コーンだけでできる 1v1 ドリルを目的→メニュー→チェックで実戦直結。このフレーズは、練習の迷子をなくす合言葉です。必要なのは広いグラウンドでも高価な用具でもなく、いくつかのコーンと、目的→メニュー→チェックというシンプルな設計。この記事は、試合で即効性を生むために、1v1を分解して積み上げるための実践ガイドです。読みながらそのままセットできるよう、距離・時間・回数・評価の基準まで落とし込んでいます。今日から、あなたの1v1に「再現性」と「数字」を入れましょう。
目次
- はじめに:コーンだけで1v1を実戦直結にする設計図
- ドリル設計の原則:目的→メニュー→チェック
- 反応と初速で優位を作る1v1
- ストップ&ゴーと重心移動で間合いを破る1v1
- 認知・スキャンで有利な角度を先取りする1v1
- 縦突破のレンジとタッチ幅を最適化する1v1
- カットインと方向転換でズレを作る1v1
- 背負ってからのターン→前進の1v1
- 守備の1v1:距離管理・姿勢・誘導
- トランジション1v1:攻守切替の最初の2秒
- 一人でできる擬似1v1(シャドー)と二人での対人化
- レベル別プログレッションと週間プラン
- 進捗の見える化:数値目標と記録テンプレート
- よくある失敗と修正キュー(攻撃・守備)
- 安全管理と負荷コントロール
- 練習前後ルーティン(ウォームアップとクールダウン)
- まとめ:次の90日で1v1を武器にする
- あとがき:明日からの一歩
はじめに:コーンだけで1v1を実戦直結にする設計図
なぜ1v1は分解して鍛えると伸びるのか
1v1は「反応→初速→減速→再加速→角度選択→次アクション」が連続して起こります。まとまった“才能”のように見えますが、実は個別の要素の掛け算。要素を分けて鍛えると、どこが伸びてどこが課題かが見え、短時間でも手応えが出ます。分解→統合の順番が、実戦直結の近道です。
このガイドの使い方(目的→メニュー→チェックの流れ)
各ドリルは、目的(目指す状態)→メニュー(セット方法と手順)→チェック(数値と感覚の評価軸)で構成。練習の前に「今日の目的」を1つに絞り、終わりにチェックを必ず記録してください。数字が残れば、翌週の微調整が楽になります。
準備物と環境設定(コーン・スペース・時間・人数)
- コーン:最低6〜12個(色違いがあると意思決定系に便利)
- スペース:10m×10mがあれば十分。屋外でも体育館でもOK
- 時間:1ブロック15〜20分×3本(合計45〜60分)が目安
- 人数:1人でも可能。2人いれば対人化でき、より実戦に近づく
ウォームアップの骨子(足首・股関節・視野の起動)
- 足首:足首回し→前後弾み→つま先/かかと歩き 各20m
- 股関節:ワールドグレイテストストレッチ→ランジツイスト 各左右6回
- 視野:カラーコールキャッチ(相手orスマホの音声で色→見る→指差し)30秒×3
- 神経活性:10m流し×3→シャッフル&スプリント(3m)×3
ドリル設計の原則:目的→メニュー→チェック
実戦の1v1を4局面で定義する(準備・仕掛け・突破/阻止・次アクション)
- 準備:相手とボールの位置関係、間合い、体の向き、視野の作り
- 仕掛け:初速・フェイント・タッチ幅・重心の上下
- 突破/阻止:縦/内の選択、減速→再加速、肩の入れ
- 次アクション:抜いた後の前進・パス・シュート、守備は回収→前進
目的の立て方(測れる・再現できる・再現性のある刺激)
「今日は縦突破の歩幅を整える」「減速から3歩の再加速を速くする」のように具体化。距離(m)・時間(秒)・回数(%)で測れる目的にします。再現しやすい配置で、同じ刺激を繰り返せる形を選ぶのがコツです。
チェックの型(成功率・時間・基準ライン・映像・感覚メモ)
- 成功率:例)10本中7本ゲート突破=70%
- 時間:例)3m到達タイム、ターン所要時間
- 基準ライン:例)減速開始はコーンから1.5m以内
- 映像:スマホのスローで「一歩目」「頭の高さ」を可視化
- 感覚メモ:言語化「今日は右足の押し出しが弱い」
コーン配置の基本形3つ(ゲート・Y・L/コの字)
- ゲート:幅1.5〜3mの入口/出口。突破や誘導の評価に最適
- Y:分岐での意思決定、角度取り、加速方向の切替に使える
