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週次練習計画 中学・高校向け:目的→メニュー→チェックで伸び続ける

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週次練習計画 中学・高校向け:目的→メニュー→チェックで伸び続ける

週次練習計画 中学・高校向け:目的→メニュー→チェックで伸び続ける

うまくなる選手は、運がいいわけでも特別な秘密練習をしているわけでもありません。共通するのは「今週、何を伸ばすか」を決め、そのための練習を選び、結果を振り返って次に繋げること。この記事では、毎週の成長を積み上げるための実践フレーム「目的→メニュー→チェック」を、サッカーの現場に落とし込んで具体的に紹介します。試合がある週・ない週、ポジション別、テスト期間中の軽量版まで、今日から使える形でまとめました。

序章:なぜ週次練習計画が成長を加速させるのか

中学・高校年代の伸びしろと計画性の相性

この年代は、技術・戦術理解・身体能力のいずれも伸びやすい時期です。同時に、成長痛や学業、チーム練習の拘束時間など、リスクと制約もあります。だからこそ闇雲に量を増やすのではなく、週という短い単位で目的を絞り、必要な刺激を狙って入れる計画性が相性抜群です。短期間で小さな成長を積み上げると、月単位・学期単位での差が大きくなります。

目的→メニュー→チェックのフレームとPDCAの違い

一般的なPDCA(Plan-Do-Check-Act)は便利ですが、サッカーの現場では「Do(練習)」が先行して目的がぼやけやすいのが弱点です。本記事のフレームは、あえて順番を「目的→メニュー→チェック」に固定します。

  • 目的:今週の成長テーマをひと言で言えるか
  • メニュー:目的に直結する練習だけを選ぶ(足さない・盛らない)
  • チェック:続けるか、修正するかの判断材料を集める

このシンプルさが、現場で回しやすく、継続しやすいポイントです。

週次(マイクロサイクル)という単位の意義

1週間は、試合からの回復→技術・戦術刺激→高強度→調整→試合という自然な波を作りやすい単位です。学校の時間割や家庭の予定とも合わせやすく、疲労管理にも向いています。日単位は短すぎ、月単位は長すぎ。週次は「成長の手応え」と「継続のしやすさ」のバランスが取れています。

目的を定義する:今週“何を”伸ばすかを明確化

試合の課題→個人の課題へ落とし込む手順

  1. 試合の事実を1つだけ抽出(例:前進パスが相手陣内で通らない)
  2. 自分の関与を特定(例:受ける位置が被って前を向けなかった)
  3. 行動に直せる言葉へ変換(例:ライン間で前向きに受ける回数を増やす)
  4. 今週の目的に採用(他の課題は来週以降に回す)

ポジション別の目的設定例(FW/MF/DF/GK)

  • FW:裏抜けの開始タイミングを早め、ゴール前でのシュート本数を増やす
  • MF:ライン間で前向きに受けて、前進パスの本数と成功率を上げる
  • DF:最終ラインの押し上げタイミングをそろえ、背後対応のミスを減らす
  • GK:ビルドアップの配球判断を安定化し、クロス対応の初動を速くする

技術・戦術・フィジカル・メンタルの4象限で目的を言語化

同じ目的でも、どの象限の要素かを明確にするとメニューが選びやすくなります。

  • 技術:ファーストタッチ、フィニッシュ、キック精度など
  • 戦術:立ち位置、連携、トランジションの判断など
  • フィジカル:スプリント再現性、アジリティ、デュエル強度など
  • メンタル:集中の持続、セルフトーク、ルーティンの安定など

SMART+SPORTS基準での目標づくり

SMART(具体・測定可能・達成可能・関連性・期限)を土台に、本記事ではサッカー向けにSPORTSという拡張も提案します(筆者の現場用フレーム)。

  • S(Skill-based):技術に落ちるか(例:ファーストタッチの方向づけ)
  • P(Position-aware):ポジション文脈に沿うか
  • O(Objective evidence):動画や数値で確かめられるか
  • R(Recovery-aware):回復を考慮しているか
  • T(Time-bounded weekly):週内で検証可能か
  • S(Safety-first):安全性を優先しているか

成長期の体の変化を踏まえた現実的な目標範囲

  • スプリント最高速度の大幅改善など、短期で難しい項目は「再現性」を狙う
  • 技術は短期の伸びが出やすい。ファーストタッチ、非利き足キックは週で手応えが出やすい
  • 関節周囲に違和感がある時は量より質へシフト。安全最優先

