぶ・蹴る”の精度につながります。