- L/コの字:カットイン、背負い→ターン、守備の誘導トレースに便利
反応と初速で優位を作る1v1
目的:相手より先に動き出す一歩目を獲得する
勝負の始まりは「誰が先に0→1を作るか」。視覚/聴覚の反応を鍛え、3mまでの初速で差を付けます。
メニュー:2ゲート反応ダッシュ/Yコーンリアクション/色呼応ドリブルスタート
- 2ゲート反応ダッシュ:幅2mのゲートを左右に2つ(間隔5m)。中央にスタートコーン。コール(左/右)でゲートを通過。10本×2セット
- Yコーンリアクション:Yの分岐まで3m、左右の枝3m。スタート合図→分岐→コールで枝を選択。8本×2セット
- 色呼応ドリブルスタート:正面3mに赤青コーン。ボールを触りながら合図の色へ最短でタッチ。30秒連続×3本
チェック:反応時間の短縮・誤反応率・3m到達タイム
- 反応時間:動画で合図→最初の一歩の差を計測(目安0.25〜0.35秒)
- 誤反応率:意図しない方向へ出た回数/総トライ
- 3m到達:1.1〜1.3秒台を目指す(個人差あり、継続で短縮)
ストップ&ゴーと重心移動で間合いを破る1v1
目的:減速→再加速で相手の体重移動を逆手に取る
止まる技術があるほど、動き出しが効きます。減速距離を短く、再加速を鋭く。
メニュー:3コーン・ストップ&ゴー/デセル→アクセルのゲート抜け/ダブルフェイント→縦突破
- 3コーン・ストップ&ゴー:3m間隔で直線にコーン。各コーンの手前80cmで減速→足裏ストップ→即加速。左右足交互で10往復
- デセル→アクセルのゲート抜け:5m先に幅2mゲート。3m地点で減速→ゲートで再加速を最大化。8本×2
- ダブルフェイント→縦突破:横振り2回→縦へ一気に3歩。ゲート幅1.5mで精度を要求。左右5本ずつ
チェック:減速距離・再加速3歩の速度感・突破成功率
- 減速距離:1m以内に収める(マーカーで目安)
- 3歩の速度感:動画で1歩目〜3歩目のピッチ間隔が詰まるか確認
- 成功率:ゲート突破70%以上で距離/狭さを段階的に上げる
認知・スキャンで有利な角度を先取りする1v1
目的:入る前の視野確保と角度選択で勝率を上げる
仕掛けは入る前に7割決まります。首振りの回数/タイミングと、角度の取り方を習慣にします。
メニュー:スキャン→選択→実行(カラーコーン意思決定)/L字コーンで角度作り→侵入
- カラーコーン意思決定:正面に赤/青/黄のゲート(各3m)。スタート2秒前から1秒に1回、首振り×2回→合図色へ最短。10本
- L字コーン:縦5m×横3mのL。縦を進み、角でスキャン→内/外を選択し突破。左右各8本
チェック:スキャン回数・決定の速さ・選択の一貫性
- 首振り:進入前に最低2回、進入直後に1回を目標
- 決定の速さ:合図から動作開始までの迷い(動画でフリーズ有無)
- 一貫性:選んだ角度と身体の向きが一致している割合
縦突破のレンジとタッチ幅を最適化する1v1
目的:タッチの長短と歩幅調整で縦レンジを拡張する
縦の一発で抜くには、タッチの長さと歩幅が鍵。コーンで最適幅を探します。
メニュー:ゲート連続突破(タッチ幅指定)/5mロングタッチ→収め→次のゲート
- ゲート連続突破:2m間隔で幅2mゲートを5つ。タッチは「短・短・長」をリズム指定。30秒×3
- 5mロングタッチ:5m先にゲート。長い一発→2歩でボールを収め→ゲート通過。左右10本
チェック:ゲート通過数/30秒・ロスト回数・最長一発突破距離
- 通過数:目標12〜16ゲート/30秒(レベルに応じて)
- ロスト:前方2m以内の制御比率90%以上を目指す
- 最長距離:コントロール可能な一発の最長タッチを記録
カットインと方向転換でズレを作る1v1
目的:横振り→縦/内の切り替えでマークを外す
横の見せと縦の本命。方向転換の滑らかさは膝と股関節の使い分けで決まります。
メニュー:Wコーン・カットイン→アウト/コの字シザース→出口選択
- Wコーン:2m間隔で左右にコーン。横へ触る→逆へカットイン→縦へ押し出し。左右10往復
- コの字シザース:縦4m×横3mのコの字に入口と2つの出口。シザース→肩入れ→出口選択。各8本
チェック:方向転換の滑らかさ・ボールから体が離れない率・出口の多様性