メニューを設計する:目的に直結する練習を並べる

1週間の流れ(試合あり/なし)別マイクロサイクル

試合あり(試合=日曜想定)

  • 月:回復・軽い技術(RPE 3〜4)
  • 火:技術×戦術の基礎刺激(RPE 5〜6)
  • 水:高強度・スプリント含む(RPE 7〜8)
  • 木:戦術整理・セットプレー(RPE 5)
  • 金:調整・ルーティン確認(RPE 3〜4)
  • 土:短時間・感覚合わせ(RPE 3)
  • 日:試合

試合なし

  • 月:技術の量・反復(RPE 5)
  • 火:高強度(RPE 7〜8)
  • 水:オフまたは回復(RPE 2〜3)
  • 木:戦術テーマ(RPE 6)
  • 金:高強度ショート(RPE 7)
  • 土:ゲーム形式で統合(RPE 6)
  • 日:オフ

強度配分と回復:RPE・スプリント回数・ボリューム管理

RPE(主観的運動強度)は10段階で記録。週の合計負荷が急増しないよう注意します。

  • 高強度日は週2回までを目安
  • スプリント(全力走)はセッションで8〜20本程度を範囲とし、フォームが崩れたら打ち切る
  • ジャンプや方向転換を含むアジリティは、疲労時に質が落ちやすいので回数を絞る

技術ドリル:ボールタッチ・ファーストタッチ・フィニッシュ

  • ボールタッチ:壁当て左右各100回、テンポを変えて3セット
  • ファーストタッチ:方向づけトラップ→前進2歩→パス。左右10本×3セット
  • フィニッシュ:ワンタッチ/ツータッチを交互に。角度を変え20本×2セット
  • 非利き足デーを週1で設定し、狙い撃ち

戦術メニュー:小人数→大人数へのオーガナイズ例

  • 2対1の前進(判断速度と角度)
  • 3対2→4対3と段階的に数を増やす
  • 6対6+フリーマンでライン間の受け直しを反復
  • 最終的にゲーム形式で「今週の目的」を評価するルールを加える(例:ライン間前向き受け1回=1点)

フィジカル:スピード/アジリティ/筋力/持久のミックス設計

  • スピード:10〜30mの加速ダッシュ、完全回復で6〜10本
  • アジリティ:コーン3〜5本で反応スタート、左右対称で
  • 筋力:自重スクワット、ランジ、ヒップヒンジ各10〜12回×2〜3セット
  • 持久:ボールありのインターバル走(1分走・1分レスト×6〜8本など)

メンタル:セルフトーク・ルーティン・イメージトレーニング

  • セルフトーク:キーワードを3語に固定(例:「前向き」「早く」「強く」)
  • ルーティン:試合前の5分間を固定化(呼吸→イメージ→ボールタッチ)
  • イメージ:今週の目的シーンだけを30秒×3回

補助要素:モビリティ・柔軟性・怪我予防(膝・足首・腰)

  • 足首:カーフレイズ20回×2、片脚バランス30秒×2
  • 膝周り:ヒップ主導のスクワットフォーム確認、ジャンプ着地で膝が内に入らない意識
  • 腰:ヒップヒンジ練習と体幹(デッドバグ、プランク)

自宅でもできる10〜20分の補強メニュー

  • 5分:関節モビリティ(足首・股関節・胸椎)
  • 10分:自重筋力(スクワット、ランジ、プッシュアップ、ヒップリフト)
  • 5分:フォームローラーまたはストレッチ

学業との両立:時間ブロックと優先順位づけ

  • テスト前は「維持と回復」に目的変更
  • 練習時間を30〜45分のブロックに分け、短時間で集中
  • 睡眠を削らない。遅くとも就寝30分前にスマホを切る

チェックとフィードバック:伸びを可視化して修正する

日次・週次のチェック項目(数値と感覚の両輪)

  • 日次:RPE、スプリント回数、違和感の有無、今日のベスト行動を1つ
  • 週次:今週の目的達成度(0〜2点)、動画クリップ2本、来週の修正点1つ

KPI例:1対1勝率・前進パス成功率・シュート本数・スプリント回数

  • 1対1勝率(守/攻)
  • 前進パス成功率(前向きで受けた回数もセット)
  • シュート本数と枠内率
  • スプリント回数と最大速度に近い走の再現本数

動画と簡易データの取り方(スマホ活用と安全配慮)

  • 短いクリップで「目的シーン」だけを保存(30秒以内)
  • 撮影場所の安全確保と周囲の同意に配慮
  • 編集はトリミングのみ。比較がしやすい

セルフ評価×コーチ評価×家庭のサポートの合わせ方

  • 本人:目的に対する自己点数と根拠
  • コーチ:具体行動へのフィードバックを一言
  • 家庭:睡眠・食事・送迎など環境面の支援を確認

怪我サインの早期発見チェックリスト

  • 走り始めや階段での膝・踵の痛み
  • 片脚ジャンプ着地で痛みや不安定感
  • 圧痛や腫れ、熱感
  • 痛みが運動後も続く場合は無理をせず専門家に相談

次週への修正:うまくいかない時の分岐ルール

  • 技術が崩れた:強度を下げて反復数を増やす
  • 判断が遅い:人数を減らし状況を単純化
  • 疲労が濃い:目的は維持に変更し、回復を優先

サンプル週次プラン:目的→メニュー→チェックの具体例

試合週の例:目的「前進の質向上(ライン間で受ける回数増)」

  • 月:回復+ファーストタッチ方向づけ(RPE 3〜4)
  • 火:2対1→3対2の前進ドリル、ライン間で前向き受けたら1点(RPE 6)
  • 水:短距離加速スプリント10本+6対6+フリーマン(RPE 7〜8)
  • 木:ビルドアップ配置の確認、受け直しの合図を共有(RPE 5)
  • 金:セットプレーと軽いゲーム、成功イメージの確認(RPE 3〜4)
  • 土:15〜30分の調整、ボールタッチとキック精度
  • 日:試合。KPI=ライン間前向き受け回数、前進パス成功率

非試合週の例:目的「スピードアップと1対1強化」

  • 月:テクニック反復(壁当て、非利き足多め)
  • 火:10〜30mスプリント8本+1対1サイド制限付き(RPE 7〜8)
  • 水:回復とモビリティ
  • 木:2対2→3対3で数的同数の突破反復
  • 金:スプリント6本+方向転換ドリル+ショートゲーム
  • 土:ゲーム形式で1対1成功数を計測
  • 日:オフ

GK向けの例:目的「ビルドアップとクロス対応の安定化」

  • 技術:浮き球のトラップと半身の受け、片手パリーの方向づけ
  • 戦術:味方CBとの距離・角度を固定、配球コースを事前定義
  • フィジカル:ジャンプ着地の安定化、コアトレ
  • メニュー:配球判断ゲーム(3択から最速選択)、クロス処理遅出し合図で反応

テスト期間中の軽量版プラン:維持と回復を優先

  • 合計時間30〜40分、RPE 4以下
  • 技術10分:ボールタッチ、非利き足キック
  • 体づくり10分:自重トレとモビリティ
  • メンタル5分:呼吸とイメージ
  • 睡眠確保と食事の質を最優先

ポジション別・課題別の目的とメニュー早見

FW:裏抜けタイミングとフィニッシュ確率を高める

  • 目的例:相手CBの視線外からのスタート回数増
  • メニュー:オフサイドライン駆け引き→スルーパス受け→1タッチ/2タッチで打ち分け
  • KPI:決定機への侵入回数、枠内率

MF:前向きで受ける頻度と前進パスの質を上げる

  • 目的例:半身で受ける→前進のファーストタッチ
  • メニュー:背後の肩越しスキャン→方向づけトラップ→縦パス
  • KPI:前向き受け回数、縦パス成功率

DF:対人・カバーリング・ラインコントロールの安定化

  • 目的例:最初の1歩を速く、背後対応の共通ルール徹底
  • メニュー:1対1制限付き(内切りor外切りの選択固定)、ラインアップとスライド反復
  • KPI:背後抜け対応成功率、デュエル勝率

サイド:縦突破とクロスの質/逆走の守備対応

  • 目的例:縦・中の二択で相手を止める
  • メニュー:縦突破→早いクロス、内側侵入→マイナスクロス、守備の逆走リカバリー20m×反復
  • KPI:有効クロス本数、リカバリー走の到達回数