- 滑らかさ:頭の上下動が小さいか(動画確認)
- 距離:ターン時にボールと体が50cm以上離れないか
- 多様性:同じ動きに対して出口が内外2種類以上あるか
背負ってからのターン→前進の1v1
目的:背中側の圧を想定した半身の作りとターン速度
背中で相手を感じながら半身を作る。ターンは「接触→離脱→前進」を素早く。
メニュー:背負いコーン→半身→ターン→ゲート/Vターン→縦差し
- 背負いコーン:背後50cmにコーンを置き接触感を再現。半身→Vターン→5mゲートへ。左右各8本
- Vターン→縦差し:足裏V→外足のインステップで押し出し→ゲート。10本
チェック:ターン所要時間・ボールと身体の距離・連続成功回数
- 所要時間:背負い→前進まで1.2〜1.6秒を目標
- 距離:ターン中の最大離隔を50cm以内
- 連続:5連続成功で負荷(距離/狭さ)を上げる
守備の1v1:距離管理・姿勢・誘導
目的:奪う/遅らせる/誘導の優先順位をシンプルに体得
守備1v1は「奪えるときだけ奪う」。基本は遅らせ、外へ誘導、相手の選択肢を減らします。
メニュー:ゲート守備(幅管理)/シャドー・ステップバック→再アタック
- ゲート守備:幅2mのゲートを背に置き、守備者が中央1.5〜2m距離を維持。攻撃者は突破を狙う。20秒×6本で交代
- シャドー→再アタック:攻撃のフェイントに対し半歩引く→再接近でボールと身体の間に足。10回×2
チェック:抜かれた方向の管理率・間合いの安定・ファウルリスク低減
- 管理率:誘導したい外方向に抜かせた割合(目標70%以上)
- 間合い:1.5〜2mを維持できた時間割合
- ファウル:手で掴む/不用意な接触の回数をゼロに近づける
トランジション1v1:攻守切替の最初の2秒
目的:切替直後の最短ルートで主導権を握る
ボールを奪った/失った直後の2秒が勝負。最初の一歩の向きと距離で決まります。
メニュー:奪って即ゲート/失って即回収(同一コーンで反転)
- 奪って即ゲート:中央に争点コーン。ボールタッチで「奪った」想定→最短で5mゲートへ。10本
- 失って即回収:足裏で前へ出し過ぎ→即反転→1.5m後方のコーンへ回収。30秒×3
チェック:切替反応時間・即時アクション成功率・再奪取数
- 反応:ロスト→向き直りまで0.5秒以内
- 成功率:即ゲートまでの到達/トライ 70%以上
- 再奪取:対人時は30秒での再奪回数を記録
一人でできる擬似1v1(シャドー)と二人での対人化
目的:人数やスペース制限下でも対人に直結させる
一人練でも「相手を仮想する」工夫で対人力は伸びます。二人になったら即対人化へ。
メニュー:一人用シャドー(時間制インターバル)/二人用ミラー1v1(ゲート設定)
- 一人用:30秒ワーク/30秒レスト×6。各ブロックで目的を1つ(例:初速・縦タッチ・カットイン)
- ミラー1v1:向かい合い、攻撃が左右へ動く→守備は鏡のように追従。5秒後に攻撃が突破宣言→ゲート勝負。10本で交代
チェック:タイムトライアル記録・左右差の縮小・対人化での転用度
- TT:30秒での突破数/成功率
- 左右差:右/左の成功率差を10%以内へ
- 転用度:対人に移した週の練習で同じ数値が出るか
レベル別プログレッションと週間プラン
目的:初級→中級→上級の段階設計で停滞を防ぐ
負荷は「距離・速度・制限時間・出口数・情報量」で上げます。1項目ずつ変化させると、原因が特定しやすいです。
メニュー:負荷調整(距離・回数・制限時間・出口数)
- 初級:距離短く(3〜4m)、ゲート幅広く(2.5〜3m)、時間ゆとり
- 中級:距離5〜6m、幅2m、時間制限を設定(30秒連続)
- 上級:距離7〜8m、幅1.5m、出口2〜3択、コールの遅出し
チェック:週次KPI(成功率・所要時間・疲労主観)の管理
- 成功率:各ドリル70〜85%で維持→90%超で負荷アップ
- 所要時間:3m/5mの到達タイム、ターン時間を週次で比較
- RPE:10段階で疲労を記録(7以上が続く週はボリューム調整)
進捗の見える化:数値目標と記録テンプレート
目的:練習の蓄積を可視化して改善サイクルを回す
数字は嘘をつきません。毎回30秒で良いので記録を残し、2週/4週後に見返しましょう。
メニュー:記録項目(成功率・タイム・選択理由メモ)フォーマット
日付:目的:ドリル:回数/時間:成功率:タイム(3m/5m/ターン):今日の気づき(選択理由/失敗原因):次回の微調整:
チェック:2週/4週での差分確認・次の微調整ポイント抽出
- 差分:成功率+10%、到達タイム-0.1秒など小さな伸びを確認
- 微調整:ゲート幅を0.5m狭める/コールの遅出しなど1点だけ変更
よくある失敗と修正キュー(攻撃・守備)
目的:典型的なエラーを短い言葉で即修正する
長い説明より短いキュー。自分に効く一言を見つけて、繰り返し使います。
メニュー:攻撃の修正キュー例/守備の修正キュー例
- 攻撃キュー:
- 「頭を上げる→触る」
- 「短・短・長」
- 「肩から入る」
- 「止めてから行く」
- 「3歩で勝負」
- 守備キュー:
- 「半身で待つ」
- 「外へ押し出す」
- 「最後は足より体」
- 「届かないタックルはしない」
- 「見たいのは腰」
チェック:キュー使用後の即時改善率・再発頻度
- 即効性:キュー適用直後の成功率の変化
- 再発:同じ失敗が何本に1回起きるかを記録
安全管理と負荷コントロール
目的:怪我リスクを抑えつつ質を高める
安全と質はセットです。路面と靴、休息の設計でパフォーマンスは安定します。
メニュー:路面/シューズ/コーン間隔の最適化・休息比率
- 路面:濡れた人工芝/アスファルトは急停止に注意。滑りやすい日は減速ドリルを控える
- シューズ:トラクションが効きすぎる場合は減速距離を長めに
- 間隔:混雑時は接触防止に各ゲート間3m以上
- 休息:高強度は1:1(30秒ワーク/30秒レスト)、持久は1:0.5が目安
チェック:主観的運動強度(RPE)・痛みの有無・翌日の状態
- RPE:7以上が続く場合、翌日は技術中心で負荷を下げる
- 痛み:鋭い痛みが出たドリルは即中止し代替(シャドー/スキャン系)へ
- 翌日:張りが強い部位はウォームアップを長めに、スプリントを減らす
練習前後ルーティン(ウォームアップとクールダウン)
目的:動作精度を上げ、回復を早める
ウォームアップは「関節→神経→技術」。クールダウンは「呼吸→伸長→振り返り」。定型化しましょう。
メニュー:動的可動→神経系活性→技術導入/静的伸長→呼吸→振り返り
- 動的可動:レッグスイング、ヒップオープナー、10mスキップ 各2本
- 神経:10m加速×3、ラダーモーション代替の足踏みドリル20秒×2
- 技術導入:ショートタッチ×20秒、長短ミックス×20秒、フェイント×20秒
- 静的伸長:ふくらはぎ/ハム/股関節 各30秒×2
- 呼吸:4秒吸う→6秒吐く×6
- 振り返り:今日の1行メモを書いて終了
チェック:ウォームアップ後の一歩目のキレ・翌日の張り軽減
- 一歩目:WU前後の3m到達タイム差を時々測る(-0.05〜0.1秒が目標)
- 張り:翌日の重さが10段階で+2以上ならボリューム調整
まとめ:次の90日で1v1を武器にする
目的:小さな勝ちを積み上げて実戦で差を作る
1v1は今日の1本で急に開花しませんが、90日あれば武器になります。数字で積み上げましょう。
メニュー:90日ロードマップの提示(3ブロック設計)
- Day1–30(基礎固め):反応/初速・ストップ&ゴー・縦タッチ。成功率70%を安定させる
- Day31–60(角度と選択):スキャン、カットイン、背負いターン、守備誘導。出口の多様性を増やす
- Day61–90(統合と対人化):ミラー1v1、トランジション、負荷上げ。ゲート幅1.5mでも70%を維持
チェック:試合指標(仕掛け回数・成功数・ボールロスト)の実感
- 仕掛け回数:試合での1v1トライ数を+1〜2増やす
- 成功数:成功率を5〜10%押し上げる
- ロスト:無理な仕掛けの削減、切替の再奪取数を1つ増やす
あとがき:明日からの一歩
コーンだけでできる 1v1 ドリルを目的→メニュー→チェックで実戦直結。やることは明快です。今日の目的を1つ決め、15分でも良いから数字を残す。小さな差が、シーズン終盤には大きな違いになります。次の練習では、まずコーンを2つ置き、3mの一歩目を測るところから始めてみてください。そこが、あなたの1v1が変わる起点になります。