共通課題:ファーストタッチ・判断スピード・トランジション

  • メニュー:時間制限付きの2対1、奪って3秒で前進、失って5秒で回収のルール化
  • KPI:ボールロスト後5秒以内の回収率、前進までの秒数

成長期の身体とコンディショニング

オスグッド・シーバーなど成長痛への配慮ポイント

  • 膝や踵の痛みがある日はジャンプやスプリント量を抑える
  • 股関節や足首の可動域を確保し、膝への負担を軽減
  • 痛みが続く場合は無理をせず専門家に相談

睡眠・栄養・水分補給の週次ルーティン

  • 睡眠:一般的に10代は8〜10時間が推奨とされる
  • 栄養:毎食たんぱく質と彩りのある野菜、試合前後は消化の良い炭水化物を中心に
  • 水分:運動前後でこまめに。尿の色が濃ければ補給を増やす目安に

リカバリーの基本:アクティブ回復・ストレッチ・アイシングの使い分け

  • アクティブ回復:軽いジョグやサイクリング10〜20分
  • ストレッチ:練習後は反動をつけない静的中心に
  • 冷却:打撲など炎症が強い時に短時間で

暑熱・寒冷・多湿への対策と強度調整

  • 暑熱:開始前の水分・塩分、直射日光を避けた休憩
  • 寒冷:ウォームアップを長めに、末端の保温
  • 多湿:通気の良いウェア、こまめな着替え

ツールとテンプレート:誰でも続く管理方法

週間プランシートの書き方(目的→メニュー→チェック)

  • 今週の目的:一文で
  • メニュー:日毎に3つ以内
  • チェック:KPIと動画メモ欄をセット

RPE日誌と簡易コンディションスコアのフォーマット例

  • RPE(1〜10)/睡眠時間/主な痛み(有・無・部位)/今日の良かった行動1つ

練習後2分のリフレクション質問集

  • 今日の目的に対して一番良かった場面は?
  • 再現するために明日一つだけ意識することは?

家庭でのサポートチェックリスト(送迎・食事・睡眠)

  • 練習前後の補食が準備できているか
  • 就寝・起床時刻が安定しているか
  • 移動・荷物準備でストレスを減らせているか

コミュニケーション設計:チームと家庭をつなぐ

コーチと選手の合意形成:目的の共有と更新

  • 週初に目的を共有し、一言の合言葉にする
  • 週末に動画1本と数値1つで検証

親の関わり方:励ましと過干渉の境界

  • 行動をほめる(結果だけでなく)
  • 技術指導はコーチに委ね、生活面の支援に集中

役割分担:主観・客観・数値のバランスを取る

  • 主観:本人の手応え
  • 客観:動画や第三者の視点
  • 数値:KPIの最低1指標

よくある失敗と回避策

メニュー先行で目的がぼやける問題を防ぐ

  • メニューを増やす前に「今週の一言目的」を確認
  • 目的に合わない練習は思い切って削る

やり過ぎ/やらなさ過ぎの強度ミスを減らす

  • RPEの週合計を急に上げない(前週比+10%以内を目安)
  • 高強度は週2回まで、翌日は回復を優先

指標が多すぎて続かない問題のシンプル化

  • KPIは最大2つ、動画は最大2本
  • 「やる・やめる」の判断材料は一枚のシートに集約

結果に一喜一憂せずプロセスに戻すコツ

  • 失点や敗戦時ほど「今週の目的行動」が出たかを確認
  • 出ていれば継続、出ていなければ練習設計を修正

まとめ:小さな目的→適切なメニュー→確かなチェックが成長を積み上げる

来週から始める3ステップ行動プラン

  1. 一言の目的を書く(例:「前向きで受ける」)
  2. 目的直結のメニューを各日3つ以内で組む
  3. KPI1つと動画1本で確認し、翌週に一つだけ修正を入れる

継続の工夫:習慣化トリガーと振り返りの固定化

  • 練習後は必ず2分のリフレクションを行う
  • 週末は同じ時間に週次レビューを固定
  • シートはスマホのホーム画面に置き、すぐ開けるようにする

サッカーは複雑ですが、成長の回し方はシンプルで構いません。週次の「目的→メニュー→チェック」を続けるほど、プレーはクリアに、判断は速く、体は強くなります。大きく変えようとしすぎず、今週の一歩を小さく確実に。積み重ねが、半年後と来シーズンの自信になります。

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